確殺!暗殺ちゃん!
帝国と王国っていつも仲悪いよね。
追伸 ミスって短編にしちゃった。まぁ、これは導入編ということで。
深い深い地下室。白衣を着た一人の男が、薬品や器具が乱立した部屋の中で雄叫びをあげていた。
「ブフォフォフォwwwついに完成したぞ!」
男の前には大きな水槽がいくつも並べられており、透明な液体が詰められた中には人型の何かが入っている。
脂汗のついた額を拭いながら、下卑た笑いを浮かべる。
「長かった…王国から兵器を作れと命令されてはや数十年……。こんな地下深くに幽閉しやがって!まぁ、おかげでいいもんができたがな。ブフォフォフォwww」
もう汗が染み込み異様な匂いを放つタオルでニキビの多い顔を拭う。最初こそは、自分を閉じ込めた王国に腹がたった。だが、今はそんな気持ちは微塵もない。今はただ満足感に満たされていた。
「……まぁ、拙者の趣味も全開なんだけどね!ブフォ!」
美しい出来栄えにニタニタしながら満足げに眺めていると、長年音沙汰がなかった開けることもできない後ろの扉がガタガタ音を立て始めた。
男は特に驚いた様子もなく、スカした顔で、
「ふっ。まーた、研究結果の横取りか。いいとこ取りでいいご身分だな」
そう呟いていると、男が開けようとしてもうんともすんとも言わなかった扉が開いた。パラパラとサビの粒を落とした扉を潜って数人が入ってきた。地下室に人が住めるとは思えない程の悪臭に顔を顰めた。
そいつらは、数十年前に見た王国の職員ーーかと思いきや入ってきた人々はまるっきり違った。
そいつらは、軍服のような衣装を着ており王国が好む衣装とはまるっきり異なる。
むしろ、毛嫌いしていた帝国の衣装だった。
そのことを数秒経って理解した男はしばらく呆然したが、その後声を張り上げた。
「お、お主達!なにもんだ⁉︎」
「私たちはカンブリア帝国の処理班。あなた…Dr、エンデュランス…でしたっけ?戦争に負けたあなたたちオルドビス王国の兵器を廃棄する任務を命じられたものです」
「……ま、負けただと……?」
男が震える声をなんとか絞り出し事態を少し理解する。負けた?オルドビス王国が?なら、自分は一体なんのために研究していたのだろう。ぐるぐるを目まぐるしく思考が加速し男は虚無の領域へと誘う。
「そう、だからもう二度と歯向かはないように不安の芽を摘んでおくのですよ」
帝国兵の言葉を男はもう聞いていなかった。口の中で自分の意義をぶつぶつと口の中で反芻しており、目は虚だった。これまで決して愛国家ではなかったが、どんな形であれ頼られることが嬉しかったのだ。
が、もう男が頑張る意義がなくなってしまったのだ。
膝を抱えて座り込んだ男に帝国兵は近づき起こし連れ去ろうとした。腕を持ち上げられその瞬間
「拙者に!触るな!」
男は暴れ出しせめてもの抵抗する。だが数十年運動をしていない男の体力では力では当然負け、その場に押さえつけられる。勢いよく地面に叩きつけられ胸に鈍い痛みが広がった。
「うぅ……ぐすっぐじゅっ…」
とうとう目から涙溢れてきてしまった。あまりの情けなさに涙が出てきた。数十年…その多大なる時間を浪費してきたのに、用済みとなって消されるというのか…やるせない気持ちでいっぱいになった。だが、敵兵にこんなみっともない姿を晒すわけにはいかない。涙を拭いてもも次の涙予備軍がとめどなくあふれ、収拾がつかなくなった。
そんな滂沱の涙を流す男を睥睨しながら、帝国兵は冷たい声で
「……ほら、行くぞ」
と、持ち上げる。もう男は抵抗しないだろうとたかを括っていたが、最後の最後で男は力を振り絞り帝国兵を跳ね除ける。そして、そのまま、奥の水槽の奥へと走っていく。顔は汗と涙でぐちゃぐちゃで、目も当てられないくらいだった。
「……ふ、ふふふ、ふははは!ならばテメェらを巻き添えにその〝芽〟とやらを潰しといてやるよ!」
そういうといなや、男は汗でびしょびしょに濡れた白衣から何か小さい箱のようなものを取り出した。
その箱は真ん中に大きな赤いボタンと上部には短いアンテナ。黄色と黒の色をしているそれは、危険なものを示唆しているもので、ボタンには透明のカバーが付いていた。
「ふふっ、ロマンで自爆装置をつけたがまさか使う時が来るなんてな……」
自重するようにつぶやいた男の小さな声だったが、数人の帝国兵が男が何をしようとしているか分かったらしい。何か声を張り上げながらこっちへと走ってくる。
だがもう遅い。ある程度ある距離によりもう間に合わない。
男はつい先ほどできたばっかりの研究の成果は頭にはなかった…
透明なカバーケースを上に持ち上げ、赤色のボタンが露わになる。
そして、躊躇うことなく、カチッという卵の殻を潰すような音を立ててボタンを押し込んだ。
………。
……。
…。
帝国兵と男の間に静かな時間が訪れまるで時が止まったかのように固まった。
ーーやがて、一人の帝国兵が男に追いついた。そして取り押さえる。
なぜ爆発しないのか混乱している男はやがて、不発に終わったことを悟ると「チクショーーッ!!」と声を上げた。その直後、
「⁉︎」
男の正面の床が膨れ上がったかと思ったその刹那、耳をつんざくような轟音が轟き、研究室は爆炎と閃光が包み込み、支配する。
その日、戦争に敗北したオルドビス王国はその巨大な爆発によってトドメを刺され、滅亡したそうな。
続き→
ワケあって削除しました






