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089 第14章 スッファの街 14ー18 街の葬儀

 葬儀が始まる。異世界の、この国の葬儀を初めて見る大谷。

 死者の弔いは、やはり厳かだった。

 

 89話 第14章 スッファの街

 

 14ー18 街の葬儀

 

 翌日。

 

 起きてやるのは、何時ものストレッチ。そして柔軟体操からの空手と護身術。

 背の高いメイドが入ってきて、朝食になった。

 今日は柔らかいパンの様な物とスープだった。

 それを食べると、紅茶が出てくる。

 ここでは、まるでそれが当たり前であるかのような朝の光景だった。

 

 そして、別のメイドが服を持ってきた。

 

 背の高いメイドが私に濃紺のドレスを着せた。

 取り敢えず、ドレスについていたスカートの脇のポケットに、小さな革袋をいれた。この中にはトークンが入っている。何か買い物が出来るなら、これで買おう。

 あとは、寝る前に外していた階級章。首につけ直す。

 

 私はオセダールの馬車に載せられ、真司さん、千晶さんたちと墓地に向かう。

 真司さんたちも、どうやらオセダールが用意したらしい、フォーマルな黒服に着替えていた。

 

 箱馬車はゆっくりと北部街区に入っていく。

 

 北部街区の東のはずれ、そこに大きな墓地がある。

 そこは、かなり広い。入り口前で箱馬車が止まり、私たちは馬車を降りて、中に向かう。

 取り敢えず、オセダールについていけばいいのだが、真司さんと千晶さんが両側で手をつないでくれた。

 これでは、まるで親子のようだ。ちょっと赤面する。

 

 やっと会場の前のほうについた。

 そこに多数の喪服の人が集まっている。

 

 鐘が数度、鳴らされた。

 

 喪服の男女が大勢、後ろには黒い服ではない人も大勢いた。

 そして多数の警護兵。

 

 そこに警護兵に囲まれて讃美歌の女性と、楽器を持った男女が入ってくる。

 

 それに、神官三名が続き、これまた多数の護衛がついて来た。

 最後に多数の護衛に囲まれてアグ・シメノス人の神官らしい女性がかなり豪華な神官服を纏って入ってきた。

 

 しかし、今回の葬儀はこの町の亜人たちの為なので、あの三人の神官が同じ亜人なのだろうか。やや耳の長い、彫りの深い人々。

 あの豪華服を着たアグ・シメノス人の神官は、この葬儀全体の見守り役とでもいったところか。

 

 葬祭の儀式が始まる。

 三人の神官が、壇上に登って行った。

 

 中央の神官が厳かに、神への祈りの言葉を唱え始めた。

 

 『創造神様。貴方様が我らの(あるじ)

 

 三人の神官は一度、深いお辞儀をした。

 

 

 『真、我らの主よ、我らを憐れみたまえ』

 

 『天のいと高き所には神の栄光』

 

 『地には善意の人に平穏あれ』

 

 『我らは、まことの主である創造神様を()め、称え、』

 

 『主を拝み、主を(あが)め、』

 

 『主の大いなる栄光のゆえに主に感謝し(たてまつ)る』

 

 『天の全ての主、全能の父なる創造神様よ』

 

 『世の罪を除きたもう真の主よ、我らを憐れみ給え』

 横の神官二人が復唱する。

 『世の罪を除きたもう真の主よ、我らを憐れみ給え』

 

 

 『世の罪を除きたもう真の主よ、我らの願いを聞きいれ給え』

 再び、横の神官二人が復唱する。

 『世の罪を除きたもう真の主よ、我らの願いを聞きいれ給え』

 

 

 静かに祈りの言葉が流れていく。会場は静寂の中に、神官の声だけが響き渡っている。

 

 

 『兄弟たち、私は今、あなたがたに良き知らせをお教えしましょう』

 

 『兄弟たちよ、あなた方は共によく闘い、そして街の人々を愛し、街の人々を守りました』

 

 『兄弟たちよ、あなた方はこの町の(いしずえ)である事を誰しもが皆、認める所です』

 

 『今、彼ら兄弟たちは大きな艱難(かんなん)辛苦(しんく)から抜け出て来たのです』

 

