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298 第21章 第三王都と西部地方 21-8 水辺の魔物討伐6

 こういう場合の方法は、一つしかなかった。

 そして、トリアージも決断する。

 298話 第21章 第三王都と西部地方

 

 21-8 水辺の魔物討伐6

 

 かなり焦る。

 私一人で全員連れ帰るのは不可能なのだ。

 考えろ。何か、方法がある筈だ。

 

 右手の人差し指を眉間に押し当てる。

 

 ……

 

 そうだ。アレだ。

 副長になって貰っていたヤルトステットの胸ポケットを探る。

 あった。

 ポケットに入っていた笛を取って、鳴らす。

 

 力の限り。もうこれ以上は大きく鳴らせないというほどの大きさで。

 三度鳴らす。

 

 時間をおいて、もう一度。

 三度鳴らす。

 

 トドマで、この鳴らし方は隊員がやっていた。確かレハンドッジの時だ。

 誰だったか、もう思い出せないのだが、非常事態である事を知らせる笛だ。

 この鳴らし方には、もう一つ意味があって、近くの冒険者以外のギルド員は、避難せよ、だったか。

 

 倒れた隊員たちの様子を見る。

 痙攣して泡を吹いて倒れたのは、オーバリ、ルツフェン、ヒスベルク。

 恐らく麻痺して倒れたのは、ドス、ホロ、テッシュ、ルルツ、ヤルトステット。

 

 この時に、私は背中の鞘を地面に置いた。邪魔になるからだ。

 

 泡を吹いていた三人の脈を見て行く。顔色は悪いが、生きている。

 ここで、更に吐いた場合、気道が詰まって、窒息死する。

 3人ともまず仰向けにして、そして左手を枕にして、顔を横にしながら、左手の上に載せる。この時に右肩を上にしてやる。右手はずらして尻の方に。

 

 これでいい。

 

 麻痺している5人はどうするべきか。

 心臓は動いているか。

 

 全員の胸を触って確かめる。

 ルルツの胸を見るのは、正直気が引けたが、命が掛かっている。彼女の心臓が動いているか、掌を当てて確かめる。

 呼吸はしているのだろうか。彼女の鼻の真下に指を差し出す。呼吸はごくわずか。あるかどうか、ぎりぎり。

 

 どうやら、表面上の筋肉が全て麻痺しているが、それは内臓にまでは至っていない。

 五人全員を仰向けにしてから、オーバリたちと同じようにした。

 下手に唾が出て来て喉に詰まり、気管支に入って窒息とかならないようにしなければならない。

 

 たぶん、目も筋肉が麻痺したなら、見えなくなっていただろう。

 ずっと同じ場所を見ると、目というか網膜は全く同じ刺激には反応しなくなる。その結果、視界は真っ白になるのだ。

 

 目が開いている人たちの瞼を閉じる。

 大分、時間が経ってしまっているので、眼球の表面が乾いて、傷ついているかもしれない。そうなると、かなり不味いのだが。

 そして、耳も聞こえているかどうかは不明だ。麻痺が何処まで及んでいるかによる。

 

 さて、彼らをここに放置して、私が野営地の隊員を呼びに戻るとまずいだろうか。

 

 しかし、私がここにいれば、私は『撒き餌』だ。私の匂いで何が出てくるか、想像もつかない。

 万が一、多数の魔物が出たら、彼らはもう助からない。

 どうすればいいのか。

 

 目を閉じる。考えをまとめる。

 

 よし。

 

 私は、まずルルツを背負った。彼女をまず船まで連れて行こう。

 その次に、テッシュだ。

 

 これは、トリアージだ。

 

 はっきり、誰が死にかけているとか、私には判らない。

 あまり、よろしくない、というのならオーバリ、ルツフェン、ヒスベルク。

 だが、まったく動かない五人は大丈夫なのか?

