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062 第12章 ポロクワ市 12ー4 ギルド概要本

 そもそも、この国の名前すら知らないマリーネこと大谷。

 取り敢えず、ギルドの仕組みがどうなっているのか、概要本を読んで見る事にした。


062第12章ポロクワ市12ー4ギルド概要本

062 第12章 ポロクワ市 12ー4 ギルド概要本



 62話 第12章 ポロクワ市

 

 12ー4 ギルド概要本

 

 ギルド概要

 

 我が国のギルドについて、概要を説明する。

 

 まずギルドの本部はそれぞれ、王都にまずある。

 第一王都アルジュには必ず置かなくてはならない。

 しかしそれでは北部地区は遠すぎる。そこで東の隊商道にある大都市ベルベラディにも本部代行が置かれる。

 他の小都市に支部が置かれる。必要とあれば、更に規模の小さい街にも置かれる。

 

 ギルドとは職業組合である。

 

 それぞれの職ごとに決まっている。

 その種類は後述する。

 

 ギルドへの入門方法

  本来、各職業ギルドは親方がいて、その下に弟子がいる工房を束ねたものである。

  同じ職業同士での共同体を一つにしたものともいえる。

  すなわち、ギルドに入るという事は、どこかの親方が運営する工房に弟子入する事をほぼ意味している。とはいえ、誰でも入れるわけではない。

 

 まったくの素人を育てるほど余裕があるか、格段の理由がない限りは、ある程度その才を持つ者がどこかの工房を訪ねて弟子入りを希望し、親方の簡単な入門試験を受けて弟子になるのがほとんどである。

 

 ※生産系のギルドはこのようになっているが、非生産系のギルドはこの限りではない。

 

 以下の記述は特に断りのない限り、生産系のギルドについて記述している。

 

 ギルドでの大まかな取り決め

  ギルドマスターの指示には絶対服従。これは全ての親方に適用される。

  無論ギルド会員も絶対服従である。

  各工房においては親方の指示に従う。

  この時、親方の指示がマスターと異なる場合、それがギルド全体の利益を損なう場合、各工房の世話役が調停する。

  世話役は王国から派遣される人員だが、必ずしも王国の役人とは限らない。

 

  共同生活となる為、生活指導等も親方が行う事が多い。

  ここは工房に自由裁量権が有る。

  例えば、通いをさせるも全寮とするも親方次第である。

 

  支払われる給料は、親方の判断で技量のある弟子が製作した物が売れた時に初めて、その人物に支払われる。

  そこまでは全員無給である。

 

  親方が制作した物をギルドに納品或いは、外部販売する事で、制作の材料費や全員の生活費が賄われている。

 

  大抵の場合、親方の家に住み込みで衣食住が与えられる為、不満を漏らす者はいない。

  そこに不満を漏らす者は職人にはなれない。

  腕が有ると思う若者は独立を望むが、独立はそんなに容易い物では無い。

  給料を得られる様にならないと、独立資金が貯められないからである。

 

 

 工房からの独立又は卒業

 

  どの生産ギルドでもほぼ同じだが、新しく自分の工房を持つには独立方法が決まっている。


  一つ目は親方の娘さんと結婚して独立。親方が男性の場合である。

  親方に娘がおらず息子の場合、通常は息子はその工房の名跡を継ぐ。

  息子に、よほど才能が認められない、つまり凡才の場合、親方の名跡が告げないので弟子の女性と結婚し、場合によっては独立という場合もないではない。稀である。

  独立ではなく、親方の指名で名跡を継ぐ場合もある。

 

  二つ目は親方の課す試験に合格した上で、独立資金をためている場合。

  この後にギルドマスターの簡単な審査を経て、独立が認められる。

  何らかの理由で親方が不在の場合、別の親方が試験を行う。

 

  三つ目は、選ぶ人はあまりいない。

  ギルドマスターから出される試験を合格して、その工房を卒業し自己資金で新たな工房を開くものだ。

  三つ目はどちらかと言えば親方と仲が悪くなってしまい、半ば喧嘩別れ的な状態の時にのみ、行われる場合が殆どである。

 

  これは本当に腕がいいのなら、辞めさせてしまうのは業界の損だという認識に寄るものだ。

  しかしギルドマスターの試験に合格できなかった場合、帰る場所はもう無い。

  つまりそのギルドへの出入り禁止という過酷な結果が待っている。

  

