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031 第7章 村の生活と狩り 7ー4 雑事とお風呂と硝子の事

やっと色々生活が波に乗ってきたようで、少し先の事を考えます。

細工に硝子も使いたいと考え始めるマリーネこと大谷。

 31話 第7章 村の生活と狩り


 7ー4 雑事とお風呂と硝子の事


 翌日。

 

 起きてストレッチ。そして槍の鍛錬。素振りと的突きだ。剣は素振り。

 それから、昨日の肉の樽を見る。肉汁が出てしまって下がべしょべしょという事態にはなっていなかった。

 よし。

 

 次はタンニンの入った桶。更に煮詰めたタンニンを追加。大量に必要だ。

 (かまど)に火を(おこ)し、どんどん煮出して造る。

 

 次の作業は大工の工房に行き、折れた槍の交換。穂先は持ってきた。

 予備が三本中一本は練習槍にしているので、残り二本。


 さて、槍の修理だな。

 二本とも折ってしまったというか、折られてしまったのは計算外だった。

 予備の竿二本とも使って治す。

 

 練習用の竿を参考にして、工房の木材から三本ほど削り出し太さを合わせた後、二本は穂先が付いてる方の槍と長さを合わせる。

 これは新たに予備の竿とする。

 一本長さを元のままにしたのは練習用の竿を折ってしまったら、工房に置いてある材料からまた作り出さなければならないからだ。

 

 予備の竿の先に穂先を取り付け直し、紐で巻いて樹脂を塗りつけた。後は長さを合わせて、これで完成。

 乾かすので、ここで立て掛けた。

 

 さて次。

 ブロードソードを点検。

 表面に血糊と脂がだいぶ載ったと思うので、洗って拭いてから刃を見る。

 内臓に差し込んだからな。血糊は落とした。刃は特には異状無し。

 ここでだいぶ使っているダガーは研いでおく事にした。

 鈍った。という程ではないので軽く。


 ここまで終えたら、鍛冶場の一番小さい炉の横に風呂と洗い場の四角い桶を二つ置いて、水を入れた。

 小さい炉に炭を入れて火を熾す。


 お風呂に入ろう。洗う布と拭くための布も持ってきた。

 手に革手袋をしてやっとこで石をどんどん炉に入れる。

 石が赫くなる前くらいで取り出して、桶にどんどん入れる。

 ジュワワーと蒸気が上がる。お湯は表面、四六度か。棒で暫くかき混ぜると四三度になった。

 

 服を脱いで洗い場の桶に入り、小さい手桶でお湯を取って頭からかぶる。

 ふう。シャンプーとか欲しいのだが、そんな物は無い。

 手櫛で髪の毛を()いてよく洗う。頭皮もゴシゴシやる。

 

 体の方は布で軽くこすっていく。垢がだいぶ出る。汚れてるよなぁ。

 何度かお湯を掛けて体を洗う。

 鍛冶場の戸を三つとも開けてあるので、中は明るい。

 

 体の汚れもそれなりに分かる。脚の汚れはいつもの事だな。

 そしてゆっくり風呂桶に入る。

 

 お風呂でゆっくりしながら、今後の事をもう少し考える。

 

 細工もやっておきたいんだよな。

 七宝焼の釉薬って硝子だったよなぁ。

 あの釉薬が手に入れば、温度は見極められる。

 

 七宝焼は銅の細工に釉薬を水で溶いて筆で塗り電気炉で灼くんだが、銅の方も用意しないといけないか。

 元の世界では私の母が趣味で七宝焼きをやっていて実家には小さな電気炉があった。

 その時に少しだけ母から教わった覚えがある。

 

 電気炉は釉薬を溶かす為、狙った温度になるようにする為に必要なのであって、温度見極めが出来る私は炭の炉でもいい。

 必要な温度はこれも八〇〇度なのだ……。

 そして時間は約二分。脈を一三〇ほど数えればいいはずなのだ。

 まあ私のこの体の脈が六五としての話だが。

 

 正確にはどうかわからないが、大雑把にそれくらいでいいだろうと思う。

 

