276 第20章 第三王都とベルベラディ 20-63 ベルベラディの高級宿と晩餐会
オセダールの宿で、白金に昇級した祝賀会と称する晩餐会が開かれた。
それは、ごく少数の集まりではあったものの、そこに集まった紳士淑女は、みな、大手商会の代表ばかりだった。
276話 第20章 第三王都とベルベラディ
20-63 ベルベラディの高級宿と晩餐会
この大きな館の、これまた大きな広間に連れていかれた。
この部屋もまた、豪華な絨毯が敷かれている。天井には大きなシャンデリアがいくつも吊り下げられ、壁にはタペストリーか。あちこちに大きな花瓶と花。
いかにも高級そうな、馬鹿でかいテーブルに、これまた凝った造りの椅子が多数。
私はその部屋の脇にある小部屋に通され、そこで菫色のドレスを着せられた。靴も態々作ってあったのか、紫色に染めた革で作ったパンプスの様な代物である。ただ、少し大きい。
やむなく爪先に布を詰めた。
夕方になると、アルパカ馬二頭立ての箱馬車が次々と庭に入って来た。
メイド姿の女性やポーターのような男性がどんどん出ていく。
オセダールも出てきた。
「今回の祝賀会に出席の皆さんが着いたようですな」
これから祝賀会と称して晩餐会が行われるらしい。
「どんな、方々が、いらっしゃるのですか」
「それは、彼らから紹介がありましょう。お嬢様。お嬢様は首に階級章を付けて、それを見せてあげればよろしいかと」
「分かりました」
私は、この祝賀会の会場となっている広間の脇にある小部屋に連れていかれ、そこで待つことになった。
沢山の人が来るのだろうかと思ったが、それ程でもないらしい。
こじんまりとやるのだろうか。
メイドの人がやって来て呼ばれた。私はその部屋を出ると、一〇人ほどの紳士淑女といった服装の人々に囲まれた。
「今日、ここに一人の白金二階級の階級章持ちの方を迎える事になりました」
誰だろう。凛とした声。女性だが、こういう場でメイドの人たちが司会をするのはあり得ない。
その女性の横に、オセダールがいた。オセダールは相変わらず、にこにこしている。
「オセダール殿がずっと仰っておられた冒険者ですな」
「今最も勢いのある、注目すべき冒険者はここベルベラディの中にはいないと、オセダール殿がずっと仰っておられた」
「北部、中部で知らぬもののない、白金の二人と同等の実力を持つ、小さき英雄と」
次々と紳士たちから声が上がる。
「静粛に。静粛に」
オセダールが周りに呼び掛けた。
私が手招きされて、執事の男性に手を引かれて、オセダールの横に立たされた。
「お集りの紳士淑女の皆さん。紹介しますぞ。今は第三王都支部所属のマリーネ・ヴィンセント嬢でございます」
「おおっ」
「まあ」
ここにいる一〇名ほどの男女から声が上がった。
オセダールが付け加えて言った。
「そして、もう商会の一部では、彼女が独立職人として細工師と鍛冶師の資格も取得したのは、ご存じのはず。今最も注目すべき人物ですぞ」
「それはそれは」
「どこで学ばれたのでしょうな。そのような話はこの街に流れてこなかったようですぞ。オセダール殿」
紳士が夫人を伴ってオセダールの前にやって来た。
「マリーネお嬢様。こちらのお二人が、ヴェストベリ商会の会頭とその奥方ですぞ」
薄い金髪。背の高さはこの人も二メートルちょいだな。夫人はぎりぎり二メートルか。
やや痩せたような感じを受けるひょろっとした体形。
肌の色はやや青い感じの白い肌で、尖った耳、彫りの深い顔である。
瞳も薄い金色。
「おお、失礼。まだ名乗っておりませんでしたな。私がアルヴィド・ヴェストベリ。妻はアーネ。アーネ・ヴェストベリ」
そういうや、男性は胸に手を当ててからゆっくり掌を上に向けた。
そしてお辞儀。夫人もそれに合わせて深いお辞儀だった。
そこに割り込むように大柄な夫妻が来た。