  そして一流の腕を持つ者しかギルドマスターには成れない、その人が出す試験の難易度はかなり高い。

  合格するものは殆どの場合、僅かしかいないという。

  そこで、たとえ失敗だった場合でも、ギルドマスターが有望と認めた人物は、別の工房に移籍させる事がある。この場合はギルド会員資格は失わない。稀な事例である。

  ギルドマスターが指名した工房は、必ずその人物を預からなければならない。ここに拒否権はない。



  従って一番目を弟子たちは狙うのが普通である。この場合、独立資金を親方が全て出すのが慣例となっている。結婚祝だ。

  二番めは、ギルド毎にマスターが定めた資金が必要である。

  さらに独立して工房を開く場合は、ギルドへの上納金も必要である。


  弟子を取らない場合、独立工房としては認められない独立職人という物もある。

  ただし、この場合であってもギルドへの上納金は僅かながらでも必要である。

 

 工房の後継者

  子供がいない、子供には才能が全く無い、或いは子供に工房を継ぐ気がない。などの理由で後継者がいない場合は、親方は後継者を指名する。

 

  指名された人物がすんなり後継者になる訳では無い。

  ギルドマスターの簡単な試験がある。

  また、各工房の世話役の意見も取り入れられる。

  その結果、指名やり直しとなる事も、稀にある。

 

  工房を閉じてしまう選択もあるが、この場合はギルドマスターの許可が必要である。

 

  また、親方が不慮の事故、病気などにより死亡、或いはギルド資格を失効した場合、ギルドマスターが一時的にその工房を預かり、閉じるのか存続させるかを決める事になる。

  その工房に在籍する弟子の処遇がある為だ。

 

  この期間は一八〇日以内と決められている。

  この期間の間にギルドマスターは他の工房で受け入れられるかを模索する事になる。

  閉じる場合は、在籍する弟子たちをどこかの工房に受け入れさせる。

  しかし、受け入れ余裕がない、あるいはそもそも大所帯で受け入れられないという事もある。

  受け入れ先がない場合は、ギルドマスターが他の工房で働く、準主役的な人物を指名する。その工房において主役で制作する人物を引き抜くのは、親方たちからの理解も得にくい。

  そこで、十分に信頼のおける指導も出来そうな人物を探す事になる。

  この場合、腕よりも指導力のほうが、重視される。腕がいいのに越した事はないのだが、腕だけ良くても人を纏められない人物には工房の親方は務まらないからだ。

 

  この人物がその閉じる工房の親方の代わりに、その工房を引き受けて弟子を育成する。

  もし指名を受けた人物が辞退した場合、その工房自体がギルドマスターからの処罰を待つか、辞退した人物か親方が別の工房の有望な人物に引き受けて貰えるか頼む方法の二つがある。もし引き受けて貰えたとしても、その工房の親方は、ギルドマスターからの叱責がある。弟子への指導不足が問われる。

  

  これは本来ならば、正規の手続きを経て行う独立の特別扱いであって、そうそうある事例ではない。

 

  裁縫ギルドでは女性が親方になっている工房が多く、この場合は娘が親方の跡を継ぐ事が殆どである。

  細工ギルド等では親方の男女は工房による。

 

  何れにしても継ぐ者がいない場合は、後継者は指名する必要がある。

 

 

 

 資格の失効

  工房なら物を作る事が出来なくなった場合。

  工房以外の場合は、そのギルドの定める所の作業が適切に行えない状態となった場合。

  身体の欠損や失明等の身体的理由。

  

  ギルドマスターの出す一発試験に失敗した場合。

 

  犯罪を犯して、王国から重罪を言い渡されるか追放となった場合。

 

  資格を失効してもその記録は残る為に、試験失敗や犯罪などの場合は資格の再取得は出来ない。

 

 

 資格の重複取得

  独立職人はいくつかの資格を持つ事が出来る。

  資格を持つ独立職人が更に自らが資格を持たないギルドの門を叩き、入門する事を拒む規則は無い。

  ギルドマスターや親方の判断次第である。

 

  なお、独立職人は既に工房から独立しているため、元の工房に戻るのは特段の事情が無い限り、良い事とはされていない。

 

