ベリーと、甘い気配
森の小道を歩くたび、木漏れ日がアレッシュの肩を照らす。
簡素な鎧を着た彼の背中は、光を受けて鈍く光っていた。
隣を歩くマリーは軽やかなローブ姿で、白い足取りは小鳥のように弾む。
「アレッシュさん、ほんとに一緒に来てくれてよかった!」
「ギルドデビューの日に放っておいたら、あの怪しい連中に連れていかれていただろう。ちゃんと注意してやらないとな」
不愛想に言いながらも、声は柔らかく、マリーはつい笑みを浮かべた。
二人はギルドの依頼、“森でのベリー採取”のため奥まで進む。
やがて、ふわりと甘い香りが漂い始める。
「あっ、見て!あそこ、いっぱい実ってる!」
茂みをかき分けた先には、濃い紅色のベリーがびっしりと実った小さな丘があった。
近くには澄んだ小川も流れている。
「休憩していこうか。水もあるし、ちょうどいい」
マリーは早速ベリーを摘み取り、瞳をきらきら輝かせた。
「ねえアレッシュさん。これ、食べ方にコツがあるんだよ」
「コツ?」
「舌で転がして、最後にちょっと吸うと一番甘くなるんだ」
マリーは摘んだベリーをひとつアレッシュに差し出した。
アレッシュは受け取り、ゆっくり味わう――その時、指先にそっとチュッとキス。
「えっ……?」
マリーは目をぱちぱちさせ、顔が赤くなる。
ただの指先なのに、胸の奥がじんわり熱くなって、心臓が跳ねる。
「……ほんとだ、甘いな」
アレッシュの微笑みとその仕草に、マリーは思わず笑顔を返す。
次にアレッシュがベリーを摘み、マリーに差し出す。
「さあ、これも食べてみろ」
マリーがベリーを受け取ろうとした瞬間、アレッシュの唇が指先に軽く触れ――
「んっ……?」
小さな接触なのに、マリーの心臓はドキドキ。
「わ、わたしの顔……ちょっと熱い?」
思わず手を見つめ、顔が赤くなる。
マリーは少し照れながらもベリーを口に運び、アレッシュと笑い合った。
森の中の静かな時間、指先のチュッが二人だけの秘密のドキドキになった。
森のベリー摘みは、その後も穏やかに続く。
手を取り合ったり、笑いながらベリーを分け合ったり
小さな冒険とほのかな甘さが、マリーとアレッシュの心にふんわりと残った午後だった