「私はアウエンミューラー商会の代表でしてな。マロリー・アウエンミューラー。妻はフリーダと申します。総合商会として手広くやっておりますから、何かの折には、ぜひ我が商会をお頼り下され」
うは。そうそうに売り込みか。
オセダールの顔は相変わらず笑顔だが、目が笑っていない。
この夫妻には気を付けておこう。
「アウエンミューラー殿、私が順に紹介しておりますぞ。では、そちらのお二人が、マクダイス商会の会頭とその奥方」
男性は軽く会釈した。
「ご紹介に預かったバーナード・マクダイスと申します。妻はアーリン。今後ともよろしくお願いいたしますぞ」
二人とも揃ってお辞儀した。
「こちらのお二人がアグアーゾ商会の会頭とその奥方」
「ご紹介に預かったクラウディオ・コマス・アグアーゾと申します。ヴィンセント様。妻はカルラと申します」
この二人は、かなり穏やかな雰囲気だった。
二人は軽いお辞儀をした。
二人ともやや太った夫妻だ。
身長は二メートルちょいといった所か。旦那は二メートル一〇あるかどうか。そこまではないか。奥方の方は二メートルにはだいぶ満たない身長だ。靴を履いていても、踵を上げるようなことはしていない。
肌はかなり濃い茶色。瞳は褐色だ。髪の毛はやや黒い茶色。
顔はやや丸い。他の亜人たちとは、はっきりと顔立ちが違う。
顔は些か脂肪が付き過ぎていて、頬と顎は丸かった。
何処の人なのかさっぱりわからないが、尖った長い耳を見るに、亜人である事だけは確かだった。
オセダールは次々と紹介していく。残念ながら名前はサッパリ覚えられない。
「こちらのお二人がエルメンガルト商会の会頭とその奥方」
「ご紹介に預かり申した、ゲオルグ・エルメンガルトと申します。マリーネ・ヴィンセントお嬢様。私の妻はカチヤと申します。我が商会は食材の宝庫でして、オセダール殿とは懇意にさせてもらっております」
そう言って二人は私の前でお辞儀した。
二メートルあるかどうかの背丈で、瘦せぎすの夫妻。二人はかなり痩せている。
瞳は薄い青。肌色はかなり白い。彫りの深い顔だ。
身長は夫が二メートルちょいだ。夫人は二メートルにぎりぎり足りない感じ。
「フィオナ。マリーネお嬢様をお連れして」
「旦那様。畏まりました」
彼女が軽くお辞儀した。
どうやらこの女性がオセダールの家族なのか。他がみんな夫人を伴っているのだ。この女性、妹とか、娘と言う事は無かろう。この女性はオセダールの奥さんなのだろう。
彼女に手を握られて、大きなテーブルのほぼ真ん中に連れていかれる。
この女性は、恰幅のいいオセダールとは真反対の痩せていると言っても差し支えない程、スリムな体形にドレス姿。身長は二メートルギリギリくらいか。やや彫りの深い顔立ちは、美形と言って差し支えない。どちらかと言えば元の世界の、昔のギリシャとかローマの頃の大理石の彫刻を思わせる顔立ちだった。そして金色の長い髪は縦ロールさせている。
今回の商会の男性たちの奥方の髪型も、そういう女性が二人いたが、私は初めて見た。少なくとも第三王都ではそういう髪型の女性を見ていないからだ。それはあの、第四商業地区のあの些か不道徳そうなサロンにもいなかった。
「皆さま。この程、白金に、昇級いたしました、マリーネ・ヴィンセントと申します」
一斉に拍手があった。
「今は、第三王都、支部に、所属して、おります。こちらに、来たのは、全くの、初めてで、ございます」
「今回来たのは、独立職人の、申請で、ございます。これから、よろしくお願いいたします」
私は右手を胸に当てて、深いお辞儀をした。
再び、拍手があった。
「お嬢様。お師匠様はどなたでしょうな?」
訊いてきたのはオセダールだったが、おそらく、皆が訊きたがっている事だろう。
「細工の方は、木工、金属加工、革の加工と、特に、革靴を、ギオニール・リルドランケンお師匠様に教わりましてございます。さらに、革の鎧を、ゴルティン・チェゾ・リットワースお師匠様に、教わりましてございます」