 

 各ギルドの概要

 

 鍛冶ギルド

  一般的な刃物。ナイフ等や農具つまり鍬や鎌等。

  その他にはシャベル、ツルハシなどの土木、鉱夫用等

  大工用、鋸、鉋、ノミ、ハンマー、ヤスリなど。

  金属製の道具一般で範囲は広い。

  フライパンや鍋等、一般的な調理器具も製作する。

  これらの大半は、商業ギルドが買い取り、一般に小売される。

 

  武器

   武器を専門で作る鍛冶屋。

   刀剣専門で身を立てるのは、多くの武器鍛冶屋の目標である。

 

   王家、並びに軍等への納品は全て御用商人が買い付ける事が決まっている。

 

  鎧

   鎧は複雑で一人で作るのは時間がかかり過ぎる。

   一人ではかかる時間から値段に見合わない為、数人程度の集まり(鎧専門集団)で作る事が殆ど。

   盾も鎧職人が作成する。

 

 鉱山労働者ギルド

  鉱石を掘る専門の鉱夫を束ねるギルドで、全ての鉱山とそこに入るギルドは王室の直轄である。

  その為に、このギルドに入るには厳正な審査が行われる。

  ここでは鉄鉱石以外にも様々な金属や宝石も掘る。

  これら掘られた物は、王室管理官が目を通した後、親方を通して商業ギルドに売られる。通貨になる金属は、一定量が必ず王室に納められる。これは商業ギルドに優先し、場合によっては国内に流通する金属が不足する事もある。

  希少金属は特に扱いが難しいため、一度管理官が全てを接収する。


  掘った働きに応じて、高額の給料が支払われる。そして、衣食住の全てが王家の負担で賄われる。

  その為に職としては労働がきついが人気の高い職となっている。ただし住む場所は鉱山近くの集合住宅である。

  この集合住宅では清潔な衣類と食事が出される。週に一回は麦酒等も出される。

  三年間、勤務すると継続するか、辞めるかを選択できる。

  怪我人も多いので、このギルドは治療師ギルドと特別な取り決めがあり、独立治療師がどの鉱山でも三名以上常駐する。

  三名は交代で昼夜において彼らの治療や健康診断等を行う。

  ※ここが王室の直轄ギルドである理由は、勿論銅や、銀、金と言った通貨に使われる金属が産出する場合があるからで、元よりそうした金属が掘られている鉱山は、王室の厳正な管理が行われている。

  金属の不正な隠匿、および不正取引は重罪で、特に銀、金、白金の場合は極刑である。

  

  

 木工ギルド

  建設、家や壁修理。大工のような事も行う。

  木工製品、家具一般や箱等の製作。

  弓は此処で作られる。

  矢は鍛冶屋が鏃を作るが、矢そのものは細工ギルドが木製細工の一つとして製作する。

  弓師は自分で矢を作る者も多い。

 

 樵ギルド、ただし一般的には炭焼ギルドと呼ばれている。

  木材の切り出し、製材が主な業務の範囲であったが、炭焼もこのギルドが行うようになり、今では炭焼が六割を越えている。

  鍛冶屋が一番需要が多いが陶芸工房やガラス工房も需要は旺盛である。

  従って、樵ギルドは炭焼に専念する事も多く、そこで木材の切り出し製材専門と炭焼専門に分かれる事になった。

  炭焼は大変暑い作業であり、常に人不足である。

  

 裁縫ギルド

  布地生産 糸を紡ぎ、機織りして染色まで。一番大変な作業がここである。

  衣服仕立て。服装の審美眼がいい人しかここを担当できない。

  刺繍などの布地加工

  鉄以外の鎧。

   主に布に革を縫い付け、其処に鋲等を付けた物を作成する。

  靴の作成。靴は専門で行う職人が殆どである。木や骨と布、革で作られる。

  革製品、一般。革製鎧以外の革の物を担当する。

 

 細工

  金属細工 簡単な蝶番なども細工で作られる。

  宝石細工

  木製細工の一部

  宝飾品である為、これらの殆どは商人のギルドが買い取って外部に販売する。

 

 

 陶芸工房と硝子工房

  通常は兼ねている工房が多いが特化している工房も見られる。

  陶器による食器一般

  硝子製品。食器や窓の硝子等の他、硝子細工も含まれる。

  

