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第四話

シナリオクエストNo.1 推奨レベル:10

血の魂道に集う魂は浄化と再生により世界を廻っている。

クラトラ地方に在するピラミッドは、血の魂道の浄化を手伝う役割を果たしている。

だが、血の魂道の飽和によりピラミッドの浄化機能は著しく低下していった。

そしていつしか浄化機能は失われ、かつての神々しかったピラミッドは見る影もなく風化していった。

浄化機能が失われた原因、スフィンクスと呼ばれる怪物を倒し、ピラミッドの浄化機能を回復させることが出来れば血の魂道に飽和している魂たちを少なからず減らすことができるだろう。


先程まで蓮達が見下ろしていた街は今や砂漠と化し、街の中心地だったところには大きなピラミッドが屹立していた。

蓮は、この正体不明のフィールドが出現したことによって何処かへ消えてしまった武藤恋次が残した「腕」を見たことにより、吐き気を催し、その場に膝を付きながら口元を抑えていた。

その横に居た朝比奈は蓮の様子を気にかける気配もなく、ピラミッドを凝視していた。

蓮が見ると、その他のフリーランス達も朝比奈と同じようにピラミッドへと目を向けている。

朝比奈「そんな………どうして………」

ぽつりと朝比奈が呟いた。

朝比奈「どうしてシナリオダンジョンが………!?」

朝比奈の言葉に一番に反応したのは、フリーランスで、朝比奈に一番近い人間。

アルカヴィールという名の人物だった。

アルカ「これってやっぱり…第一シナリオダンジョンのクラトラピラミッドだよな?」

朝比奈「はい。間違いないです。私がやっていた当時と全く同じです。」

アレコス「ど…どうなってんだよ?今まででシナリオダンジョンが、いや。こんな街一つ、しかも元の町の再現もない大規模な発現現象は起こったことなんてなかっただろ。」

アルカ「まさか、最近のここ一帯の急激な情報量上昇はこれが原因…!?」

アレコス「おいノエル!どうすんだ!!」

最初は驚きにより妙な冷静さを保っていた皆も次第に状況を把握し、パニックに陥っていく。

ノエル「そんなのわかんないわよ!!取り敢えず本部に連絡して判断を…」

言ってすぐにノエルは携帯を開くが、小さく舌打ちをした後すぐに携帯を閉じ、空中に手を遊ばせ始めた。

恐らく、DIGでの通話をかけようとしているのだ。

DIGでの通話は少し特別なもので、念話と呼ばれる方法を取っている。

思念による通話で、思ったことがそのまま相手のDIGに送信され、その送信された内容に対して相手は返答を思い、自分へと伝わるというものだ。

だが、この念話は今の技術では不具合も多い。

まず複数の事を考えている状態の場合では相手に送られるメッセージがめちゃくちゃな内容となり、会話が成り立たない。

パニック状態などにDIGでの通話を試みると、肝心な内容どころか何もかも伝わらないのだ。

また、思った事が相手に伝わるため、伝えなくても良い内容。不満や悪口なども相手に伝わってしまう。

それにより社会的、友人的な人間関係が崩れてしまう。

その為DIGが普及している今現在でも携帯電話というものは変わらずに人々の間で所持されている。

ノエル「ダメ…DIGも携帯も電波が立たない…」

情報量というものは多ければ多いほどその地域に電波的影響を及ぼす。

今この地域では恐らく情報量は爆発的に上昇しているだろう。

そんな中での電話や念話での通話は不可能といっても過言ではない。

アレコス「どうすんだよ!!どうすればいいんだよ!!!」