 それは私には判らないのだ。

 

 そうなれば、誰を優先するべきか、となる。

 それを言ったら、本来なら金階級の二人。ヤルトステットとオーバリだろう。しかし。二人とも体格が大きく、彼らの手足も長いので、私が持ち上げてもそれは地面に垂れるだろう。

 

 重さは問題ではないが、二人を人間らしく運ぶ為に、きちんと全てを持ち上げて運ぶのは難しい。

 私が二人を運ぶとしたら足を掴んで引きずって行くくらいしか、二人を同時には運べない。


 彼らは死んだ魔獣ではないのだ。そんな酷い事は出来ない。

 

 だとしたら、優先順位は少し変わる。本当なら、泡吹いて痙攣して倒れたオーバリが先なのだろうが、私の判断は違う。

 まずは弓師だ。弓師は数が少なく補充も難しい。そして腕のいい人が少ないからだ。

 弓師の二人を終えたら、全力で、まずはオーバリを運ばねばならない。その次はヤルトステットだろう。

 多分、その時は両手で担ぎ上げるしかないのだが、やるとしたら、一人ずつ、背中の真ん中辺りで持ち上げて、両手でそれを持ち上げたまま、走ることになるだろう。

 あまり、やりたくないはないが。

 

 私は、ルルツを背負って走り出した。

 重さはさほどでもない。彼女は軽いらしい。

 

 まあ、私の重さの感覚は、完全に麻痺、いや壊れているから、何とも言えないが、彼女は重くは無いだろう。

 

 全力で走る。

 

 川岸の近くにいくと、ガルア支部の支部員たちが、こっちに多数やって来る所だった。設営と警備の部隊のカー隊長と薬箱を持ったミュッケが一緒だ。

 そして隊員は七名。副支部長を置いて、全員来たのか。

 

 「私、以外、全員、倒れたの。早く、ここに、運びましょう」

 「了解」

 

 カー隊長が残り、ミュッケの護衛。

 ミュッケはルルツの様子を見始めた。

 

 他の隊員七名、全員でまずは現場に戻る。

 

 再び、全力で走った。

 

 ……

 

 倒れている場所に行き、隊員たちはヤルトステットに二人。他は一人ずつで背負った。オーバリを背負った人は大変そうだ。

 その時にルルツとテッシュの弓と矢筒も回収された。

 

 私は自分の剣を回収する。オーバリに貸したミドルソード。

 叩き落とされた自分の鉄剣。

 どちらも鞘に納める。

 

 そして魔獣に挿した、クレアスとダガー。

 

 まず、ダガーを二本とも引き抜いた。

 そこから血が噴き出す。

 ダガー二本を空中で二度、三度振るって、血を飛ばし、鞘に納める。

 

 そして、クレアスを引き抜くと胸からの血が凄かった。

 私はクレアスも二度、三度と空中で振って血を飛ばす。そして、鞘に仕舞った。

 

 私はその場で片膝をついた。

 両眼を閉じて、静かに両手を合わせる。

 「南無阿弥陀仏。南無阿弥陀仏。南無阿弥陀仏」

 

 今は名前も知らぬ魔獣だが、出会えば斃すしかない。

 今回は、本当に危うく斃されかけたが。

 しかし、例えどんな恐るべき魔獣でも、この世界の一部である事には変わりがないのだ。この世界の一部と成れたか、いまだ判らぬ私とは違って。

 

 ……

 

 ドスの盾、剣も仕舞って彼の背中に取り付け、彼を担ぐのだが、その時、私の大きな剣二本を彼の方に背負わせて、そのまま彼を背中に背負った。

 そして、そのまま走りだす。

 

 先に走っていた全員に追いつくまで、全力で走った。

 川岸でドスを置いて、自分の剣を背負い直し、さっきの現場に戻る。

 

 魔物の死体はまだそこにあった。胸からの流血はかなりものだが、もっと抜く必要がある。

 右腰のダガーを抜いて、この魔獣の喉を掻き斬る。ダガーを二度振って、それから鞘に。

 