 あとは筆か。

 いくつかの獣の毛がある。あれを纏めて木の軸に括り付けて、穂先を切り揃えれば、荒っぽいが筆は出来る。

 本当なら選抜したりなんだりでかなり大変な職人芸で造るのだが、そんな高級筆を求めてる訳じゃない。もどきくらいなら私でも作れそうだ。

 

 あとは硝子(※末尾に雑学有り)の粉だな。

 本当なら深い蒼い色が欲しいんだけどなぁ。

 硝子の粉は石英が手に入ればそれを砕いてそこにソーダ灰と石灰を混ぜる。

 一番手軽なのは長石なんだが。

 

 ここの村長宅の窓のステンドグラス。

 アレがここで作られたのなら、何処かに色硝子の材料があるハズだが、アレはおそらく外部の街で作ったものだろうな。

 

 まあ、探してみるしか無い。せめて硝子の粉があればな。

 銅の方の鉱石もあれが錫を含んだ銅鉱石なのか、亜鉛を含んだ物なのか、酸化銅なのか…。焼いてみるしかないのだな。

 木炭をもう少し、あの炭焼小屋から持ってこよう。

 

 風呂を出ようと思ったが、湯が冷めてきていて、出づらい。

 炉の中の石をやっとこで掴んで、もう数個入れて温度を上げて体を温め直してから出る事にした。

 

 …………

 

 風呂をこぼして片付け、せっかくすっきりしたのだが、背負子(しょいこ)を背負って、山の炭焼き小屋に向かう。

 一応、用心の為にブロードソードを左腰に。ダガーを右腰に付けた。

 

 山にある炭焼と窯業の工房小屋に着くと焼いてある炭をどんどん背負子に積む。

 三往復すると夕方になった。

 

 猟師の家にいって工房にある皮の樽をかき混ぜる。

 タンニン汁を足す。そしてまたかき混ぜる。

 

 さて夕食を造る

 ネズミウサギの塩漬け肉と塩干し肉だ。どう違うのかといえば、さして違わない。

 塩干し肉にはコショウも振ってから干した。くらいしか違わない。

 

 後は摘んできた葉っぱだ。

 少し乾燥してきているこの葉っぱを揉んで肉に載せ、肉はあまり切らずにそのまま焼く。

 塩漬け肉は、ぶつ切りにしてお湯で煮込む。塩を少し足して、この葉っぱを二枚ほど入れて煮込む。

 なんというか、今までとは明らかに違う香りがする。

 

 取り敢えず。食べよう。

 手を合わせる。

 「いただきます」

 

 スキレットで焼いた肉はナイフで切って、木で作ったフォークで食べる。

 香り葉の効果で生臭さは消えていた。これなら熊肉もいけるな。

 塩肉スープも美味しくいただく。

 味の変化が出ただけなのだが、変化がとにかく嬉しかった。

 

 「ごちそうさまでした」

 手を合わせる。

 

 手っ取り早く片付ける。

 

 ここには真鍮(しんちゅう)の鍋とか無いなと思ったが、真鍮は亜鉛しか入ってないと、塩分の多い煮物ばかり行うと亜鉛が塩分によって抜けてしまい腐食が始まる。

 それで、ここでは使ってないのだろうか。

 

 真鍮に僅かに錫を混ぜると、塩害が防げるという事を多分知らないのだろうな。

 銅を六、亜鉛を四に対してほぼ一パーセントくらいの錫を混ぜて合金を作ると塩害にとても強い真鍮になるのだ。

 元の世界でも船舶で使われている真鍮にはこれが使われてる……。

 まあ亜鉛が採掘できなかったのかもしれない。

 

 さて洗い物も終え、竈の灰も片付けた。

 ランプに火を灯して猟師の家で寝る。

 

 ……

 

 

 つづく

 

 

 ───────────────────────────

 大谷龍造の雑学ノート 豆知識 ─ 硝子(ガラス) ─

 

 硝子という物は、本来は自然界に硝子そのままの形では存在しない。

 自然界で見つかる硝子は大抵の場合、隕石あるいは噴火あるいは火山活動に寄るマグマの熱などでそこにあった砂や岩石の一部が高い熱で溶けて形成、硝子化された物である。

 

