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212 第19章 カサマと東の街々 19ー51 第三王都への道のり2

 ひたすらに歩いていき、マシナに到着。ここでまた一泊。

 そしてさらに南下。村に向かうマリーネこと大谷である。

 212話 第19章 カサマと東の街々

 

 19ー51 第三王都への道のり2

 

 ……

 

 途中、水車に何か大きめの小屋が付いてるものが数軒あった。こういう小屋があるという事は、中にあるのは穀物の粉ひきとか、そういうものだろう。何やら音がしている。単純に叩くだけで、粉にしているのだろうか。外からは中が見えない。

 当然の事なのだが、小屋の扉に鍵がされていて、中には入れなかった。

 

 ……

 

 どれくらい進んだのやら、もう夕方である。地図で見た丁字路はまだ先である。

 つまり、またしても野宿。

 

翌日。

 この日も起きてやるのは何時ものルーティーンと、薪の燃え残りを燃やす作業だ。

 そして、移動を続ける。北はかなり曇り。今日は南側も雲が多い。

 

 時々、上空に大型の猛禽が飛んでいる。殆ど羽ばたきもせずに、大きな円を描いて滑空し、大分高度が下がると、再び羽ばたいて、上空に上がっていく。

 今日は急降下するところを見れなかった。

 

 西側の穀物畑に時々、小鳥たちが見える。彼らは狙われたりしないのだろうか。私が近づくと、それだけで全ての小鳥と小動物が逃げ出すので、上空の猛禽たちもそれで狙えないのか。

 

 昼もすぎ、丁字路に到着。ようやく、西のすぐ近くにテッファ街が見えるが、ここは、この丁字路を東に向かって橋を渡る。

 時々、テッファ街に向かうアルパカ馬の荷馬車が見える。

 大急ぎで道から離れ、距離を取る。しかし、明らかにアルパカ馬は怯えていた。

 

 ……

 

 やはり、この先は多少、交通量があるらしい。

 

 出来るだけアルパカ馬の馬車が来ないのを見計らって、道を走る。

 到着したのはマシナの町。

 

 なんというか、あのマリハの町より狭いかもしれない、小さな町だ。この町の東側にはこれまた塔がある。

 もうこの先に進んでも、直ぐに日が暮れるだろう。今日はここで一泊する。宿探しだな。

 辺りには、安い宿とアルパカ馬の馬宿がある。動物たちの小屋の無い宿を捜して、そこで泊まることにした。

 

 宿代は一七デレリンギ。ちょっと安い。差し出された宿帳に署名だ。

 値段が値段なので当然、宿の中もお安いわけだ。

 泊った部屋は、ベッドの横にリュックを置くだけで一杯になりそうな狭さ。

 そして他に何もない。

 

 取り敢えず、荷物を置いて一休みしていると、物凄い雷の音がした。

 たぶん北だろうけれど、それほど遠くない。

 そして、雨が降り始めた。雨脚が強くなり、外は激しい雨となった。

 この日は夜半がずっと雨である。

 

 食事は、魚の入った謎のスープと硬いパン。それによく分からない赤紫の野菜を茹でた物に少量の魚醤とお酢を混ぜたモノがかかった、煮びたし風の物。

 素朴な料理に近いが、謎のスープには魚の味が十分出ていた。まあ、入っていた魚が何なのかは分からない。何しろ入っていたのは、頭もとってある切り身だからだ。

 

 この宿は安いが、辛うじてお風呂があったので、共同風呂だがお風呂に入る。

 男女別なのは当然のこと。この王国の厳しさから言って、混浴風呂とかあり得ないのだろう。私としては助かる。

 

 翌日。

 宿でカレンダーを見ると、週が変わったようだ。

 第七週、一日目。

 起きてやれるのはストレッチと柔軟体操だけだ。

 

 お安い宿は朝食も出ない。

 私は水を貰って、革の水袋の水を入れ替えた。

 

 さて、宿を出発。

 昨日かなりの勢いで降った雨は上がっていた。

 街道ではないのだが、こんな細い道でも石畳の舗装はされている。

 それで、泥濘んだ道にならずに済んでいる。

 

 この小さな町を出て、暫く歩いてから、河原の方にいく。

 

 鉈をふるい、少し空き地を作って、空手と護身術からのルーティンワーク。

 宿の中は狭すぎた。こんなところでやるしかない。

 いつもの鍛錬を終えたら、川の水で顔を洗い、少々休憩して、出発。

 

 移動を続ける。

 マシナを出てからは川沿いの道をずっと南下。所々に水車小屋があり、何か音がしている。

 南には山が見える。道はその山に向かっているのだ。

 山の手前には村があるのが見える。

 

 北東のトドマ方面を見ると鉛色の分厚い雲。もう雨が激しく降っているのは間違いない。

 

 

