040 第8章 季節の変わり 8ー3 武道の真似事
長雨の中、出かけることも出来ない、マリーネこと大谷。
体を動かさないとなまってしまうと、思って、やり始めた事とは。
40話 第8章 季節の変わり
8ー3 武道の真似事
毎日毎日、雨が降り続く。
起きて最初にやるのはストレッチ。軽く体を解す。
もっと体を動かさないと体が鈍るし、勘も鈍る。
しかしこの雨では外で訓練ができない。
よし、鍛冶屋の鍛冶場を使おう。
炉と炉の間の扉を開ける。
ここは渡り廊下のすぐ反対側が倉庫なので、早々に雨が吹き込む事もない。
土間は色々片付ける。
塩を置いたテーブルや椅子、塩壺、水甕も位置をどかし、お風呂桶も立てかける場所を少し移動。
砂の入った樽もどんどん隅に追いやる。
砂場は動かせないが。
まず槍の練習用のダミーを中央に置いた。これで槍の素振りの後、突く練習もする。
槍の練習は、基本相手の突っ込み速度を自分の威力へと変えるカウンター狙い。
あとは突きの位置の正確さ。
若干投擲もやりたいが、実戦で投擲していたら槍が足りなくなる。ここは自重。
次は剣の素振り。実戦剣を学ぶ必要があるのだが、ソロではきつい。
基本、剣道は相手と打ち合いで学んでいくものだ。型は勿論、いくらかは習っているが。
木刀の型になると形式的な物にならざるを得ない。
木刀で本気で殴り合えば骨折。何しろ道着と袴だけだ。防具はつけない。
下手したら死んでしまうので、そんな危険な事は出来無いから良くて寸止めによる対峙。
勿論、段を取りたての様なひよっこには、なかなかやらせて貰えない。
さもなければ、ソロで木刀を振るうのは形や剣筋が正しいのか姿勢が正しいか、どこを見ているかとか、そういうのが審査される型の披露の為の練習がほとんどだった。
基本、左右面切替しとか左右胴切替し、持ち替え片手切替し等といったのも形として全部やる。
次、右八相の構え。
諸手左上段の構えから、そのまま右拳を右肩の辺りまで降ろす形で、剣位置は剣止め、つまり鍔を口の高さにし、口からほぼ拳ひとつ離す。
構える時、左足を踏み出し剣を中段から大きく諸手左上段に振りかぶる気持ちで構え、刃は相手側に。
ここからやや振り下ろすように、一気に斬る。
とりあえず魔物相手には、剣の速度だ。打ち込む速度、振り下ろす速度、払う速度を上げていくしかない。
あの黒ぶち狐もどき二匹の時に出せた速度の限界を練習で出すのが出来れば……。
次にああいう危機的な状況の時に限界を超えた速度を出せるのか。そこがポイントだな。
ダガーの素振り。これも速度が重要。
ダガーは、やはりリーチのなさを投げる事で補うので、投擲の練習もしたくなった。
大工の工房に行き丸太を切っただけの丸い状態に一部上に穴を開けて紐を通し、鍛冶場で槍のダミーの袋の代わりにこれを吊るし、的にした。
ダガーを投擲する。ガツガツ当てていく。しかし、これまた速度を上げるのは難しい。
投げる場合はコントロールが最優先だが、それでゆっくり飛んでいくのでは使い物にならない。
速度と威力を上げる為に、投げる時は全力投擲してきた。
今まではそれできちんと当たっているから問題ないが、外さないよう練習だ。
ダガーが一本しか無いと当てては取り行く必要があるので、もう三本くらい作りたいな。
ブロードソードも予備がほしいし、今度また鉄塊から作るしか無いな。
さて、いつもの練習を終えた後は、この的を片付けてスペースを作る。
さらに軽くストレッチをする。手首、足首を良く解し、開脚も入れる。
全身を少し回して更に全体を解す。股間が左右きちんと開くか、確認する。
開脚がまともに出来ないと一連の動きが駄目になる。
次は空手だ。
遙か昔、四〇年前にやった道場空手だが、思い出せるだろうか。
さて、古い記憶を思い出してみる。眉間に右手の人差し指を押し当てる。
ぼんやりとあの当時の型が頭に蘇る。
よし。
