表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/306

026 第6章 再び狩りと考察と物造り 6ー2 考察

ある日の事。自分の服を洗濯しながら、この異世界の事に思いを馳せるマリーネこと大谷。

自分はいったい、どんな星にいるのだろうかとアレコレと考える話です。

 26話 第6章 再び狩りと考察と物造り


 6-2 考察


 翌日。

 朝はストレッチして、槍の素振り。ダガーの素振り、そして剣の素振り。

 

 洗濯もする。まずはお湯を沸かして桶に入れる。

 自分の服と村人の子供服、鍛冶で使ってる布、それからタオルに使ってる布を洗う。

 

 ぬるま湯で洗いながら考えた。

 

 この異世界には太陽が二つ。そして月が三つある。

 

 そこから私が思う事は元の世界と同じ距離に太陽とこの惑星があるのなら、太陽が二つもあるのだから金星のような熱地獄に違いない。生命なんか()めない。

 

 少し太陽が小さいのでは? という考えは()てた。元の世界の太陽ですら恒星としては小さい。

 元の世界の太陽より質量が減ると、殆ど低温恒星しかない。

 大体太陽の三分の一くらいの質量まで縮んでいる赤色矮星(せきしょくわいせい)。しかも銀河系で見つかる多くの低温恒星がコレだ。

 そうなると生命が住むのに適さない。紫外線は出さず、強烈なX線フレアしか放射しないからだ。

 しかも温度も低いと来てる。

 

 おそらくあの二連星は最低でも太陽と同じか少し大きいだろうという気がする。

 太陽が恒星の仲間の中では比較的小さい、恒星系部類に入るらしいからそういう推測が成り立つ。

 

 太陽系の一番外側の準惑星の冥王星から太陽を見る事が出来たら、太陽から約四〇AU(天文単位)なので、地球から見る太陽の一六〇〇分の一。

 光の明るさは距離の二乗に反比例だったか、他の恒星のほうが明るくて太陽なんか見えない。

 同じ星系の恒星なのに見えない。そういう小ささなのだ。

 シリウスの方が余程太陽みたいに輝いて見えているかも知れない。

 

 ここの恒星の質量がほぼ同じな双子星と仮定、均衡が取れて互いに互いの周りを廻る軌道なのだろう。

 そこから考えられる事は、この惑星は恒星の軌道からある程度離れている。という事だ。

 

 公転軌道が離れているという事は、地球のように一年が三六五日ではない。

 もっとも、自転速度が極端に遅いとか公転速度が速ければ地球のように三六五日に出来るじゃないか、とも思うが公転速度が速いと色々と問題がある。自転速度が極端に遅いのはもっと問題がある。

 公転が速いとまず脱出速度が上がってしまい、遠心力によりだんだん軌道が離れて行くのだ。そうなると更に大きな公転軌道になる。

 太陽の引力とこの惑星の質量、公転速度がバランス取れて、初めて成り立つ。


 そうなると、とにかく一年は三六五日ではない。たぶん。自転速度も問題だが。

 一年六〇〇日とか七〇〇日でも不思議ではない。火星の一年が六八七日。

 たぶんこれ位は最低限あってもちっとも不思議では無いのだ。恐らくもう少し日数がある筈だ。

 木星の一年が四千三三五日。一一・八七年という長さになる。

 これは太陽から地球の距離のほぼ五・二倍の距離。つまり五・二AUだな。

 

 冥王星くらい離れると九万四八七日で地球の二四八年ほどかかる。

 双子の太陽が相当大きいならあり得る話だな。

 そうなると太陽の質量も一〇〇倍とかもっと大きい物になるか。

 銀河系にはそういう大きい恒星も多い。太陽の一〇〇〇倍もざらにある。別段不思議な事ではない……。

 

 まあ、木星の一年よりは短いだろう。たぶん。

 冷静に考えて、火星よりは長いだろうな。という感じはする。

 太陽からの距離がどのくらいか太陽の大きさに左右されるのだが、それでも一年が一二〇〇日位、あるいはもう少しは覚悟しないといけないだろうな。

 つまり元の世界の四年でこの異世界の一年。くらいに思っておけばいいだろう。


 まあこの惑星がハビタブルゾーンに入っているから、こうやって生命が生きていられる水と太陽熱がある。

 こういうハビタブルゾーンに入ってる惑星は銀河系だけでも大体三億くらい発見されているらしいから、こういう惑星もあるんだろう。

 

 この部分については更なる考察も必要なのだが、おおよそ、宇宙に自分たちの事を発信出来うる程度の文明には()()()()()()が、()()()()()()()()()であろうと考えられる惑星の数は一〇万個だったか。もうちょいあるかもしれん。

 そこに曲りなりにも()()()()()()()()となると一〇〇〇個くらいか。ただし新しい知見を加えると、この数はずっと少なくなるらしいが。

 宇宙に発信しうる、となると一〇個とか、そういうレベルだと何かの記事で読んだな。


 太陽に似た年齢と温度±一五〇〇度C(太陽が一個とは言ってない。ただし一個を想定するケースがほとんど)。

 そこを廻る岩石惑星。大きさも大体分かっていて地球の半径〇・五倍から一・五倍位が現実的らしい。

 たぶん重力の関係だろう。

 必要なのは水、熱と光、大気、そして紫外線と磁場。最後の二つも重要である。

 

