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砂漠の国に生まれた。氷魔法が使えた。  作者: 赤いチーズ
第1章幼年期

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第15話:「何か気になる。人が多いんだ。」


最近、同じ場所に行くことが増えた。


井戸。

レオンの家。

城門の近く。


理由は特にない。

歩きやすいからだ。


暑いのは嫌いだし、

倒れそうになるのはもっと嫌だ。


(楽なところに行くのは、当然だ)


そう思っている。



「……また人、多くない?」


井戸の近くで、レオンが言った。


確かに、今日は人が多い。


水を汲む列が長い。

いつもなら、昼前にはもう誰もいない時間なのに。


「今日は、暑いからじゃない?」


俺がそう言うと、

レオンは首を傾げた。


「でもさ」


周りを見回す。


「ここ、そんなにきつくないよね」


「まあ、そうだな」


俺は、内心で頷く。


理由は分かっている。

俺がいるからだ。


氷魔法が、勝手に働いてる。


意識して冷やしているわけじゃない。

ただ、

荒れてるところが、落ち着いていく。


それだけ。



「坊主」


声をかけられた。


振り向くと、

見覚えのある背の高い兵士が立っていた。


サノイ兵長だ。


鎧は相変わらず年季が入っていて、

表情も硬い。


でも、前に見たときより――

少しだけ、余裕があるように見えた。


「また来てたのか」


「はい」


「……この辺、最近は楽だ」


それは、確認だった。


俺は、正直に答える。


「そうですね」


サノイ兵長は、しばらく俺を見ていた。


視線は鋭いけど、

嫌な感じはしない。


(この人、疲れてるんだよな)


前に見たときも思った。


責任が多くて、

休めてない顔だ。


「無理はするな」


また、同じことを言われた。


「はい」


するつもりはない。


楽なことしかしない主義だ。



家に帰ると、

母さんが少しだけ困った顔をしていた。


「ルーク」


「なに?」


「最近、外で声をかけられることが増えてない?」


「そう?」


あんまり気にしてなかった。


「井戸の人とか、兵士さんとか」


「みんな、暑いからじゃない?」


母さんは、少し黙る。


「……そうね」


納得していない顔だった。


でも、それ以上は言わなかった。



夜。


布団に転がりながら、天井を見る。


今日も、寝苦しくない。


(この辺、落ち着いてきたな)


俺がよく行く場所は、

だいたい、そんな感じだ。


数日、保つのも分かってきた。


(……氷魔法って、便利だな)


戦えない。

派手じゃない。

目立つと、面倒。


でも、

生きるには、ちょうどいい。


「人間クーラー」


小さく呟く。


偉い人の家で、

一日中、座ってるだけ。


給料もらって、

暑くもなくて、

怒られもしない。


最高じゃないか。


「……まあ」


外では、まだ騒がしい気配がする。


人が集まって、

兵士が動いて、

何かが、少しずつ変わっていく。


でも、

俺は五歳だ。


今は――

考えなくていい。


「それでいいや」


そう思って、

俺は目を閉じた。

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