両手を握る。親指は必ず握った人差し指と中指の第二関節の上につける。
こうしないと実際に突いた時に指を怪我する。
握った手の甲を下にする。そのまま両手を腰に着ける。
一礼。
少し膝を曲げて腰を落とし肩幅くらいに脚を開く。踵はやや浮かせる。姿勢を正す。
そこから右腕の拳を目の高さやや下くらいの前方位置に突き出す。
この時手の甲は上とする。つまり捻りながら前に出す。突き出す方は必ず腰を入れる。
右手を腰に引きつつ左手拳を同様に突き出す。
左右で五〇本づつ。正拳突きの練習。
左足をやや前に出し、踵は上げておき、半身に構える。
右足は左足の踵の半歩ほど後ろ、右方向に直角に開いて踵は浮かせる。腰は中腰に近いところまで落とす。
つま先立ち。猫脚というやつ。姿勢は正す。背を伸ばして顎を引く。
左拳は肘を軽く曲げ目のやや下のほうに軽く突き出す。右拳は引いて腰につける。手の甲は下向き。
ここから左足を前に蹴り出す。中段蹴り、下段蹴りと蹴りを入れ、そして上段に蹴り上げる。
上段で蹴った後、暫く止めて、きちんと脚が伸び上がって綺麗に脚が開いている事を確認。
この時、右足は結構開き気味。かなりガニ股になるのだが、そこは武道なので仕方がない。
右膝をやや曲げて腰が落ちているほうが重要である。
ここで体を入れ替える。右足を前に出し同様に中段、下段、上段と蹴り上げる。
交互に一〇本づつ。
ここで右足を大きく後ろに引いて、腰をどっかりと落とし、頭の高さをぶらさないように、後方に下げた右足を前に大きく素早く蹴り出す。中段。
蹴ってすぐ脚は元の位置に戻す。腕は肘で直角に曲げて拳を上にして両手ともその形で固定。
これを二〇本。そして次は左足を大きく後ろに引いて同様に前に蹴るのを二〇本。
全て踵は上げたままだ。
次は左右の脚を揃え肩幅に開き、腰を落とし右足から、やや横からの回し蹴り。
相手の左肩に右足の甲を当てるイメージ。左足も同様に回し蹴り。相手の肩に当てていくイメージ。
両手は肘を直角に曲げて拳を上に目の位置よりにして構える。
これは相手と対面で交互に回し蹴りを受けるので、顔を防御しつつ、相手に肩を見せて当てさせていくのだが。
今回はシャドウなので見えない相手の身長が自分の高さになってしまうのは仕方無い。
右、左、右、左、一〇本づつ。
ここで右足を前に浮かせる。膝は腰の高さ。水平になるまで上げ、つま先はこの時下に向ける。
左手は握って手の甲を下にして腰へ。右手は肘を直角。握った拳を上へ。
右足を横へ蹴りだす。つま先は前に向けておく。足の甲を上に向けるようにする。
右足の小指側の中側骨という部位で相手に蹴り込む。高さは腰よりやや上ぐらいに。
体は若干左に倒れるが、頭はできるだけ残し右を向く。右手は蹴る瞬間にやや下段気味に右足の上に払う。
これは足刀とかいう蹴りの動き…… だったはず。
脚と手を戻す。入れ替えて左のほうも同様。左右一〇本づつ。
次は握らずに右手親指を掌の方に入れ、薬指と小指を僅かに曲げる。手を顔の前に上げて、振り下ろす。
左手は同じ指で掌を上にして、左腰につけ脇を締める。
手刀という型。
左右入れ替え交互に一〇本。
手刀のまま今度は手の甲を上にしたまま右手を右に払う。払ったらすぐ手のひらをくるっと返し、右から体の中央部方向に向けて掌を戻す。これもそこに来ている相手の攻撃に当てるイメージ。手刀払いと開手刀…… だったかな。名称があやふやだな。
左右入れ替え、交互に一〇本。
手刀のまま右手を構え、左手を腰の位置から真っすぐ掌を上にしたまま相手の鳩尾に突き出す。
右手は腰の位置に素早く引く。
人差し指と中指だけで相手を突く、貫手とかいう技。
左右入れ替え、交互に一〇本。
そこから突きに入る。右、左と中段を突く。そして下段突き、上段突き。それぞれ一〇本づつ。
そして、今度は腕で払う。右から。上段払い。拳は胸の上辺りから肘を使って一気に前方上に払う。