 ……

 

 さて、自転周期は惑星によりけり。火星は地球より少し遅い二四時間三七分だが、木星や土星はずっと速く回っていて木星で一〇時間弱。この惑星の一日が何時間なのかは時計も無いので分かりようも無い。

 ただ、感覚として一〇時間とか一五時間とかいう短い時間で自転してるようには思えない。

 しかしながら、長い間のプログラマー徹夜生活で一日の時間という物に対する感覚が一般人とは異なって壊れている可能性は否定しない。

 恐らくだが、二四時間かそれより少しだけ長い気がする。感覚的なものなので当てには成らないが。二六時間くらいあっても、ああそうなんだな。くらいなのだが。


 そして重力。この惑星は質量が十分あって月を三つ従えている、大きさによるが重力はたぶん一Gでは無い。

 おそらく私は体の優遇で筋力が強い。怪力なので重力がどの程度なのか重さでは判断できない。

 出てくる生き物たちがこれまた、死んでいた村人は亜人だったし、出てくる獣たちはみな魔獣だ。

 

 …… まともな判断が期待出来る要素は物を落とした時の速度とか、水の落下速度か。

 

 元の世界と大きく違う感じはして無い。やや速い様な気もする。という程度。

 若干重力が大きいのか。一・一Gかもうちょい。一・二Gまでは行かない位か。

 しかし、あの魔獣たちの大きさを見ると、逆に重力は少し小さいから大型化してるのではないかとも思ったが、しかし決めつけるのは危険だ。多分何か理由が有るのだ。

 

 そして三つの月のうち一つでもこの惑星に近い場合、この月の引力と遠心力でそれなりの潮汐力(ちょうせきりょく)が発生する。

 あの大きい月が一つでも大きい引力な上にそれなりに近いとなれば、発生する潮汐力も半端ではない。

 大潮がとんでもないレベルになっていても不思議ではない。大きい津波レベルの高波が大潮の時には打ち寄せるかも知れない。

 

 三つもあれば相当に複雑な事が起きるだろう事は容易に想像できた。

 三つの月が同一軌道ではないのは確実だ。月同士の間隔が一定でない。

 周期がズレているなら一つに重なって見える軌道位置になったら。どれだけの潮汐力を出すのか私には想像もつかない。

 波や海流にも大きな影響があるだろう。

 海を見てないから断言は出来ないが、航海は相当大変な世界である事は間違いない。


 情報伝達が魔法で出来ているならともかく、鳥に頼るとか馬で走るとか大陸間は帆船だと、文明レベルはローマ帝国時代か、中世か、ルネサンスレベルか? それとも、良くて近世位か?

 

 まあ魔法がありとあらゆる事を解決している可能性も否定はしない。

 現状に満足してしまっていれば千年も一日の如し。進化なんてして無い可能性も否定はしない。

 魔法が便利過ぎれば、なんでも魔法で解決。そうなれば色々な物の進歩も止まる。

 科学技術発展の敵みたいなものだ。

 

 ただし、魔法が使える事がしごく当たり前になっているなら魔法前提の技術進歩はありうる。しかし、鉄に関しては、どうもそうじゃないみたいだったが。

 

 ……

 

 しかしまあ、何と言っても『異世界』だ。魔法があるならそれこそ、なんでもありだ。

 

 洗濯しながら、改めてとんでもない『異世界』に来たなと思う。

 

 それと季節だ。ここの地形が盆地なのはほぼ間違い無い。

 それで夏は暑くて冬は寒く雪も降るかもと思っていたのだが、重要な事を忘れていた。


 それはこの惑星の『地軸がかなり傾いていないと四季がナイ』。という事だ。


 昔、理科の授業だったか、地球儀を見せられながらそんな事を学校で学んだ。


 まあ一年がメチャクチャ長くて三〇〇〇日とか有るなら、逆に四季なんてない方がいいな。

 夏も冬も七五〇日あるとか考えたくも無い。あー、その代わりに春と秋も七五〇日か。

 春から夏に何回も収穫して、秋も数回収穫して行ければ、農業も成り立つか。

 

 微妙な気がするな。連作障害とかもあるだろう。

 しかし春と秋にそれぞれ一五〇〇日分以上収穫しないと不作の時に耐えられない。

 沢山収穫しないと間の季節が七五〇日だから死活問題だな。

 冬が七五〇日もあったら完全に氷に閉ざされる地域は農業向かないな。

 あと夏の七五〇日もやばいが。

 

 ……

 

 ……

 

 この天使が付けて寄越した服は布地が全く破れない。靴もそうだが特殊な素材なのか。

 ゴシゴシ擦ったら垢は落ちた。

 空はよく晴れているし、しょっぱい子供服と一緒に洗濯物を洗い干す。

 

 ……

 

 ……

 

