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234 第20章 第三王都とベルベラディ 20-21 第三王都での鍛冶見習い

 親方と昼食を食べ、炉の説明を受けるマリーネこと大谷。

 そして、造りかけの鉄片が渡されるのだった。

 234話 第20章 第三王都とベルベラディ

 

 20-21 第三王都での鍛冶見習い

 

 

 工房は昼食になったらしい。お弁当らしきものは、大きな葉っぱで包まれている。

 親方の分は、そこにはない。当然だが私の分もない。

 こういうのは、たしかトドマの山で見たな。

 

 「ヴィンセント殿。別の部屋に行こう。付いて来なされ」

 そういってケニヤルケス親方は別の扉を開けた。そっちに行くとそこはすぐ階段で、二階に上った。

 「明日からは君の分も、下で出すようにするが、一緒で構わんかね」

 階段を上がりながら、親方が訊いてきた。

 「はい」

 「その。なんだ。君はトドマではどういう食事をしていたのかね?」

 「どういう、意味でしょう」

 「いや、君は、その。我らとは種族が違うようだから、食べるものも違うのかと思ってね」

 彼は一瞬振り返って、下に見える私を見つめた。

 

 「親方様。他の方と同じで大丈夫です。お気になさらずに、お願いします」

 「ははっ。貴女の事は、丁重に扱うようにと、先程、スヴァンテッソン殿から特に念押しされてきたのでね」

 階段を上がりきると、そこにもまた扉。彼はそれを押し開けた。

 

 「いや。食事というのは、毎日だからな。小さなことが積み重なるとそれが大きな不満に発展するものなのだ。工房というのは、人間関係が狭いから、そうしたことでいざこざが起きると簡単に信頼関係が壊れかねない」

 そういいながら、彼は窓際のテーブルにある椅子に私を座らせた。

 

 なるほど。この人物は信用してよさそうだ。こういう部分に配慮が出来るのなら、この親方は威張ってふんぞり返っているような人物ではない。部下たちがきちんと仕事ができるように、色々見えない部分で配慮しているのだろう。

 

 「彼らの、食事は、その。普通の、物と、違うのでしょうか」

 「いや、こういう場所の労働者たちなら普通の食事といえる。量は少し多めにしてある。少ないと不満が飛び交うからな。多くて文句を言うやつはいない。あとは汗をかくから、塩分が多めだ。そのくらいだな」

 彼は少し笑っていた。

 「それなら、トドマの、山の方で、警邏(けいら)を、していた時と、変わらない、気が、いたします」

 「ほう。あっちはあっちで普段から暑いからな」

 

 「お昼は、伐採現場の、護衛の時は、宿舎の方から、簡単な、携帯食が、運ばれて、きていました。だいたいは、塩気の多い、魚醤味の、燻製肉、でしたわ」

 彼はそれを聞くと笑った。

 「ははっ。現場で簡単に食べられるようにかね。他でもそうだったのかね」

 「陶芸ギルドの、粘土採集現場では、避難小屋で、いつも、昼食でした。でも、出るものは、そこで、炙っていることを、除けば、同じでした」

 「夕食は、どうだったんだね」

 「鉱山の宿営地、ですから、専用の食堂が、ございました。そこでは、毎日、違った、様々な料理が、出されていました」

 「ああ。そうか。王国の管理下だからな。鉱山だと色々と予算が違う。ああいう王国管理の場所は、作業している者たちに十分な食事を出すことになっている。鉱山の宿営地にくっついている他のギルドも、そこを使っているのだな」

 

 「ですので、不人気でしたのは、魚醤工場、近辺警邏、でしたわ」

 私がそういうと、ケニヤルケス親方は不思議そうな顔をした。

 「それはまた、どういうことだね」

 「工房内部の方、臭いも、酷いですけど、近辺の、警邏は、お昼も、出ません。食べられるのは、夕食だけ、でしたので」

 

 「わはははは。それは、若い衆にはきついだろうな」

 彼が言ったところで、料理が運ばれてきた。

 

 料理は、大きな鉄のプレートに全部載せといった感じ。元の世界ならワンプレート・ランチであろうか。

 

