表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/306

009 第2章 村での生活開始 2ー2 研いでみる

余りにも切れないナイフを研ぐところから。

  9話 第2章 村での生活開始


 2ー2 研いでみる


 そして鍛冶屋に向かう。ここで少し刃物を研げるだろうか。現状、あのナイフは切れ無さ過ぎる。

 ランプに火を灯して鍛冶場に向かう。何しろ中は真っ暗だ。

 鍛冶場に入って、すぐ砥石はあった。

 一番目の荒そうな砥石を一つ(つか)んで水をかける。


 さて、古い記憶を思い出してみる。眉間に右手の人差し指を押し当てる。

 

 刃物にどういう風に刃がつけてあるかで研ぎ方が違うと教わった。


 刃を断面で見て、頂点からの三角形が短い二等辺三角形なのか長い長い二等辺三角形なのかで、まず角度が全く異なる。

 あとは鎌のように湾曲してる刃の場合はかなり細かくカーブに合わせて研がなければならない。

 反っている場合も同じだ。


 あともう一つ。片刃なのかどうか。ここの世界ではたぶんないのだろうけど。

 確か片刃の刃物は日本独自と聞いた事がある。魚料理で使う出刃包丁とか、刺し身包丁とか。たしか魚の刺身の断面がキレイになる特徴があるとか。

 まあ、両刃じゃ無いと使いにくい。野菜切ったりする包丁とか全て両刃だ。

 まあ両刃を研いでも最後は軽く軽く、両側共こすってバリ取りをする仕上げは必要だ。


 よし、基本はそんな感じのはずだ。

 まあ日本にいた時の大昔の記憶だ。子供の頃、家の刃物を研がされた時に、教わったものだ。

 包丁、鎌、鰹節削り器の刃、日々使う刃はいちいち研師(とぎし)に出さずに家で研いで、どうにも駄目なら近所の大工さんにお酒を一升持って頼みに行くというのが通例だった……。

 特に出刃包丁。私には上手く研げなかった。

 大工さんは本当に上手に研いでくれたのを思い出した。


 もう大人になってから自分で研いだりした記憶はないのだが。という事はもう四〇年以上前の事か……。


 取り敢えずそこに置かれた小さなナイフを持ってランプの灯りにかざしてみる。

 どう贔屓目(ひいきめ)に見ても、ひと目見て酷い(なまく)らだとわかるが、刃が欠けているところは無さそうだった。まあ、切れ味の悪さも納得だな。


 刃の形状を確認するにはどうすればいいのだったかな。取り敢えず前からよく見てみるか。

 目を近づけるのも怖いんだが、じーっと観察する。たぶん他人には見られたくない光景だな。

 中学くらいの女の子が真っ暗な中、ランプの灯り頼りに刃物を顔に突き付けて眺めているのだ。


 ……


 どうやら、このナイフには短い二等辺三角形の刃がつけてある。

 なるほど。つまり先端だけ刃がついているタイプだな。

 普段使いで(なま)ったり少し刃(こぼ)れしても頑張って研げばまた使える。そういう事だな。

 『刃先が鈍ったら、研げばいい。そういうもんだ。』いつも研いでくれる大工の人がそんな事を言ってたな……。


 桶に水を汲んで横に置く。

 濡らしてある砥石に刃を当てる。角度が重要だ。あとは一定のリズム。


 丹念に研いで行く。反対側も研ぐ。砥石をすこし目の細かいものに変え水をかけて研ぐ。

 丁寧に作業を続け、両面を研ぎ終えた。

 特に優遇スキルを貰ったからうまくできたとか、そういう感じは一切しない。

 まあ優遇があったら、はっきり手応えが違うとか、そういう『何か』があるかどうかは、私には判らないだけだ……。

 取り敢えずは昔の記憶にあった研ぎ方の基本に忠実に沿っただけだ。

 

 あのやたらと薄い服の豊満な体だった天使みたいな女の人は、本当に私に何もしてくれなかったのだろうか?

 

 うーむ。

 これが所謂(いわゆる)、異世界物の優遇とかなら、全ての文字が読めて書けて喋れて、みたいなのは基本セット。

 そこに色んなバリバリチートなスキルをくれて、さらに場合によってはアイテムだの魔法だの、生活に必要かつ便利なスキルもセットでくれるとかじゃないのか?

 

 しかし、何一つ優遇を貰えてる感じがしないのは、私が『鈍感』だからなのか。

 その可能性は否定出来ないが。

 

 それともあの天使の『やらかし』で何も持たない平凡な女の子? なのか。

 健康な体かつ力持ち? というだけで満足しないといけないのか。

 

 まあ、健康な体が一番ありがたいといえば、ありがたい。

 どんな優遇があっても不健康とか病気がちだと、この先の人生に苦労が多すぎる。

 それでも、何かあってもいいんじゃないか?

 

 ……

 

 つい愚痴ってしまった……。

 どうやら今の所、本当に完全放置プレイらしい。

 

 取り敢えず、自分は普通の人という前提で事に(のぞ)む必要がある。

 とにかく文字が読めないのが痛い。この分では、ヒアリングもトークも多分駄目だろうなと思うと軽く絶望しかける。

 

 直前の勇者で行ったはずが殺されたあの世界でも、相手の言葉は全くわからなかった。

 先に行ってた六人はなぜか喋っていたが……。

 遅れて登場になった私だけ喋れない状態だったのは『何かの手違い』だったのだろうか……。

 しかし、会話が成り立たないのは本当にまずいな。

 

 ……

 ……

 

 

 つづく

 

おっさん大谷も、とうとう愚痴が出てしまう。

何も優遇なしなのか。今のところ確かめるすべはありません。


本格的にここで生活する為にやらねばならない事は多そうです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