287 第20章 第三王都とベルベラディ 20-74 第三王都で雑事と商会3
鍛冶ギルドの方が近かったので、先に鍛冶ギルドの方に寄って、居抜きの水車小屋付きの工房を探すマリーネこと大谷。
287話 第20章 第三王都とベルベラディ
20-74 第三王都で雑事と商会3
細工の品を納品しようかと思っていたが、この商業ギルドの本館の近くに鍛冶ギルドのほうもある。
先にこっちだな。鍛冶ギルドだ。
階段を上って受付にいく。
「すみません。売り上げの、皮紙を、提出に、きました」
受付には男性がいた。
「貴女は?」
私は首に掛けた独立鍛冶職人の標章を持ち上げて見せる。
「マリーネ・ヴィンセントと、申します。税金の方、出して、きましたので、よろしく、お願いします」
爪切りの時の代用通貨での皮紙を三枚提出。今回のはまだ出さない。前節季の物だけだ。
見ると、受付の男性の目が大きく見開かれているが、無視だ。
「こ、こちらに、しょ、署名を」
どうしたんだろうな。どもってるぞ。まあいい。言われた場所に署名する。マリーネ・ヴィンセントと。
男性は、署名をした書類を仕舞った。
さて、借りられる場所はここで訊いておこう。
「実は、作業場を、探しています。分かるかたは、いますか」
「少々お待ちを」
男性はそういうと席を立ち、奥の部屋に消えた。
奥の部屋から男性が出てきたが、さっきの人とは違う。
やや肌の白い男性が出てきた。鍛冶ギルドにしては珍しい。
「私はここで庶務係を担当しているダビッド・マココーンと言います。よろしく、ヴィンセント殿」
「よろしくお願いします」
私はお辞儀した。
「立ち話もどうかと思うので、そちらの部屋に」
そういって、この男性はすぐ横の部屋の扉を開けた。
奥に大きな窓があり、十分に明るい部屋だ。
中には低いテーブルと椅子が数個置かれている。
「そこに掛けてもらえるかな」
リュックを降ろし、言われたままにそこにある椅子に腰かけると、彼は反対側の椅子に座った。
「私は、独立したので、作業場を、探しています。マココーン殿」
「ほう。で、希望は?」
「出来れば、水車小屋が、あるのが、望ましいです」
「水車小屋からの動力で、鞴を動かして送風できると言う事かね」
「はい。あとは、少し広い、作業場です」
「中規模の工房が開ける程度と言う事かね」
「弟子を、取ることは、まだ、考えていません。私が、住めて、鍛冶と、革細工が、出来る程度には、作業場が、欲しいと、考えています」
男性が頷いて腕を組んだ。そして目を閉じると少し考えているようだった。
「なるほど。東にいくならコルウェの付近の小さな町にある鍛冶屋の家を借りられる可能性がある」
「はい」
「ただ水車小屋が欲しいとなると、川の横と言う事になる。となると、コルウェからは離れることになり、東の隊商道のフリアの街の南の外れにある物件を探すか、あるいはもっと南のティクワやクワラの町。そこなら物件もいくらかある」
「大分、遠いですね」
「うむ。ヴィンセント殿は、もうご存じだとは思うが、この第三王都には鍛冶の出来る空いている場所は無いのだ」
「はい。それでは、近場では、何処がありますか」
彼はまた暫く考え込んだ。
「西だと、西門出てすぐ北に向かうと、クルーサのほうか、その手前のウルサあたり。何軒か空き物件もある。ただし、水車小屋は無い。水車小屋付きとなると町から出て、川の畔だな。一、二軒、空きがあったはずだ。もっとも、かなりの期間使われていなかったので、修繕は必要だろうね」
「はい」
「街道を西に向かうならガルアの北部。アガワタ河の支流付近か。ここの鍛冶小屋は誰かがやっていたはずだが水車小屋はある。あとはニーレの南部だな。数軒、水車小屋付きの物件がある。まあ、湖の流れでの水車小屋では、速度もないので、ここの水車小屋では、歯車で回転を上げている。その辺りの修理が必要になることもあるので、最初はもう少し手間のかからない方がいいだろうね」