 厚めに切った燻製肉。何かの肉の団子。適当な大きさに切ってスープに浸したパン。その横にあるのは魚醤のかかった野菜。あとは水の入った陶器の器だ。

 あらかじめスープに浸されたパンが出るのは、初めてだった。

 

 手を合わせる。

 「いただきます」

 

 ある程度の予想は付いていたが、切ってスープに浸されたパンは、かなり味が濃い。

 すでに切ってある燻製肉と、肉団子、魚醤の掛かっている野菜もいただく。

 食べている時に、ふと思ったことを訊いてみることにした。

 

 「親方様。もし、冒険者ギルドの方で、私に、呼び出しが、かかるようなら、私は、支部に、いかねば、なりません」

 そういうと、ケニヤルケスは私の顔を見た。

 

 「クリステンセン支部長様が、私を、呼び出さねば、ならない、くらい、緊急なら、私は、その任務を、断れません。その点は、よろしいでしょうか」

 「ああ、貴女が金の階級章持ちということは、了承済みだ。その時は、儂に連絡が来れば、何の問題もない。もし貴女が作りかけの物があれば、それは別の場所に取り置くから心配いらない。それがもし、急ぎの物ならブレナンに仕上げさせる」

 「ありがとうございます」

 「何。階級章持ちを預かるのは、初めてぢゃないんだ。心配はいらんよ」

 彼は私の方を見ると、少し微笑んだ。

 「そうなんですか」

 「独立職人の資格を持つことを考える冒険者は時々いるんだ。ただな。新しく工房を持つ所までいったものは、滅多にいないが」

 「階級章を、ギルドに、返して、専業に、する人は、滅多に、いないのですね」

 ケニヤルケス親方はふと、窓の外を見ているような目線だ。

 「そうなる前に、命を落とすこともある。冒険者が避けられない悲運というものもあるからな」

 

 ……

 

 たぶん、彼の弟子にそういう人がいたのだろう。私はその先を聞く気にはなれなかった。

 

 黙々と食べて、水を飲む。

 

 「ごちそうさまでした」

 手を合わせる。少しお辞儀。

 

 「さて、少し休憩してから、下に行こう。食べてすぐ動くのはよくない」

 ケニヤルケスは窓の外の景色を眺めている。

 窓の外に見える空はだいぶ曇っていて、普段ならここはもっと日が差し込んで明るいのだろうが、今日はさほどでもなかった。

 

 ……

 

 ケニヤルケス親方は敢えて私の事をあれこれと尋ねないようにしているようだ。

 「下に行ったら、まずは奥の炉に行くようにしよう」

 

 親方は階段を下りていくので私も続く。

 五〇をだいぶ過ぎたおっさんであっても、こういう荒くれ職人たちの中に入って仕事をするのは緊張する。

 

 「クロード! こっちゃにこい。今から、ヴィンセント殿に炉を見せる。お前が説明しろ!」

 昼時に紹介されたクロード・エイクロイドが走ってきた。

 三人で奥に向かう。奥は面白いことに横には壁がない。左右が全部、炉ばかりある場所になっている。

 柱はあるものの、全てがつながった一つの部屋だ。そして左側、一番西の方から順に炉の大きさが、小さくなっている。

 どれも、反射炉みたいな感じだ。つまり、これはここで鉄鉱石の還元からやっていないことを意味する。

 「ヴィンセント殿。こちらへ」

 

 言われた方に行くと、少し階段を下りる。だいぶ低くなっている。

 ここは一番奥の壁の方。ここには板に囲まれ、炉の方に吹き込み口を付けた風車が三つ、かなり勢いよく回っていた。

 動力源は下の方にあるらしい。風車を回しているのは、ロープでもワイヤーでもなく、チェーンだ……。チェーンを発明した人たちがいるのだ。

 まあ、元の世界でもチェーンは実は古代ローマ時代には登場していた。それからローマ時代が終わるとチェーンは姿を消してしまい、失われた技術となり、長い間再発明されなかったのだ。

 

 炉の上の方では、一部蒸気が出ていた。水を沸かしているな。あれは。

 

 「これは?」

 「下に水力で回る大きな歯車があります。そこと繋がっています。ここの棒を操作すると風車を止めたり、回転する速度を変えたりできるようになっていて、扱う物によってここを操作して送り込む風量を変えるのです」

