ちょっと何がどうなってるかわからない
戦隊とかでよく見るアレをもうちょっと深堀したらどうなるかを書いてみたかった欲望が弾け飛んだ結果産まれた我が子です。可愛がってやってください。あと評価ください
俺の名前はジン・メツジ。元秘密結社『ネガブレイブズ』で幹部クラスで悪逆の限りを尽くして戦っていた男だ。色々あってネガブレイブズを見限り、裏切ってその敵対組織である『ジャスティスヒーローズ』に入ったんだが……
「おうジンさんじゃねぇか! 今からメシか? 一緒に行こうぜ!」
「キャー! ジンさーーん!! 結婚してー!」
「君がジン君か。励みたまえよ、ハハハハ」
思てたんと違う。
いや違うだろう。今までさんざんお前らジャスティスヒーローズに煮え湯を飲ませてきた男の一人だぞ? ボコしたりボコされたりをした元敵だぞ? なんでこんなに好感度高いん?
先ほどの誘いを断り施設内の食堂へ行く。俺が食堂に入った瞬間食堂に居る人間全員の目がこちらに向いた。そうだ、これが正解だ。どの面下げてここに、と思うのが普通だ。ほら、俺を嘲り罵倒するヒソヒソ声が聞こえて……
「やべぇ、リアルガチのジンさんじゃねぇか……カッケェ……視線だけでモノを切れそうだぜ……」
「お前話しかけろよ……サイン貰いてぇんだよ……」
「バカ、ジンさんそういうのダメっぽそうだろ……握手ならワンチャン……」
「サインならこの婚姻届けに……」
「アンタやるわね……明日役所行って貰って来ようかな……」
「ジンさんが俺たちと同じ制服着てる……尊い……死ねる……尊死ぬ……ウッ……」
「どわなくろーずまぁらーいず」
「勝手に殺すなアホ! まだアルマゲるわけにはいかねぇんだよ!!」
思てたんと違う(二度目)。何とも言えない空気の中、券売機で食券を買っておばちゃんに見せる
「はい、チキン南蛮定食ね! 横にずれて待っててね!」
そして出てきたのはチキン南蛮定食なのだが……なぜかチキンが二倍になっていた。タルタルソースもたっぷりすぎるほどかかっている。何事かと思っておばちゃんを見るとニッコニコの笑顔でこちらを見ていた
「多くないか?」
「いいんだよ、たくさん食いな! たくさん食べて大きくなんなよ! アハハハハ!!」
「俺はもう成人しているんだが……いや、しかしだな……」
「騒ぐんじゃねぇよ! いいから持っていきな!」
「だがさすがに」
「騒ぐんじゃねぇ、騒ぐんじゃねぇよ!! いいから持ってけってんだよ! 遠慮すんじゃねぇよ! さーわーぐんじゃねぇっての!」
そのままおばちゃんに気圧されてしまい席について食事を始める。気のいいおばちゃんなのだが、サービス断ると怒るらしい。俺は初めて出会ったタイプの人間に困惑していた。というかこの組織の空気に困惑している。食事中も好奇の視線を感じるものの、憎悪や悪感情の籠った視線はなかった。
「お前達に聞きたいことがあるんだが」
「お、何々? 珍しいじゃない、ジンちゃんが俺たちとコミュニケーションとろうなんて」
「明日はビームのゲリラ豪雨ですかね?」
食事を終え指令室に戻った俺はそこに居たメンバーに問う。思い思いのことをしてリラックスしていたメンバーが興味深そうに座っている俺に寄ってきた。
ジャスティスヒーローズ第三部隊。彼等こそ俺をネガブレイブズの元からジャスティスヒーローズへ引き込んだ張本人たちであり、幾度となく敵だった頃の俺と戦い合ってきた叩き上げ部隊である。
「で? 何が聞きたいんだ?」
先ほどから軽率気味な口調で茶化し気味のこの男はジャスティスヒーローズ第三部隊隊長『銀嶺ショウタロウ』。今でこそ軽率かつ穏やかで優し気な雰囲気をしているが戦闘時となると豹変する。彼の持つ特殊能力『冷気発生』と『凍結活性』の能力で自在に冷気を操り確実に相手を弱らせ、その二メートルに届く巨躯から繰り出される重い一撃で数々のヴィランを制してきたと言われている。今では現役を引退し隊長に収まっているが、その戦闘能力は戦ったことがないジンですら脅威に感じ取っている。もしもあの時第三部隊主力メンバーと彼が出張って来ていたら、と考えると俺の背中に冷たいものが流れる。閑話休題
「俺はネガブレイブズからこのジャスティスヒーローズに入った、いわば元敵なわけだが」
「そうだな。ウチの奴らも散々手を焼かされたって言ってたな」
「色々とトんでるお前らはまだしも、この基地全体からまったく悪意を感じない。それの意味が分からないんだ」
