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002 序章 おっさんの冒険 序ー2 天界

とことん運のない主人公大谷。

 2話 序章 おっさんの冒険


 序ー2 天界


 気がつくと見た事もない場所に座っていた。薄明るい空間だが、壁も何もない。


 ……


 そうか。自分は死んだんだな。


 ……


 大学を出て大手の電気会社に勤めたが、上司と喧嘩(けんか)して辞め、親をがっかりさせたんだった。

 そこから中小のソフト会社を転々として、小さいソフト会社で認められて、開発室室長にまでなって二〇年。

 ひたすらに試作基盤のプログラムや大手電機会社の製品プロトタイプや製品の制御プログラムに費やした人生だった。

 

 結婚も相手に恵まれず、結婚する事もなかったので親の期待に答えてやる事もできないまま、父親を送った。

 その数年後に相次いで病気に倒れた兄弟二人も送り、さらに病床の母を看取(みと)って三年。

 

 もう私の事を泣いてくれる人は二五年以上前に東京でできた古い友人、四人だけだろうか。

 湯沢の友人には悪い事をしたな。

 会いに行くとかいって、全然約束の時間に私が現れず、多分テレビでバスの事故を知るんだろうな。

 

 友人の責任じゃない。私の運が悪かっただけだ。

 しかし……。彼の事だ。俺が湯沢に遊びに来いとか言ったからだと後悔し続けるのだろう。

 申し訳無い。


 そんな事を考えていると、薄い服を着た豊満な体の若い顔の天使みたいな女性が現れた。

 西洋の宗教画にある熾天使(してんし)の、彫りの深いコテコテな西洋美人の顔からは想像できないほどかけ離れた若い顔だ。

 どう頑張っても中学生か高校生なりたてみたいな若い顔だな……。


 顔に似合わない、大人びた身長に派手な体の凹凸。白い羽がついてるし、私の荒っぽい知識ではとりあえず天使にしか見えない。天使って両性具有で男でも女でもないっていう事だったが、どうやら違うのか?

 それに、こういう時に現れるのは神様だと思ってたんだがな。

 

 いろんな物語の天界のお約束とは違ってるが、天使が来る事もあるのか。まあ気にしてもしょうがない。


 「あーこんなとこにいたんですね。探しましたよ?」

 なんなんだこの天使は……。


 「貴方は勇者として召喚される最中に死んでしまったんですよ。レアケースです! レアケースですよ!!」

 (はぁ)


 「本来なら貴方はそのまま転移するハズだったんですが、召喚中に死んでしまったので新しい体を用意しました」

 (ちょっとまて。ちょっとまて。召喚中ってなんだ。転移するはず? どこにだ……)

 私の疑問を無視して、矢継ぎ早に女性は説明する。

 「極めてレアなケースですので、特別ですよ? 特別待遇です」

 薄い服の女は人差し指で上を指し、誇らしげにでかい胸を反って見せた。

 やたらとエロティックな体を薄い服で強調するなよ……。

 それより疑問に答えてくれよ……。


 しかし完全スルーの天使。

 「それでは頑張って召喚に答えてくださいね」

 にっこり笑顔。

 

 (おいおい、バスに乗ってた六人はどうなったんだ)

 「あー、あの六人の男女は貴方と同じように召喚で呼ばれていたんですが、貴方と違って死んでませんから、もう先に行ってますよー」

 脳天気な口調の天使だ……。


 「転移のお時間です。では行ってらっしゃい。がんばってね。☆彡」

 彼女は片目を閉じて見せた。

 ウインクじゃねーだろ。もう少し説明しろって、と思っていたらもう周りが光りはじめ、視界が白くなった。

 送り出されたらしい。


 運転手の人は私と同じく、即死だったんだろうな……。

 そして、これがケチのつきはじめだったのだ。

 

 ……

 ……

 

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