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028 第7章 村の生活と狩り 7ー1 薪づくりと狩りの日々

今の季節もわからないマリーネこと大谷。

今後のために薪も作ります。

そして狩り。

たんたんと日々が過ぎていきます。

 28話 第7章 村の生活と狩り


 7ー1 薪づくりと狩りの日々


 翌日。

 まずはストレッチと槍の素振り、剣の素振り。

 水の取り換えだが、猟師の工房の水甕(みずがめ)は放置。台所の水は(こぼ)した。

 村長宅の水を交換。鍛冶屋の台所と鍛冶場の水も交換。


 さて。

 これから暑くなるのか、寒くなるのか、雨季が来るのか乾季が来るのか、さっぱり分からないままに五ヵ月が過ぎた。

 既に、先日考察したように一年が一二〇〇日くらいあるとすると、季節が変わるには三〇〇日くらいありそうだが、もし一年が約八〇〇日なら二〇〇日から二一〇日前後で季節が変わって行く……。つまり元の世界の感覚で七ヵ月くらいだな。


 初めてここの村に来た翌日以降、井戸の後ろにある樹木に毎日ナイフで傷を付けているのだ。

 鍛冶で籠もりっきりで何日か過ぎた鉄塊造りの日々は概ね七日くらいと自分では考えて、村長宅に行く時に樹木に刻んでいた。数え直してみる。


 一六一……。 今日を入れて一六二日。五か月とほぼ二週間か。

 もし、いきなり冷え込んで来ても困るよな。今が秋という感じはしないけど、何しろ季節感に乏しい土地だからなぁ。

 薪を増やしておくか。

 斧を研いで、斧と大きい鋸を持って、近くの森に行き伐採。


 切り倒す方向にまず斧を入れて、半分いかない位だったかな。

 楔型(くさびがた)に切って、反対側はその楔よりやや上の位置に斧を入れて行き、切り倒す方向側に入れた楔の所までやったら止める。

 自然と倒れるには、上の枝ぶりの観察も重要で、枝の方向とかも見る必要があるらしい。

 よく判ってないままにやったので、最後は思いっきり、全力でキックだ。

 木が最初に切り込みを入れた方向にゆっくりと倒れ込んだ。


 ズドドォォーン。地響きが響き渡る……。

 うは。結構高い木だったらしい。二五メートルくらいはあるのか?


 さて、鋸を入れて切り出すのだが、一人なので板にする様な時に使う正式な縦引きが出来ない。

 適当に槍に使った三メートルくらいの長さでまず丸太を切り、それを鋸で一人で縦引きする。

 まあうまく行くとは思ってないが、今後長い木材が必要になるかもしれないので、できるだけ頑張る。


 枝を小型のナイフでガツガツ削って落とし、これも薪の材料にする。

 丸太を切り、縦引きするのを独りで行う。

 板を切り出し、これは先に工房に運ぶ。

 戻って小さい枝もすべて適当な大きさに切って薪置き場に運んだ。

 

 もう一本切ろう。今度はそれほど高くは無さそうな木を選び、斧で伐採する。

 枝を落とし、今度は五メートル前後位で切断。慣れて来たので、この長さで板を切り出す。

 自分の身長から言って、この板は引きずって行くしかないかと思ったが、重さは問題にならないのだ。

 持ち上げて大工工房に運び入れた。


 調子に乗ってもう一本伐採したが、でかい木だった。半分弱を切り出していると、もう二つの太陽が傾いている。

 もう夕方か。

 

 残りの丸太をロープをかけて引っ張る。まだ一〇メートルくらいはあるのか。

 引っ張っていけるのか?やってみる。ロープを引くと動くようだ。

 ロープを引きズリズリと引っ張りながら村の裏側に運んだ。

 残りの作業は明日だな。

 

 まあこれから寒くなるとして、どれくらいの期間、寒いのか。冬が二〇〇日?


 ……


 一つだけ分かる事がある。それはこの高床式薪置き場の大きさだ。

 ここにびっしり積み上げてその寒い期間を過ごすとする。

 鍛冶場は木炭があるから暖房不要として、他の家七軒は暖房も必要だろう。

 それがこの薪置き場の量で済むという事だな。たぶん。

 あるいは例によって魔法である程度の暖は取れるのかもしれないが。

 それでも料理に使う燃料はいるだろう……。


 さてこの薪置き場、何故こんな高床なのか。

 あの屋根のついた渡り廊下の存在といい、ここに雪が降るんだろうなと思っていたんだが、それなら囲いを壁にして防ぐほうがいいようにも思う。

 それで思ったのは、雪以外の天候不順。やはり雨だろうな。濡れない様にするのと、高床で空気を通して乾燥を早めるという事だろうか。


 とりあえず雪が降ったり、長雨が降られると、食料が困る。

 狩りに行って片っ端から燻製肉と塩漬け肉を作る必要がある。

 どれくらいの期間、雪だったり雨が降るのかも分からないが。

 

