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砂漠の国に生まれた。氷魔法が使えた。  作者: 赤いチーズ
第1章幼年期

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第3話:「暑さは尋常じゃなかった。感謝された。」

父さん――カリムの仕事は、商隊の護衛だ。


俺たちのいる地、ラハーム中央王国は、四方に異なる気候を持つ国々に囲まれた大陸の中心に位置している。だから貿易・戦争の要所であると父さんは言っていた。


そんな国で物を運ぶ仕事には危険がつきものだから、腕の立つ人間が必要になる。


その中でも、父さんは――

わりと有名らしい。


「カリムの火は、安定してる」


少し前に、父さんの同僚がそう言っていたのを聞いたことがある。


火魔法は、扱いが難しいらしい。

強すぎてもダメだし、弱すぎても意味がない。


父さんの火は、そのちょうど真ん中だ。


必要な分だけ、

無駄なく、

長く保てる。


派手じゃないけど、

仕事では一番信頼されるタイプ。


……らしい。


正直、俺にはよく分からない。


でも、父さんが仕事に出る日は、

家の中の空気が少しだけ引き締まる。



母さん――サーラも、魔法が使える。


水属性だ。


「便利そう」と思うかもしれないけど、

この土地では、あまり意味がない。


水は少ないし、

出したそばからぬるくなる。


冷やす力がない水は、

正直、使い道が限られている。


母さんも、それは分かっているみたいで、

魔法の話をすることはほとんどない。


それでも、

洗い物をしたり、

喉が渇いたときに少し出したり、


生活の中では、ちゃんと役に立っていた。


――だから。


その母さんが、

体調を崩したのは、

正直、かなりショックだった。



「大丈夫よ」


そう言いながら、

母さんは布団に横になっていた。


顔色が、いつもより悪い。


「ちょっと、暑さにやられただけだから」


……それが一番怖い。


この国の暑さは冗談じゃない。


父さんは仕事で家を空けている。

今は、俺だけだ。


「……水、持ってくる」


そう言って立ち上がると、

母さんが少し困ったように笑った。


「ありがとう、ルーク」


その一言で、

胸の奥がきゅっとした。


(……嫌だな)


母さんが元気じゃないのは、

嫌だ。


理由とか、理屈とか、

どうでもいい。


ただ、

嫌だった。



水袋を持って戻る。


母さんが飲む。


「……ぬるいわね」


それでも、

少し楽そうな顔をした。


(……これ、俺が触ったら)


そんな考えが、

自然に浮かんだ。


やるかどうか、

迷う。


正直、怖い。


でも――

母さんの方が、もっと大事だ。


俺は、水袋をそっと持った。


特に何もしない。

力を入れたわけでもない。


ただ、

そばにいただけ。


……少しして。


「……あら?」


母さんが、首を傾げた。


「さっきより、飲みやすい」


俺も、少し飲んでみる。


……うん。


落ち着く。


冷たいわけじゃない。

でも、嫌な感じが消えている。


「ルーク?」


「なに?」


「……ありがとう」


理由は聞かれなかった。


母さんは、

そのまま目を閉じた。


呼吸が、少しだけ楽そうだ。



夜。


俺は入ろうとした布団の横に座ったまま、

しばらく動けなかった。


(……俺、何してるんだろ)


魔法なのか、

違うのか。


正直、よく分からない。


でも――

母さんが楽になった。


それだけで、

十分だった。


「……まあ」


深く考えるのは、やめた。


今は、

母さんが元気になる方が先だ。


父さんが帰ってくるまで、

ちゃんと、見ていよう。


俺は、お気楽だ。

面倒なことは嫌いだし、

楽に生きたい。


でも――


大事な人が苦しんでるのは、

見過ごせない。


それだけは、

はっきりしていた。


(……早く、良くなれ)


そう思いながら、

俺は、母さんのそばに座り続けた。


(……早く、良くなるといいな)


難しいことは分からない。

魔法なのかどうかも、正直どうでもいい。


母さんが元気なら、それでいい。


俺はそう思いながら、

母さんのそばに座り続けた。

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