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043 第8章 季節の変わり 8ー6 お洒落着作成

本格的に縫い始めます。意外に見えるかもしれないのですが、大谷はコツコツ作業は大好きなようです。

裁縫で自分がお洒落だと考える所の服を一気に増やします。

 43話 第8章 季節の変わり


 8ー6 お洒落着作成


 起きてまずやるのはストレッチから。

 渡り廊下を通って鍛冶屋の鍛冶場に向かうが、雨はずっと降り続いている。

 空は均一に曇っている。動いているのかすら判らない。

 

 鍛冶場で、槍の鍛錬、剣の鍛錬。

 途中で井戸で手をよく洗って、顔を洗い汗を拭いておく。

 

 裁縫屋に向かう。

 そして汚れていないしょっぱい子供服に着替える。

 鍛錬も重要だが、これからの裁縫作業中に布を汚しては意味がない。

 

 ……

 

 昨日のやるべきリストを思い出す。

 

 まずはベルトだな。

 ループ用に同じ色の革がいるので、先に少し切っておく。

 さて、革のベルトを延ばしておき、左端は三角になるように切る。

 そして、革の縁の内側を太い糸で縫う。これが意外と大変だ。

 力がいるとか、そういう話では無い。どうせ私の腕は怪力。

 針を折らないように気をつけつつ、一定間隔で、なおかつまっすぐ縫っていくのが大変なだけだ。二重に縫う。丈夫さも増す。

 

 たぶん元の世界なら、こういうのをやるミシンもあるのかもしれない。

 私は見た事もないが。

 これが終わったら、バックルの左裏側の細い帯状の穴に革を通して、裏側で縫い付ける。

 かなり頑丈に縫う。そうしたらこのベルトのバックル近くにループが必要だな。

 細い革で作ったループ、この裏側にやはり細い皮でバックル近くに縫い止めておく。

 

 ま、バックルは上下左右対称なので、左にベルト巻こうが、右に巻こうが問題ない。

 よし、まあまあの出来か。

 そして、今のズボンの手直し。

 まずダガーを両方の腰に着けられるようにする。

 腿も外側にダガーをつけて置けるように工夫しておく。これで最大四本着けられる。

 

 まず鞘を納められる様にした形状のポケットをつけてもう少し上のほうにダガーの柄の下、剣の刃と鍔のところに来るようにループを作る。

 左右に付ける。剣を背負った時に腰ではなく腿にダガーを両方させておける様にする。

 

 これは剣を腰に付けた時でもぎりぎり当たらない位置が望ましい。

 左側に剣を下げて完全に干渉しない位置なのは結構下になるが、腰を起こしていても抜けるので問題はない。とは言え、膝の所まで剣の刃が届くのは、あまり良くない。

 出来るだけ腰に剣を下げている時はこっちにダガーは差さないようにしよう。

 この製作は位置の調整、ベルト制作も含め、三日。


 さて次はワンピースの手直し。

 まず、裏地の布を付ける。

 一回縫い合わせた所を分解するのは気が引けたが、薄い布なので、下が透けてしまう。

 寝間着なら問題ないが、外出着で下着が透けているなど、『却下』であろう。

 

 デザイン上、踝までの長さにしていたが裏地を付けるなら、

 せっかくなので装飾を入れる。

 裾の下にやや大きめのフリルを縫い付ける。その長さも入れて、踝より拳一個分、上とする。

 頑張って裏地を縫っていく。縫い合わせて、再び縫い戻す。


 そして腰の処、白い布でベルトを通せるループを後ろ、左右の横などに付ける。

 腰の真後ろには大きなリボンが着けられるように小さめのボタンを並行に二個つけた。

 ここに着けられる大きな白いリボンは頑張って作成。ボタン穴付き。ボタンで留めておける。これは完全な飾りなので、無しでも全然問題ない。

 

 まあこれで外で着る専用にする。フリルも付いてお洒落になったと思われる。

 この制作には、分解も含め七日間かかった。

 

 ……

 