 では夕食だ。鍛冶屋の家の台所でいつもの様に焼肉と肉入りスープ。

 いつも通り。


 手を合わせる。

 「いただきます」


 肉体労働で塩分を失っていて、今日はやや薄味。

 ちょっと塩を入れればよかったか。


 「ごちそうさまでした」

 手を合わせる。


 手っ取り早く片付ける。

 今日は猟師の家の毛皮敷のベッドで寝る。 



 翌日。

 とりあえずストレッチと槍の素振り。剣の素振りは欠かさず行う。


 肉の備蓄が必要という事で、今日は狩りに行く。

 いつものようにお出かけスタイル。ダガーと槍二本。

 森の近くで狩りをする。

 

 今回はやや大きいネズミウサギ。中型犬より小さいくらいの大きさ。耳が中途半端な長さの齧歯類(げっしるい)らしい顔立ちの獣。

 出て来た所を槍で突く。

 しゃがんでいると、勝手に飛び出して向かってくるのでカウンターを取って槍を突き出すだけだ。

 相手が勝手に刺さる。もう最初のころの緊張感がまるでない。

 気を引き締め直す。

 

 獲物の頭を割って魔石を抜き取り、血抜きをして内臓を抜き中を確かめる。


 ……


 ずっと気になっている事がある。

 こういう獣たちの胃袋を満たすほどの餌になる物がどれだけいるのか。

 そして何故、大きくなったのか。


 昔、恐竜が大きくなったのは、草食恐竜が植物の巨大化に対抗して上の方の葉っぱや実を食べるようになったのと、恐ろしく葉っぱや実が硬いために、それを消化する消化器官が長くなっていき、必然的に大型化していったという。

 それに大きくなれば肉食恐竜にも襲われ難くなる。


 肉食恐竜は最初は小さく、素早いだけが取り柄の生き物だったのが、次第に肉を多量に食べて行く事で体が大きくなり、進化の過程で素早さを捨てても大型化していったという。まあ頭脳がサメ並みなら、さもありなん。


 小型の時のような素早さを失っても大型になった肉食恐竜は、噛む力を発達させていったらしい。

 噛む力はTーレックスで数一〇トン、あるいはそれ以上の力で噛み千切ったと考えられていて、成程、肉食恐竜の頂点なだけある。

 元の世界で、今でもその名残を残すのは恐らくは(わに)。噛む力は一トンあるらしい。


 ここでふと恐竜の事を考えたのは、この魔獣たちのサイズがそういう餌とか捕食する側とされる側の事情によるものなのか、それとも他の外的要因によるものなのか、内臓を見てある程度推測できないか、考えていた。

 まあ恐竜の場合は進化の過程とか言っても、掛かっている時間が桁違いだ。数百万年から数千万年……。


 ネズミウサギの小腸は体のわりにかなり長い。雑食なんだろうな。

 消化するのに時間がかかるものも食べている事を意味する。つまり蟲とか木の実とか。

 

 どの獣にも胃の中には昆虫がいない。昆虫は食べないのだろうか。

 やはりいないからなのか。

 ここに普通に昆虫がいないのは、どういう理由なのか分からないが、それによって生態系はかなり狂っているはずだ。

 

 まずハチなどの昆虫が居ないと野菜などの花が受粉できない。

 花粉の運び手がいないと植物が花を咲かせても意味がない。

 魔物の昆虫とかがいて、そいつらがやってるんだろうか。

 

 風で受粉するタイプの花も多くあるので、一概に全部だめだとは言えないのだが。

 しかし地面とか地中に住む虫たちがいないと土地も肥えない。


 うーん。

 異世界だからな。『何か』があってここが成立してるんだろうな。

 そう考えないと、鳥も虫もいないこの森の説明がつかない。

 

 これ以上考えてもしょうがない。ここは異世界の森。元の世界の常識が通じない森。

 そういう事にしよう。

 何か理由はあるはずだが、今の私には思いもつかない『何か』がここを成立させているのだろう。

 

 まあ、自分に出来る事は少しでも狩りをして保存できる肉を作る事だ。

 毎日コンスタントに三匹から四匹は狩り取る。

 幸いにして、このデカいネズミやネズミウサギは一向に減らない。

 

