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わたしはどうしたいのでしょうか………。

『ことの言い出しっぺはそちらですわ』

『のったのはあなたの従妹と、あなたの叔父夫妻だ』



 あのお二人の会話。たぶん話の流れから姉様と若様、ディアと両親が絡んでいるようです。だんだんと膨らんでいく疑問は、次第に思考の8割を占めてしまいました。こんなときどうしたらいいのでしょうか……?

「それで、俺んとこ来たの?」

――悩んだわたしの足は、自然とヴェインのもとへ向かっていました。

 今いるのは、先日ランドン氏と別れたあとに彼と落ち合ったあの広場です。広場の片隅にある木箱にふたり並んで座っていました。

 今は昼下がり、近くの子どもたちが思い思いに遊んでいます。……とても和やかで穏やかな光景ですが、わたしの心中はまったく穏やかではありません。

(先日の返事も出していないのに、来てしまいました)

 答えを求めている相手に、答えるでもなく別の相談事をふる……頼りにしているからこそ、相談事をできると相手に態度で示しているのだから――なんて残酷な行為なんでしょうか、自分の行いに恥じて、穴に入ってしまいたいです。

「――まあ、葛藤しているとこ悪いけどさ」

 気まずそうに、ヴェインは頭をポリポリかきます。

「今は、葛藤は横に置いとけ……っても原因の一端は俺だけどさ」

 ヴェインが真面目な顔をつくって、こちらを見ました。ヴェインの灰色の目にわたしが映っています。灰色の目に見つめられると、先日のことが思い出されて……胸がすごい速さで脈打っているのがわかります。手も変な汗をかいていますよー…。

「だから置いとけって」

 ……わたし、そんなにわかりやすいんでしょうか。

「ナディは気になるんだろ?なんで、自分が茅の外か」

 わたしは頷きます。そうなんです、わたしいままさに茅の外のようです……跡継ぎなのに。

「跡継ぎなのに、茅の外にされて戸惑ってる。理由もわからず、また心当たりもない。長女で跡継ぎなのに、なんでって思ってる」

―――次から次へと、ヴェインはわたしの心境を的確に言い当てていきます。まさしくその通りですね。

 ……さすが、幼友達兼理解者です。わかってます。

「ええ、そうなんです。そして、迷ってます」

「――これからどうしたらよいか?ってとこだろ」

「はい」

「で、俺に助けを求めてる」

「えっと、助けをというかですね、助言を」

――助けでなくて、迷惑かけたくないだけであって、助言だけほしいのであってですね。

「好きな女にこんなに頼られちゃ、助けてやらない男はいねぇよ」

 少しほほを染めてにかっと笑って、ヴェインはさらりと口説き文句を言いました。

「なっ、っっ……」

 ヴェインの笑顔は人懐っこくて可愛いと、実は異性に(とくに年上の方々)に人気なんですよ……それだけ、女性にたいして破壊力が半端ないんです。…わたしもやられました。これだけは昔から慣れません。

「で、さ」

 ヴェインはふと真面目な表情に戻し、

「ナディはどうしたいの?」

と問うてきました。

―――わたしは、どうしたいのでしょうか……。

「ひとまずさ」

―――ひとまず?

「悪いことは隠してないだろ、ディアも絡んでるんなら」

――オリヴィアさんだけが絡んでんなら、わかんないけどさ。

「……………」

―――肩の荷が軽くなる、というのはこういうことでしょうか。

 ずいぶんと安堵したようです、わたし。


「で、どうする?俺はナディがいいと思ったように協力するよ」

 大丈夫、とヴェインはわたしの手を強く握りしめてくれました。――すごく、安心します。大丈夫だと、大丈夫なんだと心が不思議と落ち着きます。

「わたしは――」

キースが出てこない……!

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