ノエル「怒鳴らないでよ!!私だってどうすればいいのか分かんないわよ!!でも絶対に本部から何かしらの対応は来るはずよ!それを待って─」

アルカ「俺たちがここに来るまでに4日位の時間が掛かったんだぞ!もしもこれが発現現象なんだってんならその前にこの街全部がロストグラウンドになっちまう!!」

ノエル「じゃあどうすればいいのよ!!!状況もわかんないままでこのシナリオダンジョンに挑むっていうの!?無茶よそんなの!!絶対に出来っこない!!」

蓮「それでも行くしかないじゃないですかね!!!!!」

今まで地面に付していた蓮は声を大きく張り上げ、叫んだ。

それにより先程まで喧嘩していた3人はその口を止めた。

蓮「俺はこれがどういうものか知らないですけど、今俺が、俺達が何をすればいいのかぐらいはわかりますよ」

蓮「あんたらフリーランスの都合があるってのはわかりますけど、その前に俺達は接続者なんですよ。」

蓮「発現現象によって封印された街とその人々を助けるのが接続者ってやつじゃないんですか?」

蓮「普通の発現現象なら自分の家の中に入るか、もしくは発現フィールドから出してしまえば人間は救えますけど今この状況ではこの発現フィールドを消滅させる以外この街を救う方法なんてないじゃないですか!」

ノエル「こ…こっちだって命が掛かってるのよ!?そう簡単に行動出来るわけないじゃない!」

蓮「っ…!!!」

ノエルの返答に対し、蓮は怒りを露わにした。

蓮「じゃあ本部からの連絡が来なかったら!?この街を見捨てるのか!?恋次を、まだ中にいるフリーランスの仲間も見殺しにするのか!?」

ノエル「だからって─」

蓮「あぁ、じゃあ良いよ糞が!!お前等糞フリーランス様達は高みで見物なさっててくださいよ!俺は行くからな!その代わり、お前等はフリーランスなんざやめちまえ!そんな腐った根性持ってる癖に世界的に強いフリーランスだなんてふざけてる!」

蓮は大声で怒鳴り散らし、ピラミッドへと足を向けた。

恋次達が消えた辺り、発現フィールドの入り口でログインした蓮は一瞬だけ呆然としている9人を一瞥し、ピラミッドに向けて駆けていった。


─*─


ピラミッドに行くまではかなり長い距離を走らなければならないらしい。

一見するとピラミッドは近く感じたが、目の錯覚だったらしく、いつまで走ってもピラミッドの入口は見えない。

それほどの大きさなのかと感心しつつも俺は走る速度を早めた。

だがその矢先、遥か前方に青い球が一つ出現した。

そこから文字の羅列が降り、モンスターが現れる。

頭部と腕、腰、足に防具を纏い、片手直剣を持った骸骨のモンスター。

昔のRPGゲームでもよく見かけるそれはSkeletonという名前のモンスターだった。

だが、名前がいつもの青色と違い、赤色で表示されていた。

これは相手と自分のレベルの差を一見して分かるように設定されているもので、2Lv~4Lv上の場合だとオレンジ、5Lv~10Lv上だと赤、それ以上だと赤の点滅となる。

つまりこのスケルトンは最低でも5Lvは離れていると思われる。

俺は腰に据えた名も分からない剣を抜き、《シンク》を発動する。

スキルを発動させると、走っているせいか後を引きながら剣が発光を始めた。

俺が剣を横に薙ぐと、その斬撃はスケルトンへと向かって飛び出していった。

スケルトンは《シンク》に気付く様子もなくその攻撃を受け、仰け反りの状態に陥った。

タゲを取られる前に攻撃した時に出る特殊エフェクトとsneaking attackの文字。クリティカル確定の攻撃のはずではあるが、スケルトンから飛び出たのは42と言う数字と、criticalという英単語だった。