「トんでるとは失礼な、と言いたいところですが……否定はしきれませんね」
メガネを押し上げながら苦笑いする男は天眼ミツメ。第三部隊のブレインであり冷血無情の軍師だ。彼にも特殊な能力があったはずだが彼曰く『自分は戦うのは苦手ですから。切札は最後まで隠しておくべきなので』と彼の能力を知る者は非常に少ない。作戦立案の際には仲間の安全度外視の外道作戦ばかり立案するので他の部隊からは恐れられている。この舞台では銀嶺というストッパーがいるのでどうにか安全な作戦になっているが……閑話休題。ともあれ、どういう方向性であれ頭の回る彼が出した回答はこれだった。
「結論から言えば、あなたは潔すぎた……とでも言えばいいんですかね? どう言語化していいものなのか、正直難しいのですが」
潔すぎた、なんて言葉は聞いたことがない。訳が分からず頭をずっと捻っていると後ろから誰かが飛びかかるように抱き着いてきた。体にかかる体重から恐らく子ども。第三部隊に居る子どものような隊員、俺には心当たりがあった。
「ばーん! なにしてんのー、ジン様!」
「離れろ朧幌。基地内でなかったら切り殺していた」
「冷たい態度も嫌いじゃないぜ!! 嫌いじゃないぜ!! てかルルって呼び捨てにしてって言ったじゃーん!」
「やかましい、耳元で叫ぶな」
彼女は朧幌ルル。身長ギリギリ百五十の小柄な女性隊員だ。実践では小柄な体躯とその敏捷性で敵陣に突っ込み、様々な状態異常を発生させる毒を敵に散布、ひっかきまわすのが彼女の役目だ。最近はやりの忍ばないタイプのニンジャである。ここで言うところのニンジャは時代劇などの忍者とは違うので要注意だ。悪人死すべし慈悲はないのがニンジャ、任務なら誰でも殺すのが忍者である。ドーモ悪人サン。
「で、何の話だっけ? ジン様がモテ過ぎて辛いって? キャー! リア充爆発しろ! てか私をリア充にしろー! 私の願いを叶えたまえ―!」
「喧しいと言っている! そして離れろ! 俺は七つの玉集めたら出てくる神の龍ではない!」
思い切り暴れて振りほどこうとするが彼女は既に俺の手の届かない場所に退避していた。全くもって面倒くさい。
「おっとと。まぁジン様はカッコいいからねー、それも一つの理由だよ? 前にネットのジャスヒ女性隊員掲示板でジャスヒ内で嫁にしたい男一位になったこともあったから! 当時腹筋崩壊するほど笑ったなー!」
「なんでジャスティスヒーローズ内なのに俺が入ってるんだ。顔がいいだけならもっと他にもいるだろう。あと俺は嫁には行かんし嫁ではなく婿だろう」
「悪乗りしてたらそうなっちゃっただけじゃない? 女ってのはジン様みたいにちょっと影のある男に惹かれるものなのさ……フッ」
久しぶりに女にイライラした。元居た組織にも鬱陶しい女はいたが、コイツは別ベクトルで鬱陶しい。とりあえず落ち着くため先ほど自販機で買ったお茶を飲む。爽やかな苦みと渋みが落ち着きを与えてくれる。すると朧幌が意味深に笑いながら呟いた
「あの時はありがとうね、おにーさん?」
聞き覚えのある声に思わず飲んでいたお茶を盛大に拭いた。正面に居た銀嶺と天元がぐしょ濡れになった。通り雨でも降ったのだろうか。いや正直すまんかった。目線をルルに向けると彼女は見たこともないような恐ろし気な笑みを湛えてこちらを見ていた。
「んふふ~、しっかり覚えてるみたいだね~? そりゃそうだよね~? 一週間も幼女の面倒見てくれてたんだもんね~? さてジン君に問題でーす。あの時の幼女は一体今どこに居るでしょ~うか? ヒントはキミの目の前、だよ?」
「テメェ貴様お前ェェェェェェェ!!!! 殺す!! テメェ殺して皆殺す!!」
「やーいやーいイイ男―、お前を私の嫁にしてやろうか!」
「うるせぇ断崖絶壁が!!」
「おーけー貴様は私の逆鱗に触れた!! 殺す!!」
「やってみろ洗濯板!! ヘタすれば銀嶺にもバストサイズ敗けてるんじゃねぇのか?! 敗北者が!!」
「取り消せよ、今の言葉……!!」
ギリギリと互いのほっぺたを思い切りつねり合う。そんな俺たちを銀嶺たちは微笑ましそうに笑って見ている。笑ってないでこいつを止めろ。んで懲罰房へぶっこんでやれ
評価ポイントが入る→モチベが上がる→執筆速度が上がる→作者が喜ぶ→アー〇ードコアの新作が発売される
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