この時左拳は腰の位置に置き、手の甲を下とする。
下段払い。やはり拳は胸の上辺り。
掌を目の方に見える位置に構え、そこから手首のスナップを効かせて一気に下方向に向けて体の内側から外側へ向けて払う。
中段の払いは、拳を顎の辺りから少し前に出して、やはり手首を反らしながら一気に右方向に払ってやや肩より開いた位置で止める。
次に左拳も同じ様に行う。左右入れ替えながら一〇本づつ。
そこで両手を引き、握ったまま腰に当てて手の甲は下。大きく後ろ回し蹴りを左から。
後方ぐるっと回って左足踵を相手の左側頭部に当てていくイメージ。
脚を戻し、次は右の後ろ回し蹴り、大きく後ろから回して右踵を相手の右肩に当てていくイメージ。
右だけ肩なのは、あの当時、勢いつけて当てていき、相手が防ぎきれず頭に当たり怪我人が出た事故があった。
で、これ以上怪我人が出ると流石にまずいとか、場所が借りられなくなるとか、そういう理由でこっちが肩になった。
極真のような空手ではない『道場空手』らしい理由である。
あの時代、頭部にも拳にも防具等、一切なかったのであった。
これも左右入れ替えつつ、一〇本づつ。
体を直し、正拳中段、で前に踏み込みつつ進む。左右一〇本。
振り返って前転三回起き上がりざまに右正拳を相手の鳩尾に打ち込むイメージ。
実戦ならここは金的かも知れぬ。
側転、右横に飛んで振り返り正拳突き。左右繰り返し正拳突きを出し一〇歩進む。
ここで振り返ってまた左右正拳突きを出しながら一〇歩進む。
前に向き直す。ここで拳を腰に収めて、一礼。
汗をびっしょりとかいていた。
いつのまにか、はぁっとか、はっとかの気合の声が出ていた……。
昔に習った道場空手の基本の型、しかもその一部だ。
ちょっと忘れていて怪しい所もあちこちあるが。
あー、裏拳入れるのを忘れているな……。
あと、もう少し足技があった気がしたが、忘れていたか。
汗を拭き、水を飲んで休む。少し休憩。
次。
思い出せるだろうか、あの謎の中華拳法。
さて、これまた古い記憶を思い出してみる。
眉間に右手の人差し指を押し当てる。
かなりぼんやりとあの当時の型が頭に蘇ってきた。
……
やれるだろうか。
師範には申し訳ないが流派の名前を完全に失念している。
やるのは『護身術』なので、基本は手技である。
まず両足を開いて立ち、リラックス。
呼吸法から。
両手親指をやや曲げ掌につける。すこし腰を落とす。
掌を両方上にして、臍の位置に持っておく。そこで両手の中指をくっつける。
ゆっくりゆっくり顎まで上げながら息を鼻で吸い込む。深く吸い込む。
顎位置で両手とも掌を返し、臍の位置までゆっくりゆっくり下げていく。息は口笛を鳴らすかのようなおちょぼ口で、細く細く長く長く吐き出す。
全て吐き出しきったら、再び掌を返す。
ゆっくりゆっくり手を上げていきながら、鼻で息を深く深く吸い込む。たっぷりと。
これを六回繰り返し、呼吸で全身に酸素を行き渡らせる。
これが終わったら、次は左手を前に目より高い位置、やや上の方に掲げる感じでだす。
右手を全身を回しながら使って外側から大きく内側に、反時計回りで回転させる。ゆっくりとゆっくりと回転。
これを3回。
次は右手を上に出し、左手をゆっくりと時計回りに回す。同じく三回。
気を練るとかいうやつなのだが、師範の様には私は上手く出来ていた試しがない。
これで準備は終わり。
次は左手を前に出す。ここからが護身術の技の開始。
指は親指を軽く曲げ、薬指と小指も少し曲げる。
肘を軽く曲げた状態で指は上に向ける。つまり手首はガッツリ九〇度曲げて指が上に向いている状態。
掌の高さは目の位置より下とする。顎より下位の高さ。手で自分の視界を遮らないように。
右手も同様に指を曲げ、手の位置は臍。掌は上方向にして右脇は閉めて構える。
脚は肩幅に開き、軽く膝を曲げる。