 男は数本の棒を指差した。ものすごくうるさいのだが、彼の声は何とか聞こえた。

 

 ここからでは仕組みはよく分からないが、たぶん歯車が一時的に外れて、歯数の異なる歯車とつなぐのだろう。

 簡易変速機だな。

 

 「分かります」

 「燃料は、炉の横に入れる場所がありまして。上の階からですがね。斜めになっていて中に落ちるようになっています。それを横の棒で、押したりして奥に広げるのも、炉の管理を行う者の役目です」

 彼が指差した場所には、上の階から斜めになったパイプらしきものが反射炉に刺さっている。それと、棒が何本か突き出ている。勿論木製ではない。

 素材は何であるかは分からないが、金属では溶ける可能性もあるので、内部の方では石かもしれない。

 

 こんなだから、人数が少なくても管理できているのか。なるほどな。

 私が予想した中世以前の炉なら、もっとずっと人がいるだろうと思ったが、管理は二人でやっているとはな。結構省力化されているようだ。まあ、これを止めて掃除するときは、きっと全員だろうな。

 

 「わかりました。これで溶かす温度を変えているのですね」

 「そうです。溶ける温度は素材に寄りますからね」

 「はい」

 ここでは工房一つにつき一つ、この大きな反射炉らしき溶鉱炉があるのだ。

 この部屋は上が吹き抜けになっている場所があり、空気が上に抜けている。それでも、相当に暑いのは確かだが、風車がもう一つ、作業員の方に向けて回っていた。

 空気をかき混ぜているのだな。奥の方から吹き込んでくる空気と、熱せられた空気が上に抜けるようにしてある。

 

 この溶けた鉄が出てくる部分の横には扉があって、そこにはやや小さなオーブンのような炉だ。

 鉄をやっとこでつかんで、突っ込んで加熱できるようになっていた。

 溶かす部分と、こうやって溶かすまではいかないが、飴状になるまで、熱するための炉がここでは一緒になっている。とはいえ、これは相当に高熱が必要な金属の場所だろう。

 

 「なにか、質問は?」

 「クロードさん、ここでは、鋼は、扱うのですか?」

 彼はやや困ったような顔に見えた。

 

 「それは王国の鍛冶専業です」

 「では、鋼は扱えませんか?」

 「それは王国鍛冶屋に頼むことになります」

 

 そこに親方が割って入った。

 「ヴィンセント殿。鋼は王国の鍛冶屋に製造を頼むのだ。それも必ずしも、希望通りの物が出てくるわけではないが。准国民には、高品質の鋼を使った刃物を直接製造することは許可されていない」

 「よくわかりましたわ」

 

 なるほど、なるほど。特別に硬い金属は、王国の独占製造販売という事になる。

 たぶんだが、武器を、あまりにも硬いものを作らせないという事なのだろう。

 その一方で、軍団の武器は、最高の鋼を惜しみなく使える。となれば切れ味が違う。反乱する亜人がいても、その性能差で容易く抑え込めるという事か。

 

 まあ、高品質の鋼鉄の鎧とか盾が出てきたら判らないが、准国民には鋼を扱わせていないし、そうしたものを作るのがまず、この王国内では難しいだろう。

 武器は鋼製のものを作るのがかなり難しいという事と理解した。もしかしたら准国民の鍛冶屋に鋼製の武器製造を禁止するとかいう通達でも出ているかもしれない。

 農具や工具なら、また別かもしれないが。

 

 なるほどなぁ。

 

 「それでは、こちらへ」

 この反射炉のような建造物の先端に溶けた金属の流れ出す場所があり、そこは鋳物を作る作業場となっている。

 そこから、他の人のいる場所に行くとそこには、やや小さいオープンな炉がある。

 こっちは骸炭を平置きして、大きな(ふいご)で空気を送って、そこに金属の塊を載せて加熱している。

 そして、それを取り出しては、鉄砧(かなとこ)の上でぶっ叩くわけだ。

 木炭は使っていないようだ。トドマの鉱山でのあの鍛冶のよこにあった、骸炭の製造。出荷先は王都だったのか。

 

 ここでは刃物を研ぐ職人以外、全員がここで金属を叩いていた。

 刃物全般。か。

 