 硝子の主たる原料は白い砂、つまり珪砂であるがこれは石英の砕けたものである。

 石英そのものは融解温度がやや高くおよそ一七〇〇度C以上である。

 古典的硝子製造は石英や水晶を砕いて粉にして二〇〇〇度C以上という高温にして融解。

 自然冷却して石英硝子とした。

 

 しかしこの方法で作られた石英硝子には不純物も多く、一定の厚さの透明硝子を得る事は極めて困難であった。

 そのままでは硝子にするのが大変である。

 そこで石英の粉に別の物を混ぜて融解温度を下げる。

 ここでいう石英、珪砂とは、つまりシリカ(SiO2)である。このシリカにソーダ灰と石灰をよく混ぜて熱する事で融解温度が下がり、溶けて硝子になる。

 

 ソーダ灰とは植物の灰が使えるが本来は無水炭酸ナトリウム。石灰は炭酸カルシウムである。

 石英の結晶は大きく成長するとそれは水晶になる。六角形の透明な柱状の結晶である。

 

 石英の仲間、長石は不純物として鉄(Fe2O3)を含むが、シリカ、アルミナ、カリ、ナトリウムなどをバランスよく含むため陶器に使われるが硝子にもなる鉱石である。

 しかし、天然物ゆえに成分が変動する難点がある。花崗岩には大抵は含まれている。

 

 

 硝子の着色は意外に面倒なのである。

 珪砂を溶かし一度硝子にしてから砕いて粉末にしてから着色する材料(金属など)を混ぜつつ、酸素多めで焼いて溶かすか、酸素が少ない状態で材料の金属をやや還元させながら一緒に溶かすかで色が付く。

 この塊を再び粉砕して粉末または細かいガラス片にする。

 これが硝子用の顔料になる。

 

 酸素を多く使うか、減らして還元させつつ行うのかは金属によって違う。

 ここは解明されて行くのに長い長い時間と試行錯誤があった。

 

 寒色系か暖色系かで異なり、寒色系の場合は酸素を多く必要とする。

 暖色系は酸素を減らしていく還元作用が必要になる。いくらか金属によって例外もあるのだが、ほぼこのパターンに嵌っている。

 

 古くから行われていたのは、酸化コバルトによるブルーである。酸化コバルトそのものは蒼くはない。灰色の粉である。

 これが焼成されて成す色は瑠璃(るり)色といい、かなり古い硝子にもこの色が付いている。

 酸化コバルトは銅鉱石と共に掘り出される事もあり、古くからの顔料用の材料金属となった。

 同じ青色系に酸化銅があり、空色、スカイブルーが出る。トルコブルーもこれになる。

 

 ここでいう酸化銅は酸化第二銅で真っ黒な粉である。

 この酸化銅(CuO)は還元させると色が変わり銅赤色になったり(他にも触媒が必要)、酸化クロームを追加してエメラルドグリーンを作ったりするのに使われている。

 

 硝子の粉にアルミナ(水酸化アルミ)を混ぜて溶かすと粘りが出て扱い易いものになる。

 徐々に冷えてきてもいきなり一気に固まって硬化したりせずに、徐々に硬化する性質が出来る。

 一パーセントから二パーセントを含有させると硝子を吹いて延ばしたりして瓶を造る事が出来る様になる。

 これで引っぱったり、中に空気を吹き込んで膨らめたりといった加工が可能になる。

 

 鉛。シリカに二四パーセント程も混ぜると扱いやすい硝子になる。

 アルミナと同じ様に延ばしていく事が容易となる。

 ただし、入れすぎると硝子に暗い鉛色が出てしまう。

 

 鉛丹。(酸化鉛)これを混ぜると硬質の硝子になる。

 あまりに混ぜ過ぎると鉛が還元された色が出て硝子は黒い色になる。

 これを混ぜる事で硬質クリスタルグラスができる。重厚な重さが出て、叩くと金属的な硬い音が出る。

 

 湯沢の友人の雑学より

 ───────────────────────────

 

いよいよ懸案だった鉱山も探しに行きます。

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