第三章:選挙大敗と一人勝ちの皮肉
「消込頑張ってます」発言から3か月後、衆議院選挙が実施された。
選挙戦が始まると、蓬莱新党の候補者たちは厳しい現実に直面した。
「先生、街頭演説でも『消込議員の仲間』と言われて...」
選挙区の候補者から党本部に苦情が殺到した。
「SNS炎上の影響で支持率が下がってます」
「削除田議員の発言が足を引っ張ってます」
党幹事長の田中は頭を抱えた。
「削除田議員、君の発言で党全体が批判されている」
「批判?どんな批判ですか?」
削除田議員は本当に知らなかった。コメントをOFFにしているので、批判の声が届かないのだ。
「『国民の声を消込する政党』というイメージが定着してしまった」
「それは誤解です。効率的な運営をしているだけです」
削除田議員は反省していなかった。
選挙戦中、野党はこの問題を最大限に活用した。
【蓬莱民主党】街頭演説 「政権党は皆さんの声を『消込』します。でも私たちは違います。どんな批判でも真摯に受け止めます」
聴衆は大きく頷いた。
【蓬莱共産党】政見放送 「SNSで国民の声を削除し、『消込頑張ってます』と発言した政党に、政治を任せられますか?」
効果的な攻撃だった。
一方、蓬莱新党の候補者たちは苦しい戦いを強いられた。
「SNSの件についてお答えください」
記者会見で必ず質問された。
「あれは削除田議員個人の発言で...」
「でも党のSNS戦略を担当していたのでは?」
「党として適切だったと考えていますか?」
どう答えても不利になる質問ばかりだった。
しかし、削除田議員本人は楽観的だった。
「マスコミが騒いでるだけでしょう。実際の影響は少ないはずです」
彼の選挙区では街頭演説も順調に行われていた。というのも、削除田議員は参議院議員で、今回は非改選だったからだ。選挙に出る必要がないので、批判の矢面に立たずに済んでいた。
「他の議員は大変そうですが、僕は安泰ですね」
削除田議員は余裕だった。
選挙当日、開票結果は衝撃的だった。
蓬莱新党:98議席→45議席(53議席減) 蓬莱民主党:65議席→89議席(24議席増) 蓬莱共産党:15議席→28議席(13議席増)
政権党の大敗だった。
「これは...予想以上の敗北だ」
党本部は騒然となった。
「SNS炎上の影響がここまで大きいとは...」
「『消込発言』が決定打になった」
「削除田議員の責任は重い」
しかし、当の削除田議員は動じていなかった。
「僕は非改選なので関係ありません」
「関係ないって...君のせいで党が大敗したんだぞ!」
田中幹事長が怒鳴った。
「それは他の議員の努力不足でしょう。SNS戦略は成功していました」
「成功?大敗しているのに?」
「僕のアカウントには批判コメントが一切付きませんでした。完全に制御できていました」
削除田議員は最後まで自分の戦略が正しかったと信じていた。
選挙後、蓬莱新党は党改革を迫られた。
「削除田議員、SNS対策室の解散を決定した」
「解散ですか?なぜです?」
「君の戦略で党が大敗した。もうSNS戦略は任せられない」
「でも僕の戦略は間違っていません。批判を削除すれば平和になります」
「その考えが間違いだったんだ」
田中幹事長は呆れ果てていた。
「今後は野党に習って、批判コメントにも真摯に対応する」
「それは非効率です」
「効率より信頼が大事だ」
削除田議員は納得しなかった。
党の新しいSNS戦略は、若手議員の山田が担当することになった。
「山田議員、よろしくお願いします」
「はい。まずはコメント機能を復活させます」
「復活?」
「国民の声を聞くのが政治家の仕事です」
山田議員のSNSアカウントには、批判コメントも含めて様々な意見が寄せられた。そして、山田議員はそれらすべてに丁寧に回答していった。
「批判的なご意見もありがとうございます。改善点として検討させていただきます」
「ご指摘の通り、この政策には問題があります。見直します」
真摯な対応に、ネット上の評判は徐々に回復していった。
一方、削除田議員は相変わらずコメントOFFのアカウントを運営していた。
「やっぱり批判を聞かない方が平和だ」
彼は最後まで学ばなかった。
そして3年後の参議院選挙で、削除田議員は落選した。
「なぜ落選したんだ?僕のSNSには批判コメントがなかったのに」
最後まで現実が見えない男だった。




