165 第19章 カサマと東の街々 19ー4 カサマの街道と魔獣狩り
街道掃除の魔獣駆除と目的の魔獣を討伐する任務が始まった。
マリーネこと大谷がお守りも無しに森の中の街道に行けば、マリーネの血の匂いで、魔獣が出て来るのは火を見るより明らかな事だった。
165話 第19章 カサマと東の街々
19ー4 カサマの街道と魔獣狩り
これは酷い事になった。
簡単な打ち合わせをしようとしている間にも、多くのメンバーが私の周りに一杯やって来ては、手まで出そうとするのである。
その度に、ランダレン支部長の喝が飛び、打ち合わせどころではない。
ホールに人が多すぎるので、銅階級の隊員たちを帰らせる事になり、事務員たちがてんてこ舞いである。
ランジェッティース隊員が今回の副長になり、レグラス・ミコン隊員とアイク・モンデルーラン隊員までが今回の討伐隊のメンバーとなった。
副長以外の二人はベルベラディからの応援でトドマに来た、あの時のメンバーか。彼方此方に振り分けられた筈だが、カサマへの貸出応援部隊に任命された人物たちのようだ。
副長のヴェラート・ランジェッティース隊員はやや焼けた肌。髪の毛は焦げ茶。切り揃えられていた。尖った耳が長い。瞳は深い青。顔全体の彫りが深く、トドマの方でもよく見る顔立ちだ。
勿論、身長は二メートル程。
レグラス・ミコン隊員とアイク・モンデルーラン隊員は副長とは少し顔立ちが違う。
それ程は焼けていない肌。耳は細いのだが、副長のほど長くはない。
髪の毛はやや赤みの入った茶色。その髪の毛を後ろで縛っていて、長髪である。
二人とも瞳が灰色。この二人は、明らかにこの辺りの亜人たちとは人種か、種族そのものが違う。身長は同じく二メートル程。若干、レグラスのほうが背が高い。
「私が、今回の、ガオルレース、討伐隊の、隊長になります。私の、指示には、必ず、従ってください。従えない、人には、帰って貰います」
「今回の任務は、ガオルレースだけ、と考える様な、隊員には、外れて、貰います。街道の、掃除を、兼ねています、ので、出てくる魔獣は、全て、駆除の対象です。そこを、お間違え、無きよう、お願いします」
「危険度合いが、かなり、高いので、命を失う、可能性が、かなり、ある事は、先に、申し上げておきます」
そういうと、みんな、急に押し黙った。
事務所のホールを静寂が支配した。
ガオルレースだけでも危険度が相当高い任務なのに、私が街道の掃除を宣言したからだ。
しかし、誰も降りるなどとは言わなかった。いや、多数の隊員が見ている前で、降りる等とは、口が裂けても言えなかったのであろう。
「では、明日から、始めます。日の出とともに、東門に、集合。遅れた人は、置いていきます。以上です。質問は?」
……
全く咳一つないほど静まり返ってしまっている。
「質問が、ないようでしたら、これで終わりです」
私は、支部長の前に行った。彼を見上げる。
「ランダレン支部長様。今回の任務。トドマ支部の方に、必ず、お知らせください。こちらの支部の、窮状を、鑑みて、カサマに、居合わせた、ヴィンセントが、引き受ける、予定と、合わせて、お伝えください。そして、必ず、トドマ支部の、命令書を、出して貰って、下さい。そうしないと、戻った時に、私が、叱られます。よろしくお願いします」
「ああ、分かった。これから、書類を作っておく。明日にはトドマの方に使者を出すから、そっちの方は、安心してくれたまえ」
「わかりました。それでは、私は、宿に行きます。みなさま。ごきげんよう」
胸に手を当てて、そういってからスカートの端を少し持ち上げて、右足を引いてお辞儀。
さて、宿に戻る。
途中、何人かが私の後を付けて来ていたのは分かったが、どうこう言うつもりはなかった。
私はヴィーダットストラの宿に向かった。