 『その衣も、小さきヌーテリの血で洗い白くしたのです』

 

 『だから彼ら兄弟たちは今、創造神様の御顔の前にいて、聖所で昼も夜も神にお仕えするのです』

 

 『創造神様、彼らをどうか御使いください』

 

 『そうすればもう、彼ら兄弟たちは飢える事もなく渇く事もなく、二つの太陽はどんな炎熱も彼らを打つ事は無いでしょう』

 

 『創造神様、彼らをどうか受け入れてくださいますよう』

 

 三人の神官が同時に唱えた。

 『カーラーク』

 

 三人の神官は壇上から一度降りた。

 そして、白い布に包れた遺体に、「何か」を振りかけていく。人数が多いので大変だが、それでも犠牲者の三分の一ほども無い。

 

 そして、賛美歌が斉唱されていく。

 楽器から奏でられる調べは、全く馴染みの無い旋律だったが、かなりゆっくりとした調子だった。

 

 『つらくー悲しいーときでもー救いのー手をー述べてーくださるー慈悲のー女神様はーわたしーたちーとーともにーおられますー』

 

 『わたしーたちーをーなぐさめーいたわってーーくださいますー』

 

 『今はーためらうーことーもーなくーー心のー内をーー女神様にーーかたりーあかすことー』

 

 『慈悲のー女神様はーー私たちのーー心にーー平安をーーくださいますーー』

 

 『慈悲のー女神様はーー私たちのーー心にーー慰めをーーくださいますーー』

 

 

 讃美歌の音楽が終わり、暫くの余韻があった。

 

 再び、神官が壇上に上がった。そして祈りの言葉が捧げられる。

 

 

 『最早、死を恐れる事はなく、最早、呪われる者は誰もいない』

 

 『神と哀れなる小さきヌーテリとの()()が天の都の中にあって、そのしもべたちは、神に仕えます』

 

 『神の御顔を仰ぎ見る彼らの額に、神の、創造神様の、御名前が刻まれるでしょう』

 

 『最早、夜はなく、創造神様が、彼らを自ら照らされるので、彼らには、最早、灯火の火も、双子の太陽すらも要らない』

 

 『彼らは、今、光の中で永遠であるのです』

 

 再び三人の神官が同時に唱えた。

 『カーラーク』

 

 

 再び、賛美歌が斉唱される。先ほどよりは楽器の調べは荘厳な感じだが、相変わらずその旋律は全く馴染みの無い物だった。

 

 『主よー主よー創造神様のーー身元にーーちかづかんー』

 

 『女神様よー女神様よー慈悲の女神様のー身元にーーちかづかんー』

 

 『のぼるーー道はーーわれらのーこころにーありとーいえどもーー』

 

 『彷徨うーーままのーわれらのーたましいをー』

 

 『すくいーーあげ給えーー』

 

 『主よー主よー創造神様のーー身元にーーちかづかんー』

 

 『女神様よー女神様よー慈悲の女神様のー身元にーーちかづかんー』

 

 

 賛美歌も終わった。会場は静まり返っている。

 

 神官は、遺体が包まれた白い布に再び、「何か」を振りかけている。

 

 これから埋葬の儀。

 聖歌隊の楽器が曲を奏で始めた。

 

 五〇人全員の遺体は無かったので、一五人ほどの遺体が回収されただけだったのだが。

 その遺体が、冒険者ギルドが用意した敷地に、埋められていく。

 

 神官たちの近く、彼方此方で、嗚咽(おえつ)と号泣する声が聞こえる。

 

 

 棺桶とかに入れないんだな。布に包んだ遺体をそのまま土葬か。

 まあ、私があの村でやった埋葬は、布に包む事すらやってない。

 

 土葬が終わると、音楽が鳴り止んだ。

 

 静まり返ると、中央の神官が再び祈りの言葉を唱えていく。

 

 『聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな、(よろず)(あるじ)なる神』

 

 『我らを憐れみ給え。彼らを憐れみ給え。世の罪を除きたもう主よ』

 

 『我らと、この小さきヌーテリの者たちに平安を与えたまえ』

 