 ……

 ……

 

 暗くなって村に戻る。

 獲物を捌くのに、ランプに火を灯し作業開始。

 皮を剥いで丁寧に脂を削いでおく。肉のほうは塩を擦り込んでおく。

 後で燻製にしよう。

 鍛冶屋の台所に向かう。

 

 日々のランプは獣脂で賄うのだが、(すす)が多い。松明(たいまつ)も同様。

 村長宅の中の壁は白い漆喰で作られていて、綺麗なので余り汚したくない。

 

 必然的に夜の食卓は猟師の台所か鍛冶屋の台所となった。鍛冶屋のほうは木炭の煤とかも出ている。

 壁も煉瓦だ。気にする必要が無い。猟師の家のほうは肉の解体もあるので台所が広い。

 周りは漆喰ではなく木の壁だ、遠慮はいらないし、広いので作業もしやすい。

 

 夕食を作る。

 (かまど)に火を(おこ)し、準備だ。

 六本足狼の燻製肉を焼くのと、塩漬け肉のスープ。

 毎度毎度のメニューである。

 背中の燻製肉をぶつ切りにして、獣脂を少し入れたスキレットで焼く。

 塩漬け肉は薄切りで鍋に入れて塩を足して煮る。

 

 ……

 

 出来た。


 手を合わせる。

 「いただきます」

 

 スキレットをそのまま鉄板の皿代わりにして、自分のナイフと、木を削ったフォークで食べる。

 燻製肉を頬張りながら考えた。

 もうすこし狩場を遠くまで伸ばしたい。


 しかし私は弓は駄目だ。扱えない。

 弓が扱えればだいぶ違うのだろうけど、私は昔のMMORPGで弓に関してはトラウマがある。

 まず弓の弦を入手しないといけない。

 

 次に矢羽根。これが手に入らないと厳しい。

 さらに矢はかなりの数がいる。一〇本二〇本ではない。

 この村には鳥が居ないし、森にも居ないから矢羽根が手に入らない。


 そして矢は大抵の場合、使い捨てが多い。

 一〇〇放って二〇くらい回収出来たら良い方。

 折れたり、回収できない場所に行ってたりで、昔の弓矢は意外とコスパが良くない。

 矢のシャフトを作り、(やじり)を付けて矢羽根もつけてやっと出来るその矢が五本中一本くらいしか、回収できないとなると流石に続けられない。


 あのMMORPGで弓矢は本当に散々な目に遭った覚えしかない。

 ハーピーとの激闘で矢は四五〇本を越えて使ったのにも関わらず、倒し損ねて飛んで逃げられた。

 あの時の絶望感と言ったらなかった……。矢を作ったのに掛けた時間を思うと泣けてきた……。


 使った時間もかなりだ。引き撃ちしながら相手の周りをぐるぐる回りながらだから時間がかかった。

 その世界でのまる二日中、戦っていたのだが……。

 矢とハーピーの落とした羽をそれぞれ回収したが、羽は四〇枚、矢は二〇本程度しか回収できず、他は折れていて回収不可能。

 大赤字どころではなく、それで弓矢を辞めたくらいの出来事だったのは今も苦い思い出として残っている。

 

 それともう一つ。ここらの魔物を狩るのに何発も矢を当てて倒すような狩りではこちらがやられる。

 見つけた時は遥か遠くなのに、凄い速さで突っ込んでくる獲物ばかりだ。

 弓で動いている敵の急所に確実に当てるとかいう、名人技がいきなり要求される。

 さすがにそれは無茶というものだ。

 そういう訳で私は弓は思考の外に置いていた。

 

 いざとなったらダガーを投げるのだが、これは使い捨ての武器ではないので、出来るだけ事情が許せば全力で回収だ。

 また作る事を考えたら、回収が基本である。

 スープも飲み干した。

 

 「ごちそうさまでした」

 手を合わせる。

 

  手っ取り早く片付ける。

 

 お腹いっぱいになったところでさっさと寝てしまいたいのだが、やるべき事がある。

 さっきの塩をまぶした肉。そのまま放置はできない。

 他の肉を貯蔵してある桶のところに持って行く。

 猟師の家に行き、肉を樽にいれて、もう少し塩をかぶせた。

 

 今日はここで寝よう。

 

 ……

 

 

 つづく

 

次は。

更に狩りに行こうとするマリーネの前に立ちはだかる巨獣。またしても大ピンチとなります。


誤字脱字、脱ルビ等、お見苦しい点があれば、ご報告いただければ幸いです。

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