表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

喰われ喰われて成り上がる〜《捕食再誕》スキルで食物連鎖の底辺から頂点へ〜

作者: 魁星

 


 私は、死にました。


 よくある転生トラックで……ではなく、通学中の電車に、踏切でアクセルとブレーキを間違えた車が突っ込んできたから。この時、ちょうど私の立っていたあたりに直撃して、即死した……らしいです。


 というのも、今私は、ちょっとよくわからない状態にいるんです。これらの情報はまぁ、なんとなくインプットされてたっぽいんですが……この状況に関しては、全くもって理解が及びません。



 ……私、イモムシに転生したっぽいです。



 それでまぁ、スキルーとか、ステータスーとか、頭の中で唱え続けたんですけど……いやまさか、あるとは思いませんでした。



 《捕食再誕》

 捕食されたのち、捕食者を親として捕食した種族として生まれ変わる。

 この時、所持していた記憶、スキル等はすべて受け継ぐ。



 控えめに言ってぶっ壊れですよね? というかなんですか《捕食再誕》って。喰われろってことですか。


 ……まぁ、出だしが食物連鎖のほぼ最底辺であるイモムシですからね……喰って喰われてならぬ、喰われ喰われてですか……


 深く考えても結論は出ません。とりあえず目の前の葉っぱを食べます。葉っぱ美味しい葉っぱ美味しい。


 ……ふと、周囲が暗く……なんか目の前にでっかい虫みたいなのいますね……これもしかして蜘m────



 ◆◇◆◇◆◇



 蜘蛛でした。


 はい、再誕しました。蜘蛛の幼体です。つい30分くらい前に生まれました。


 この体、なんか結構素早く動くんですよね。前世……あいや、前前世では、私蜘蛛とか超苦手だったんですけど、こうしてみるとちょっと可愛く思えてくるの不思議ですよね〜。


 さて、ここで新たに得たスキルですが



 《糸生成》

 蜘蛛糸を作り出す。性質はある程度自由に決められる。


 《糸操作》

 蜘蛛糸を少しだけ操れる。ただし、操れるのは自分で生成した蜘蛛糸のみ。



 まぁ、蜘蛛っぽいですね。これ、うまいこと使えば結構無双できるのでわああああああなんかつままれて飛んでええええええ────



 ◆◇◆◇◆◇



 はい、今度は小鳥です。


 どうやらあの時、鳥に喰われたようですね。まさか私の蜘蛛生が1時間足らずで終わるとは思ってもみませんでした。


 ちなみにスキルは



 《飛行》

 飛べる。翼が無くとも、マナを消費して飛べる。


 《歌唱》

 歌う。鳥の場合は普通に鳴く。



 《飛行》はともかく、《歌唱》要ります?


 とりあえず、数ヶ月は雛鳥生活を謳歌しまして……


 いざ、無限の蒼穹へ!!!


 ……案外あっさりと飛べました。いやー、空を飛ぶって気持ちいいですねー。なんか自由って感じがします。


 このおお〜ぞらに〜つばさをひろげ〜♪


 口からはぴよぴよ鳴くだけですが、やっぱ歌いたくなってくるものですね。ほら、今私と並走しているおっきな鳥も……あれこれもしかしてハヤブs────



 ◆◇◆◇◆◇



 猛禽ンンンン!!!


 というわけで、猛禽類もといハヤブサに生まれ変わりました。雛鳥生活はようわからん崖の上だったのでめちゃ怖かったです。でも肉美味しい。


 今世のスキルは



 《アクロバット》

 アクロバット飛行ができる。


 《探索》

 目的のものを探し出しやすくなる。



 なかなかに優秀です。

 なんだかんだで《捕食再誕》生活(?)を謳歌してますね、私。


 雛鳥を卒業した私は、天空を翔けています。めっちゃ楽しいです。


 ……ちょっと疲れたので休憩しましょう。ちょうどいい感じの湖を見つけたので、ここのほとりで水分補給しつつ、羽休めと洒落込みます。


 はふぅ〜、空もいいですけど、地上もまた乙なものですね〜。思わずコロンと寝転がって……なんか、すぐそこの茂みから、2つのお目目が覗いてるんですが。


 うわっ、飛びかかってきた!?