なるほどな。
ケニヤルケス工房で見た、あの風車は下の水車の回転をいくつかの歯車の組み合わせで、速度を稼いでいたし、変速もついていた。ああいう感じになるのかな。
「南は、どうですか」
「南ならトンケラに行けば、空の物件があるかもしれないが、そっちは水車小屋は無い。トンケラは東の細い川から水を引いているが、ここの水車小屋は全て王国の粉挽きのものだ」
「なるほど。となりますと、第三王都の、北部にある、沼の西側か、アガワタ河近く、ということですね」
「そうなる。いずれにしても、水車小屋が欲しいとなると、街や村の中にはない。自衛出来る者しか、そういう場所で工房を持たないのだよ」
「はい。私は冒険者ギルドにも、在籍しています」
「ああ、そうだったな。ならば、そういう村の外での工房も問題はないか。まあ、いずれにせよ、南だと第一王都の管轄だ。第一王都に行って、そっちの鍛冶ギルドに移籍したうえで、場所を訊くことになるだろう」
「わかりました。ありがとうございました」
椅子を降りて、お辞儀。
「あまり、力になれなくて済まないな」
「いえ、お構いなく」
リュックを背負って、鍛冶ギルドを出る。
あまり有益な話は得られなかった。実際、現地に行ってみるしかなさそうだ。
しかし、コルウェでも遠すぎる。冒険者ギルドの方からの任務の連絡などが、数日掛かってしまうのでは、問題だろう。私がコルウェ支部に移籍でもしないと無理だろうな。
となると、調べるのは、第三王都の北西部か、ガルアの街外れか、ニーレの近くか。まあ、トンケラは無いな。
作業場を借りるなら、水車は絶対なのだ。自分一人で自分用の武器を作るだけなら、山の村でやったように、自作の鞴でも、やれないことはないが、仕事となると、別問題である。常にあの作業をし続けるというのは、考えたくもない。
では、次だ。
細工ギルドで紹介されたベネッケン商会にいって、銀の鳥と錫細工の魚を納めるのをやるのだ。
これまた、乗合馬車を待つよりは、歩いて行くしかない。
来たばかりだというのに、思い出すのにも時間がかかる。
五〇もだいぶ過ぎた、草臥れたおっさんには、覚える事が多すぎてきつい。
『ベネッケン商会』と書かれた看板を探すのに暫くかかった。
扉を開けて中に入る。
「どなたか、いらっしゃいますか」
奥の方に何人かの男たちがいた。
「おお。ヴィンセント殿。どうなされたかな」
「私の、作品を、お持ちしました」
これを作ったのはもうずいぶん前になるな。
箱に入った銀の鳥と錫細工の魚を出した。
「これは……。銀細工ですかな」
「はい。魚の方は、錫です」
「銀の鳥は、中は空洞ですかな」
「いえ。これは木型を作ってから、銀を流し込んで型抜きした銀の塊です」
「なるほど」
ベネッケンは押し黙ってしまう。
私としては、それ程安くない物だというのは判っている。あまり酷い値段でなければ、それでいい。
だが。これは、そもそもリルドランケン師匠の手出しの材料である。
それを私が第三王都に行くときに、渡して寄越したわけだ。
そこに、商会の扉が開いて、二人の男が入って来た。
「ブーチャルド殿、クナップ殿。ごきげんよう」
ベネッケンが、男たち二人を出迎えた。
「今日は何用かね」
「おいおい。頼まれた商品の販売だが、以前に依頼のあった細工物は全て販売した。その報告と、あとは、依頼されている物があってね。それを伝えに来たんだ」
もう一人も頷いて、喋った。
「私の方も同じだよ。あとはいくらか情報もある」
「分かった。それは後で聞こう。二人とも、これを見てくれないか」
ベネッケンは、私の作った作品を指差した。
「ほお。随分と出来のいい細工物だな」
「これだけの出来映えは、この第三王都でもなかなか……。いや、滅多に出会える物じゃない」
二人は腕を組んでみている。
