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121 第15章 トドマの港町 15ー28 セントスタッツの店

 トドマの港町の鍛冶屋をパスして、ポロクワのセントスタッツの店に向かうマリーネこと大谷。

 彼に魔石や牙を買い取ってもらい、折れた剣の代わりを何処かう買うつもりだった。


 121話 第15章 トドマの港町

 

 15ー28 セントスタッツの店

 

 この六日目の休みは月の終わりに来るお休みもあって休日が二日。

 連休を利用して、ポロクワ市街に行く事にした。

 

 翌日。

 何時ものように起きてやるのはストレッチ。

 そして準備体操だ。

 空手と護身術も行い、剣の練習もいつも通り。

 顔を洗って、汗を拭き、まずは着替える。

 

 お出かけの服は、今回はお洒落服で行こう。そう、スッファ街には着て行けなかったが、今回は一人で街にお出かけである。こういう時のために苦労して縫製したのだ。

 まず、下着。上のシャツは肩紐タイプ。パンツは飾りのついた一つしかないショーツ。

 私は今日着て行く服に、あの赤い服を選んだ。

 赤いブラウスとスカートと上着。お揃いにして作ったお洒落着。

 そして白いスカーフ。首には階級章。

 

 リュックからは折れた剣の鞘を外し、中に魔石や牙の入った革袋と、革の水袋、畳んだマント。あとは手ぬぐいのタオル。折れてしまった剣を入れた。

 ブロードソードは持っていこう。腰に細いベルトを巻いて、そこにブロードソードの鞘と右にダガーの鞘を付けた。

 後は、コインとトークンの入った小さいポーチ。そこにハンカチ代わりの小さいタオル。これを袈裟懸け。

 

 まだ、朝になったばかりの時間。朝靄の中、門番の女性たちに挨拶して、私はトドマの港町に向かう。

 

 折角のお洒落服を汚したら元も子もない。転ばない様に、あまり走る事も出来ない。港に向かう石畳は、何時ものように朝靄で濡れて、黒く光っていた。

 道端には、幾らか小動物が出ていて鳴いていたが、私が近づくと彼らは蜘蛛の子を散らすように森の中に逃げ去って行った。

 魔石が無くても、小動物たちは私の友達になってくれそうにはなかった。

 

 ……

 

 トドマの港町にいくと、街はずれとなる北西の道の一番壁際には三軒ほどの大きな鍛冶屋や荒物を売る金物屋があった。

 多分あの鉱山街の一番西にある鍛冶ギルドの人たちの店だろうと私は考えた。

 あそこで作って、卸せる一番近い場所はここしかないだろう。

 だが、魔石を売る事も考えて、ポロクワ街へ行くのが良いだろう。

 

 そういえば、たしかトドマの町は、鍛冶と商業で栄えたとか、真司さんだっけ、千晶さんだっけ。二人のどちらかがそういっていた気がする。

 栄えた、という程の店の規模ではないので、たぶんこの街道の利用が寂れるにつれて、鍛冶屋の店もかなり減ったか大幅に縮小されたのだろうか。

 ともあれ、私は波止場のほうに向かう。

 

 私は、波止場でここからポロクワに行く荷馬車を探した。

 対岸からトドマの港町に届く荷物をポロクワ市街に運ぶ荷役人が多く、馬車はすぐに見つかった。

 私の首に付いている金属片は、大いに役立ってくれた。

 デレリンギコインを少々(はず)んで六枚支払って、御者台の横に乗せてもらう。

 

 男性は私を軽く抱きかかえて、御者台に乗せてくれた。

 所作に乱暴さがない。心得ているという感じだった。

 

 荷馬車にはアルパカ馬が二頭。然程大きくはない荷馬車にしては、馬が二頭というのは贅沢に思えた。

 

 荷馬車はポロクワ市街に向かう。

 やや下りになっている街道を荷馬車はどんどん加速して進んでいく。

 時々、荷馬車は跳ねて私は目の前にある小さな柵に掴まっていないと、横に転げ落ちそうになる。

 

 あっという間に途中の村は通り過ぎた。

 

 やや乱暴だが、この男性は急いでいるのだろう。

 この御者の男性は服がみすぼらしいというほどでもない。だから、この人物にしたのだが。

 