 「ヴィンセント殿。なにか、質問は?」

 クロードがまた訊いてきたが、だいたいは判った。

 「ここでは、鉱石から、金属は、作らないと、いう事、ですか?」

 彼はさっと両手を挙げた。

 「王都で、鉱石から金属を作る鍛冶屋、金属細工工房の職人はいませんね。硝子工房ですと、石を溶かすのはやっていますが、あれは特別ですね。温度も高いです。ですが、金属を溶かすのは色硝子を作るためであって、鉄ではありませんよ」

 

 「分かりました。あとは、私が、作業できる、場所は、あります、でしょうか」

 それには親方が答えた。

 「ああ。ヴィンセント殿の場所も用意してある。ブレナンの横だ。ブレナンについて、刃物を一通り教わってくれ」

 「はい。ありがとうございます」

 私がお辞儀すると、それでクロードは、持ち場になる炉の方に行ってしまった。

 

 私は、あの年配のブレナンという人の所に行く。辺りはハンマーの音でいっぱいだ。

 「マリーネ・ヴィンセントです。ブレナン・ゼワン殿。よろしくお願いいたします」

 私の声が届いたかは、定かではない。

 「ああ、ゼワンでいいぞ。ヴィンセント殿。親方はああはいったが、まずは君の腕を見せてもらいたい。ここの鉄の板を叩いて見せてくれるかね」

 かろうじて、彼の声が聞こえた。

 

 私は、口の所にまた布を巻いた。目の所を巻く布もポケットから取り出す。これも巻き付けて、ハンマーを握った。

 ここに置いてあった小型のやっとこで、鉄片をつかんで、炉の所で加熱。暫く過熱させなければならない。

 鉄片の形はなんとなく、刃物の型になっている。

 この鉄片は、既にかなり叩いてあるらしい。誰がやったのかは判らないのだが。それにしては、結構叩きムラがある。

 

 ……

 

 八〇〇度Cに達すると、もう鉄片は真っ赤である。

 これを手早く叩いていく。密度が疎らにならないように、見極める。

 ここの鉄の質はそこそこ、いいらしい。少なくとも私が山の村で鉄鉱石から作った代物よりずっといい。

 それだけに、なぜこんなにムラがある叩きをしてあるのか、謎だ。

 

 私は叩いては、熱するの繰り返しだ。この鉄片をどの程度の厚さの刃物にするのか。それによって、この先の叩き加減が変わってくる。

 「ゼワン殿。この刃物は、どのようなものに、する予定ですか」

 彼はこっちを向いたが、聞こえていなかったのか。

 「こーれーはー。なーにーにーしーまーすーかー」

 やっと聞こえたらしい。

 彼は頷くと、私にやや長い包丁を見せた。刃の長さは二五センチほど。柄の方も二〇センチはあるだろうか。全長で四五センチくらい。

 私のダガーより大分大きい。

 

 彼は右手で握ったそれを、くるくると廻して見せた。

 見極める。

 

 元の世界の和包丁なら、長方形の菜切包丁が普通に売られている。長さはほぼ決まっていて、柄の部分、つまり握りの終わりまで全部入れて三〇センチから三一センチの物が多い。

 刃の部分は一六センチから一七・五センチだ。よく売られている万能包丁も似たような大きさだが、これらには正式な決まりがある訳ではない。

 

 刃物メーカーによって、サイズは異なる。万能包丁は凡そ、菜切り包丁よりは短い。一六センチか、それ以下。握りはだいたい一二・五センチ。厚さはだいたい一・八ミリ。これはステンレス鋼の場合だ。錆びにくいこともあって厚くする必要がない。

 鉄で鍛造した出刃包丁などは、ずっと厚いし、かなり重い。

 これが中華や西洋の包丁になると、さらに長さも刃の形も様々となる。

 

 元の世界の日本の包丁も刺身包丁とか柳葉包丁とか、長さもいろいろ違う。用途に合わせて、いろんな刃物があるわけだ。

 刺身包丁とか、刃渡り二二センチとか短い方か。もっと長いものもある。長さ三三センチとか。その代わりに高さがなくてせいぜい三センチ。菜切包丁なら普通五センチはある。

 