 では次だ。

 寝間着のワンピースを作る。

 サイズなどは今のワンピースのままなのだが、肩のパフは廃止、腕の袖の先での膨らめてあるのもストレートに。袖口は若干飾りっぽく作る。円筒のぶった切りをただ付けました。では味気がなさ過ぎる。

 

 紐で編み上げる前の部分は胸の下から胸の上で終わりにする。

 首の襟ぐりはわずかに付ける。

 先に作った物からの変更はわずかだが袖口の事も有り、それでも製作には五日間を要した。

 

 降りしきる長雨の中、裁縫による服の製作は続く。黙々と縫う日々だ。

 日々の鍛錬は続くが、水甕(みずがめ)の水の交換はこの機織りの家と村長宅、あとは鍛錬している鍛冶場の水だけになった。

 

 次は白い襟の白いブラウス。

 これは胸元に縦方向にプリーツを付ける事とした。胸の位置やや上で布を分断し、その先は横方向に左右に幅の狭い数段のプリーツを付ける。

 そしてそのプリーツはベルトで隠れる辺りで、再度布によって縫い付けるようにした。

 

 裏地も必要だ。きちんと裏地を縫い付ける。

 ボタン穴も多い。ボタン穴はすべて白い糸で処理。六個もあるので大変だ。

 ボタン穴かがり縫いの部分は元の世界のミシンの有り難みを改めて教えてくれる事になった。

 

 襟はしっかり立てられるようにやや長め。そして肩。これもふんわりパフスリーブとして二の腕の所でしっかり絞る。ここで一回、布は切断である。

 そこからさらに腕を覆う袖を付けて、袖口の所もゆったり広げる。

 たぶん、お洒落な服になっていると、思いたい。

 かなりの時間を使って作った。

 製作日数は八日である。


 次。

 襟が焦げ茶色のブラウス。

 ここはシンプルに行きたい。とはいえ、ワイシャツのような形を想像。首周りの襟は最後に縫い付けるので、別にしておく。袖口のボタンで止める襟袖も別パーツ。これらはきちんと裏地も縫い付けておく。

 

 肩のところはふんわりした程度の形、そのままストレートな袖。

 釦を六個。これは白い方と合わせる。

 これはワンピースの下に着込んで、染めた襟を出して見せる。というコンセプトなので、シンプルに作っておく。裏地も付けない。

 とはいえ。袖襟の釦が左右二個づつというのが地味に時間を掛けさせる。

 製作日数はやはりかかるもので七日。

 

 しかし、これだと下が何も無いではないか。それは却下だ。

 なので、急遽スカートっぽいものを作る。

 タックなし、プリーツもない、白いスカートもどきなのだが、履いた時にちょうどワンピースの下の長さとぎりぎり合うくらいの長さで作る。

 下の裾のところにはちょっとフリルを入れた。

 裏地も白ながら付ける。前で紐で縛る形だ。紐のところはパイプ縫いだ。

 

 やれやれ、危ない危ない。思いつきなので、こういうミスが有るか。

 このスカートの制作は五日である。

 

 次は赤いリボン。

 これは首の所で蝶結びにして、それっぽく上品に見えれば。というものだ。

 必要な長さの判定をして、この裁縫のところにある白いリボンの塊から切り出した。

 端の処理をきちんとやらないとそこから崩壊する。後で赤く染色する。


 次は、うす蒼いスカーフと若草色のスカーフ。

 あとは赤いブラウスに使う為の白いスカーフ。白いスカーフは二枚。

 スカーフに使えそうな布はあったので、これで表に裏地をざっくり裏返して簡単に縫い合わせる。

 かなり大きめなハンカチのような物を作る。本来ならば、表地の四隅に刺繍とかお洒落にする要素を盛り込むべきだが、刺繍は大変過ぎるので諦めた。


 そうしたら縁を全てみっちりと目の詰まったかがり縫い。本当ならこれはロックミシンとかでやるべき作業であろう。確かそういう縫い方が出来るのがロックミシンだったはずだ。

 地味な作業な上にかなりな根気が必要となった。もちろんロックミシンなど無いから手作業である。

 