クリティカルダメージ(クリダメ)は通常攻撃×3倍と言う計算となっている。

つまり《シンク》をクリダメでなく通常ダメージの場合14ダメージしか喰らわないと言う事か。

スキルは基本的通常攻撃よりも高いダメージが出る。と言う事は普通に切ったとしても、与えられるダメージは14よりも下か。

俺がダメージ計算をしている間、スケルトンはcriticalによる仰け反りから回復し、俺にタゲを合わせて片手直剣を構えていた。

スケルトンへとある程度近づくと、スケルトンは俺に向かって地面を蹴り、距離を詰め始める。

ある程度それを予測できていた俺は剣を構え、防御の体制を取る。

スケルトンは剣を振り、それを剣で受け止める。

受け止めた瞬間、俺のHPが一割程ガクリと削れた。

相手の攻撃力が自分の防御力よりも遥かに高かった場合、削りダメージなるものが発生する。

削りダメージは状況によって変わるが、ここまでダメージが高いと言うことは一撃を直で喰らえばかなりの大ダメージが予想されるだろう。

俺はスケルトンの攻撃を防御でなく、回避をする方向へとシフトする。

初撃を抑えられたスケルトンはすぐに直剣を構え直し、2撃目を繰り出す。

構えからして縦に一閃すると予想した俺は横へと飛ぶよう足へと意識を向けた。

スケルトンは俺の予想通り、直剣を縦に振った。

敵の予想通りの反応に「俺も結構慣れたかな。」と思いつつも最低限の距離横に飛び、手に持つ名も分からぬ直剣を横に薙いだ。

スケルトンの背骨部分に剣が当たり、9という数字が飛び出した。

ウォーターカードの時もレベル差は5もあったが、あの時はちゃんとしたダメージを与えられていた。

やはりあの腰抜けのフリーランス共が言っていたシナリオのダンジョンの敵なだけある。

俺が与えた攻撃での仰け反りは無かった。

それ故、攻撃を受けたにも拘わらず、その素振りを見せない様にスケルトンは振り返りながら俺へ剣を横に薙ぐ。

剣を横に切る攻撃は避けるのが少し難しい。

回避方法は剣の攻撃範囲内。つまりリーチ分後方に下がるか、下へ体を屈ませる位しかない。

熟練したファイター職ならパッシブスキル次第で簡単に上へ飛んで避けたりもするらしい。

俺にはそんな事を実行する実力など無い。もしかしたら朝比奈ならばできるかも知れないが…

仕方なく俺はスケルトンの攻撃を剣を立てて防御する。

HPが0.5割削れるのを確認し、スケルトンの剣を弾き、その頭に思い切り突きの攻撃をかます。

額部分に綺麗に当たり、26の数字とcriticalと言う英単語。

スケルトンが仰け反ったのを機に右上のスケルトンのHPを確認する。

蓮「な………!」

クリダメも通常攻撃も当てて、少なからず一割位は減っているだろうと予想していたのだが、その一割すらスケルトンにダメージを与えられていない。

それほどまでにスケルトンのHPは多いのか…。

否、恐らく俺が弱すぎるんだ。

唯一、5レベの差でたかだか3発与えた位で1割も削れると言う幻想は抱いては行けなかった。

ショックはかなりデカいが、スケルトンが仰け反りから回復した為、俺は剣を構えて腹をくくる。

蓮「せぇああああああ!!!!」

スケルトンへと攻撃を仕掛けるべく、俺は《ヒット》を発動させながら地面を蹴った。



集中力が途絶えてきた。

スケルトンの攻撃は、縦斬りと横斬りしか無いのはもう分かっている。

だが、それの見切りはかなり厳しい。

その理由はスケルトンの攻撃速度が速いからだ。

今のところは危なげながら回避、防御を取っている。

アップルガムも残りはまだまだ十分な数がある。

スケルトンの体力もようやっと残り3割と減ってきている。

だが段々と反応速度が落ち、防御を取る事が多くなってきている。

回復薬にもクールタイムがある故に防御ばかり取っていると回復が間に合わなくなってしまう。

蓮「っ!」

何度目か分からない攻撃を繰り出す。

だが、攻撃はスケルトンの持つ剣によって弾かれ、そのまま反撃をしてくる。

その反撃は縦斬りだった故体を横にして回避し、そのまま回転して斬り付ける。

10という数字が飛び出す。だが、タイミングが悪かったらしくスケルトンは既に攻撃の構えを取っていた。

仰け反りさえ発生していれば十分な時間を稼げたのだが、criticalでない限り俺の攻撃では仰け反りは発生しない。