 私は魔獣の頭を後ろにして、後ろ足を掴んで引っ張る。背中の剣が当たってるが、もう、それは構わない。

 斃された魔獣の尻尾は、また元の様な長さに戻っていた。

 尻尾の羽は相変わらずだが、かなり小さくなっている。肩の所にある大きな羽もかなり小振りになっていた。

 

 死ぬとそういう物が小さくなるという事は、あの大きな羽はこの魔獣の魔力か何かで大きくしていたという事か。もっともあの大きさでも、あんなにゆっくり飛ぶことは不可能だ……。この魔獣の魔力がなせる技なのだろう。

 

 屍体の喉と胸の部分から、かなりの血が流れ出ていた。

 屍体を引きずって歩き、先ほどの岸にまで行くと、もう、全員が引き上げていた後だった。

 

 そこにカー隊長だけが残っていた。

 

 「これを、持って、帰ります。カー隊長」

 「これを、ですか。船が大丈夫かな」

 

 もう死体の血はほぼ抜けていたが、載せるのが大変だった。船頭はかなり嫌そうな顔だ。

 尻尾を体にぐるぐると巻き付けて、船に頭の方を先に載せて船に飛び乗り、死体を引きずって、船になんとか載せた。

 カー隊長も乗ってくる。

 

 反対岸で降ろすのも一苦労だった。

 やっと降ろし、それを私は引きずって行く。

 

 もう、船頭もカー隊長もそれをぽかんとした顔で眺めているだけだ。

 重さはともかく、体がでかいので、引っ張って行くのが大変だ。

 

 ずるずると音を立てて、私は魔物を引きずって行く。

 

 野営地につくと、ガルア支部員が出迎えたが、ミュッケは隊員たちの治療で手一杯だ。

 

 そこに副支部長のユニオールがやって来た。

 

 「ヴィンセント殿」

 「申し訳ございません。副支部長殿。隊員、全員が、倒れまして、全て、私の、責任です」

 「いや。ミュッケ殿の見立てでは、全員命に別状はない、という事だ。ヴィンセント殿がその魔獣を斃せなければ、全員死んでいただろう。よくやってくれた。流石だ」

 彼は胸の前で握りこぶしを作り、腕を水平に構えた。

 私は、どう応えていいものか分からず、深いお辞儀をするしかなかった。

 

 「そして、ヴィンセント殿がまさか死体を引っ張って持って帰って来るとは、思いもしなかったが」

 「あの場で、解体も、出来ません、でしたので」

 「くっはっはっはっはっ」

 ユニオール副支部長が笑い出し、それから胸に手を当てて、顔を(しか)めた。

 「まだ肋骨のヒビが、繋がってくれてなくてね。こういう事をすると、酷く痛む」

 彼はそう言いながらも、どうにか笑顔を見せた。

 

 彼は魔物の足を掴んで少し持ち上げてから、裏側を覗き込んだ。

 「ヴィンセント殿の力はどれほどあるのやら。完全に引きずって持って来たのだね。下側の毛は全部抜けてしまっている」

 「泡を、吹いていた、三人が、心配です」

 「ああ、それならミュッケ殿の所にいってくれ。私はこれを解体して魔石も抜いておこう」

 「お願いします」

 

 「おーい、そっちの隊員たち、これの解体を手伝ってくれ。解体する時、尻尾は水をかけろ! 注意しろよ」

 四人程、ガルア支部の若手がやって来て、尻尾に大量の水を掛けていた。

 

 それから彼らは毛皮を剥ぎ始めた。

 

 私は、とにかくミュッケの所にいって、負傷者の状態を聞くしかない。

 天幕(テント)の中に入ると、三人が下に寝かされていた。

 

 「ミュッケ殿」

 「ああ。ヴィンセント殿。戻ったのね。隊員たちは、とりあえず大丈夫よ。命はね。他の影響はまだ判らないけど。泡吹いたっていう、この三人が少し重症ね。出来る限りの事はしてみるけど。意識が戻っても、以前のように動けるかはまだ判らないわ」

 「そう、ですか」

 ミュッケは真剣な眼差しで、オーバリの胸の辺りを見ていた。

 