 

 一般技術者ギルド

  少し特殊である。

  ギルドマスターは存在するが親方はいない。

  親方の代わりに副マスターと事務員によって構成され、依頼の貼り出しと受け付け、達成状況の報告、報酬支払いが行われる。

  いわば便利屋仕事の斡旋所である。

  ここの会員は依頼人の依頼を受けて様々な作業を行う、便利屋となる人。

  生産ギルドに所属しないが技術はある人等。

  人と会話が出来る事や挨拶が出来る事など、最低限の会話能力は必要である。

  このギルドがある事でちょっとした事はここへの依頼で解決される。

 

 

 魔法師ギルドや治療師ギルドは生産ギルドとは少し違う。

 

 魔法師

  魔法士たちは魔法師に弟子入りする。魔法師から精霊の属性魔法を教わる。

  精霊魔法と呼ぶ人もいるが、本来四属性の精霊の力を借りる方法である。

  属性とその適正が無い者は入る事が出来ない。

  属性ごとに、魔法師ギルドがあるわけではない。

 

  師匠によってその特性や属性が異なるので、弟子は適宜師匠を選択する。

  師匠は弟子に教える事で報酬を得る。つまり弟子は授業料を支払う事で教えて貰う。

  この事で分かるように、教えてもらう資金が予め用意出来ない人は弟子入りできない。

 

  弟子は、通常は精霊の力によって便宜上魔法と呼ぶ薬を作って、それをギルドが買い取り外部に魔法薬として販売する。

  その販売し得た収入を弟子たちに報酬として還元する。

 

  付与魔法を物品に付与するのも、重要な収入源である。

  魔法師の家では直接外部からの依頼を受け付けていて、弟子たちが行う。

  この際に魔石が必要になるために魔石の買い取りも行っている。魔石は触媒である。

  また魔石を触媒ではなく、燃料のようにして使う魔道具の制作も彼ら魔法師の仕事であり、重要な収入源である。


 

 治療師

  治療行為一般を行う。

  薬草採集や薬作成も行う場合がある。

  通常はギルドが建設した治療院にて治療行為に従事し、報酬を得ている者を治療士と呼ぶ。この下には、見習い治療士がいる。

  このギルドには王国からの補助金が出ていて、治療行為をする人たちが生活費に困る等という事が無いように取り計られている。

  治療士になるには、才能が必要である。才能が全く無い者は薬草採集や薬の作成等に従事する事になる。しかしこうした人は薬師ギルドへの移行を勧められる事が殆どである。

 

  独立治療師

  ギルドに所属するが、独断で治療行為を行う事が認められた人である。

  こうした人は治療院で後進の指導に当たる傍ら、治療行為の俸給をギルドから受けて暮らす人も多い。

 

  また治療師ギルドには魔獣討伐など冒険者ギルドからの依頼で、手の空いている治療士が派遣される事もよくある。

  派遣指名は拒む事も出来るが、その場合は原則として罰則があり、罰金を支払う事になる。

  派遣された場合は、報酬は治療師ギルドと冒険者ギルドの両方から支払われる。

  治療師ギルドから出るのは日数分の勤務手当と場合によっては危険手当である。

  冒険者ギルドからは危険度評価の高いもの程、報酬が高額になり支払われる。

  派遣された治療士の任務が例え失敗でも一定額は支払われる。

  治療する人々は手を抜かない事が前提であり、それが冒険者ギルドを支えている。

 

  独立治療師にはお願いは出来るが、拒否されても罰則はない。

  独立しているから、あくまでもお願いである。

 

 

 薬師くすしギルド

  治療は行わず、薬を作製しそれをギルドに納める。

  ギルドはそれを適宜販売する事によって得た報酬の一部、場合により八割をメンバーに支払う。

  いくつかの薬は治療師ギルドに直接卸される。

  師匠の元で薬を学ぶ見習い薬師は無給である。師匠は弟子の生活の面倒を見なければならない。

 

  独立薬師

   ギルドに所属するが、独断で薬を作製して全国に行商する者である。

   独立薬師は商業ギルドからのお墨付きを得て、国内全てで薬の販売が行える。

   従って独立薬師は、とにかく信用のおける人物でなければ、なる事が出来ない。

 

