表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ゆきまう日

作者: 迎千鶴

「あっ、雪だ。」

「ほんとだ。」


病室の中から見る雪は、とても綺麗だ。

同時に地面に落ちるたびに消えていく。

目の前のユキ(・・)が消えてしまうような気がして…。

ぎゅっとつないだ手に力を込めた。

彼女の指先は、少し冷たくて、細くなってしまった指に僕はふがいなさを感じる。


「どうかしたの?」

「何でもない。」

「そ~?」


笑顔で笑う彼女の顔色は、雪のように白く、僕が触れてしまえば、溶けてしまいそうで。


「ねぇ、雪はさ、綺麗だよね。」

「うん。」

「はかないよね。」

「うん。」


彼女は、自分の死期を悟っているのかもしれない。


「雪は可哀そうだよね。」

「え?」

「あんなにすぐに消えちゃって、でもさ、私は、すぐに消えないんだ。おんなじゆきなのに、全然違うよね。」


少しずつ震えていく彼女の肩、体。


「ユキ…。」

「私は、消えはしないけど、こんなに苦しいんだったら、すっと消えられればよかったのに。」


初めて彼女の気持ちを聞いた気がした。

初めて弱音を吐いた彼女に、僕は――――――。


「すぐ消えちゃってたら、僕に会えなかったんだよ?」

「あなたにあえて、よかった……だけど、苦しいの。」


僕も苦しいよ、一人になるのが。


「怖いの。」


僕も怖いよ、きみを失うことが。


何も言えない僕を見て、きみはまた優しく、哀しく、わらう。


「なーんてね、忘れて…。」

「忘れないよ、忘れられないよ、きみのことは。」

「…ありがと。」







さよなら、僕の愛しい人。

彼女が逝ったその日にも雪は降っていた。

まるで、彼女を迎えに来たように。

まるで――――――――――――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