 ただ、ここは異世界。当然のことながら大きさは亜人たちの使いやすい大きさになっているはずだ。

 背の高い、手も大きい彼らの使う包丁はどうやら長い物らしい。

 ほぼまっすぐの刃がつけてあり、先端は上部が緩やかに斜めになっていて尖る形だ。これはどちらかと言えば、かなり大きい万能包丁とでも思えばいいのか。先端の方は僅かに反っている。

 

 刃の厚さは、三・五ミリほどだな。重さを考えるとそれほど厚くは出来ないのだろう。

 この薄い鉄片の厚さは四ミリ弱程度か。つまりは叩く前は一フェスだな。たぶん。

 全体を叩いていき、密度を上げる。あまり叩いて伸びてしまい、薄くなりすぎるとまずい。

 

 よし、あとは熱して叩くだけだ。

 

 ……

 

 見極めの目。

 山の村でやったように、どこまで叩けばいいのか、私は内なる声に聞くだけだ。炉に入れて、熱を維持しながら、ハンマーで叩く。

 

 ゼワンは時々私の方を見ながら、自分が作っている刃物の方を叩き始めた。

 叩きながら、私は徐々に彼の叩くリズムと速度に合わせた。ただ、何処を叩くかは、見極めの目で見えている密度が一定ではない場所だ。

 

 彼は温度がだいぶ落ち始める瞬間まで叩いている。私はその前に、素材を炉にいれて温度を上げる。

 彼のスタイルがあれなら、私は無理に合わせる必要はない。

 

 黙々と叩く。

 叩き漏れが無いように。

 

 ……

 

 ゼワンは、鉄の声が聴こえたりするのだろうか。彼はどうやって見極めているのだろう。

 

 そんな事をちらっと考えたが、余計なことを考えると叩きむらが出かねない。

 私は慌ててその考えを頭から追い出した。

 

 刃の方を叩き始める。

 ここは特にしっかり叩く必要がある。どんな料理を作るための包丁なのかは判らないが、骨をたたき割るような事をして、あっさり刃が毀れました。欠けましたというのも不味かろう。

 両側を十分に叩く。

 

 そうこうしていると、鐘が打ち鳴らされた。

 

 ケニヤルケス親方がやってきた。

 「皆の衆。予定通り進んでいるかね?」

 「ディール。こっちは予定通りだ。一五日後に納品する一〇本。間に合うはずだ」

 ミューロックが答える。

 

 「よし。ブレナンの方はどうだ」

 親方は私の横のゼワンにも、確認している。

 

 「予定通りですが、週末に追加で入った三本は、予定を完全に押してますな」

 「分かった。ヴィンセント殿。叩いてみて、様子はどうだ」

 「えっと。ここの、やり方を、まだすべて、見た訳では、ありません。あと、二日くらい、見て行けば、皆さんに、合わせられると、思います」

 「ほう。ゼワンから見て、どうだ」

 「まあ、ヴィンセント殿は確かに体格は小さいですが、叩くほうは、全く問題ないでしょう。今やってもらっている刃物を仕上げてもらい、それを見てからの判断でいいとは思いますが、問題なければ、二本、やってもらいたいですな。そうすれば、他の者に泊まり込みで叩けと言わないでも済みそうです。親方」

 

 「そうだな。ボトヴィッドたちに、やらせるわけにはいかんのだよ。卸す先が先でな」

 そういうと、ケニヤルケス親方は私の所にやってきた。

 

 「ヴィンセント殿。今日はもう帰りなされ」

 「では、今日の分は、ゼワン殿に預けていきます」

 私はゼワンに刃物を渡した。

 

 「また、明日来ます。よろしくお願いします」

 ちょこんと、お辞儀である。

 

 さて、リュックの所に行き、顔や口の所に巻いたタオルを剥がし、それからリュックを背負う。

 明日は剣を持ってこなくてもいい。護身用のダガーだけでいいな。

 

 私は下宿に戻る。

 

 

 つづく

 

 いよいよ、鍛冶のお仕事が始まった。

 鉄片を叩いて、刃物を仕上げていくマリーネこと大谷である。

 

 次回 第三王都での鍛冶見習い2

 下宿に戻って夕食後には、外の共同風呂。

 何事もまずは体験してみる所から。


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