 

 お酒生産ギルド

  お酒の消費が増えた為に作られたギルドである。

  ギルドマスターは必ず王国の人が務める。

  各工房で作成するお酒の種類と量はマスターと親方によって決められている。

  必要な農業生産物は王国の係官と相談の上、国庫の農業生産物が支給され生産する。

 

 ギルドにはならないものに、農業生産物がある。

 全て王室管理である。農業管理指導者が存在し、彼らの指導で植える物やその時期、場所、作付面積なども決められている。これらはほぼ全て計画農業である。

 通年、作付け出来るものであっても、連作は禁止されていて植える場所を代えなければならない。

 この農業管理指導者らの専門議会が、王室には存在する。

 

 王室御用達の商会やお酒生産ギルドには生産物が卸される。

 多くの穀物等は王室が管理備蓄するが国民には十分な量が配給される。

 国民に対しては、完全配給制である。

 

 また、食品加工にはギルドが無い。独自に行う事が出来る。

 これらは一部の商人が取り扱い、販売されている。

 

 

 漁業ギルド。

  王国が漁業を取り決めしている。

  東のムウェルタナ湖とほぼ中央のカーラパーサ湖が主な対象である。

  海は管理の対象外である。

 

  ギルドの管理とは、一つの船で獲ってもいい量を厳しく制限している。

  陸からの場合は、一人が獲る量が制限される。

  取りすぎてはいけない。しかし陸からの漁獲量には下限はない。

 

  船の場合、通年漁獲できる湖での漁は少なくても、多くてもいけないので、取りすぎると罰則がある。

  漁獲枠の下限以下だと、来年からの漁獲量の上限枠が引き下げられてしまう。

  ただし、全体的に不漁だった場合、原因の究明まで全体の漁獲量そのものが最低限に引き下げられる事もある。

  これによって、資源の乱獲を防ぎ流通量を管理するのが、漁業ギルドの役目である。

  各船がとった量を記録し、商業ギルドにある各商会に卸販売して行くのが大きな仕事である。

  漁獲量を誤魔化す漁師には罰則がある。

  獲った魚が生きている内に逃がすのは問題がないが、誤魔化すために死んだ魚を廃棄する行為は固く禁じられている。

 

  漁獲枠の上限を何度も越える漁師は、漁に出る日を制限されるようになる。

  なお、河川での漁獲は舟を持つものは、漁業ギルドに登録する必要がある。

  舟以外の場合は漁獲量が一定枠以下である限りは自由とされている。

 

  生き物相手なので、漁業ギルドの中に細かい規定が多数ある。

 

 

 商業ギルド

 

 商売にもギルドがある。

 ただし、此処でいう商売というのは、商品を流通させる方であり、輸出や輸入、あるいは国内で各種の商品の移動を請け負い、金儲けする商人たちの集まりだ。

 それぞれの家や一族で営む商会が集まり、種々様々な調整を行い互いの便宜を図るために商業ギルドが存在している。

 そしてこの商業ギルドに所属している商会の許可がなくては、一般への商売も出来ない。

 そうやって自分たちの権益も守っている。彼らはその権益を得る見返りに国に多額の税金を収めている。

 ギルドマスターは必ず王国の役人が務める。

 また、商業内容を管理するために、商業ギルドには監査官が派遣されており監査の他、税金の納税指導なども行う。

 

 一般小売の商売人が商業ギルドに入るには、高い障壁がある。

 まず、資金である。次に扱っている商品が吟味される。

 その国の禁輸品などを扱っていないか、また外国とのやり取りとなれば、公用語以外にもその相手国の独自地方言語が話せなければならない。

 そして、ギルドへの上納金を収める。

 これで商業ギルドから外とのやり取りが可能な証明書が発行されるのである。

 

 なお、奴隷商売を公式に認めている国は絶無ではないが、殆ど存在しない。

 この王国では奴隷売買は重犯罪行為である。

 

 金貸し商人。

  金貸しだが、これは必ず登録した上で行う。

  手数料と利子は商業ギルドによって厳密に決められている。

  違反すると商会にも罰則規定が有る。

  営業を行う物は必ずギルドの会員識別標章を提示。忘れて来たりすると営業できない。

  不携帯だけでも罰金。その者の所属する商会にも罰則規定が有る。

  無許可はモグリだが無許可営業の彼らを取り締まるのはこの国の憲兵である。

  

