第15話:「何か気になる。人が多いんだ。」
最近、同じ場所に行くことが増えた。
井戸。
レオンの家。
城門の近く。
理由は特にない。
歩きやすいからだ。
暑いのは嫌いだし、
倒れそうになるのはもっと嫌だ。
(楽なところに行くのは、当然だ)
そう思っている。
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「……また人、多くない?」
井戸の近くで、レオンが言った。
確かに、今日は人が多い。
水を汲む列が長い。
いつもなら、昼前にはもう誰もいない時間なのに。
「今日は、暑いからじゃない?」
俺がそう言うと、
レオンは首を傾げた。
「でもさ」
周りを見回す。
「ここ、そんなにきつくないよね」
「まあ、そうだな」
俺は、内心で頷く。
理由は分かっている。
俺がいるからだ。
氷魔法が、勝手に働いてる。
意識して冷やしているわけじゃない。
ただ、
荒れてるところが、落ち着いていく。
それだけ。
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「坊主」
声をかけられた。
振り向くと、
見覚えのある背の高い兵士が立っていた。
サノイ兵長だ。
鎧は相変わらず年季が入っていて、
表情も硬い。
でも、前に見たときより――
少しだけ、余裕があるように見えた。
「また来てたのか」
「はい」
「……この辺、最近は楽だ」
それは、確認だった。
俺は、正直に答える。
「そうですね」
サノイ兵長は、しばらく俺を見ていた。
視線は鋭いけど、
嫌な感じはしない。
(この人、疲れてるんだよな)
前に見たときも思った。
責任が多くて、
休めてない顔だ。
「無理はするな」
また、同じことを言われた。
「はい」
するつもりはない。
楽なことしかしない主義だ。
⸻
家に帰ると、
母さんが少しだけ困った顔をしていた。
「ルーク」
「なに?」
「最近、外で声をかけられることが増えてない?」
「そう?」
あんまり気にしてなかった。
「井戸の人とか、兵士さんとか」
「みんな、暑いからじゃない?」
母さんは、少し黙る。
「……そうね」
納得していない顔だった。
でも、それ以上は言わなかった。
⸻
夜。
布団に転がりながら、天井を見る。
今日も、寝苦しくない。
(この辺、落ち着いてきたな)
俺がよく行く場所は、
だいたい、そんな感じだ。
数日、保つのも分かってきた。
(……氷魔法って、便利だな)
戦えない。
派手じゃない。
目立つと、面倒。
でも、
生きるには、ちょうどいい。
「人間クーラー」
小さく呟く。
偉い人の家で、
一日中、座ってるだけ。
給料もらって、
暑くもなくて、
怒られもしない。
最高じゃないか。
「……まあ」
外では、まだ騒がしい気配がする。
人が集まって、
兵士が動いて、
何かが、少しずつ変わっていく。
でも、
俺は五歳だ。
今は――
考えなくていい。
「それでいいや」
そう思って、
俺は目を閉じた。




