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ぷりんぷりんエルフの嫁さがし

作者: 木里 いつき
掲載日:2025/03/09


「なぁ、リーフェル、お前もうええ加減にせぇよ! 婚姻適齢期、とうに過ぎとるやんけ!」


エルフの里の長老が、でっかい木の下で腕組んでエルフなまりでわめいています。 

目の前には、リーフェル

――通称「ぷりんぷりんエルフ」が、ぷよんぷよんの体を揺らして座っていました。


エルフといったら細身で優雅なのが普通なのに、このリーフェル、美食を追い求めすぎて体がパッツパツ。

服のボタンが今にも弾け飛びそうな風体です。



「なんや、長老! ワイ、まだまだ若いっちゅーねん! 500歳なんてエルフやったら若造やろ!」



「若造!? お前、里の食料庫を空っぽにして500年やぞ! もうこの際、短命種でもええさかい、ぎょーさん食わしてくれる嫁さん見つけてこんかい!」


「そりゃあんまりや! ワイの料理の腕、里一番やのに!」


「そやから言うとるやろ。ほれ、出てけ!」


かくして、リーフェルは里を追い出されてしまいました。

でっかい荷物を背負って、ぷりんぷりんのお尻を揺らしながら森を出る姿は、まるで歩く巨大プリン。


「しゃーないなぁ。ワイのぷりんぷりんボディを認めてくれる嫁、どこかで探したるわ!」




運良く、リーフェルの料理の腕が人間の王城で噂になって、王城のシェフに就職できました。

よかったね。リーフェルくん。


「ほぉ~、このクリームシチュー、絶品やな!」

「リーフェル殿のアップルパイ、最高でござる!」


王様も騎士団もみな揃って大絶賛します。

けれど、肝心の嫁探しはまるで進みません。

王城勤めの連中は、眉目秀麗な美男美女が好みで、リーフェルのぷりんぷりんボディは完全に圏外だったのです。


「なぁ、メイドはん、ワイとデートせえへん?」

「いや、リーフェル、君…ちょっとその…ぷりんぷりんすぎるからさ…」

「なんやて! このぷりんぷりんがええとこやろが!」


何年か経っても嫁候補ゼロ。

リーフェル、とうとう焦りだします。


「ワイ、ほんまにこのまま独り身で終わるんか…? そうや、気分転換に森で食材でも探すか!」


森へ向かう道すがら、リーフェルは荷物から干し肉を取り出してモグモグ。

リーフェルはどこにいても食いしん坊。

ぷりんぷりんの身体を変える気は1ミリもありません。


「うまいなぁ…ワイの料理の腕、やっぱ最高や。こんな才能あるのに、なんで嫁できへんのやろ…」 


ぷりんぷりんのお腹をさすりながら、リーフェルは森の奥へ進みます。



 

森の奥で、リーフェルは木の上でリンゴを丸かじりするちっちゃい精霊を見つけました。

金髪で羽がキラキラ光ってて、まるで宝石みたいだ!

とリーフェルは一目惚れ。



「なんや、あのちっこい子! めっちゃうまそうに食っとるやん!」

美味しそうに食べる姿に喋りかけたい衝動を抑えきれず、リーフェルが叫びました。


「おーい! そこのおチビちゃん!」

妖精がビクッとしてこっちを見ます。

怖がられてるよ、リーフェルくん!