翌日。討伐任務、初日。週の二日目。
明るくなったら起きる。
いつも通りだ。それからストレッチや空手と護身術もいつも通り。
かなり早い時間だったが、出かけることにした。
宿屋の主人が、大急ぎで生果汁の飲み物を出してくれた。
私は革の水袋二つに、水を入れた。小さいポーチはリュックに入れておく。
戦闘で邪魔になるかもしれないからだ。
さて、果汁を飲んで、リュックを背負って出発。
「ヨーンさん。これから、街道の掃除を行ってまいりますので、もし五日経っても私が戻らなければ、私の部屋にある、革の袋等を、カサマ支部に、持っていき、契約書を出して、料金を、受け取ってください。よろしくお願いします」
「おお。今日からですか。ご無事を祈っておりますよ。ヴィンセントお嬢様」
背負ったリュックに、ミドルソードが付けてある。
東門に到着。まだ門は開けられていない。二人の門番に挨拶する。
「おはようございます」
「おはよう。冒険者の人」
「ここで、剣の素振りをしてもいいですか?」
門番の顔が一瞬、変わったが、許可はしてくれた。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
ブロードソードを抜いて、剣の稽古である。目を閉じて、黒服の男たちの剣を想像し、剣で突く。躱す。何時ものように。
! はっとした。
ブロードソードをその気配の方向、真横に体を振って剣を向ける。石が当たって、乾いた金属音。そして石が下に落ちた。
「ほお。目を瞑っていても、真横からの石が分かるのか。金階級というのは、本当のようだ」
やや笑顔の門番の二人。どちらかが、私を狙って真横から石を投げて来たのだ。
試したのだな。
何を言ってもしょうがない。笑顔を返す。
そのまま、またシャドウの訓練である。
……
暫くして、門番が門を開けた。
日の出の時間だという。
丁度そこに、三人が走ってやって来た。
「おはようございます。三人とも同時ですね」
「隊長。おはようございます」
三人から挨拶が帰って来た。
「では、今日から開始です」
「昨日も言いましたが、とても、危険度が、高いので、油断せずに、行きましょう」
カサマの東門を出る。私はリュックの後ろのミドルソードは降ろさずに、背負ったままとした。
隊員三人と共に、街道の魔獣狩りに出発。
この三人が三人とも銀の階級であり、腕は確かだ。
カサマの北は完全に森になっている。それはこの前来た時にも分かっていたが、街道の先もずっと森だ。
南側は林の場所や幾らか開けている場所もある。
暫くは縦列で歩いていく。
その林の中、南に川が僅かに見えた。その先は深い森。
ここからだいぶ南に下がった所に東の隊商道があるのだ。
この北の隊商道がまだ使われている最大の理由が、糸と布だと千晶さんはいっていた。その糸を機織りしている町がこの先にあるマカマだという。
暫く進んで、一度立ち止まり、辺りの気配を伺う。
この時に副長が先頭に立った。私はその後ろ。私の左右にやや開いて二人がいる。
街道を通る人はいなかった。
人気のない街道は虫の声で充満していた。
今回、三人も来てしまったのは私の想定外なのだが、ギルドでの仕事というのは、大抵こうやって、何人かでやらせるものだという。
私が魔物の餌だなんていう事は、彼らは全く預かり知らぬ事なのだ。
この先、魔物が私目がけて殺到するかもしれない。
なにしろ、お守りは持ってきていないのだから。
出来れば腕が立つ人が一人、魔物ガイドと補佐をしてくれれば、何かあっても、私がその人を守るのも出来るだろうし、その人もある程度の魔物は斃せるだろう。
それでコンビネーションで斃していけば、直ぐに終わるだろうと思っていた。
しかし、四人となると、話は別である。