姿勢をただし、前屈みにならないように注意。
顎はきっちり引く。肩の力は抜く。この姿勢で左足を軽く半歩前に出す。
右足は膝を軽く曲げ、ここから中腰に落とす。
踵は両足とも浮かせる。
この姿勢で左手をやや上の方に肘ごと前に移動させるような動き。
相手が突いてきた事を想定した、相手の腕を上へと逸らす動きである。
肘を動かしてそのまま尺骨で相手の手首下の部分に当ててそのまま上へと逸らせるという、防御の動き。
そういう手技。
防御なので本来、タイミングがとても重要である。タイミングを間違うと防御にならない。
タイミングが早すぎても失敗する。
手を引いて左手を臍の位置へ持っていくのと同時に右手を同様に上に出し、相手の腕を上へと払うイメージ。
上に払われると力が入り難く、相手に大きな隙きが出来るからだそうである。
中国拳法で相手の腕を上に払いながら瞬時に掴んで、捻った後相手を転ばせたり投げたりするのがあるのだが、護身術ゆえにそんな派手な事はしない。あくまでも払うだけ。
手を入れ替え、左手を前方に出しつつ左に払う。
斜め左前方からの敵の攻撃を払うイメージ。手を引いて右手も同様。
手を戻し、左手首を上に曲げたまま肘を前方に突き出し、相手の向けてきた右腕の肘の内側に左手の指を当て、左手首をくるっとスナップを効かせ相手の肘の外側に指を掛けて、掴む。というイメージで動かす。
そのまま手元に引き込みつつ、右手拳はしっかり握って中指の曲げた部分だけ突き出す。
親指は中指を突き出した時の空いた場所に親指の先を入れる感じで握りこむ。
これは『竜拳』という握りだ。
この握りで掌を上にしたまま、思い切って踏み込み、相手の鳩尾にこの『竜拳』を打ち込む。
中指の突き出した部分が鳩尾に決まれば大人でも大きなダメージがある。
そのまま、体を入れ替えた状態。
この手の動きが重要。相手の肘を絡めとって一気に反撃に出る手技。
肘を掴まれると相手が手を大きく動かして攻撃を出せない。
ここも護身術ゆえに相手の攻撃を封じるのが重要。
一気に反撃に出るのは、ただ防御してるだけじゃないぞと、痛い目を見るんだぞと相手に知らせる大きな意味がある。
この入れ替えた後も右手で同じ動作を行う。
体を入れ替えて、そのまま両手を引いて右肘を右前方に繰り出す。相手の動きを止める動作。
右手首のスナップを効かせながら思い切って右側方に払う。
左側も行う。そうしたらそこから前転。二回。
転がって起きざまに右横に飛んで振り返り、向かってくる相手に低い低い位置からの中段への掌底。
向かってきた相手をそのまま掌底で押し倒すイメージ。
しっかり腰を入れ相手を倒すのをイメージする。
この掌底は指が普通の掌底とは違い、鉤爪のように曲げた指を更に曲げこんで、掌底を当てて行くが、最悪、手首と掌の関節部分を使い、相手に当てる。
親指を第二関節でほぼつけるように揃え、相手の腰、下腹部を狙って一気にやや下からやや上に打ち込む。
そして相手の腰を浮かせつつ後ろに倒す。腰を浮かせるのが重要である。相手は腰が浮いてしまうと力を出しにくい。
低い位置へのタックルのようなイメージである。これは相手が相当喧嘩慣れでもしていないと対処はできない。
この技は本来は中華拳法ではないらしい。師範がそんな事を言っていた。
女性でも護身術を使って、これで相手に大きな隙を作って逃げ出せる様、改良された物だという。
右手を下から大きく回して右側方の攻撃を上に払うイメージ。手をすぐ戻す。
脚を下段で右に出し。そこから踏み込みつつ右手の肘を曲げつつ右手首を、相手のいる右方向に向かって思いきって突くように放つ。
指で相手の喉を突くのをイメージする。
親指を曲げ、人差し指と中指だけを突き出す手技。これも一気に反撃に出るイメージ。
これは突く場所を目にも出来るが、元の世界でいくら護身とは言えどもそんな事をやったら、やった側が只では済まされない。