そう言うと、一斉に響めく声が上がった。
「鍛冶は、直接の、お師匠様は、いませんが、それでは、独立、出来ませんので、第三王都の、ヤンデル・ケニヤルケス親方様の、下で、独立試験を、受けまして、ございます。私の造った、刃物は、ここ、ベルベラディの、ギルドマスター様が、クラテルバース親方様の、所に、渡して、武器として、認定したと、いう事で、ございます」
「ですので、今後は、こまごまとした細工と革細工、靴、刃物を叩く事で、職人としても、やっていきたいと、思っています」
ここで一斉に、拍手があった。
「それにしても、リルドランケン殿の名前を聞くことになろうとは」
「まだ、細工をやっておられたのですな」
「あのお方も、色々あったようですからな」
「それに、あのリットワース殿が弟子を取るとは驚きですな」
紳士たちから口々に驚きの声が上がっていた。
「それで、皆さま、今回の白金昇級の、直接的な、部分は、お話し、できません。ですので、他で、何か、訊きたいことは、ございますでしょうか」
「ヴィンセントお嬢様。第三王都の方にいらっしゃるのですな。それでしたら、カーラパーサ湖での怪異について、何か話をお聞かせ頂ければ幸いですな」
訊いてきたのは、さっきの紹介で、いきなり売り込んできた男だ。
アウエンミューラー商会だったか。
しかし、カーラパーサ湖の方の事件は私には判らない。
そこは、素直に知っている事だけ言った方がよさそうだ。
「私が、第三王都に、着く、直前に、あった、怪異で、ございまして、第三王都支部の、優秀な副支部長で、あらせられます、エルヴァン・ユニオール殿が、優秀な部下を引き連れて、向かわれた、との事で、ございます。本来ならば、第一王都の、範囲だったと、聞き及んでおりますれば、何故、第三王都に、要請が、あったのかは、定かでは、ございません。ケラ、セケラの両支部で大被害が出ておりまして、ユニオール殿が向かった時には、水棲魔物はレイクマにまで、達してしまったとの事で、ございます」
「そして、多数の船がやられたと?」
さっきのアウエンミューラー商会の紳士が突っ込んできた。
「撃退には相当な、手間がかかったとか。二〇日に及ぶ激闘だったと、聞いております。その間に、逃げれなかった、二五隻の、帆船が、沈没。他にも、多数の、船に、破損被害が、出たと、支部長に、報告がありまして、私も、その時、それを、聞いたのでございます」
紳士たちが呆気にとられている感じだった。
「私に、分かっている、事と、しましては、ニーレの、造船所で、船を、作る事に、なりましょうけれども、木材の、調達は、第三王都付近では、出来なさそうという、事でした。西の、方は、分かりませんが、第三王都の、方では、遥か東、ルッカサの、方から、運ぶ事に、なりそうだと、リーナス・ヴァルデゴード副支部長殿が、仰っていました」
「ずいぶんと、遠くから運ばせますな。お嬢様」
オセダールが訊いてきた。
「第一王都の方は、判りませんが、パニヨ山塊の、北側で、木材を、切り出す、樵ギルドは、ほぼ無いと、副支部長殿が、仰っています。第三王都の、近辺の、林は、全て、王国の、管理対象の、ようで、ございますので」
そういうと、婦人たちはともかく、商会の紳士たちは顔を見合わせている。
「暫くは、陸路の、輸送で、混みあいそうだと、副支部長様も、仰っておられました」
「そうなるでしょうな。東の隊商道で第三王都を経由して南門から、ティオイラまで行く事になりましょうな」
オセダールが頷くようにしてそういった。
そして、食事が出てきた。晩餐会の始まりか。
全員が席に着いた。
まず、ブルスケッタらしきもの、ここではスクロティだったか、それから始まる。
スープも一緒に出された。
手を合わせる。
「いただきます」
こういう時のテーブルマナーは、取り合えず一番外のカトラリーから手に取って、音を立てずに頂く事だ。それでまず、一番外側のスプーンを持って、スープを飲むところからだ。
