表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
砂漠の国に生まれた。氷魔法が使えた。  作者: 赤いチーズ
第1章幼年期

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/28

第20話:「サノイは気づいた。そして判断した。」


サノイは、城門の影で兜を外した。


額から流れる汗を拭いながら、

深く、息を吐く。


「……生きて帰れたな」


独り言だった。


誰も答えない。


だが、

その言葉に反論できる者もいなかった。



今日の暑さは、異常だった。


砂が焼け、

空気が逃げ場を失い、

呼吸するだけで体力が削られる。


本来なら――

出撃自体が無謀な日だ。


それでも、

街を守るために動いた。


結果は、奇妙だった。


「……動けた」


剣は振れた。

指は痺れなかった。

意識も、最後まで保った。


重装備の兵が、だ。


(おかしい)


サノイは、兵として長く生きてきた。

こういう「違和感」には、慣れている。


慣れているからこそ――

見逃せなかった。



「兵長」


部下の一人が近づいてくる。


「軽傷者は出ましたが、重症者はいません」


「……そうか」


ありえない。


サノイは、内心でそう思った。


この暑さ、この条件で、

それは“運が良い”では済まない。


「……お前、途中で何か変だと思わなかったか」


部下は、首を傾げる。


「変、ですか?」


「息だ。動きだ」


少し考えてから、部下は言った。


「……確かに。

 途中から、少し楽になった気がします」


「全員か?」


「ええ。

 気のせいかと思いましたが……」


サノイは、目を伏せた。


(気のせいじゃない)



思い返す。


戦闘の直前。

城門付近で、空気が変わった。


熱が、暴れなくなった。


冷えたわけじゃない。

ただ――

耐えられる状態になった。


(……誰かが、手を入れた)


それも、

意図的ではない。


自然でもない。


サノイは、城門の方を見る。


そこには、

兵でも、魔法使いでもない――


一人の子供がいた。



痩せた体。

褐色の肌。

黒い癖っ毛。


どこにでもいる、平民の子。


ただ、

青い目だけが、妙に印象に残る。


眠たそうで、

気怠げで、

危険とは無縁そうな顔。


(……あの子だ)


確信ではない。


だが、

兵としての勘が、そう告げていた。



「子供が、戦場の役に立つはずがない」


理屈では、そうだ。


だが、

今日の戦いは、理屈通りに進んでいない。


サノイは、拳を握った。


(もし、もしだ)


あの子が、

この暑さを“和らげている”のだとしたら。


それは――

武器だ。


しかも、

この国では、致命的な価値を持つ。



「……厄介だな」


サノイは、低く呟いた。


守るべき街。

守るべき兵。


そして――

守るべき、何も知らない子供。


(あの目は、戦う人間の目じゃない)


それが、

せめてもの救いだった。



サノイは、決めた。


まだ、報告はしない。


確証がない。

そして何より――

早すぎる。


「……せめて」


あの子が、

自分の価値を知る前に。


街が、先に気づいてしまう前に。


「少し、様子を見るか」


兵長は、そう判断した。


それが、

正しかったかどうかは――


まだ、分からない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