あくまでも喉へのイメージであって、元の世界での実戦なら、これは鎖骨と鎖骨の間とかになるだろう。
攻撃場所をどこにするか、明確にイメージする事も重要。
まあ、背の低い私では目どころか、喉も怪しいな。そしてこの異世界での暴漢相手なら、遠慮は無用かもしれない。
体を入れ替えて左も行う。
そこから右手を前に突き出し、牽制を入れて、後ろに振り返って『竜拳』を中段突き。
右片方の脚を上げて、左足だけでくるっと前に回る。
手は最初の時の状態。左手をやや上にして前方に突き出し、左手は臍の位置。
体を直し、両足を肩幅に置いて両手を腰の位置。
掌は上にして親指だけ曲げる。
礼。
はっとか、はあっといった声が自然と出ていた……。
びっしりと汗をかいていた。
久しぶり過ぎて、色々忘れている気がする。後半がかなり怪しい怪しい。
やはり踏み込む時以外、踵を一切下につけずに行うこの一連の動作は久しぶり過ぎて息が切れた。
拳も竜拳だけで他は基本握らないし、空手のように打ち合うのでは無し。
護身術ゆえ、基本、腕でいなすというか躱すというか逸らすというか。
しかし一つ一つの動作で最後、止める一瞬の動作に力が入る。
踏み込むのも空手とは足の使い方が違う。
あー、忘れていた。
転がって脚だけを上に向けてから大きく開脚、横いっぱいに広げて二回転する。
そこから躰を捻って転がりつつ起きるというのを入れてなかった。空手にもあったような気がするが。
囲まれた時、周りに居る暴漢相手に大きく脚で牽制して起き上がり、囲みから突破して自分の居場所を確保するとかいう足技だ。
こんな派手な動き、使わねーよ。と内心思ってはいたのだが、練習は勿論相当やった。
やったが、長い間やっていなかった事で一連の動作にいれるのを忘れていた。
『護身術』にしては相当派手な足技である。
足技は勿論他にも色々あるのだが、どれもこれも空手の足技とは動かし方が違っていて苦労した覚えがある。
護身術故に攻撃シーンが少ない様に見えるが、ポイントになる場所はいくつもあり、攻撃に転じられるポイントは自分の判断で攻撃に出られるのだ。本当は。
身を守る事を第一にしているので、打ち合うように見える練習の型は、まずない。
これも三段、四段となると話は違う。自分だけでなく横の人、後ろの人を守るという護衛の型が入ってくる。
そうなると積極的に打ち合ったり、投げたりというのが入る。
あの頃は師範と師範代の演武を感心しながら見ていた。
……
汗を拭いて、水を飲み休憩。
柔道の方は、基本の受け身、大外刈、外払い、内払い、内掛け、背負投げ、ぐらいしかまともに教わっていない。あとは倒した後の寝技だが、私が習ったのは腕ひしぎくらいだ。
他は覚える前に三年生になり体育の授業ががっつり減って習わず仕舞いだった。
だから黒帯とか無理ゲーな話である。
なにしろ高校の時も剣道と空手は自主的に道場に通っていたのだ。
しかし柔道は近くに道場がなかったのだ。
空手は、とある中学校の体育館でママさんバレーの練習に混じって、同じ場所を使わせて貰い、白い空手道着で練習に励んだものだ。
時々ママさんバレーのオバサマたちに誂われながら……。
……
剣道は小さいながらも専用の道場が有り、其処で習った。多くの小中学生が居て、其処に混じって随分と習ったのを思い出す……。
……
外の雨は何時になったら止むのだろうか……。
……
つづく
長雨の中、何か楽しみを見出そうとするマリーネこと大谷でしたが。
次回 ささやかな娯楽。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
武道が理解っている人には、荒っぽい記述だろうし、わらない人には、これでさっぱり理解らない。
まさしく、作者の自己満足全開。
しかしながら、空手や謎の拳法はどちらも私が昔習っていたものなので、実在したものをアレンジしてあります。