山の仕事で、工場近辺の警邏の事を思い出す。あれは警邏隊四人に、私がくっ付いた形で、五人で行っていた。
あれと同じようなことになるが、今回の責任者は私である……。
彼らの命が無事で任務を終えられるかどうかは、私の指揮次第だ。
「ランジェッティース副長。歩きながら、聞いてください」
「はい。隊長殿」
「アガット・マグリオース殿が、ここの、街道を、掃除したと、聞きましたが、どの程度、駆逐したのか、ご存知ですか?」
左右の二人は、これは知らない話だ。だから、副長に訊くしかない。
「マグリオース殿は、常に五人で行動しました。一人は、必ずトーンベック治療師を連れて、ここをかなりの時間をかけて、魔獣討伐してくれたのですよ」
「どのくらいですか?」
「イグステラ、レグゥハン、ヴォッスフォルヘ、ガギゥエル、メルイヌエ、プーヴェ、サンテヌテ、ゲダゥニル……。出てきた魔物は、片っ端から切り捨てていたようですね」
私が知っているのは、最初の三つだけだ。後の五つは初耳だった。
「私の、知らない、魔物が、だいぶ、いるようですね」
「彼は、そう。三〇日以上ですね。五日間は野宿で狩りとって、一度戻り、一日休んで、また五日狩りをするという、徹底ぶりでした。何故あれほどの熱意を持って、この街道の掃除をしてくれたのか、私には分かりません」
「そう…… だったんですか」
アガットは、トドマ支部では大変に不人気だったと聞いている。
何しろ、ギングリッチ教官が、アガットを戻すくらいなら自分が鉱山に行くのを、了承したくらいだ。
彼はトドマ支部では粗暴者として嫌われてもいた。しかし腕は確かだったのだ。その彼がそこまでやったのは、やはりトーンベック女史の存在があったからか。
……
惚れた女に自分の実力を見せながら、常に、自分の横に置いておきたかったのだろうか。夜も野宿で一緒なら、そこには夜の営みもあったかもしれない。
そして、多少の怪我ならば、治療は金階級の彼女が、全て引き受けてくれるのだ。かなりの無茶も、平気でやったと考えられる。それは、ガーヴケデック討伐の時も同じだったのだろう……。
勿論、これは私の当て推量に過ぎない。本当の事はもう判らないのだ。
だが、アガットという人物が、トドマ支部でいわれているほど、酷い人物だとは思えなくなってきた。口は悪かったのだろうけれど、仕事ぶりは徹底していた事になる。
……
暫く歩いたが、一度休憩にする。
「ここで、全員停止。休憩に、します」
横に広がっていた二人も、私のすぐ横に来た。
私は水用革袋を一つ、手に取って少し口に含んだ。
私の匂いで魔物が出て来るなら、長時間はかからないという、予定でもあったのだ。
しかし、街道は虫の声ばかりで、動物の気配も魔物の気配もなかった。
「魔物の、気配が、しない……」
「え?どうかされましたか、隊長」
レグラス隊員が、私の小さな呟きを、聞き逃さなかったのか。
「全く、魔物の、気配が、しないと、言っただけです」
そろそろ私の血の匂いで、何かが出て来てもよさそうだ。
もし、北の方の森から、沢山出るようなら、グイド村にも影響がある。南から出るようなら、街道を通る人々が狙われる。グイド村からの陳情が無いのなら、とりあえず、今のところは、であるが、ガオルレースは北ではなさそうだ。
しかし南側は北側と同じく深い森があり、更には少し山もある。山のほうまで行かずに、仕留めたいものだ。
……
「休憩、終了。再び、警邏開始」
私がそう言うと、他の三人は、先ほどの様に広がった。
不意に右手の林の奥で、木が不自然に揺れている。
何かがいる。
「何か、いますね」
私がそう言うと、副長が立ち止まり林の奥を見つめていた。
数本の樹木が大きく揺れた。樹上に獣がいるのだ。
「あれは。……。ゴリフルです。隊長殿」
「どういう、獣ですか」