 「横の天幕に運んだ五人は、薬を嗅がせてあるから、たぶん二日もしたら、上半身くらいは動けるはずよ。ただ、その後の一日は相当痛いでしょうけどね」

 「え、どうして、ですか」

 「表面的な麻痺で、全く、動けなくなったのでしょう? もっと長時間、三日とかだったら、筋肉に十分血が巡らなくて、だいぶ悪い状態になっていてもおかしくないと思うけど、そこまではいってないから、凄く痺れて、しかも全身が痛いでしょう。それは痛み止めを飲ませるから」

 「では、復帰、出来そうですか」

 「そうね。少し全身を動かしたり、お湯につけた布で体を拭いて筋肉をほぐせば、少しばかり時間はかかるけれど、すぐ元通りになると思うわ」

 「よかった」

 「貴女の責任じゃないわよ。ヴィンセント殿。こういう攻撃をしてくる魔物に出会って、全員が生きて戻れた事自体が、稀有な事。それだけは覚えておいて」

 そういって、ミュッケは泡を吹いた中では一番、重症そうなオーバリの顔に何か薬を塗り付けていた。

 

 ここにいても、私に出来る事は何もない。邪魔になるだけだ。

 私は一礼して天幕を後にした。

 

 天幕が二つ分、今回の負傷者で埋まっている。

 

 私は天を仰いだ。

 

 ……

 

 その後の二日間、ここから動くことは出来なかった。

 

 麻痺していた彼ら五人と、泡吹いて倒れ痙攣してしまった三人。

 担架で動かしてもいい程度に回復するまで待たねばならなかった。

 ここでミュッケが一人頑張って治療を続けていた。

 ガルア支部の若手が荷馬車を使って支部まで戻り、もう一つ天幕を持ってきた。

 それから治療院にも寄って、ミュッケの指示した薬も持ってきたらしい。

 

 ……

 

 今回は、自分的に言えば、本当に失敗だった。

 彼らの命が助かったのは、殆ど偶然に過ぎない。

 あれで麻痺だけでなく致死性の毒が入っていたら、あの場で八人が全員死亡していたのだ。

 そのことが、ずっと私の心の中で引っかかっていた。

 

 初見の敵。

 あれは、恐らく『()()()()()()()()()()』という攻撃だったのに違いない。

 私があの敵を斃せなかったら、ユニオール副支部長の言う通り、全員死んでいる。そしてあの魔獣に喰われたのだろう。

 あんな恐ろしい奴がいるから、あの広い草叢と穀物畑に他の魔獣や獣がいなかったのだろうな。陸上には、他に魔物の気配は全くなかったからだ。

 

 しかし、あの魔獣でもガブベッカと()りあうつもりはなかったという事か。たぶん、やや遠くで見ていたのだろうな。

 ガブベッカの口から放つという球で相殺できるか、或いはガブベッカの赤い球の生成が速いのかもしれない。

 

 何にせよ、ガブベッカは片目を失って、水中に逃れ、もう一つのやばい敵は私が斃した。あの時間停止がなければ、光る球の直撃で麻痺して喰われていただろうけど。

 

 そこに、幌付き荷馬車が三台もやって来た。

 何だろう。

 

 降りてこっちにやって来たのは、ヨニアクルス支部長だった。

 ユニオール副支部長も天幕から出てきた。

 

 ヨニアクルス支部長が私の前にやって来た。

 「事情は聞いた。ヴィンセント殿」

 

 「すみません。私の、不手際です。私が、ユニオール副支部長の、代わりに、隊長、だったのです。連れていった、隊員、全員を、負傷させた、不始末。私に、隊長の、資格など、ありません」

 私の顔をずっと見ていたヨニアクルス支部長が中腰になって、私の頭を撫でた。

 