「ああ、すまない。ヴィンセント殿。こちらの御仁がワーラー・ブーチャルド殿だ。私と同じで細工物専門で売り買いしている。もう一人、そちらの御仁はコーアト・クナップ殿だ。二人はそれぞれ、担当が違っていてね。傾向の異なる物を売るのを手伝ってもらっているのだ」
ベネッケンがこの二人を紹介した。
「マリーネ・ヴィンセントと、申します。よろしくお願いします」
私はお辞儀。
「ふーむ。この銀の鳥は、確実に一〇リングレットは行くだろうね。まず、使っている銀の量が、銀糸細工とは、比べ物にならない」
ブーチャルドが腕を組んで唸った。
「ワーラー殿。それでは職人の腕前はあまり評価してないではないか」
「これほどの細工をどう評価するべきかね」
「あまりの値段を付けても、何処が買うというのだね」
三人が言い合う様子だ。値段が決まらなさそうだった。
本当は、目立つことはあまりやりたくないのだが、私が高価な細工物を存分にやれるということを印象付けるのは重要だろう。
それを考えれば下手に安い価格で妥協してはいけない。
それで目いっぱいの価格なのか、きいてみる必要がある。
「この指輪を、ご覧くださいませ」
商会の男たちに指輪を見せる。
「この指輪と、共に、わたくしめが、ここ、第三王都に、送り出された、事を、鑑みて、頂きたく思います」
三人の男たちの顔を見上げる。
「リルドランケン師匠が、この指輪を、私に、託された、という事は、この作品は、リルドランケン工房の、責任者の作品、として、扱われる、べきものと、私は考えます。ですので、そのような扱いによる価格で、然る可き相手に、お売り、頂きたく、所望、いたします」
そこまで言って、私は深いお辞儀をした。
商会の男たちの眉が跳ね上がった。
まさか、ぽっとでの独立細工職人がこんな事を言い出すとは思いもよらなかったのであろう。
男たちの顔に先ほどまでとは異なる、緊張が走っている。
クナップが、錫細工を詳細に眺め始め、大きな溜息をついた。
これはリットワース師匠が独立を勝ち取った時の作品を、私に写し取るように命じて、仕上げた物だ。
そして、これの出来も、リットワース師匠が認めている。
男たちの会話が始まった。
「古典作品ですが、もうこれを作っている者は居りますまい」
「これは第一王都の細工ギルドでのものですな」
「あの時にマスターの補佐をしていた、リットワース殿が最後ですかな。これを作ったのは」
「いや、リットワース殿はそれを売りに出してはいませんな。リルドランケン殿の次にマスターになったアスルンド殿の時にも、マスターが出す独立試験で、これが出されて、職人たちが作られたことがありましてな」
「複製眼持ちの、アスルンド殿が作ってあったものを、そっくり真似させる試験ですな」
「あれで、独立に失敗した細工職人がだいぶでて、第一王都の各細工ギルドが再度受け入れを命じられたとか」
「大分古い話ですな。なにしろ、アスルンド殿は在任期間が長かったですからなぁ」
そういえば、今の細工ギルドの正マスターが誰なのか、私は知らない。
「今の、細工ギルドの、正マスターは、何方、なのですか?」
「ふむ。ヴィンセント殿は、今のマスターを存じ上げておられないと。以前はライオドア・マースイ・アスルンド殿が六年、九期で五四年程マスターを勤め上げましてな。年齢もあってマスターからは身を引かれました。今はレーメリヒ・アムスドーフ・バケオーレ殿が、指名されて正マスターを務めておりますな」
「わかりました。ありがとうございます」
私はお辞儀をした。
そうか。この世界での五〇年ならば、それは元の世界の二〇〇年を超えている。
そして今のバケオーレとかいう変わった名前のマスターになってからも、何年か経っているのだろう。
しかし、値段が決まらないのである。揉める。