 余りにもみすぼらしい服の男性だと、街道に出てから身包(みぐる)み剥ぐ勢いで、襲ってきかねない。そうなれば、反撃せざるを得ないので不測の事態も有り得る。

 出来るだけ、そういう事態を避けるには、余りにもみすぼらしい服を着ている人物は避けたほうがいい。

 街の商人たちが着る服よりは落ちるが、ただの作業服というには立派なので、たぶんこの人は単なる運送業者ではなさそうだ。仲買人かもしれない。この先、ポロクワに仕入れた商品を卸している可能性がある。

 

 そんな事を考えていると、薄い雲が晴れて日が射す。二つの太陽から射す日差しは眩しかった。南に向かっているので、東南からの太陽の日差しが目に入る。

 男性はつばの広い帽子を後ろから取り出して被り、顎紐を掛けた。

 それからアルパカ馬に更に鞭を入れ、一層馬の速度が上がる。

 

 とにかく今までにない速度で、荷馬車は進みどんどんポロクワ市街の門が迫る。

 

 門の近くでやっと減速し、御者は帽子を取って門番の警護兵に挨拶して、通り過ぎた。

 

 荷馬車は今や、ごく在り来たりな速度になり、街の石畳の上を通っていく。

 

 ……

 

 私は、トドマのギルドにすら出せない魔石やら角やら牙やらを、このポロクワ街の商会を通して売り捌く事にしたのだ。

 

 荷馬車の御者は、ジウリーロの店である、セントスタッツ商会の前まで運んくれた。

 御者が私を抱えて降ろしてくれる。

 

 「ありがとうございました」

 私は丁寧にお辞儀。

 やや痩せぎすな精悍な顔をした紳士風の御者は帽子を取って、私のお辞儀に答え、右手を胸に当てて、お辞儀を返して寄越した。

 御者の男性は素早く御者台に乗ると、馬車はそのまま青空市場の有る方に向かっていった。

 あの男性は、間違いなく教養もあり躾とか礼儀と挨拶とか仕込まれている人物であろう。

 トドマの港町で選んだ私の目は間違っていなかったようだ。

 

 さて、久し振りだが、店主は私を覚えているだろうか?

 「こんにちは」

 軽く挨拶して中に入る。

 

 「おや、ずいぶんと見違えるような服を着てお出でですな。ヴィンセント殿」

 そういうジウリーロも、鼻の下の髭を綺麗に揃え、かなり落ち着いた洒落た服を着ている。

 私はスカートを両手で軽く摘まんで、左足を引きながらやや腰を落とし、お辞儀した。

 

 「今日はどんな用です? お嬢さん」

 ジウリーロの声は朗らかだったが、目は笑っていなかった。

 

 「魔石とか、売りに、来ました」

 「そんなに、高くなくても、いいから、あなたが、無理しない、範囲で、買い取って、欲しいのです」

 「お嬢さん、どうなさったんです。あなたの首もとには今や立派な金属がついてるじゃありませんか」

 スカーフの下から僅かに見えた階級章を見逃すほど、ジウリーロの目は節穴ではない。

 私はリュックを降ろして、革袋を取り出した。

 「そうなのよ。だから、あなたの、所に、持って、きたのよ」

 「え?」

 「あまりにも、沢山の、出処すら、不明の、魔石。こんなものを、ギルドに、納品したら、どうなると、思います」

 

 男は見下ろしながらずっと私を眺めていた。

 「盗品じゃないんですよね」

 「ジウリーロさん、私が、そんな事をして、ここに、持って来ると、思います?」

 「いや、まあ。私達商人は、たしかに出処は問いませんがね」

 「買い取って、もらえないなら、これは、トドマの港町で、湖に、投げ捨てるしか、ないわね。深いから、誰も、回収できない」

 極めて残念そうな顔を見せる。

 

 「でも、出処問わずに、いつでも、現金払い。それが、このお店の、遣り方と、聞いて、いたのですけど?」

 「お嬢さんには敵わないな」

 男の顔に微笑みが浮かんだ。

 

 「私も、大金が、欲しいと、言ってるのじゃ、ないのよ。私は、もう首元に、金属が、ついて、しまってるし、他の、ギルドの、資格がないから、これを、魔法師ギルドや、薬師(くすし)ギルドには、持っては、いけないの。そんな事を、したら、信義違反、でしょ」