 四辺全てをみっちりと目の詰まったかがり縫い、それを四枚とか作るのはとても三日四日では無理だった。

 この作業は八日である。あとで二枚は染色する。

 

 然し、五〇も過ぎたおっさんプログラマーは過去にこんな物など比べ物にならない程の地味な根気のいる作業を何度もやっている。

 

 今ならば、おおよそ考えられないだろうが、バカでかい業務用プリンターに沢山の継った用紙が入れられている、そのプリンターでプログラムコードを全て印刷。

 厚さ四〇センチから五〇センチはあろうかという紙の束が渡されるのだ。

 

 他人の作ったそれを、机の上で一枚づつ一行づつ、目視で確認し赤ペンでチェックして行くという、トンデモナイ根気が必要な、どういう拷問なのか、はたまた精神修養なのか、という作業を何度も繰り返させられていて、地味なコツコツ作業は慣れている。

 こういうのが毎日毎日三ヶ月も続くと流石に(うつ)になりかけたりして心が荒んだ。


 今は自分用のお洒落服の製作なのだ。

 全く持って問題ない。

 

 さて、いよいよお洒落着の二つが登場である。

 丈の短い上着。前襟の部分をかなり頑張ってデザインする。

 

 デザイン全体は黒スーツの変形だ。元の世界の男性タレントたちがステージで着用していたような派手な柄の丈の短い上着を形だけイメージしている。なのでポケットは、ない。

 

 裏地は全て適当な黒に染める。

 表は赤。前襟は裏地が黒になるのでそのまま黒が出る。この襟は三角形が二つくっついたような形をイメージする。スーツの襟によくあるやつ。

 肩の部分はかなり頑張ってがっちり膨らんだ形にしてたっぷりとした袖を下におろし、袖口の手前で大きく広げる。そして急に絞って袖口を付ける。

 

 体の部分は布がやや厚い感じになる。裏地の布は仮縫いだ。全てが仮縫い。

 出来上がった所で仮縫いをばらして、赤と黒の桶で染める。

 この染色の時に、スカーフや焦げ茶の襟などもやっておいた。

 染めた後はアイロンを掛けてしっかり延ばし、それから本気の縫い。

 

 前襟の縁はコレまた白い糸でかがり縫いだ。この白いかがり縫いは結局、縁の部分全てに行った。

 後ろのプリーツもきちんと処理する。このプリーツは殆どデザインだ。一〇センチ程。

 肩とかに飾りをつけたいのは山々だが、適当なものがない。

 それならせめて錦糸で金のモールとかやりたいのだが、無いものは無い。

 

 一応、コレで完成。

 この服はデザインも試行錯誤で製作に二〇日かかった。

 

 既に六三日。雨は一向に止む気配を見せない。

 マジか。という感じだ。

 

 とうとう、最後。

 

 最後は濃紺のケープ。

 デザインは前に思いついたやつを頭の中から取り出して実際の形にする。

 

 あえて丈の短い襟付き、ケープなので袖は無い。丈のうんと短いマントに近い形状だ。

 アイロンできっちりと襟を付ける。

 

 肩にかかる部分に一見飾りの細い革のベルト。

 半ば飾りだが、このベルトの先、輪っかに出来る様に更に細いベルトも付ける。

 ここは釦の一番小さいのを先端に着けて回転、或いは取り外し可能とする。

 これを使うときは、ここのループに袖を通す。そうするとケープが腕に連動する。そういうデザインだ。

 

 前は大きめのボタン一つ。ボタン穴は白い糸でかがるが、これは布を染めた後だ。

 布は二重にする。裏地にも同サイズを縫い込んで裏地にするのだが、これは最後。

 裏地はお約束、赤で染める。

 

 よし。イメージは固まっている。

 制作開始。

 

 細かい作り込みをしていく前に、仮縫い。

 表は濃紺、裏地は赤で染めてやり、それから乾かしてアイロンがけ。

 革の細いベルトは染めない。革の工房に行って適当な物を見繕い、縁は白い糸で補強。

 これに地味に時間が取られた。

 