 両替商人

  両替を行い、手数料を取る。この手数料は商業ギルドによって厳密に決められている。

  これは登録が必要である。商業ギルドの会員識別標章を提示しなければならない。

  金貸しと兼ねている商人がまま見られる。

 


 一般の小売店は、どこかの商会に上納金を納める形で、傘下に入り一般の商いを行う。

 傘下に納めた商会が、いわば親方となり監督する責任を持つ。

 飲食店や屋台まで商業行為を行う店は全てが対象である。

 


 

 ─────────

 冒険者ギルド

 

 ギルドの中で唯一違うのが、冒険者ギルドである。

 冒険者といえば聞こえがいいのだが、中身は多様であると言っていい。

 

 本来ならきちんとした親方に該当する中心人物とその部下という形であるべきなのだが、冒険者ギルドだけはその形をとっていない。

 街の乱暴者と大差ないような低級冒険者や山賊、追い剥ぎとしか言いようのない者たちも混ざる。

 しかし、このような者たちでも一度登録されたのなら、規定労働基準量をこなしているか、王国の法を侵さないで仕事をしているか、ギルドの規律を破らない限りは、資格は失わない。

 

 その一方で充分な剣技や戦闘術をもつ冒険者もいる。

 玉石混交の完全実力主義の業界である。

 

 ここでは冒険者と言っているが、この王国では依頼内容は護衛、一部の駆除の難しい野生動物とか魔獣討伐が主になる。

 後は依頼人の出す依頼による。多いのは、人探しや物探しである。

 

 難易度の低い仕事は、人出の足りない肉体労働が殆どで土木工事の補充要員という、冒険では無い依頼も多々ある。ここには王国の事情も絡んでいる。

 一般技術者ギルドで人が集まらない不人気な物がこちらに回されてくる。

 

 魔獣に関しては王国からの依頼によりギルドを経由して行われる事がある。

 国の北に大きな森を抱え、広大な亜熱帯地域に大量に危険な魔獣が棲んでいるのである。

 国から大規模な討伐が依頼される事もあり、その場合はいくつかの支部から会員が選出される事もある。

 魔獣討伐して、その魔獣たちの魔石や牙などの部位品をギルドが高額で買い取る事で、冒険者の参加意欲が維持されるようになっている。

 

 簡単な危険を全く伴わない依頼は主として一般技術者ギルドで行っているので、こちらの冒険者ギルドは単純肉体労働か、危険が伴う依頼が対象という事にはなっている。

 

 冒険者ギルドでは依頼難易度とその遂行実績で冒険者に階級が付けられている。

 一度上の階級に上がっても実績を積まずに遊んでいれば階級は下る。

 常に上位に居るには研鑽と難易度の高い依頼をこなしている必要がある。

 

 ただし、最上位階級はその階級に見合う依頼も少ないので、例外がある。一定の期間依頼がなくても階級は下がらない。

 しかし、高難易度の依頼を指名された場合、拒めない。が何らかの理由で拒む場合は罰則として高額の罰金を支払う事になる。

 

 

 階級最下位で一定の期間、これは一八〇日、実績を積まない場合は体の不調などの理由を除き、最悪、階級枠から外され除名となる。

 体の不調でも二年以内に最低限の依頼をこなせない場合、やはり除名が待っている。

 

 何らかの理由で一度除名になると、再度登録するのは、難しい条件がつく。

 

 まず、犯罪行為で資格はく奪された場合は、それが冤罪だった場合を除き、永久追放処分では無い場合でも五年間は再登録が出来ない。

 

 次に、ランキングに登録されている冒険者三名と、練習試合で各々三本勝負で最低一本は取らなければならない。つまりは合計三本は最低取れないと再登録されない。

 最初の一名から三本取ったからといって、残り二名との戦いが免除されるわけではない。

 つまり九戦しないといけないのである。これは相性や偶然を取り除くために決められている。

 この時、対戦するのは除名前の一番高かった時の階級と同じ階級の者一名とその一階級下の二名。

 階級が一番下だった場合のみ、最低の階級の者三名。という形で行われる。

 

 