 急な事態に反応できず、捉えられてしまいました。狼ですね。


 ……狼って、ハヤブサ食べましたっけ?


 うわぁ、大きく口が開いて……あっまっていたくしないd────



 ◆◇◆◇◆◇



 狼です。


 仔狼です。


 毛玉です。


 やばいです。


 何がやばいって、兄弟たちがコロコロ毛玉で可愛すぎるんです。やばいです。萌死しそうです。語彙はすでに死んでいます。


 もう何がやばいって、狩りから戻ってきた親の元に、ポテポテと歩いていくんですよ。もうやばいです。前前前前前世で動物の動画をみて悶えていた友人の気持ちが今痛いほどわかります。


 控えめに言って天使なんですよ。


 あ、スキルですが



 《咆哮》

 吠える。


 《俊足》

 足がとても早くなる。



 まぁまぁいい感じですね。


 そんなことはどうでもいいとして、兄弟が天使すぎてもうほんとやば──


 ドガァン!!


 ……巣穴の天井が急に崩れた!?


 ……あ、どうもー。もしかしなくてもお腹空かせてますね、クマさん。


 クマは本来、植物性に偏った雑食なんですけど、どうやらこのクマは、なりふり構っていられないくらいには空腹のようですね。


 私は食べていいから、兄弟は!! 兄弟だけは!!!


 ……あ、私から食べるんですねうわあああ────



 ◆◇◆◇◆◇



 クマです。


 木の実美味しいです。


 やっぱり、よほど切羽詰まってなかったり、楽に狩れるって学ばなければ、クマって基本肉食べないんですよね。あぁ、前前世で食べた肉の味が恋しい……


 とか言いつつ木の実食べるんですけど。だってこっちも美味しいですから。ほんと、森は恵みがいっぱいです。


 ちなみに今世で得たスキルはこれです。



 《剛力》

 力が強くなる。



 シンプルイズベスト。わかりやすくていいですね。


 とりあえず今日も木の実を探しに──


 バシュッ


 ──ん? あれ、足が動かな……うわ、罠にかかりましたか。こりゃいけない。


 とは言っても、どうみても今の私の力では取れそうにないですね。ですが、罠ということは仕掛けたのは人間。つまりこのままいけば人間に喰わ(捕食さ)れると。


 ということは、来世は人間の可能性が高くなります。


 いやっほう!!


 さぁ、早く私を食べるのだ人間!! ようやく人間になれ……おっ、きましたねきましたね。さぁ、私をこr────



 ◆◇◆◇◆◇



 ついにやりました。人間です!!!


 えぇ、えぇ。やってやりましたよ。人間に生まれました。


 今世は人間の女の子。どうやら、他所から今住む村に移住してきた夫婦の子のようです。


 えー、その夫婦、どうやら『勇者』だの『賢者』だの呼ばれてたらしくてですね……まぁつまり何が言いたいのかというと。



 《叡智》

 魔法・魔術に関する圧倒的な才能。

 《鑑定》《マナ操作》《マナ効率化》《魔法・魔術理解》《多重詠唱》《無詠唱》のスキルを内包する。


 《勇者》

 戦闘に関する圧倒的な才能。

 《武器術・極》《回避術・極》《防御術・極》《軍略》《鼓舞》《思考加速》《身体強化》のスキルを内包する。



 はい、チート乙。

 正直、こんなスキルを手に入れられるとは思いもしませんでした。スキルって遺伝するんですね。


 えーと、とりあえず現時点のスキルを並べると……



 《捕食再誕》《糸生成》《糸操作》《飛行》《歌唱》《アクロバット》《探索》《咆哮》《俊足》《剛力》《叡智》《勇者》



 の12個。今世の母曰く、人間の平均所持スキル数は、どうやら3〜7個。私の12個はだいぶ多い方になるそうです。


 ちなみに母の鑑定は、《叡智》をうまいこと使って回避しました。後手でこそっと鑑定妨害魔術を発動させてました。


 母はしきりに首を傾げてましたね。まぁ『私が魔術を使えるはずがない』っていう先入観ありきの作戦でしたが、この時はうまくいきました。


 ということで私5歳(人間生)、事件が起こります。


 曰く、『邪龍が降りてきて、生贄を要求した』とか。


 生贄です。


 生贄……イコール捕食チャンス!!


