035 第7章 村の生活と狩り 7ー8 細工と熊の皮
細工物を作ります。
35話 第7章 村の生活と狩り
7ー8 細工と熊の皮
翌日。
起きてやるのはいつものようにストレッチ。
それから自分の服に着替えた。
それから槍なのだが、ここに置かなかったので鍛冶屋まで行って槍の訓練。
いつものように素振り。ダガーと剣も素振り。
そして、昨日作ったアクセサリを見てみたい。
砂に埋めた型を全部取りだして、慎重にはがす。
あちこちバリはあるものの、出来ている様だ。
湯口と湯抜きとバリは削る。鉄よりは簡単に削れる。
やすりで慎重に削って形を整える。
凹んだ位置に魔石が嵌まるかは、やってみないとな。
村長宅に置いておいた革袋から魔石を取り出す。あのネズミコウモリのが一番小さい。
粒も揃っている。
まあそうだろうな。あの頭の大きさだし、あまり重いと飛行に不利だろう。
小さい魔石の硬さを見るために、この鍛冶場に置いておいた拾ってきた石英の小石で傷を付けてみる。小さい魔石に傷が入った。
なるほど。なるほど。ザックリとではないな。やすりで触りました程度か。
最初の戦いであの六本足狼のど頭に槍当てて、槍が砕けたしそこそこ硬い。
この傷具合から見てもモース硬度で五は越えてるな。五・五くらいの硬度か。
とりあえずアクセサリとして作った葉っぱの方の凹みに嵌めてみる。
惜しい、ちょっときつい。入らない。
この石英の石で魔石をガツガツやって削っていく。
硬いのでそれなりに手間がかかり、かなりの時間を費やしてぎりぎり押し込む形で嵌まった。
もう取れないぞ、これは。
嵌まった魔石を見ながら、青銅のほうを布でこする。
まあまあ、良いんじゃないのか。アクセサリっぽくはなっている。
しかし。こんな調子であと数個も加工がいるのか。しかも魔石は個体ごとに微妙に大きさが違う。
よし。分かった。これはあとで時間をみてやろう。
次。
猟師の革工房に行き、タンニン鞣しのほうだ。
真っ黒なタンニン液に浸されてだいぶたった熊の方。やるか。
取り出して水で洗うのだが、これが大変だった。井戸の横に三つの桶を持って行き、洗う用の桶を別に用意する。
ひたすら水を汲み上げては熊皮を洗う。毛が付いたままなので洗うのは大変だった。
三枚洗い終わると次は水気を払う必要がある。
えーい。面倒だ。三枚を桶に入れて、広場に行く。
一枚取り出して端を掴み、頭の上でぐるぐる回転させて水を飛ばした。自分が怪力故に可能な強引な脱水方法だ。
三枚とも終えて、工房に戻る。
穴を開けるのは控えめにして、三枚を吊るす。
乾くのを待っていられない。毛の生えてる側はともかく、裏側は軽く揉みながらやや生乾きのうちにもう獣脂を少し塗った。
毛の生えてるほうにも脂を塗った布で拭いていく。まあ完全に乾いたら縫い付けて村長宅の床に敷くのだ。
この毛皮が腐らなければいいので、やり方があっていようが多少間違っていようが、問題ではない。そういうものだ。
よし、次はもう乾いている革を全て下に降ろして再度獣脂の布で拭きあげる。
これは一応工房の奥に革を置く場所があるので、そこに積み上げた。
よし。次だ。
先ほど、先送りにした魔石を削る作業。もう一個やるか。
石英の小石で一心不乱に削る。
何度か仮に嵌めて見るが、まだ入らない。
暗くなってきた。
よし、夕食だ。
村長宅で食事を作る。
竈に火を熾し、小枝から串を削って、今日は串焼きにする。
鹿馬の燻製肉をぶつ切り。どんどん串に刺す。
野ネズミの塩漬け肉で肉スープ。塩を足して、柑橘っぽい香りのする葉っぱも一枚、少し揉んでから入れる。
串焼きは遠火で炙る。
出来た。
手を合わせる。
「いただきます」
味はもう毎度毎度なので、変化をつけるならこのツヤツヤの葉っぱから、何か作れないか。
もしかしたら、葉っぱをもっと乾燥させて、砕いて粉にしたら香辛料もどきにならないか?