 「なるほど」

 男は軽く頷いた。

 

 「だから、これを、あなたに、売りさばいて、欲しいと、言ってるだけよ。冒険者ギルドを、通していない、素材が、買いたい放題よ。冒険者ギルドが、黙って、買い取って、くれるなら、私だって、ギルドに、頼むわよ」

 彼はずっと私の顔を見下ろしていた。

 「一緒に来られた小鳥遊(たかなし)様はどうなされました」

 

 私はジウリーロには洗いざらい話をしておく事にした。

 

 「あなたが、まだ、知らない、のなら、情報、教えて、おくわ。山下様と、小鳥遊(たかなし)様は、今は、キッファと、スッファと、カフサの、間の、街道掃除に、忙しいの」

 

 「もう、二〇日も、前の事、だから、商会の、情報として、流れて、来ている、はず。カフサから、キッファの先まで、街道に、魔獣が、多いから、厳重な、警護がない、なら、北の街道を、通るなと。スッファの、冒険者ギルドは、魔獣討伐に、失敗して、私たち、三人が、呼ばれたわ。あそこは、沢山、死んで、魔獣討伐、部門が、壊滅、したのよ。大規模な、葬儀が、あったわ」

 

 私はそこで一旦、会話を止めてジウリーロを見上げたが、彼の表情からは何も読み取れない。そこで更に続ける。

 

 「今は、スッファの街は、南からしか、入れないかも、しれない。でも、あの白金の二人が、いるのも、そこだから、事態は、かなり、動いて、いるはずよ。たぶん、応援も、だいぶ、来たと、思うの。それでも、立て直しには、かなりの、時間が、かかると、思うわ。それで、あの、お二人が、街道の、大掃除の、現場、総指揮と、実際の、討伐も、行うから、私だけ、トドマの、ほうに、返されたって、訳」

 そこまで話すとジウリーロは左手を顎に当てた。広げた手の親指で頬の肉を擦る。

 

 「まあ、流石に情報が来ていない事もない。スッファへの卸しは()()推奨しないという通達は来ている。それがそういう事だったのか」

 「今は、多分、スッファ街の、北部商会は、混乱してる、いえ、スルルー商会、傘下の、商会は、全て、混乱してる、はずだから、落ち着く、までは、行かない方が、いいわ」

 

 付け加えるようにもう一言。

 「もう、スルルー商会は、壊滅、してる。ドーベンハイ商会が、吸収した、と思うわ」

 「それは、まだ聞いていなかったね。そこに関してもう少し教えてくれないか」

 「ええ。スルルー商会は、問題解決に、暗殺集団を、雇ったのよ。でも、暗殺集団を、怒らせて、しまったの。ズルーシェ会頭が。それで、会頭も、子息たちも、暗殺集団の、怒りを、買って、全員、死んだわ。葬儀も、やっているでしょう」

 そこでジウリーロは大きく頷いた。納得いったという顔だった。

 「スッファでの大規模葬儀で大騒ぎというのは聞いたが、その事だったのか」

 私は小さく頷いた。

 

 「なるほど。北の街道の通商が滞って、ポロクワにやたらと商人が来ているのはそういう事だったのか」

 「ドーベンハイの、会頭は、頭の、切れる、男よ。体制が、整うまでは、情報を、外に、出さない、ように、しているのでしょう」

 ジウリーロは深く頷いた。

 

 「あなたは、この、物を、足が付く、形で、他の業者には、売らない。あなたは、他の、誰よりも、有利な価格で、薬師(くすし)ギルドや、魔法師ギルドに、売る事、が出来る。十分な、利益が、出る、はずよ。冒険者ギルドに、漏れると、私が、叱責されるから。叱責で、すまないかも、知れないし。あと、多少、珍しい物も、有るわよ」

 

 「どんなものです?」

 私は革袋から小さい魔石を取り出した。

 「洞窟蝙蝠の、魔石。いくつは、加工しちゃったので、装飾品に、なってるのも、有るけど。魔除けの、小物ね。魔石は小さいけど、多数、流通してる、物でもないでしょ」

 私は片目を瞑って見せた。

 