だいぶ話し込んでいるようだが、途中から共通民衆語ではなくなった。もう、何を言ってるのか、さっぱりだ。商人たちの専用の言語だろう。
途中で、私がいた事に気が付いたのか、或いは思い出したのだろう。共通民衆語に戻って、話が続く。
どうやら、過去の細工物で似た物があったかどうか、大きさやら出来映えでの価格を三人がそれぞれ思い出しては、これに当て嵌めようとしているのだ。
銀の鳥はどうやら、一五リングレットとか言っている。それって七五〇〇万なんだが。
そんな金額で買う人がいるのだろうか。私からしたら、とんでもない金額だ。
錫の魚は七〇リンギレ。それでも三五〇万だ。
私がちらっと、彼らの方を見上げると、また話し合いが始まっている。
……
結局、銀の鳥の価格は一七リングレットに改められた。八五〇〇万か。
流石に、銀の鳥は、売れてからの入金という形になった。ただし、委託販売という扱いにはしないとの事。
なにしろ、まだ独立したばかりの細工職人に対しての特別な販売扱い期間中である。
かなり、異例の事らしい。まあ、そうだよな。
そしてこの金額になると、私の方も払う税金が五分ではない。
一割五分。もしかしたら、もっと高いかもしれない。まあ、これは本当にその価格で売られるかどうか、である。
錫の魚のほうも五分かどうかは判らないが、五分なら三五〇デレリンギか。
仮の売買契約書が交わされた。
私は細工ギルドの代用通貨を渡す。
彼らはその裏側を暫くの間、見ていた。たぶん、リルドランケンの名前とリットワースの名前だろう。
後から入って来た二人の商人の顔に納得したような表情があった。
私は示された場所に署名だ。
さて、これらが売れたら正式な契約書に書き直され、私の代用通貨の口座? に入金するという。
「では、また何か作って持って参ります。よろしくお願いします」
深くお辞儀。
「ああ、いつでも持ってきなさい。出来るだけ早い方がいいが、それで質を落としては何もならない。そこを考慮の上、頼むよ」
私はもう一度深いお辞儀をした。
「では、失礼いたします」
これで、この商会の扉を開けて、外に出た。
最後は、冒険者ギルド。
これが、ちょっと遠い。中央まで出る必要があるからだ。
暫く歩いて、一本街路を変える。
巡回している乗合馬車を見つけてそれに乗り、中央に向かう。
巡回馬車は、空いていた。リュックを降ろして席に座り、少し考える。
あの銀の鳥がどこに売られるかは判らないが、あれだけの金額だ。
材料を出してくれたリルドランケン師匠に、お礼が必要だろうか。
いや。それはもう少し後だな。
師匠は私の名前が他の街まで聞こえてくるのを楽しみに待っていると言って送り出してくれたのだ。
まずは、それが先だな。
細工物を沢山作って、私の名前が商会の職人価格に載るようになれば、ほかの街でも名前が知られるという事だろう。
マリハの町で買った、細工の道具が職人ごとの参考価格だった。
たしか、ゴドノス・ステットバーンという刀匠だったな。
国境で武器を叩いているのは、そこに需要があるからだろう。
そして、その出来栄えで特別に出来のいいものを出す工房として知られるようになったと。
そうなれば、ほかの街の商会にも伝わっていく。商業ギルドのほうでたぶん、その名前を商会の価格表に載せたのだろう。
私も、そうなることを師匠が期待して、送り出したと。
これは、かなり頑張って作らないとだめだな。
そうこうしていると、巡回馬車は第一商業地区に入る。
そこからもう少し進んで、私は巡回馬車を降りた。
さて。冒険者ギルドの扉を開けて中に入る。
カウンターの周りには幾らか冒険者たちが立っていて何か会話が進んでいた。
私が中を進むと、急にその会話が止まった。
全員の視線が私に向けられた。
彼らが何を思っているのかは判らないから、無視するしかない。
しかし、誰も一言も声を発しなかった。
私はにっこり笑顔を見せて、カウンターに進む。