 「そんな事はない。自分を責めすぎるのは、良くない。ヴィンセント殿」

 彼はしゃがみ込んだ。

 「今回も、初見の敵だった。そうだろう? ヴィンセント殿」

 「はい」

 「それで、まあ、よく無事に戻ったものだ。エフィムーズが出たと聞いたが」

 「そういう、名前ですか。あの魔物は」

 「出会えば、まず助からない。仮面をつけた軍団兵と王国の槍が命を捨てて、斃しに行く敵の一つだ」

 「そう、だった……、のですか」

 「うむ。よくやった。倒れた隊員、全員を救出したのだろう?」

 「はい。笛を、吹いて、みるしか、無かったんです。聞こえるか、どうかも、不明、でしたが」

 「笛は微かに聞こえたそうだ。カー隊長がそう言っていたと聞いた。非常事態を知らせる笛の音がしたら、行ける者は直ちにそこに急行する。それも冒険者の任務の一つだ。ヴィンセント殿がそれを知っていたとは、驚きだがね」

 「トドマの、山の警邏で、笛を、鳴らす、事態が、あったのです。それで、思い出して、鳴らしました」

 「そうか。あの山の警邏も君の役に立ったようだな」

 「はい」

 私はただただ、頭を下げるだけだった。

 

 「全員、命は助かったのだ。ヴィンセント君はもうそれ以上、気に病んではいけない。出会った敵からいって、最高の結果で終わったと思わないといけない。そういう事態だったのだ」

 「はい。ありがとうございます」

 彼は笑顔を作って、私の頭を撫でてから、ユニオール副支部長の方に行った。

 「ユニオール副支部長殿。彼らはもう動かせそうかね。荷馬車は余計に用意したが」

 「助かります。ヨニアクルス支部長殿。まさか支部長自ら、ここにお出ましになるとは、思いもよりませんでした」

 

 いや、ヨニアクルス支部長はそういう人なんだ。トドマでも、そうだった。あの死者の出たオブニトールの事件の時、彼は走ってやって来たくらい、部下思いなのだ。

 それは、たとえ支部が違う冒険者であっても、彼は事務的に処理したりはしない。まして、今回は彼の依頼で、やって来たのだから。

 

 「今回の任務はこれで終了という形でいいのでしょうかね。ヨニアクルス支部長殿」

 ユニオール副支部長が、ヨニアクルス支部長と話し合い始めた。

 

 「ああ。デルメーデはかなり斃したのだろう? ユニオール副支部長殿。それと、エフィムーズだ。まさか、こんな危険な魔物が生息していたとは、思いもよらなかったが、ヴィンセント殿が斃して来た。十分だろう」

 「では、全員をガルアに運びますか。もっとも治療院に空きがなさそうですが」

 「いや、軽症者を支部の方で預かって、治療師に巡回で来てもらう事にしよう。それで空いた場所に彼らを入れる。治療師ギルドに掛け合ってみるから、全員、撤収させていい」

 「判りました。ヨニアクルス支部長殿」

 「しかし、今日はもう全てを撤収させる時間はなさそうです。天幕を一つ建てて貰って、はみ出した人員を、そっちに入れます」

 「判った。私は戻るが、明日、最悪でも明後日、全部引き払って戻ってきて欲しい。いいかな」

 「ええ。そうします」

 

 それから、ヨニアクルス支部長は、船頭をやってくれた漁師たちの所に行った。

 「今回、大変世話になった。冒険者ギルドから、金一封を出すことになっている。しかし、ここで私の方からもお礼を出しておくよ」

 彼はそういって、ポケットから小銭を取り出した。

 あれは、リンギレ小銀貨だ。三人に二枚ずつ、手渡ししていた。

 

 金一封以外に、一人に二リンギレか。だいぶ(はず)んだな。

 ガルア支部は怪我人も大勢出て、治療費も(かさ)んでいるだろうに、ヨニアクルス支部長、予算は大丈夫なんだろうか。

 

 

 つづく

 

 設営と護衛の部隊が、河を渡って、応援にやって来てくれたおかげで、全員を野営地に戻せたのだった。

 そして、ガルア支部のヨニアクルス支部長もやって来て、マリーネこと大谷を慰める。

 

 次回 魔物討伐その後

 今回の討伐に関しての報告をしなければならない。

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