流石に、あちこちの宿で、これをやっているのでもう慣れてはいるのだが、やはり緊張する。なにしろここにいる紳士淑女の面々は、本物の上流階級の人々だろう。
最初に出された魚料理は、揚げたものだ。これはスッファのオセダールの宿で出た料理だ。
身は淡白でふんわりしている。この味は覚えている。
その次は燻製肉を炙った物。これが何種類か出された。
次は、野菜と肉を煮たものらしい。物凄い色をしている。
意を決して、これを少々頂く。
口に入れた瞬間、猛烈な辛さが口の中で爆発していた。
私は慌てて、水の入ったゴブレットを掴んで水を飲んでいた。
しまった。礼儀正しさがどこかに吹き飛んでしまった。
オセダールは笑っていた。
「どうですかな。お嬢様。お味の方は」
見ると、周りの紳士淑女の面々も皆、顔を真っ赤にして水を飲んでいた。
「随分、辛い料理ですわ。オセダール様」
あまりの辛さに、喉がおかしくなりそうで、声が枯れていた。
「はっはっはっはっ。これは北東の暑い国の料理でして、勇敢な男たちが魔獣と戦う前に、自分たちの勇気を試すために食べるものと言われておりましてな」
オセダールの冗談のセンスがよく分からないのだが、オセダールは態とこれを仕込んだのだろうな。
その直後には、冷やした甘酸っぱいフルーツが出され、喉の方も落ち着いた。周りの人も一心不乱にこの冷えたフルーツを食べている。
更に料理が続く。
次に来たのは、大きな蓋がされた大皿で、車輪の付いたワゴンに乗せられていて、コックのような男性が三人で運んできた。
蓋を取ると、そこにあったのは大きな獣一頭の蒸し焼き。
明らかに、あの時に見た子ゼリカンの蒸し焼きより大きい。
何の獣やら。
二人の男性が手早く肉を切り分けて、皿に盛って行く。
別の男性が大きな壺のような容器からソースを掛けた。
その皿が全員の前に、次々と置かれていく。
それらが終わると、三人は深いお辞儀の後、大きな車輪付きのワゴンを押して去って行った。
何の肉なのかは、不明だが蒸し焼きだ。
そこに濃い茶色のソースが掛けられていて、これも旨味が濃い。
かなりいい味である。
全員でそれを食べていると、飲み物が出された。
さっぱりした味の飲み物だ。
これは例によって、フルコースのような料理が振舞われているのだな。
更に、料理は続く。
一度、サラダのような生野菜と冷製スープが出され、水も出された。
数人の間に会話が始まっていたが、何故か共通民衆語ではなかった。
やれやれ。商会の特別な会話だろうか。
その後は、厚切り肉のステーキだ。魚醤と獣脂で作ったソースがたっぷりと掛かっている。そして、その上にこれまた厚切りのフルーツの果肉が載せられている。
それが終わると、フルーツだ。多数の色彩も豊かな果実を切ったものがお皿に盛りつけてある。
これも食べて、果汁のジュースを飲んで終了。
「ごちそうさまでした」
手を合わせる。軽くお辞儀。
食事が終われば、必然的に会話が始まる。
そうなれば、話題は私の魔獣退治だろう。
とは言え、こんな宴席で話せるものは限られている。
カサマの街道の掃除の話をすることになった。
大きなタルヤルの爪を切り落とした話とか、
イグステラが出た話。イゾナクージの群れが出た話等だ。
詳しく話すようなものではないのだが、彼らがもっと聞かせろという圧を掛けてくるので、ヴォッスフォルヘとの戦いや、本命のガオルレース討伐の話もせざるを得なくなって、それも話した。
ガオルレースが雷を周囲に落としている中、死ぬことも覚悟の上の賭けのような接近戦だった話だ。
彼らが大興奮しているのは、彼らの目の動きとか輝きを見れば自ずと判ったが、必要以上に盛る事はしたくない。止めを刺して斃したのは一緒に行った隊員たちだったと、念押しして会話を締めくくった。
彼らの間に、様々な会話が広がっていたが、オセダールが簡単な挨拶をして今日の祝賀会を閉めた。