 歩き続けて、まだ夕方には早い時間に、村に着いた。ここの東にやはり塔がある。今まで余り意識して来なかったが、ぽつりぽつりと塔がある。

 

 名前の分からないこの村には、宿は一軒しかなかった。

 取り敢えず、宿に泊めてもらうのだ。

 

 農村らしいが、アグ・シメノス人と亜人の混成の村という感じで、ワダイの村と似ているが、この村には宿がある点が違っていた。

 村の中には小動物がいたようだが、私が向かった瞬間に全ての小動物は何処かに姿を隠してしまった。

 このお守りがある間は、小動物の顔を拝むのは無理なのだな。

 猫とか犬に近い小動物がいそうなのだが。

 

 宿代は一二デレリンギ。宿帳に署名したものの、他の人の字もかなり酷く、私の字が綺麗に見えるほどだった。

 

 出た食事は、硬いパンと謎のスープ。そして魚を煮た物だった。

 当然だが、お風呂はない。

 

 二メートル半弱程の長さのベッドは、亜人たちにはぎりぎりだろう。

 私には充分過ぎるほどの大きさだ。

 硬いベッドは、板の上に藁を敷いてその上にシーツらしき敷布が掛けてあるだけだ。掛け布団などというものはない。敷布二枚を縫い止め、その間に藁を詰めただけの代物である。寒くはないが、寝心地は良くなかった。

 

 

 翌日。

 村を出てから、何時ものルーティンワークである空手や護身術と剣の鍛錬。

 

 移動を続ける。

 道は、ほぼ真っ直ぐ山の中に入っていく。川はその山の西側に流れている。山の西側はやや崖になっているようだ。その先は判らないが。

 

 石畳の舗装はここで終わり。どうやら、山の中は舗装の対象外らしい。

 

 山道は無舗装なので少々荒れているが、砂利のようなものが撒かれ、路肩よりは道路が少しだけ高くなっていて、辛うじて管理している事を伺わせる。

 

 だらだらとした登道を上がっていくと途中で森に突入する。

 この山はそれほど深い森ではない。とはいえやや暗い。薪を松明代わりにすることにして、火を付ける。

 

 暫く、そうして森の中の道を歩いてくと、動物たちが逃げていく。

 かなりの勢いで動物たちが走って行くのだ。

 時々、何やら激しく啼き声がする。

 

 ……

 

 樹上で、何か騒ぐ動物たち。木を揺らしているのは猿のような動物だが、この王国では猿という表現は無いらしいから、言葉が全く通じない、生活習慣も異なる亜人たち、という事だな。

 

 山の中のこの一本道を歩き続ける。途中で分岐する様な事は一切ない。

 ただ、所々かなり広くなっている場所があり、明らかに馬車がそこにいた事が分かる(わだち)があった。行き違いの為の退避場所なのか。

 

 時折、背中がぞくぞくする。辺りを探ると目の赤い魔獣が遠くで見ていたりするのだ。ただ、こちらを睨んでいるだけだが。

 

 森の奥は暗くて、顔や姿は見えない。

 だが、私の背中が、はっきりと教えてくれている。

 

 第三王都からそれ程離れている訳でもない、こんな山にも魔物は少しいるらしい。

 という事は、夜になると村が襲われたりするのだろうか。

 それともこの山の中、限定なのだろうか……。

 

 この日も野宿。とはいえ、森の中なのだが、お守りのせいで魔獣は来ない。

 ただ、夜中の遠吠えと啼き声は多かった。

 

 

 翌日。

 起きてすぐにやるのはストレッチ。

 火を熾し、薪に火を灯して地面に差しこむ。それから空手と護身術からのルーティンワークである。

 

 さらに移動を続ける。

 

 山の中で、この日も野宿。

 もう、この日で村を出てから七日たったが、まだ王都につかない。

 ここで薪はほぼ使い切った。もうこの先、野宿はないはずである。

 

 翌日。

 

 移動を続ける。

 森はもうそれ程暗くもない。

 歩き始めて直ぐ下り坂になり、山の中の森を抜けて行く。

 森を抜けると、南には街と王都の白い壁が見える。もうすぐだな。

 

 王都は西壁の手前の所で、長い煙突があり、何か煙がずっと出ている。

 たぶん、あそこに鍛冶とか、各種の炉があったりするかもしれない。

 そう。鍛冶は、王都の中では叩けないだろうから。

 あえて町の中で叩くのならば、地下とか、相当厚い壁に囲まれた建物の中だろう。

 

 暫く歩くとアレク街に到着。

 

 

 つづく

 

 とうとう、森も抜けて、第三王都の壁が見えている。

 あと少しで到着である。

 

 次回 第三王都への道のり3

 とうとう第三王都のすぐ近くにあるアレク街に到着。ここで一泊して、東の隊商道に出て、第三王都の東門に到着したマリーネこと大谷である。

 

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