 『我らは、聖なる万の主のしもべ』

 

 『慈悲の女神様よ、我らにその慈悲を給わん事を』

 

 再び三人の神官が同時に唱える。

 『カーラーク』

 

 

 再び、鐘が鳴らされた。鐘は暫くの間、鳴らされ続け、辺りに響き渡っていく。

 

 神官たちが壇上を降りて、お付きの者と警護兵に囲まれ、ゆっくりと歩き去っていった。

 続いて、聖歌隊がやはり警護兵に囲まれて、外に歩いていく。

 

 最後に、あのアグ・シメノス人の神官らしい女性が祭壇の中央に登り、何かの祈りを捧げた。

 言葉は分からなかった。彼女たちの独自の言語だろう。

 暫くの間、その祈りの言葉は続いていて、警護兵たちがみな(こうべ)を垂れていた。

 恐らく、彼女たちにとって、神聖な儀式なのだろう。

 

 それが終わると、祭壇を降りて来た。そこを多数の警護兵が囲み、ゆっくりと外に歩いて出ていった。

 

 次は市の代表者、ゼーレ・ナロンが出て来て皆に何かを述べている。

 そして冒険者ギルドの責任者であるテオ・ゼイも横に並んだ。

 ゼイも何か話し始めた。

 

 それから暫くして真司さんと千晶さんの二人が呼ばれて、その横に並んだ。

 会場の皆がナロンとゼイの言葉に耳を傾けているようだった。

 

 オセダールが私にそっと耳打ちした。

 「あと僅かで御座いますよ。お嬢様」

 オセダールが気を回してくれたのだ。

 私は小さく頷いた。

 

 大丈夫、これくらいなんでも無い。

 五〇も大分越えたおっさんだから、こういう葬儀、形式は違うが何度も出ているし、その後の法事も何度も経験しているのだ。

 それこそ、お経を覚えてしまう程に。

 

 そんな事は(つゆ)(ほど)も知らないオセダールは、私が退屈して痺れを切らしていると思っているのだろう。

 相変わらず、気配りの御仁である。

 

 そして、どうやらナロンの演説も終わった。

 

 次は会食だったな。

 故人を偲んで食べるというのは、この異世界でも、変わらないのだな。

 

 そして、この葬儀の神官の祈りで判ったが、彼らは創造神の元に死者の魂が行くと信じて()まない。

 私の魂は僅かな時間しか、あそこにいられなかったが。

 もう一つは慈悲の女神は出てきたが、他の神についての言及はなかった。多くの多神教の教義あれども、この主神が創造神で、死者への慰めが慈悲の女神というのは、きっと共通なのだろう。

 そうであれば、かえって他の神に言及しない事で、多くの多神教の人々の葬儀がこれで済むというのもあるのかもしれない。

 …… そんな事を思った。

 

 会場にざわめく様な会話がさざ波の様に広がっていく。そして人々が動き始めた。

 

 

 オセダールと私は歩いて外へ向かう。真司さんたちはナロンたちと一緒だ。

 

 そこに背の高い老人がやって来る。

 オセダールの前に、数人の黒服と共に現れた。

 緊張が一瞬走る。

 

 私はすっと、オセダールの前に出た。

 黒服の男たちが何かやらかすなら、竜拳の一つでもくれてやらねばならない。

 

 

 「ルオン・オセダール殿、お久しゅう。葬儀も無事に終わりましたな」

 よく通る低い声で老人が挨拶した。

 「ラゼール・ドーベンハイ殿、お久しゅう。葬儀もつつがなく終わりましたな。ところでその杖はどうなされた」

 

 ラゼール・ドーベンハイ。商会の会頭がこの男か。

 オセダールは長い付き合いなのか。

 

 「寄る年波でね。私もこんな物が要るようになったのだ。無様な事だ」

 

 ラゼール・ドーベンハイは恰幅のいい大男で、髪の毛は銀色でオールバック。

 やや面長だが、がっしりした顔つき。耳はそれほど長くはないが、はっきりと尖っている。渋めの顔立ちは、如何にも遣り手の商会の代表という顔つきだった。

 彼は、肩幅も広いが、左手に杖を持っていた。

 

