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遅すぎた一年

作者: パミーン
掲載日:2026/04/12

自己犠牲と釣り合う釣り合わないを無理矢理足して作ってみました。


多分かなり粗が粗いと思います。寛大なる心でお読みくださいますようお願いいたします。

 凍てつく寒さの中を必死で走りながら来た道を戻っている俺、北三原奏多みたみはらかなた。なんで走っているか、それは幼馴染の藤代双葉ふじしろふたばが受験票を忘れたからそれを取りに戻っているからだ。


 俺達は高三で今まさに受験シーズン中。奇しくも俺の受験する大学と双葉の受験する大学の受験日が被り、一緒に向かっている最中だった。


 俺は東京の大学に、双葉は地元の大学に進学する予定だ。それで余裕を持って家を出たというのに受験票を忘れやがって。あいつは普段から鈍臭いから足も遅い。あいつの足の速さじゃ絶対に時間に間に合わない。


 そういうわけで俺が代わりに受験票を取りに走っている。これが一体どういうことになるか、多分双葉は分からないだろう。でもそれはいい。今日まであいつは必死になって勉強をしてきたんだ。


 それは俺も同じだけど、あいつの頑張りに比べれば全然及ばない。


「奏多君!これ受験票!迷惑かけてごめんね!」


「大丈夫です!絶対間に合うようにしますから!」


 俺はおばさんから受験票を受け取り、再び走り出した。かなり着込んでいるからもう汗でびっしょりだ。そんなこと気にしていられない。とにかく間に合ってくれ!と祈りながら駅まで走った。


 無事、双葉と合流し、受験票を渡すことができた。と同時に俺の受験はここまでだ。今から東京へ行くというんだ。どう考えても間に合わない。


 悟られないように構内で別れて電車に乗るフリをする。向かいのホームで双葉と目が合った。俺が犠牲になったんだ。絶対合格しろよ。俺は拳を握りしめて双葉に突き出してやった。





 後日、双葉は無事に大学に合格した。地元でも有名な国立大学。俺は自分が受験時間に間に合わなかったということを双葉に知られないように両親に伝え、東京の大学に合格したということで口裏を合わせてもらうことにした。


「それでお前はどうするんだ?実際に東京で暮らすのか?」


 両親と今後のことを話し合いながら、父さんからどうするのか尋ねられた。


「もしできるなら一浪してもう一度受験したい。でも無理なら就職するよ」


「今回のことはあんたが悪いわけじゃないからねえ。お父さん、一浪させてあげてもいいんじゃない?」


「うーん、そうだな。その代わり!今回受けようと思った大学よりいいところを目指すんだ。いいな?」


「分かった!」


 こうして俺は一浪することとなった。問題はどこの大学に行くかだ。そうだ!双葉の合格した大学にしよう!今回受けられなかった大学よりも遥かに偏差値も高いし、元々同じ大学に行きたかったというのもある。


 一年後、俺が入学したことを知れば驚かせることもできる。それに同じ大学内ならあいつと一緒にキャンパスライフを楽しむこともできるしいいことづくめだ!


 俺は高三の時とは比べ物にならないくらいにひたすら勉学に励んだ。たまに双葉から「大学生活はどう?」なんてメッセージをもらったりしたけど、「めちゃくちゃ楽しんでる」なんて嘘をついて大学生活を謳歌しているアピールをして返信もあまりしないようにしていた。





 そうこうして一年が経ち、俺は無事に双葉と同じ地元の国立大学に合格した。これで双葉と肩と並べることができる。俺は昔から双葉とよく比べられていて、勉強ができないことをバカにされていた。


 そんな俺が同じ大学に進学できたんだ。堂々と胸を張れる。早く入学式にならないかと楽しみで仕方なかった。


 入学式当日、天気は快晴でまだ桜が散っていなかったからキャンパス内の桜並木の桜を鑑賞しながら開場されるのを待っていた。


「おいおい、あそこの人見ろよ。すっごい美人じゃないか!」


 ふとそんな声がしたのでそちらの方に目を向けると物凄い美人の人が歩いていた。茶髪でミディアムヘア。遠くからでもメイクもばっちり決まっていて出るとこもしっかり出てるのが分かる。そして何よりも滲み出てる知性の高さ。見惚れない男なんていないんじゃないかというほどの美人だった。


「なんでもあの人、去年のミスコン一位だった人だってよ!名前は藤代双葉だって!」


 なんだって!あれが双葉!?そんなはずがない!双葉は高校の時はメガネにいつも三つ編みのおさげで地味だと言われてたのに……。


「俺、声かけてみるわ!藤代せんぱーい!」


 その声に反応してこちらを見た美人。反応したのを見ればあれは双葉だということが分かる。俺はショックだった。こちらの方を見ていたのでなぜかバレたらマズいと思って顔を背けてしまった。


 入学式が始まり、式典が進んでいく中、俺はこの一年で変わった双葉のことを考えていた。ずっと一緒に育ってきて、どちらかというと俺が双葉を引っ張ってきたという気でいた。でも実際、見た目は地味だけど友達は多いしコミュ力もある。勉強も双葉の方ができるから俺は彼女に劣等感を感じていた。


 そんな彼女と肩を並べたいという思いで必死になって勉強してみれば、ミスコン一位?しかもどう見ても、誰から見ても明らかに美人。さぞかしモテるだろう。どう考えてもリア充ってやつだ。そんな彼女と俺が一緒にいるなんて、そんなことできないと思ってしまった。俺と双葉じゃ釣り合わない、そう思ってしまったんだ。