すると、一番最初にオセダールが紹介した紳士、ヴェストベリがやって来た。
「マリーネ・ヴィンセントお嬢様。細工物でこれは。という品が出来上がりましたら、是非、当商会にお持ちください。きっと良い話が出来る事をお約束いたしますぞ」
そこにマクダイス商会の紳士も加わる。
「マリーネ・ヴィンセントお嬢様。刃物でこれは。という物が出来ましたらば、是非当商会にお持ちくだされ」
そこに、あの時も紹介に割り込んだアウエンミューラー商会の紳士が来た。
「ヴィンセントお嬢様。当商会は、どのようなものでも扱います。革でも何でも結構。売り先に困るような事は御座いませんぞ。どうか当商会も、ご利用くだされ」
そこにオセダールがやって来た。
「ヴィンセントお嬢様がお困りの様子。商会の紳士諸君。まだこれから幾らでも機会が御座いましょう。今宵はこれくらいにて、お嬢様を解放して差し上げたらどうでしょうな」
オセダールがそういうと、そこに来た三人が、お互いに顔を見合わせ、それから姿勢を正した。
三人とも右手を胸に当て、それからゆっくりと掌を上に向け、軽くお辞儀をした。
私は両手でこのドレスの裾を持ち上げて、右脚を引きながら、軽くお辞儀。
失礼になっていなければいいのだが。
「では、お嬢様、今日はもうお疲れでしょう。お部屋の方に行かれたらいかがですかな」
「オセダール様。ありがとうございます。それでは、これにて失礼させていただきますわ。ごきげんよう、皆さま」
全員の前で、もう一度このドレスで、この裾を持ち上げての、お辞儀である。
たぶんオセダールが気を利かせてくれたのだ。
メイドの人が二名。一人は私の横で明かりを持ち、もう一人は私の後ろでこのドレスの長い裾の後ろを持ち上げてついてきた。
あのままでは、あの商会の責任者たちに、あれこれ約束させられそうで、それを見越したオセダールが私を部屋に戻したのである。
やっと部屋に戻り、解放された私はこの菫色の長いドレスを脱いで、自分の紺色のスカートと白いブラウスに着替えた。
この長いドレスでは、トイレに行くのすら、困るからだ。
やれやれ、祝賀会としては下手なスピーチも要らなかったので、無難に済んだ方なのだろうけど、魔獣退治の話を沢山求められるのが困る。
今日は直ぐに寝たかったのだが、メイドの人がやって来てお風呂だ。
これも、もうそれに任せる。
それも終わって、やっと寝るのだが、これまた豪華な寝具と天蓋付きベッドで寝苦しい事、夥しい。ベッドの片隅に丸まるようにして寝た。
……
それから毎日毎日、五日間もの間、祝賀会と称して豪華な食事の晩餐会のようなものが開催され、毎回異なる大手の商会の夫妻が訪れる。顔も名前もサッパリ覚えられない。
全部で三〇もの商会の名前とか覚えられる訳もなく。
そのたびにカサマでやった街道掃除の話をしなければならない。
他の商会が知らない話とか、ここの商会だけの話とか、そういう事にならないよう、気を遣う。
流石に疲れた。
オセダールの奥方はなかなか会話の活発な方で、対応には苦労もしたが、嫌味な部分は一切ない洗練された女性だった。
恐らくオセダールの奥方も相当に頭が回るほうだろうし、教養のある女性だった。
それから更に一〇日以上は、オセダールの宿で過ごした。
つづく
魔物討伐の話もせがまれる一方、毎日毎日、違う商会の人間が来ては祝賀会が続いていた。
オセダールが招待したのであろう、商会の代表が引きも切らずにマリーネこと大谷の前に現れるのだった。
次回 ベルベラディの高級宿と白金の二人
商会のお偉いさんが毎日やって来ては、挨拶されるのにうんざりしていたマリーネこと大谷。
とうとうオセダールの夫人がスッファ街に移動して、この祝賀会とやらは終わりを告げる。
そうすると今度はマリーネこと大谷の前に白金の二人が現れる。
マカマにいた彼らはこちらに来たのだ。