 私はオセダールの左横に移動して、立った。

 

 どちらを見上げても顔はにこやかだが、目が笑っていない。

 そして、ドーベンハイが右手の指を動かした。

 オセダールの目が一瞬だけ細くなり、また元に戻る。

 オセダールも右手の指を動かした。

 

 これは。

 

 彼らの手の指がかなり素早く動いている。

 

 その間、二人は街道の話を始めた。

 「いやはや、まだ街道の掃除が終わっていない状態では、商売も上がったりですな」

 ドーベンハイはそんな話をする。

 「こちらも宿の客が来てくれない事には、商売上がったりですな」

 オセダールが応じている。

 

 「こちらは仕入れもままならぬ。オセダール殿は、お客が来なくて、ままならぬ。まったく街道の魔物は厄介ですな」

 

 「如何にも」

 オセダールが応じる。

 

 二人の額に汗が滲んでいる。右手の指は二人とも猛烈な速さで動いている。

 

 「今度の会議では、まずその件でしょうな」

 ドーベンハイはまるで天気の話でもしているかのように、そう言った。

 「まったくですな。恐らくは早急に開かれるでしょう」

 にこやかに、オセダールが応じた。

 

 二人は顔だけがにこやかだが、まったく笑っていない。

 

 どっちも相当な『古狸』だ。

 

 たぶん、あの指の動きは、恐らくは特殊な会話。商会の上の人たちが使う、秘密の指会話なのか? そういう類だろう。これは手話の一種と思われるが挙動が小さい。

 商人というやつは、値段の交渉も他の人に聞かれたくない、等というのがよくある事なのだ。恐らく、二人はかなり大事な話をしている。

 となれば、スルルー商会の件に決まっている。

 

 

 「それでは、会食の準備も整ったようですな」

 ドーベンハイがそう言うと、オセダールも答える。

 「では、参りましょうかな。ヴィンセントお嬢様」

 私の事を、単にお嬢様とは言っていない。なるほど。敢えて、相手に私の事を示したのだ。

 

 私は、スカートの裾を両手で掴んで、左足を引きながら軽くお辞儀した。

 「この少女が、例の(かた)なのですな」

 ドーベンハイが私の方を見下ろした。

 「左様」

 オセダールが答える。

 

 ドーベンハイは急に朗らかに笑った。

 「これは参った」

 そう言って、更に笑った。

 「いやはや、これは。まさかこれ程の少女とは思わなんだ」

 「白金のお二人にもよろしくお伝えくだされ、オセダール殿」

 

 「ドーベンハイ殿。無論ですとも。街道の安全は、いまやあのお二人の肩にかかっておりますからな」

 「北部街区商会としては、最大限の協力を惜しまないと伝えてくだされ」

 「分り申した。ドーベンハイ殿。では、いずれまた」

 「オセダール殿。いずれまた」

 

 そう言って、二人の邂逅(かいこう)は終わった様だった。

 

 二人で歩き始める。

 

 「ラゼール殿は、あれでなかなか話の分かる方でしてな」

 「とはいっても、今後の協力があれほど簡単に取り付けられるとは、思っても見なかった事」

 

 私は見上げていった。

 「何か、裏が、あるのでしょうね」

 「無論でございましょう」

 「ですが、今の所は警備隊の手前も有るでしょう。それにラゼール殿は暫くリエンタやキッファの方にいたようですからな。この街の北部街区の商会掌握にはもう少し時間が必要でしょう」

 

 「ドーベンハイ商会は、随分、手広いのですね」

 「それは、もう。西部地方に大きな勢力を持つ商会ですからな。スルルー商会が西部地方にも足がかりを得たいが為に形振(なりふ)り構わず、すり寄ったという形ですな」

 そういう事だったのか。となれば、もう西の街々で、私が狙われたりする事はないだろう。

 ただし、あの暗殺団が私を狩るのを諦めたという前提が必要だが。

 私は、少し笑顔を作って、オセダールを見上げながら答えた。

 「判りました」

 

