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幸運値ゼロの不幸人が異世界へ行きたい理由 ~どちゃくそ絶望人生で詰んだからリスタート!~

作者: むんばす


「はぁ~。異世界に行きたいわ~」



 そう出来もしないことを口にした俺は、今の世界に絶望している。


 なぜって?


 そりぁいろいろあるさ。


 たとえば人間関係だ。


 俺には家族もいなければ、友達もいない、恋人は都市伝説だと思っている。


 まず家族だが、あの人たちはいわゆる放任主義。飯を食うだけの金を置いて、毎日仕事に出ていたんだ。


 そんで、仕事の帰りに轢かれてお陀仏。




 友達は……いたことがない。


 友達ってなに? 美味しいの? スパイス効いてる?


 いや、冗談でいってるわけではなく、人はみんなスパイスの効いた言葉を浴びせてくるんだ。


 やれ「何のために生きてるんだ」とか「顔をみせるな」だとか。


 な? スパイス効いてるだろ? それを仕事中に言ってくるんだぜ?


 あとは俺の身体に火をつけたり水をかけたり電気をながしてくる。


 それを友達と呼ばないなら、俺は友達を知らない。


 まあ原因が俺にあるのは分かっているんだ。



 今思えば両親が亡くなってからかな。自分は不幸なやつだと思っていたんだ。事実不幸だったんだが……


 そんで、ずっと下を向いていたのが良くなかった。


 バカみたいに壁にぶつかって、反動で転んだら厳つい兄ちゃんにぶつかって、ボコボコにされたんだ。


 顔が倍くらい膨れ上がってたね。



 あの顔で「ゴブリンでーす」とでもいって見世物にされたほうが今より稼げたかな? いやさすがにな。


 まあ、そんなこんなで不幸続きの男に近寄ろうだなんて酔狂なやつはおらず、友達はできなかった。



 それでも努力はしたんだ。


 困っている人がいればなるだけ助けた。


 怪訝な顔をして逃げられちまうが。



 これが俺の人間関係だ。






 恋人?




 …………………………皆まで言うな。





 ちょっと泣いていい?






 ごめんよ。取り乱してしまった。


 取り乱してないことの方が珍しい人生だけども。




 ……もう一回泣いていい?




 異世界へ行きたい理由は他にもある。


 金だ。



 親がいなくなってからというもの、金がなくて食事が貧相になり痩せ細ったんだ。



 毎日、硬いパンの切れ端とドブみたいなスープ。



 通称「アンハッピーセット」



 嘘をついた。


 通称ではない。俺一人がそう呼んでいるだけだ。



 そう言うわけでガリガリの俺は力仕事ができず、面接では「血色が悪い」「覇気がないね」なんて言われて落とされる。


 ガリガリのガリを想像してくれ。


 イメージできた?


 そいつについた僅かな肉をそぎ落としたが俺だ。


 誰も欲しがらないよなそんなやつ。俺だっていらない。


 職につけないから、金が手に入らない。


 行き着く先は「アンハッピーセット」だ。



 アンハッピーセットを買う金はあるのかって?


 物拾いさ。


 落ちている物を拾って換金する。たまにいるだろ? そう言うやつ。


 でもよ、怪我して右足が使い物にならなくなってからは少ない金が更に少なくなっちまった。



 だからさ。


 異世界に行って人生をやり直したいんだ。


 聞いた話じゃ、異世界に行けばチートを手に入れてやりたい放題だそうじゃないか。


 悪い体質も全部なくなって。


 楽して最強スローライフだそうだ。


 まさに理想だよな。五メートル歩いても息切れしない身体なんて。


 スローライフってのもいい。心配ごとはなく毎日のルーティーンをこなせば旨い飯が食えるんだ。


 命をかけて物拾いをしなくてすむ。




 場合によっては嫁さんがいっぱいのハーレムができるらしい。



 でも、嫁さんは一人でいいか。嫁さんのために働いて嫁さんのために旨いもんを調達する。それでいい。


 ハイハイ、妄想だよ! 妄想!



 でもよ、俺の唯一自慢できる技「盗み聞き」で手に入れた情報だ間違いない。



 ……



 …………分かってるよ。


 異世界にいった結果が分かるはずないよな。


 結果を知るやつは異世界にいるんだもの。


 仮にそんなに楽しい生活が出来てるやつがいるとして、戻ってくるはずもない。


 俺と同じ。妄想さ。



 でもよ、俺の人生詰んでるじゃん?


 夢くらいみても良いだろ?





 あー、ここ一週間「アンハッピーセット」すら食えていないから腹が減った。


 寒い時期に雨が続いたのも良くなかった。寒気が止まらない。


 吐きそうだが吐くようなものは胃袋に入っていないから大丈夫だ。


 視界が歪む。


 世界が歪む。





 さようなら俺の世界。









「なんと不幸な」


 真っ白で何にもない空間に緑神美しい女性が一人。俺をみている。


 痩せてはいるが俺みたいなガリガリって感じじゃない。


 いい痩せ具合だ。


 見惚れていると喋りだしたぞ。

 


「幸運値が著しく低く設定されていますね……前任者が適当な仕事をしたようです」


 俺に話しかけているのか? 前任者? てかここはどこ?


「この場合に神様マニュアルには【当該人物にチートを与えて異世界転生させること】とあります」


 異世界? いま異世界って言った?


「言いましたとも」


 あれ言葉に出してないのに


「思考を読むなど容易です。魂だけの存在が声を出すことができないので意志疎通に必須です」


 ほんとだ、身体がない。

 ってそれより異世界だ異世界!


 異世界ってどんなところですか?


「いろいろあります。どんなところが良いですか?」


 元の世界真逆がいい!


「と言いますと?」




 両親を轢き殺した魔物がいなくて。



 俺をいじめた魔法使いもいない。



 金を稼ぐために薬草とか冒険者の遺品を拾わなくてもいい。





 そんな世界がいい!



「なるほど、であれば――――地球の日本という国に送りましょう」



 あ、ありがてぇ!



「では、いってらっしゃい。不幸な人」



ノリと勢いと思い付きで書きました!


軽率っ! 軽率にご評価ください!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 地球から異世界ではなく異世界から地球という設定に新鮮さを感じました。コミカルな感じで面白かったです。
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