すぐに防御の体制を取ろうとするが、数瞬遅く、スケルトンの攻撃を胴に食らってしまう。

蓮「…!!」

声にならない程の痛みが体を走り、すぐに後ろへと飛び、アップルガムを噛む。

だが、回復時に起こる回復エフェクトは起こらなかった。

アイテムを見ると、23と数字が浮かんでおり、段々と減って行っている。

この数字はクールタイムの時間を意味している。つまりこれは回復ローテーションが崩れたことを意味している。

先程のスケルトンの攻撃によって俺のHPは一気に6割持って行かれ、残り2割となってしまっている。

スケルトンは次の攻撃の構えを取りつつ、距離を詰めてきていた。

やばいと思いながら防御の体制をとってしまう。

今この状況での回避は失敗すれば間違いなくHPは0になるだろう。

それだけは避けなくてはならない。削りダメージが多くとも、2割を一気に持っていかれることはない。

防御をし、距離を取りながらアップルガムのクールタイムを待つしか──

瞬間、俺の後方から十字の光が飛来し、スケルトンへと向かっていった。

十字の光はそのままスケルトンへと命中し、203と数字を飛び出させた後に消え去った。

それを受けたスケルトンも、一瞬ドロリと溶けた後弾け飛んだ。

俺の視界にレベルアップの文字が2回連続で出現し、《ソードムーブ》を習得しました。《防御強化》を習得しました。と書かれたウィンドウも同じく出現した。

それらのウィンドウが消えた後、機械音を鳴らしながらまた新たなウィンドウが出現した。

それには「pink Rabbit様のパーティーに誘われています。」と書かれていた。

一瞬目を疑ったが、すぐに「許可」ボタンをタッチした。

すると俺の視界の左上に何本ものPTメンバーのHPが表示された。

ピンクラビットを初めにノエル、アルカヴィールと書かれている。

その他にも小さい名前とHPバーが表示されていた。

これは…

朝比奈「蓮君!!!大丈夫!?」

朝比奈が俺へと駆け寄り、声を掛けてくれる。

蓮「朝比奈さん。どうして…」

朝比奈「一番経験の無い人間に当然の事を言われて恥ずかしくないのかってノエルさんが。それから皆で話し合ってこのシナリオダンジョンを攻略する事にしたの。」

朝比奈「それで小規模だけどグラパを組んでここに来たのよ」

蓮「グラパ……?」

俺はクールタイムが終わったアップルガムを噛みながら朝比奈に聞く。

朝比奈「あ、えっとグラパっていうのはグランドパーティーの略。通常PTだと4人までしか組めないんだけどその通常PTのリーダー同士でPTを組んだ場合はグランドパーティーっていうのが生成されるの」

朝比奈「簡単に言うと通常PTの集まりだね。このグラパは最大で12組のPTを組めるの。利点はPTメンバー全体に掛けるバフ(支援魔法)がグラパ員全員に掛かったり、だね。」

蓮「じゃあ大きく書かれてる3人のほかに見えるHPバーは…」

朝比奈「グラパメンバーのHPよ。グラパのHPバーは視認してる人のしか出ないけどね。」

俺はそれを聞き、軽く駆けつけたメンバーを見渡した。

アレコス、NONO、アルカヴィール、オクトバ、スピカ、もっちゃん、ジャックキャット、舞戦。

先ほど俺が怒鳴りつけた奴らが勢ぞろいで立っていた。

その中からアレコスが俺に近寄り、頭を下げた。

それに習い、朝比奈を含めた他のメンバーも頭を下げる。

アレコス「本当に申し訳ない。俺達はごく当たり前なことをパニックのあまり見失っていた。君のおかげだ。ありがとう。」

蓮「え!?あぁ…いや。俺こそ怒鳴りつけちゃってすいませんでした。」

ノエル「いいえ。貴方があそこで怒らなければ私達は今も空港でどうするか右往左往していたと思う。」

朝比奈「蓮君が飛び出して行ったから私たちも攻略する気になったんだよ?」

蓮「………じゃあそのお礼、堂々と受けさせて貰います。また変な言い争いしてたら怒鳴りつけますんでよろしく。」

それを聞くと、皆は苦笑いをした。

ノエル「それじゃあまずはピラミッドに向かいましょう。細かい作戦はピラミッド前の休憩所で練ることにしましょうか。」

休憩所なんて物があるのかと驚きつつも、俺は賛成の声を上げた。

挿絵とか描いてみたいけどやり方がイマイチ分からない。

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