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『SNSコメント消込&OFFマン』の大炎上 〜批判は消せても、民意は消せない〜蓬莱帝国の迷物議員~  作者: 如月妙美


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第一章:SNS戦士の誕生

 蓬莱国議員会館の一室で、削除田消太郎さくじょだ・けしたろう議員は、12台のモニターに囲まれて座っていた。各モニターには政権党「蓬莱新党」の公式SNSアカウントが表示されている。X(旧Twitter)、Facebook、Instagram、TikTok、YouTube...現代政治に必須のSNSプラットフォームすべてである。

「削除田議員、SNS対策室の設置、ご苦労様です」

 党幹事長の田中が挨拶に来た。

「はい、お任せください」

 削除田議員は自信満々に答えた。身長165センチ、体重60キロの痩せ型で、分厚い眼鏡をかけた42歳。元IT企業勤務という経歴を買われて、党のSNS戦略を一手に引き受けることになったのだ。

「最近、ネット上での批判が増えていて困っているんだ」

「批判ですか?」

「そう。特に若い世代からの政策批判が目立つ。なんとかイメージアップを図ってほしい」

 田中幹事長の依頼は明確だった。ネット上の批判を減らし、政権党のイメージを向上させること。

「承知しました。SNSは私の得意分野です」

 削除田議員は胸を張った。

 実際、彼はSNSには詳しかった。ただし、使い方が一般人とは少し違っていた。彼のアカウントは常に「承認制」で、気に入らないコメントは片っ端から削除し、批判的なユーザーはブロックしていた。いわば「イエスマン」だけに囲まれたSNS環境を作り上げていたのだ。

「さて、まずは現状を把握するか」

 削除田議員は党の公式アカウントを確認し始めた。

【蓬莱新党公式】の最新投稿:「経済政策の成果が着実に表れています!国民の皆様のご支援に感謝いたします!」

 この投稿についたコメントを見て、削除田議員は愕然とした。

「経済政策の成果?物価高で生活苦しいんですけど」 「庶民の現実を見てください」

「統計の数字だけで判断しないで」 「給料は上がらないのに税金ばかり上がる」 「この政策で恩恵を受けるのは大企業だけ」

 批判コメントが500件以上ついていた。「いいね」は50件しかないのに。

「これは...大変だ」

 削除田議員は汗をかいた。

「まずは批判的なコメントを整理しよう」

 彼はコメントを一つずつ読んで、分類し始めた。

 •政策批判:「この政策は間違ってる」系

 •生活苦訴え:「生活が苦しい」系

 •統計疑問:「数字がおかしい」系

 •態度批判:「国民を軽視してる」系

 •単純悪口:「政権交代しろ」系

「これ全部削除しよう」

 削除田議員は迷わず削除ボタンを押し始めた。

「削除、削除、削除...」

 1時間で300件のコメントを削除した。

「よし、これで見栄えが良くなった」

 批判コメントを削除した結果、残ったのは「頑張って!」「応援してます!」「素晴らしい政策です!」といった好意的なコメントだけになった。

「これなら問題ない」

 削除田議員は満足した。

 しかし、翌日見てみると、また大量の批判コメントがついていた。

「なぜだ...昨日削除したのに」

 実は、コメントを削除すると、逆に炎上することがある。「言論統制だ」「批判を隠すな」といった新たな批判を呼ぶのだ。

「削除したから余計に批判が増えてる...」

 削除田議員は困惑した。

 それでも彼は削除作業を続けた。毎日朝から晩まで、批判コメントを削除し続けた。

 しかし、批判コメントは削除しても削除しても増え続けた。まるでヒドラの首のように、一つ削除すると二つ三つと新しい批判が生まれてくる。

「これじゃあキリがない...」

 1週間で削除した批判コメントは3,000件を超えていた。

「もっと効率的な方法はないか?」

 削除田議員は考えた。そして、あるアイデアを思いついた。

「そうだ、特定のキーワードを含むコメントは自動削除にしよう」

 彼は自動削除システムを導入した。「批判」「反対」「おかしい」「間違い」「ダメ」などのキーワードを含むコメントは、投稿と同時に自動削除される仕組みだ。

「これで効率が上がる!」

 システム導入後、批判コメントは確実に減った。しかし、新たな問題が発生した。

「お疲れ様です。今日の政策発表、素晴らしかったです!間違いなく支持します!」

 このようなコメントも「間違い」というキーワードで削除されてしまうのだ。

「システムが暴走してる...」

 好意的なコメントまで削除される事態に、削除田議員は慌てた。

 しかし、システムを修正するより、もっと根本的な解決策を思いついた。

「いっそ、コメント機能を停止しよう」

 これが運命の決断だった。


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