 それからは俺の地味なキャンパスライフが始まった。双葉に俺だとバレないように帽子を目深に被り、わざと前髪を伸ばして伊達メガネをしてどう見ても陰キャな見た目をして目立たないようにした。


 それと地元と言っても俺達の住んでるところは車がないと移動も不便な田舎だ。だから最初は双葉のように大学付近でアパートでも借りて住む計画を立てていたけど、双葉の友達に俺のような人間がいるって分かってしまうと彼女のリア充生活を壊してしまうんじゃないかと思ってしまい、免許をとって家から通うことにした。


遅すぎたんだ——


 俺が高校の時から真面目に勉強して、双葉と同じ大学に進んでいればこうはならなかったんだ。たった一年、だけどこの一年で俺と双葉との間には大きな溝ができてしまっていたことを今さら後悔することとなった。


 なんのために大学に進学したのか分からない状態で時間だけは過ぎていき、迎えた夏休み。俺は次に進むためにもバイトをして何か打ち込めるものを探そうという気持ちになれていた。そんな時だった。


『夏休み、こっちに帰ってくるの?』


 双葉からのメッセージだった。そういえば一浪している時から途中で全く返事をしていなかったことに気づいた。


『いや、帰ってくるつもりはないよ。大学楽しんでそうでよかったじゃん』


 まだ東京の大学で遊んでいる風に装って返事を返してスマホをベッドに放り投げた。


 あーあ、俺って何やってんだろうな。同じ学部だからキャンパス内で何度も双葉を見かけた。弾けるような笑顔。周囲を惹きつける美貌。男が息を呑んでしまうスタイル。


 なんで気づかなかったんだろうな。彼女の魅力なんて一番近くにいた俺が分かってないといけなかったのに……。


 考え込んでいると、いきなりドアがバンと音を立てて開いた。そこには涙を流しながらこちらを見ていた双葉がいた。


「嘘つき!なんで、なんで黙ってたの!?」


「何の話だよ?」


「ホントは東京なんて行ってないじゃん!しかも受験に間に合わなかったって完全に私のせいじゃん!」


 そっちの話か……。それは別にどうでもいいんだよな。本当は双葉と同じ大学に行きたかったというだけだから。


「それに一浪して同じ大学に入ったことも!声かけてくれたらいいじゃん!」


「受験に間に合わなかったっていうのは双葉に負担をかけさせたくなかったから。大学で声をかけなかったのは双葉が充実した生活を送っていたから俺みたいな奴が声かけるのもなって思ったからだよ」


「奏多はなんで私を優先するの!?私そんなの望んでない!」


 望んでない、か。かなりショックな言葉だ。けっこう心にくるな。


「私が見た目を変えたのは東京っておしゃれな人が集まる場所でしょ?東京へ遊びに行っても奏多が恥ずかしくないように、隣に立っても見劣りしないようにしなきゃって思ったからなの!それに大学だって奏多と一緒にいないだけでこんなに寂しいんだって思いしながら過ごしてるんだよ!?」


 ん?何かちょっと変わってきたぞ?


「私は奏多と離れて一緒にいたいって強く思うようになったの!そのためには奏多と釣り合うようにならないとって思って頑張ってきたの!それなのに!奏多は私のために自分を犠牲にするなんてそんなのおかしいよ!」


「双葉……」


「ホントバカだよね。一番近くにいたのに奏多のこと全然分かってなかったんだなって」


 俺はドアの前に立っている双葉の手をとってベッドに腰掛けさせた。


「お互い様ってことだったんだな。俺もさっきそう思ってた。一番近くにいてお互い気づいてなかったんだな」


 俺も双葉の横に腰掛けて双葉の方を向いて涙を拭ってやった。


「一年遅れの俺に双葉と肩を並べられるチャンスはあるか?」


「むしろ一年以上遅れで真実を知った私に奏多への罪滅ぼしのチャンスはあるの?」


 こうやって考えると俺達は似た者同士だ。


「私、一年休学する。それで奏多と一緒に卒業する。奏多と一緒にずっといたい。だからこの一年でその陰キャな見た目をカッコよくして。そうしたら私と肩を並べられるよ」


「じゃあ俺は俺で見た目とかそういうのも変えていく。双葉は休学する一年で俺とずっと一緒にいてくれ。もちろん自己研鑽するのは応援する。一緒にいてくれるだけでいい。そうしたら俺への罪滅ぼしになるぞ」


「なんか私の条件、易しすぎない?」


「何言ってるんだよ。一年ってでかいんだぞ?それを俺のためだけに休学するんだ。十分な罪滅ぼしだろ?なんだったら別に休学なんてしなくてもいいんだぞ?それくらい一年というのはでかいんだから」


「ううん、その一年の重みを知りたい。だから休学する。その間に自分磨きはちゃんとする。それで復学した時に奏多の彼女ですって胸を張って言いたい」


「俺も双葉の彼氏ですって言えるように頑張らないとな。ということで俺達付き合うってことでいいのかな?」


「そこはちゃんとしようよ?流れで付き合いましたってのは嫌だな」


 双葉が俺の方に寄りかかってくる。そのまま頭を肩の上に乗せてきた。それに対して俺は双葉の方に向き直って抱きしめた。


「俺は双葉のことが好きだ。だから付き合ってください」


 双葉も俺の胸に顔を埋めて俺に抱き着いた。


「私も奏多のことが大好きです。こんな私ですがよろしくお願いします」


 お互い顔を向け合い、口づけを交わした。

あとがき


奏多妹

「ふー、やっとくっついたかあの二人。一年遅すぎるのよ!」


 今回の双葉へのナイスアシストは奏多の妹のおかげでした。


おわり



お読みいただきありがとうございました。

感想をいただけると幸いです。

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