 ここの緯度が十分に低ければ、赤道に近いなら、地軸が傾いていようが季節などナイ。

 ほぼ年中熱帯。その辺りは地球と同じだ。

 もっとも熱帯でこの程度の気温ならかなり高地となるが、お湯の沸騰温度から言ってそれも考え難い。気圧が地球と同じと考えた場合だが。

 もし低地の気圧が高い場合、ここが三〇〇〇メートル、とか四〇〇〇メートル位の高地の可能性も高い。


 しかし、だ。この岩石惑星がもし重力が一Gより大きいのなら、たぶん気圧は当然元の世界よりも若干は高いと見ていいだろう。たぶんだが。

 普段吸っている空気が元の世界と変わらない気がしてるが、窒素と酸素のバランスが元の世界並みという事でいいのだろうか。

 

 この辺はどうにも分からない。体の優遇があるらしいので、多少空気が薄かろうが濃かろうが、その辺全然平気。無問題(ノープロブレム)とかだと正確な事が何一つ分からない訳だ。まあ生きて行く上で全く困らないどころか至って健康なのだから、これは素直にあの天使が付けて寄越したであろう『体の優遇』に感謝するしかない。

 

 合掌。有難や。有難や。

 

 もし、気圧は元の世界並みで熱帯がこの温度だというなら、緯度が高い方は大変だ。

 緯度が二〇度も越えたら寒くて森林限界になってたりしたら相当にヤバい。

 寒いと当然耕作に適さない、野菜もダメだろうし、木の実とか実らないので収穫も出来ない。

 

 そうなると人であれ、動物であれ暖かい土地を巡る戦争が常に起きている可能性だってある。

 人間なら血で血を洗う抗争も十分にあり得る。大昔のゴート族の様に。


 ……

 

 ただ、地軸は傾いている可能性は高い。あの大きな月がこの傾いた地軸の惑星の自転を安定させているのだと思う。他の二つは小さすぎる。

 あの二つの影響を無視させる事が出来る程度には、あの大きな月に質量があり、距離も近いという事だな。

 

 そしてそれなりの質量と距離でこの惑星の周りを回る事で、この惑星の地軸が安定し北極と南極がふらふらしないで済む。地軸がふらふらすると、その度に気候がカオスになる……。

 傾いているにも関わらずふらふらしないというのは、地味に重要な事だ。

 元の世界だって、月が無ければ地軸が安定しない。そうなれば気候とか安定しない。

 

 安定して傾いているとなれば、ある程度の緯度のある所には四季が発生。熱帯や亜熱帯とは異なる温帯には、四季に対応した多種多様な豊かな植生が生まれる。

 そして動物も多種多様に進化しているはず。

 

 これも知的生命が高度に発展して行くには重要な条件の一つだ。

 

 天候がカオスすぎて予測がつかないような場所では農業に大きな支障がある。

 あのエジプトで作られたカレンダーだって、ナイル川の氾濫が元になっている。

 いつ氾濫するのか知る為に作られたのだ。そこに一日の時間という概念が生み出されていく。

 

 長い年月を太陽と夜空の星、天体の動きの観測に費やして一年のカレンダーが生まれたのだ。

 元の世界で使われているカレンダーはこれが元だ。エジプトに進軍したユリウス・カエサル、つまりシーザーだな。彼奴がこれをローマに持ち帰る。ユリウス暦という名前でローマの暦になる。

 

 あの当時、一年の始まりが三月であるのは、春を持って一年の始まりとしたからで、それで二月は辻褄合わせの月になっていた。まあカレンダーの歴史と変遷も文明の発達と権力者たちの都合等と共にあった……。

 

 ……この世界の暦を日めくりで作ったら、とんでもない厚みになりそうだな。

 思わず苦笑する。一二〇〇枚もの日めくりとか、考えたくもないな。

 

 ……

 

 地理が知りたい。切実に。この盆地の外が知りたい。

 

 この惑星の技術水準がどの程度なのか。解らない事だらけだな。

 私がやってる鍛冶とか鋳掛けが商売になるのか、それすら不明だ。

 

 ここの村がそれこそ未開の亜人族で作った開拓村だったりしたら目も当てられない。

 しかし、ここの村は何かの目的で計画され、用意周到に作られた可能性が極めて高い……。

 そしてあの本だ。文明がはっきりと感じられる。


 ただ、盆地の外の世界は少なくとも天文学は発達している可能性が高い。

 恒星の重なり具合とか月の様相から天気だとか海の高波やあるいは凪、海流が弱くなる日とか、海の状態を予測する科学が発達している可能性がある。

 

 大潮がやばいレベルなら潮が河川を遡上(そじょう)する。それがいつなのか知れるのは農業に大きな影響がある。

 治水にも、だ。

 

 ……

 

 

 つづく

 

マリーネこと大谷は次は革です。色々作らないといけないのです。

地味なモノづくりの話はまだまだ続いていきます。


えーと。科学的考察っぽく、大谷は考えてますが、作者に天文物理の知識はゼロですので、間違っていたら、生暖かい目でスルーして頂けたら幸いです。

誤字脱字がありましたら、お知らせくださると幸いです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