 この墓場の西にも大きな広場のようなものがあるのだが、そこは警備隊の練習場だという。投げ槍とか弓などの場所が必要な武器のために、こんな場所が用意されていた。

 その横を歩いていく。

 

 葬儀の会食は、北部街区の大きな食堂三つと宿の食堂がその会場になっていて、五か所。その内、一か所だけは、さっきの神官たちと聖歌隊の専用会場。

 そして、アグ・シメノス人の神官は別の場所に行った。

 彼女らの食事は、一度だけだが警備隊の所で戴いたが、あれはここの普通の人が食べるものではないだろう。

 彼女らは、そもそも食べるものが違うのだ。多分。

 

 歩いていくと多くの人が、大食堂と、中規模の宿にある会場に入っていく。

 

 オセダールは、私を連れてそのうちの大食堂の一つに入った。

 そこで出た食事は、これまた恐ろしく風変わりなものだ。

 こういうものは大抵、宗教に関係しているのだ。

 

 とはいえ、たしか王国概要によればここは多神教で、凡そここに住む亜人たちは多神教の中でも、この王国が祀らない神々も信奉しているので、彼らの為にそういう神々も祀ってあるという事が書いてあったはずだ。

 

 一神教が有るという風には書いてなかった。

 そもそも一神教は多神教とは相容れない。この王国がどんなに寛容でも、そこは譲れないだろうから、一神教は無いのだ。

 

 まず、脱穀して籾殻を適当にとっただけ、という穀物を煮た物に香草が入った代物が出てきたが、所々に色がついた穀物が入っている。

 これをどうやって食べるのだろうと思っていると、塩の入った壺が廻されてきた。

 これをひと匙取って、自分の器の横のお皿に乗せる。

 

 見ていると、このお皿の塩を舐めつつ、この穀物のお粥のようなものを食べる。

 どうやら、これは古代の食事らしい。神々がここにアグ・シメノス人を導いた時に彼女らが食した物だそうだ。ここの亜人らが、彼女らに敬意を表す意味でも祭事と弔事でこうした食事を摂るのだそうだ。

 塩を粥の中に入れないのは、人によって必要とする塩分量が違うから、であるらしい。こっそりとオセダールが教えてくれた。

 

 変わった風習だ。

 

 しかも、こういっては何だが、味はほとんどしないので、この塩だけが頼りだ。

 彼女ら、アグ・シメノス人ならば、この香草の香りも「おかず」なのかも知れないが、普通には無理であろう。

 水を飲んで、終わりかなと思っていると、別の皿がどんどん配られていく。

 そこには肉が乗っていた。何かのソースが塗られた肉の塊のグリルだった。

 

 なるほど。これがメインディッシュという事か。

 急に、周りで会話が始まっていた。

 そういう事か。さっきの食事までが、葬儀の一部だったのだ。

 取り敢えず、ナイフで切って、フォークでこの肉を戴く事にする。

 

 味付けは、残念ながら今一歩である。オセダールの宿の料理が如何に美味しいのか再認識させられた。なるほど、あの大食堂が賑わっているのも頷ける。

 

 私は手を合わせる。

 「ごちそうさまでした」

 

 オセダールと一緒に外に出ると、程なくして真司さんたちもやってきた。

 そこにオセダール配下の御者が箱馬車に乗ってやってくる。

 

 オセダールは紳士だから顔にこそ出さないが、ここの食事が不満だったのは間違いない。

 

 四人が箱馬車に乗ると、馬車はゆっくりと中央街区へ向かって進んでいった。

 

 

 つづく

 

 異世界での、この人々の葬儀はどことなく元の世界の宗教と似ていた。

 多神教であると言うのが、この国の人々にとっての普通なのだ。

 しかし、創造神と慈悲の女神しか、出てこなかった。

 他にどんな神々を崇拝しているのかは、この葬儀では分からなかった。

 

 そして葬儀の終わりに、ドーベンハイ商会の会頭と会う、オセダールとマリーネこと大谷。

 葬儀の後の会食も風変りだった。

 

 次回 スッファの街の買い物

 マリーネこと大谷は、武器を買い求めようとオセダールにお願いする。

 初めてトークンを使ってみる事になる。

 

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