「なん!? あんた、なんやそのデカか体! プリンみたいやんね!」

バリバリの「精霊なまり」で返してきたその声に、リーフェルは目を丸くしました。

プリンみたいな身体はリーフェルの誇りなのです。


しかし、この子もぷりんぷりんのこの身体で逃げられてしまうかもしれない。

そう考えたリーフェルはすかさず餌付けしようと考えました。



「 ワイはリーフェル! ほれ、これ食べてみぃ!」


リーフェルがポケットから取り出したのは、手作りクッキー。

妖精さんは、目をキラキラさせて飛びついてきました。



「うわっ! なんやこれ! バリうまかー! あんた、料理上手かね!」


餌付けは成功したようで周りに目もくれずお菓子にがっつく妖精さん。


「せやろ? ワイ、王城のシェフやで!」

「そうなん!? すごかねぇ。 もっとくれん?」


そうしてお菓子をあげ、教えてくれた妖精の名前はティナという事を教えてもらいました。

リーフェルは可愛いティナにクッキーをあげて、ついでに自己アピールを試みます。


「なぁ、ティナ、ワイのことどう思う?」

「プリンみたいにデカかけど…ええ奴やと思う。あんたのこと、ちょっとだけなら、すいとーよ。」


「なんやて!? ワイもや! ティナ、ちっちゃくて可愛いな!」

「そげな調子いいことばっか。ほんなら、もう一個クッキーくれんね!一緒にいてあげるたい」


二人は即座に意気投合(?)。

ティナが職場のキッチンに来るようになって、リーフェルはお菓子で餌付けしまくる毎日を送ります。




「なぁ、リーフェル、このタルト、めっちゃうまかね!」

「せやろ? ティナのために作ったんやで!」

「あんた、あたいのこと好きっちゃなか?」


ティナがからかうと、冗談の通じないリーフェルが満面の笑みで肯定しました。


「当たり前や! ティナ、ワイの恋人になってくれ!」

「よかよ! でも毎日お菓子作ってくれんと!」


案外ノリの良い妖精はお菓子目当てでお付き合いすることにしたようです。

このふたり、大丈夫かなあ。



リーフェルとティナは恋人同士になって、森で初デート。

 

「なぁ、ティナ、どこ行く?」

「あたい、川の近くが好きやけん、そこ行こう!」


川辺に着くと、ティナが羽をパタパタさせて水面に飛び跳ねます。

リーフェルはでっかいおにぎりを取り出してモグモグ。可愛いティナを見て微笑んでいます。


「うまいなぁ…ティナも食うか?」

「うん! あんたのおにぎり、でかかけど美味しかもん!」


ティナがちっちゃい手でおにぎりを頬張る姿に、リーフェル、ニヤニヤ。

里のエルフが逃げ出す笑みです。

でもティナは気にしません。


「なぁ、ティナ、ワイのぷりんぷりんボディ、どう思う?」


リーフェルは常々自分のコンプレックス兼チャームポイントをティナにどう思われているか気にしていたようですね。

おずおずとティナに尋ねました。


「最初はびっくりしたけど…なんか安心するっちゃん。あったかそうやし!」

「なんやそれ。 んでも、めっちゃ嬉しいわ!」


ティナは最初こそびっくりしていたようですが

彼の温かさが気に入ったようです。

それは温度のことではなく、きっとリーフェルの心が綺麗だからですね。

二人は川辺で笑い合います。


そしてティナが突然言いました。


「なぁ、リーフェル、あんたの料理、毎日食いたかね。ずっと一緒にいたいっちゃけど。」


「ティナ…ワイもや! お前とずっとおって、毎日お菓子作ったる!」

「ほんなら約束やね! 破ったら許さんけん!」


「せやな! ワイ、ティナのこと大事にするで!」


2人は食欲の前に愛を誓い合いました。

なんとも締まらない愛の言葉。


でもそれがふたりにはお似合いで、ふたりだけのロマンチックな会話なのです。





ある日、ティナがリーフェルのぷりんぷりんボディをじーっと見て言いました。


「なぁ、リーフェル、あんたのその体、実はすごかっちゃなかと?」

「なんやて? ただ太っとるだけやろ?」

「ちゃうよ! 妖精の特別な目で見たら分かるっちゃん。あんた、めっちゃ生命エネルギー溜め込んどる! エルフやのに、さらに寿命が伸びる体やね!」


リーフェルは目を丸くしました。

ただ食べているだけなのに自分がそんな特別になっているなんて、と感動すら覚えているようです。


「マジで!? ワイ、美食追い求めたおかげで長生きできるんか!?ティナとほんまの意味で一緒に生きれるんか?!」


リーフェルは大喜び。

長命種とは言え寿命の概念がない妖精と一緒にいることに常々不安を抱いていたリーフェルでしたが、ようやく肩の荷が下りた、そんな顔をしています。


「そやね! あんた、あたいと一緒にいたら妖精パワーでもっと生きれるとよ。」

「!! ティナ、ずっと、一生、一緒にいてくれるか?結婚してください。」


「当たり前やん!。あんたの料理、毎日食べさせんね。」



こうして、リーフェルとティナは永遠の愛を誓い合います。

ティナの妖精パワーで

リーフェルの長かった寿命が更に、どんどん伸びて、二人は末永く幸せに暮らすことに。



ある日、リーフェルが里に帰ってその話をしたら、長老が目を輝かせて叫びました。


「なんやて! たくさん食うたら長生きできるんか! リーフェル、お前えらいこっちゃ!えらいことを発見してくれたぞ!おおきにな!!」


「せやろ? ワイのぷりんぷりん、見直したか?」


「見直したで! お前、里の英雄や!」


その日から、里の若いエルフたちは「ぷりんぷりんにならな長生きできんで!」と、みんなでたくさん食べまくるようになりました。


「なぁ、お前、もっと食え! リーフェル先輩みたいにならな!」

「せやな! ぷりんぷりんが正義や!」




そして森の片隅では、リーフェルとティナが仲良く暮らす姿がいつまでも続いています。


「なぁ、ティナ、ワイの人生、ぷりんぷりんでよかったな」


「そやね。あんたのお菓子でワイ…じゃなくて、あたい、幸せっちゃん!」




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