「すみません。代用通貨、支払いの、手続きを、お願いします」
出てきた係官は、私は知らない人だったが、彼は明らかに緊張していた。
何なんだ。
「ヴィ、ヴィンセント殿。用紙と代用通貨を、お出しください」
どもっているぞ。相当緊張しているな。
私が何かしでかすとか、思っているのだろうか。
兎に角、冒険者ギルドの代用通貨を相手に渡す。
見上げねばならず、私の首元の標章やら階級章がはっきりと晒される。
周りでひそひそ声が聴こえ始めたが、無視。
そして部屋代の支払いの皮紙を提出。
彼は皮紙と代用通貨を受け取って、名前を確認していた。
それから一枚の皮紙を出して来た。その皮紙に何か書いている。
これの一番下に署名しろという。
言われたままに、署名。その内容は支払った金額と、その支払先が記入されていた。
まあ、記録を残すのだろう。
私の代用通貨が返して寄越された。
これで、大きな用事は全て終了だが、あと一つある。
それは小銭を引き出す事だ。
どれくらい必要だろう。
一回の移動で、一二デレリンギは、毎回支払っている。
そこで一〇リンギレと二五〇デレリンギ、貯金を下ろすことにした。
まず、大きい方で五〇万、細かい方で一二五〇〇〇円換算だな。
大きい方は、これから、自分の作業場を見つけるために、少しあちこち見て回るかもしれない事を考えたら、旅費が必要なのだ。
細かい方は、交通費やら食事代だな。
これくらいあれば、十分だ。実際部屋に置いてある金額を再計算しないといけないのだが、せっかくここに来たのだから、必要そうな金額は下ろしておくに限る。
さて、あの商業ギルドの代用通貨を使う事になる。
これを見せてもいい係官は、私は一人しか知らない。
それは、バーリリンド係官だ。たぶん、彼なら大丈夫と言える。
彼は支部長直轄の係官で、他の係官とは明らかに違うのだ。
彼に頼むしかない。
「すみません。バーリリンド係官殿は、いらっしゃいますか」
「呼んできましょう」
先ほどの係官が席を立って、奥に行った。
「どうされましたか。ヴィンセント殿」
バーリリンド係官がやって来て、私を見下ろしている。
「すみません。何も、言わずに、まず、これを、見てください」
私は、商業ギルドの代用通貨を彼に渡す。
受け取った彼の目が一瞬、大きく見開かれたが、彼は何も言わなかった。
そして彼は軽く頷いた。
「つまり、これで硬貨を引き出したい訳ですね」
「はい。一〇リンギレと、二五〇デレリンギ、硬貨で、お願いします」
「判りました。書類を出します」
彼が出した書類に、彼は何かどんどん書き込んでいき、金額を書いた。
「ここに署名をお願いします」
羽根ペンを受け取って、何時もの様に署名。マリーネ・ヴィンセントと。
彼は書類を受け取ると、それと代用通貨をもって奥の方に行った。
暫くしてから、彼は革の袋と代用通貨を持ってきた。
あれに入っているのだな。
「ヴィンセント殿。気を付けてください」
そう言いながら彼は、革袋と代用通貨を返して寄越した。
「はい。ありがとうございます」
私はこれらを受け取ってリュックに入れた。
よし。これで当座の活動資金が下ろせた。
最後は、あの雑貨屋に行く。蠟燭を買うのと油である。
中央通りで巡回馬車に乗り、第四商業地区、各工房の前を通り抜けて、南に向かうのに、たぶん二時間ちょっとかかった。
初日、コローナに連れて行ってもらった、あの雑貨屋の近くで降りる。
『雑貨屋タッペル』だ。
ここで油の瓶と蝋燭をまた三〇本、買って下宿に戻る。勿論、ここでは硬貨で二八デレリンギ、支払いである。
つづく
冒険者ギルドに寄って、代用通貨での書類も提出。さらに小銭も引き出した。当面の活動資金である。
次回 第三王都で鍛冶と細工
ケニヤルケスの鍛冶工房に行き、爪切りの木型を作り直す所から。
この新しい型が、これからの爪切りの土台になる。