 冒険者の階級はきめ細かく決められ段階がある。

 一番下は、青銅、次が真鍮、そして鉄、銅、銀、金、白金となる。

 各々、一つの階級に無印から○三個までの階級が有り、四段階ある。

 この〇は階級章には左側に刻まれる。

 

 全二八段階となるが、白金だけ○三個の上にーという横棒を一ついれただけ、という階級章がある。

 この階級章は最高位である。現在持つものはいない。

 つまり、ー入りの白金の階級章は決められてはいるが、現存していない。

 

 青銅は銅と分けるために青銅には右に▽二個が刻まれる。

 真鍮と金を分けるために真鍮には右に▽二個が刻まれる。

 また銀と白金を分けるために銀は右に☆二個が刻まれる。

 鉄は⊿が右二個刻まれる。銅は⊿が右に三個刻まれる。

 これにより階級は一目瞭然となる。見た目の色と刻まれた記号で分かるようになっている。

 鉄と銅は錆びやすいので記号が刻まれている。またそれを見分けるために数が違う。

 ▽が刻まれた階級章は下層階級を表している。

 ⊿が刻まれた階級章は魔獣狩り初級。

 ☆か無印となると中級、上級となる。

 

 そして右に何も刻まれていない階級は上位二つだけという事になる。

 

 鉄未満の階級はいわば冒険者としては下層である。危険の少ない依頼が彼らの仕事になる。殆どの場合、土木作業などである。

 鉄階級は下層としては最上位になり、ここでようやく本格的に魔獣の撃退に参加できるようになる。

 魔獣狩りとしては鉄と銅が初級。銀は中級。金で上級となる。

 最上級になると白金であるが、無印の白金ですらたどり着くものはそう多くない。

 ○一個付く者は僅かである。

 

 なお材質だが白金は極めて貴重であるため、銀四割を混ぜた粉末を焼き固めたものである。なお王国の最高の白金貨幣は混ぜ物がされていない。従って、この階級章を溶かしても、国家の白金貨幣は作る事が出来ない。

 金は銅を四割ほど混ぜた合金である。その為に色が赤い金となっている。

 理由はまず金が材質として軟らかい為に銅を混ぜて強度を上げている。これは国家の流通硬貨も同じであるが比率が違い、国家のは銅を三割混ぜている。

 真鍮と青銅は、それぞれ銅に錫や亜鉛を混ぜた合金で、どちらも四割ほど混ぜている。

 鉄には混ぜ物がない。

 銅は錫一割、亜鉛一割が混ぜてある。これは銅も材質としては柔らかいからである。

 

 この階級章は、特殊な形状をしている。横に少し長い長方形の金属だが、スプーンの様に凹んでいる。

 つまり表から見ると丸みを帯びて凸状である。

 そこに左右に穴が開けられ、鎖がついている。大きさは、大人の親指程度である。

 

 冒険者たちはこれを首からかける。この金属の表に丸が刻まれていれば、同じ階級の中でも上位なのか下位なのかが分かるようになっている。

 凹んだ裏側に、本人の名前とギルドが認めた本人の実績の一部が神聖記号で刻まれる。

 これは特別な加工がされていて偽造防止がされている。

 ただし鉄以下は、本人の名前は共通語で刻まれる。しかし、偽造防止はされている。

 

 これは冒険者ギルドが存在するすべての国に出入りする身分証明書となっており、紛失すると大変な事となる。

 

 全てに偽造防止はされているが、偽造は一度発覚すると重犯罪であり、冒険者ギルドのある、どの街、国においても弁明の余地なく牢屋行きである。

 

 なお紛失盗難の場合三〇日以内に再発見しない場合は、階級を落とされての発行となる。

 紛失されたこの金属が別の人によって使われた場合、その理由によって厳罰が待っている。

 

 冒険者ギルドに登録される条件は、以下の通り。

 

 一つ目、ギルドマスターが認めた場合。この場合は一切の試験は不要である。

 二つ目、ギルド会員複数による推薦。

 これは最低でも銅以上の者四名以上の数名、又は銀の者三名以上又は金の者二名以上となる。

 なお、白金ならば一名でも可能である。

 これにより、ある程度は信頼できる者を登録する事になる。

 三つ目、ギルドの事務員から指名された教官、又は指名を受けたギルド会員との実力試験に合格。

 四つ目、他ギルドマスターからの紹介状。

 この四つ。

 