いや、辛味がないし……。しかし、ダメ元だよな。もっとあの葉っぱを取ってくるために踏み台持って、あそこに行くか。
そんな事を考えながら串焼きを頬張る。
僅かに柑橘っぽい香りのついた肉スープを飲みながら、この葉っぱももっとあったほうがいいなと思った。
「ごちそうさまでした」
手を合わせる。
手っ取り早く片付ける。
そしてまた猟師の家に行って、魔石を削る作業を開始。
工房にランプを二つ置いて魔石を削り始める。石英の小石を握って一心不乱に削っていく。
途中で何度か、アクセサリに嵌めて確かめる。象嵌する縁に僅かに獣脂の布で油を付ける。もう行けそうだなという所で力を込めてはめ込む。
バチッという感触と共にがっちり嵌る。もう取れないな。
ランプを一つ消して、機織りの家に戻る。
しょっぱい子供服に着替え、手と足を濡らした布で拭き、寝床に行く。
今日はここまでだ。
……
翌日。
起きてまずやるのはストレッチ。
子供服からいつもの服に着替える。
鍛冶屋に行って槍の素振り、ダガー素振り、剣の素振り。
そこから猟師の家に行って水甕の水を零す。村長宅裏の井戸から汲んできて水の入れ替え。
終わったら、工房の熊の毛皮を三枚とも床に置く。
まず足の方から胴体の方に縫い付ける。太い針で縫い付けて行く。
本当なら相当重い筈の熊の毛皮だ。
縫うのも気合い入れてジグザグに縫い、もう一回縫う。
そして反対側の方でも同じ様にジグザグに縫う。これでいい。すこし持ち上げてちゃんと縫えているか、確かめる。
縫い目が縮んでしまったりしてないか。
一応気を使って等間隔になるように縫ったつもりだ。
頭の方の下方の胸の辺りの背中側の皮を、今縫った下半身側と縫い付ける。
私が怪力だから、気にせずに持ち運んでいるが、どれくらい重いのだろうな。
この厚み、この毛の量……。まあ縫い付けて行こう。
まあまあの縫い目で毛皮を縫い付けて一体化した。
これを村長宅に運ぶのだが、デカいので丸める。丸めてもデカい事には違わないのだが。
そしてこれを持ち上げ、運んでいく。
村長宅の玄関から広間に行き、広間のテーブルを動かして、あの血が滲みて真っ黒な床の上にこの毛皮を置いた。
よしよし。
なんか今迄もそこにあったかのように馴染んでいる。
まあ、絨毯の代わり。私がそこで寝転ぶのにもちょうど良さそうだ。
まあ熊の毛はやや固いのだが、そこは気にしない。
よし、次だ。
少しづつやるべき事リストを消化している。
次は魔石のサイズ合わせだな。
魔石とアンク型アクセサリーを持って機織りの家に行く。
玄関の所に丸い木の椅子があるのでそこに座って、石英の小石で魔石を削り始める。
ガツガツ削る。大まかに削ってから、石英の小石のやや平たい側でこすっていく。
私の力で削っても少しづつしか粉になっていかない位には硬い。
無心で擦り削っていく。
……
そろそろ良さそうだ。アンクの真ん中にある楕円の窪みに石を嵌める。
ギチチッという音と共に石が嵌った。よし。アンクの方も一個完成。
後で紐をつけよう。
また魔石を削り始めた……。
……
……
ふと気がつくともう薄暗くなり始めている。
台所に行って竈に火を熾し、ランプに火を灯した。
鍋に水を入れ竈に置いた。
夕食の支度。
熊の塩漬け肉を叩いて叩いて、焼く事にした。ツヤツヤの葉っぱを二枚、かなりよく揉んで熊の肉の上に載せた。
スキレットに獣脂を少し入れて熱する。
ウサギネズミ肉の塩干し肉を切って鍋に入れる。塩を足してツヤツヤの葉っぱを揉んで一枚入れた。
熊肉をよく焼いて裏返す。葉っぱも下に入れた。火を通しているといい匂いがしてきた。
出来上がった。食べよう。
手を合わせる。
「いただきます」
スキレットの熊肉を食べながら考える。
葉っぱをもう少し採ってきたいのだが。私の背丈ではもう届かないんだよな。
梯子というか、組み立て式脚立? を作って、あの場所に行くか。
葉っぱを沢山毟ってきて熊肉の塩漬けに一緒に入れると良さそうだしな。
よし、そのへんも服の後にやろう。
肉スープを全て飲んで食事終了。
「ごちそうさまでした」
手を合わせる。
ルーティン化してはいても、食事への感謝は忘れてはいけない。
魔物の彼らの命を頂戴しての食べ物なのである……。
食器は手っ取り早く片付ける。
お風呂にも入りたいが、それはまた明日にする。
ぬるま湯で顔と手、足を拭いて子供服に着替える。
竈の火を落とし、ランプを持って寝床に行く。
今日はここまで。
明日もやるべき事は一杯だ。
機織りの家の寝床で寝る。
……
つづく
今回の話は少し短めでした。次はいよいよ裁縫です……