「何というか、人を小さくしたような形ではあるのですが、全身長い毛で覆われていまして、顔には毛がありません。そして我々の言葉を話しません。ああやって、樹上を移動しながら生活し、樹の実を食べたり、果実を食べている。そういう、我々とは別の容姿と生活習慣の者たちですよ」
見ていると、樹上の獣たちが、何か喚いている。
何だろう。類人猿ということだろうか。さっきのあれが言葉だろうか。
しかし、少なくとも副長は類人猿というものに相応する言葉を使っていない。そういう言葉が無いという事は、猿という動物が全くいないか、彼らが猿という概念を持っていないかのどちらかだ。
そう言われてみると、この世界で今まで、元の世界でいう「猿」を見たことがなかった気がする。しかし、今、樹上にいるのは、類人猿のような動物たちなのだ。
そこからいえるのは、この世界では、類人猿という分類、概念も含めて、『無い』といわざるを得ない、という事だな。つまり、ああいう者達も亜人、という事になる。
一頻り木々を揺らした類人猿らしき獣たちは、樹々を渡って森の奥に消えていった。
もしかして、私の匂いに反応したのだろうか……。
さらに少し歩く。今日は東風がほとんどない。
街道の虫の声は鳴り止まなかった。
その時だった。背中に何か寒気とぞくぞくする感覚がある。…… 間違いない。
「何か、います。全員停止」
さっとしゃがんで左手を地面に敷き詰められた石に当てる。
右手の奥に、何かいる。背中が反応したのだから、魔物だ。
数が分からない。複数いるのは確か。
この背中の感覚からいって、大型の魔獣ではない。前にもこういう感覚は何度かあったのだが、魔獣ごとに完全に違う訳では無いので、種類までは判らない。
「右手の、奥。少し広がって、全員警戒」
三人とも抜刀。彼らが移動して間隔が広くなった。
私は、まだ抜かないでいた。どんな魔物なのか。
街道の南に、何かがいる。奥にあるのは林の木々の間にある深い藪。
藪の中に、何かが潜んでいた。
暫くして二頭が出て来た。焦げ茶の体毛。額に短い角。短い耳。長い胴体。ゲネスだ。たしか炎の珠を吐く筈だ。
吐かれる前に斃せと、真司さんが言っていたのを思い出す。たしか、新人実習の時だった。
此奴らは、私の血の匂いに釣られて飛び出して来たのだろう。
藪からさらに四頭が飛び出して来た。ゲネスは全部で六頭だった
最初の二頭のうち一頭は、副長がやや屈んでから剣をやや左下の横から下段払いの様に払って斃した。ゲネスの脚が極端に短いので長身の彼らでは、屈んでそうするしかない。
ゲネスの首が後ろから切れた。走って来た勢いで、ゲネスの首がすっぱり宙を飛んで、地面に転がる。頭を斬られた胴体は首から激しく流血し、倒れ込んで四肢が痙攣している。
左右の二人も前に出る。
左側にいたアイク隊員も、やや屈んでから一気に横に下段払い。
ゲネスの胸胴体部分を前から横に斬って、ゲネスはつんのめる様にして倒れ、激しく流血。四肢も激しく痙攣していた。
奥から来た四頭が、一斉に止まる。
背中のぞくぞくする感覚が強くなっていく。これは……。魔獣が、やらかすのだ。
「全員、散開!」
私が叫ぶと同時に、全員が走り出していた。
ゲネスが炎の珠を連続で打ち出し始める前に、私は左手で右腰のダガーを抜いて投擲。左端にいた一頭の胸に当てた。
ゲネスは、そのまま前のめりに倒れ込んだ。
後、三頭。
副長が走り込んで、左のゲネスに迫る。しかしもうゲネスは口を開けかけている!
右手で左腰のダガーを引き抜いて、投擲。ダガーはゲネスの右足のつけ根、やや心臓に近いほうの胸に突き刺さった。
ゲネスがよろめくその一瞬に、副長がゲネスの首を斬り落とした。
その時、右側のゲネス二頭が炎の珠を連続で吐き始める。
私はもう、走り出していた。副長は全力で左側に逃げている。
走りながら抜刀!