 四つ目だけ、特殊である。これは冒険者ギルドに登録された人ではなく、紹介状の人物を一時的に冒険者ギルドに所属している会員として、その当該ギルドが使役したいという場合であって、めったに見られない事例である。この場合期間が決められる事が多い。

 これは一時的に身分証明を与える場合に行われる。

 

 この場合は、その人物の実力に関係なく、銀の階級章が出されるが、本来銀に与えられる☆ではなく△が一個だけ刻まれ、左側は▽という、特別な階級章である。

 どこにおいてもきちんとした扱いを受けるよう銀となっているが、正規の冒険者ではない事を示す為に、他では使っていない右△と左▽が一個である為に、ギルドの事を知る誰でも判るようになっている。この特別な階級章には縁にぬられる色は白と決まっている。

 この階級章は表に依頼元のギルドマスターの名前が神聖文字で刻まれ、裏側に本人の名前も神聖文字で刻まれている。

 この階級章は盗まれると依頼元のギルドマスターの責任となる。

 犯罪行為に使われた場合、大きな罰則が与えられる為に、この紹介状とそれに伴う発行は滅多に行われない。

 

 

 階級章には職が分る様に周囲に色が付けられている。

 前衛、盾役や前衛戦士たちは、赤い。赤の太い枠線。

 前衛と中衛、両方を担当する者はこの赤い線の内側に黒い線。

 

 中衛は黒の枠線。

 槍戦士など。様々な武器を使う戦士もここ。

 

 後衛。

 弓士は黄色の太い枠線に内側は白い線。

 

 魔法士、太い紫の枠線。

 通常は魔法師ギルドからの派遣である。中には冒険を好んで魔法師ギルドから鞍替えする事例も若干見られる。

 

 僧侶。青の枠線。

 僧侶は最低でも鉄以上であり、通常は銅階級である。

 普通は僧侶は神殿などに居るために、こうした冒険にはこないのだが、死者を弔う為に戦える技能を持つ僧侶が特別に派遣されているからである。

 

 治療士。濃い緑の縁取りに茶色の線がその内側。

 ただし、これの無い治療師も稀にいる。

 独立治療師は二つ以上のギルドに登録されている事が有り、その場合は既に幾つか階級章を別に持っている事がある。そこで縁取りの色なしという階級章を与えられる事がある。

 ただしこれはギルドが特別に認めた場合に限りであって、その場合最上級の治療師の証である。

 通常、独立治療師を除き、治療士は治療師ギルドからの派遣である。最低でも銅階級の上位の者か銀階級の者たちが派遣される。好き好んで治療師ギルドを抜けて冒険者ギルドに登録する者はいない。

 

 

 通常の場合、派遣されて来た者たちは、冒険者ギルドの階級章だけを身につける事が決められている。

 混乱を防ぐためである。

 

 

 なお、他の多くのギルドには階級章は無い。冒険者ギルドと一部のギルドに限られる。

 

 階級章を発行しない各ギルドは、ギルドが発行するギルド会員章が有る。

 これは冒険者たちのものと異なり、円形をしており表にギルド標章。

 通称、ギルド識別標章と呼ばれている。

 裏に親方の工房名とメンバー名が共通語で刻まれる。これに鎖を付けて首からかける。

 親方のない一般技術者ギルドには、裏側に自分の持つ技術を四つまで登録する事で、それが名前と共に神聖文字で刻まれる。

 漁業ギルドではギルド会員章の表にギルド標章、裏には個人名が共通語で刻まれてある。

 商業ギルドではギルド会員章の表にはギルド標章の下に共通語で商会名称が刻まれ、裏には個人名が共通語で刻まれてある。

 これらも偽造防止はされている。


 この様にギルドにより、些細な違いが有る。

 

 その他にも詳細事項はあるが、概要は以上である。

 

 かなりまともな、感じがした。

 文化度合いは、案外高い国という感じだった。

 各職業集団毎に、取り決めはあるのだろうが、たしかに概要の把握には役立ったようである。

 次回 新生活2

 鍛錬にいそしむマリーネこと大谷。

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― 新着の感想 ―
[一言] 大分文化レベルが高いというか、管理が行き届いているというか。 そうとう治安がいい国のようですね。
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