 これを逃す手はないと、私は話を聞いて真っ先に生贄に立候補しました。周囲の大人はそれはもう大層驚いてました。まぁそりゃそうですよね。


 大人たちは懇々と私に『生贄』について説明して、暗に止めるよう諭してきましたが、残念ながら私はそれらを知った上で立候補してるのですから、無駄なことです。


 あ、両親の説得はそれはもうスムーズにいきました。


 なんでかって? そりゃ、両親の秘密を私が握っていたからですよ。


 うちの両親、2人ともハーレム願望があったようで、お互いの知らないところで愛妾をたくさん囲ってたんです。まぁそれを知ったのは偶然でしたが。


 それで、どうやらお互いにもう気持ちはないらしく、離れたがってたところに私が生まれてしまったと。それで離れるにも離れられず……でも今回、生贄の話が出てきて、どうやら2人とも内心で私を差し出すことを考慮に入れていたようです。


 とんでもないクズ親でした。


 まぁそんな親元から離れられる上に龍になれるとしたら、これを逃す手はないですね。




 ということで現在、生贄の祭壇の上に1人ポツンと立っています。そしてちょうど目の前に龍が降りてきました。黒光りする鱗に巨大な体躯。大きさは目算ですが、電車6両分くらいはありそうですね。


 私の姿を認めた龍は、その巨大なアギトを開けて……私を一飲みに────



 ◆◇◆◇◆◇



 いえーい龍!!!


 私の華麗なる龍生の始まりです!!!


 邪龍、もとい黒龍になりました。すごいです。私まだ子供なんですが、それでも大きさが物置小屋2つ分くらいはあります。しかも黒い火が吹けるんですよ。すごくないですか?


 そんな私の今世のスキルが、こちら!



 《黒龍》

 龍種の頂点、黒龍であることの証明。

 《飛翔》《威圧》《龍鱗》《龍魔法》《黒炎》《ブレス》《半不死》のスキルを内包する。



 ヒャッホウチートだぁ!!!


 《飛翔》《威圧》《ブレス》はいいとして、他の内包スキルについては



 《龍鱗》

 魔法・魔術に対する圧倒的な防御力をもつ。詠唱節18節以下の魔法・魔術は完全無効化する。


 《龍魔法》

 龍種のみが使える魔法。主に種ごとに司る属性によって変化する。

 黒龍:時空間


 《黒炎》

 呪いの炎を発生させる。このスキルによって造られた炎は、解呪系魔法・魔術でのみ消火できる。


 《半不死》

 外的要因以外で死亡しない。



 やばいですよ。これマジで。例えば、詠唱節18節って言ったら、おおよそ人間が使える限界レベルの魔術ですからね。それ以上は大規模な儀式魔術になります。


 まぁ、私の場合は《叡智》のおかげで儀式魔術でも容易に使えるんですが。

 うまいこと術式を組めば、変身魔術とかも作れそうなんですよね。



 …………さて。


 お気づきかもしれませんが、黒龍って、食物連鎖……というよりは世界の頂点みたいな存在なわけですね。つまり、黒龍を捕食する生物なんていないわけですよ。外世界ではその限りではないかもしれないですが。


 ということは、私の《捕食再誕》ライフはここで終わり、と……


 まぁ、帰着点が龍種なんですから、結果オーライどころか大勝利ですね。


 私の黒龍ライフ……もとい、異世界ライフは、ここから始まるのです!!



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