私に炎の球が迫るのを、ぎりぎり躱す。炎の珠は連続で打ち出されてくる。
二頭のうち一頭はレグラス隊員のほうに向け始めた。
まずいな。
ゲネスの炎の珠が私の右の髪の毛を少し焦がす中、全力で走り、ゲネスのほぼ左前で左下段から右下段へと剣を振るった。剣は左脚から右脚の上を横に切り裂いて右側に抜けた。
ゲネスから悲鳴が上がり、その場で転がる。ゲネスが転がりながら暴れる。
真一文字に斬られた胸から激しい流血。ゲネスの口からも激しく流血していた。
そしてゲネスは四肢を痙攣させながら、体は動かなくなった。
私は勢いのまま、更に右へと踏み込み、レグラスの方を向いていたゲネスの胴体に、やや上から剣を突き立てた。
魔獣から悲鳴が上がる。ゲネスがゆっくりとこちらを向いたが、口から、炎の珠ではなく多量の血を吐いて、そのまま崩れ落ちた。剣は肺を貫いたか。
ゲネスは暫く前脚を痙攣させていたが、動かなくなった。
剣を引き抜く。私はブロードソードを二度、宙で大きく払って血を飛ばし、納刀。
私は目を閉じて、両手を合わせた
「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」
小声でお経を唱える。
出て来てしまえば、斃すしかない。
振り返ると、副長たちが呆気にとられていた。
「ゲネスでした。六頭」
私は簡単にその場で宣告。
「隊長のその速さは、とても真似のできるものではありませんね」
やっと口を開いたヴェラート副長がそんなことをいう。
「魔石と、角、牙を、回収します。肉は、荷物に、なりますから、回収しません。あとで、藪に、投げいれます」
全員が頷いた。
首の飛んだゲネスは副長がその首を拾い上げて、牙を削り取り始めた。
他の二人もゲネスの死体の所に行った。
私はダガー二本を回収。それぞれ、二回振って血を払い、鞘に納めた。
牙四本を削り、それから短い角。それが終わったら、額の所からダガーを突き立てて、頭蓋骨を割っていく。相変わらず饐えたような臭いが出て、噎せる。
脳味噌にダガーを突き立てる。脳漿と血が溢れ出て、更に噎せた。
魔石はやや小ぶりだが、トドマ支部ではこれを一個、二二リンギレで計算したのだ。牙が一一で角が一三だった記憶がある。
七九の六体で四七四リンギレだろうか。もう、これだけでもかなりの額。
今回は、討伐任務兼、街道掃除だから、斃した分はこの四人の収入になる。
副長が全てを集めて革の袋に入れた。それを背負っていた背中の袋に入れる。
「少し、休憩に、します。全員、休め。です」
そういってから、私はゲネスの死体を運び始めた。
両手に一体ずつ。三回運べばいい。そう思って運び始めると、いきなりレグラス隊員が叫んだ。
「隊長にそんな仕事をさせられません!」
そういって三人がやって来て、二人が下に転がっているゲネスの死体を掴んで持ち上げた。副長が、私のゲネスの死体を掴んで持ち上げる。
「これは、私が」
やれやれ……。こういう部分が、私はまだ隊長にはなっていない部分なのだろうか。
「じゃあ、私は、この頭を、持ちましょう」
副長が斃したゲネスはどっちも頭を斬り飛ばしていたので、首から上、解体されて血だらけの頭を掴んだ。
四人で、最初にゲネスが潜んでいた藪に向かい、その藪の中に死体を投げ込んで貰う。私は最後に頭も投げ込んだ。
そして、両手を合わせる。黙祷。
「隊長殿。どうしてこんなことを?」
「死体を、そのままに、しておく、訳には、行きません。今回は、人数が、少ないので、肉の回収が、出来ないから、です」
「かといって、放置するのは、私の、やり方ではない、からです」
あの薮に、肉食魔獣が集まってくれば、それを狩り取ることも出来るが、屍肉を食べる奴らでないと、餌にならないだろう。
すこし休憩。
座って、水を飲んで、少しだけ休む。
隊員三人も車座である。
「あの場所、ですが、血と、肉の、匂いで、魔獣が、来るかも、しれません。人を、襲うような、魔獣なら、駆逐します」
「隊長。分かりました。あれは餌なんですね」
「そういう事に、しておきます」
それは本意ではないが、結果的にはそういう事なのだ。
暫くして、汗も引いた。
「では、休憩、終了。警邏開始」
私がそう宣言すると、全員が立ち上がる。
つづく
街道は静かだったが、早くも多数の魔獣が現れ、討伐隊は奮闘することになった。
この日はまだ終わらない。
次回 カサマの街道と魔獣狩り2
まだ、魔獣を倒す一行。これはまだ幕開けに過ぎない。
街道掃除は始まったばかりである。