 これを持って再び機織りの家。肩の部分に縫い付けるが、ここで布は裏に少し当てて補強する。負荷がかかったらそこから破れました。では話にならないからだ。

 

 仮縫いする前に。表側の布の白いラインを糸で縫って出していく。

 ここは慎重に太さ一定、縁からの距離一定だ。

 かなり時間がかかる。

 

 休憩も挿みつつ、ひたすら縫い、時々定規のような板を当てて歪んでいないか確かめる。

 完成したらまず仮に縫ってやり、後ろのプリーツもあるので布を一部ひっくり返しつつ裏から縫う。裏からの縫いが完了したら、もう一度ひっくり返して最後の部分を閉じる。それから縁のかがり縫いだ。

 

 釦穴もかがり縫い。白い大きい釦を取り付ける。

 襟の部分をしっかりアイロンがけ。数回。癖をつける。

 あとは全体をアイロン掛け。

 

 出来上がってしまえば、なんだこういうものか、で終わりそうだが縫うのは相当大変だった。

 製作期間は二八日。この時点で総合タイムは九一日。

 

 最後に。これと合わせて使いまわせるように、白いブラウスの下に履くスカートを考える。

 このケープに合わせたいのだ。

 

 予定外の制作だ。

 どういう形がいいのか、そこから。

 

 スカート丈は膝下、拳一個。

 上は腰位置。スカートはプリーツ二本。このプリーツは腰の両脇に。

 色は濃紺か黒の二択。ケープに合わせて濃紺が無難か。黒も捨てがたいが。

 

 ただし、このままではのっぺりなので、スカートの裾の内側にやや大きめの白いフリルを施す。

 色々妥協しているが制約が多いのでこれは致し方ない。

 

 制作開始。

 まず布地の大きさを出してやや大きめに切っていく。裏地も必要。

 一回仮縫い。

 サイズが良さそうならここで染める。

 

 この間にフリルを用意しておく。他の服は一度軽く洗ってアイロンがけだ。

 布を仮縫いし、ひっくり返して縫い上げていく。この時、一緒に白いフリルを縫い付ける。プリーツの部分はアイロンを入れて折り目を付けてその後縫い。

 

 一応これで完成か。

 この作業に八日。

 

 合わせて九九日の時間を消費。スタートから積算したら一〇〇日は越えている。

 正確には一〇二日か。

 元の世界の三ヶ月半分である……。

 

 そして、その間、雨は一度も弱くもならず、止む事はなかった……。

 何という長雨なのだろう……。

 

 よく水で溢れかえらないなと思うのだが、あの大きい湖が全て吸収し外に排水しているのか……。

 雨が上がっても暫くの間、あっちに行くのは危険だろうな。

 

 全ての服を一回洗う。もしかしたら染めた場所の色が落ちるかもしれず。

 なので、白い服は別にしておく。色が付いてるのは後で洗う。

 

 鍛冶場にて(たらい)を持ち込み、一枚一枚洗い始める。

 染めた部分は落ちたりはしてないようだ。軽く揉んでから広げて陰干し。

 この鍛冶場にロープを張って、どんどん干す。

 

 乾いてきたら、全部アイロンがけをする。

 寝間着のワンピースを持って村長宅へ。

 早速夫人? の部屋で着替えて寝てみる。

 よさそうだ。これで他の服もうまくいってるといいのだが。何しろ姿見鏡なぞ無い。

 その場の雰囲気と勘が全てだった、かなり無茶な裁縫である。

 

 合間には当然、燻製肉を作ったりもしていたが、裁縫三昧の日々だった。


 本当に全く持って、雨が上がるのは一体何時なのだろう……。

 

 あらゆる物が(かび)ていてもおかしくないのだが……。

 

 ……

 

 

 つづく

 

とうとう3か月以上、雨が止まない。

こうなると以前から作ろうとしていた、武器もやりたくなってきたわけです。


次回 再度武器作り。

たぶん、本格的に作るのはこれで一区切りだと思われます。

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