 もう一つ。やや大振りの爪を取り出した。

 「大きい、焦げ茶熊の、爪は、どうかしら。魔石は、大きすぎて、村に、置いて、きちゃったけど。私が、斃した、ステンベレの、魔石や、角とかも、三頭分、有るわよ」

 ジウリーロの目が見開かれていた。

 「わ、わかった。わかった。腹を決めて買い取る事にするよ」

 

 「これは、直ぐに、代金を、下さいとは、言わないわ。売れたら、その中の、一部を、私に、回して、くれれば、私は、それで、いいの。値段、交渉、しなくて、ごめんなさい」

 ジウリーロは少し笑みを浮かべ、ただ黙って頷いた。

 

 「私は、本当は、職人に、なりたいの。でも何故か、今は、冒険者に、なってしまったから、これを、続けているけど、何処かで、この仕事は、やめて、鍛治とか、細工職人に、なりたいから、資金を、貯めておくの」

 

 「あとは、そうそう。私は、いい武器が、欲しいのよ。良いお店が、あったら、紹介して、欲しいの。まともな、剣が、欲しいわ」

 そう言って、私はリュックから二つに折れた剣を取り出した。

 スッファの街で買い求めたが、その後魔獣相手に折れた剣だ。

 「これは、他の街で、買った、のですけど、簡単に、折れちゃった。もうちょっと、ましな剣が、欲しいの」

 私は折れた剣を見せた。

 「ジウリーロさんが、ご存知なら、紹介して、くれません?」

 ジウリーロは軽く頷いた。

 「この街で、ですな。トドマには昔からの大きな鍛冶屋が有るから、そっちにも武器商人はいる筈ですがね」

 

 「まだ、探し、きれて、なくて」

 嘘である。トドマの港町にも確かに鍛冶屋があった。中を見ていないだけである。

 

 「それと、もう一つ」

 私は笑って付け加えるように言った。

 「信用できる、両替商人を、紹介して、欲しいのよ。モグリ、じゃない、人を」

 それを聞いてジウリーロも小さく笑った。

 

 「貸し付けは要らなさそうですな」

 「それは、武器の、値段に、よりますね。二リングルとか、言われてしまうと、この、代用通貨で、支払いきれるか、心配だわ。足りない分は、借りないと、いけないわね」

 私は肩をすくめる。

 「まさか」

 ジウリーロはやや吹き出すように笑った。

 「二リングル。そんな値段だったら、誰も買えませんって」

 「希少金属で、作った、銘刀とか、無いの、ですか?」

 「雑貨屋ですからね。流石にそんな高いものは、有ったとしても扱えるものじゃないから、まずは知ろうともしません」

 ジウリーロは少し笑っていたが、真顔に戻った。

 彼がそう言うなら、私はとりあえず納得するしか無い。

 「分かりました」

 私は頷いた。

 

 このやや大きい街に、かなり高価な良い剣がないかと期待しているのだが。

 「まあ、鍛冶屋の方は私の知り合いがいます。そっちに訊いて下さい」

 「両替は急がないのなら、私が代わりにやってもいい。勿論両替商の手数料以外は取りません。これはお嬢さんへの顧客奉仕だ。私がやると違反になるから、知り合いに両替してもらうが、手数料はかかる。でもね。一般の人が両替商に行くのと比べると業者間の両替は、極端に手数料が安いんですよ。それでどうです」

 

 「厚意は、有り難く、受けたいけど、それって、違反じゃ、ないんですか?」

 「まあ厳密にはね。買取の硬貨として渡すとか、何か買ったお釣りとして渡すならまったく問題ない。それなら手数料もいらない。私の商いの上での必要経費だ。でも単位を大きくしてくれという方は、両替になってしまうね。お嬢さんがしたいのは、崩すほうかね、纏める方かね。崩す方なら、いくらでも出来るけど、纏めるのは今も言ったように両替になる」

 

 「最初のうちは、崩す方だと、思うので、最初だけは、受け取る、硬貨は、単位が小さい、方が、良いわね。ただ、リンギレが多いから、リングレットに、してくださいって、いうのは、両替です、ものねぇ」

 少し考える。

 「その時になったら、いいます。それで、いいですか」

 

 「勿論。小銭が欲しい時は、そう言ってくださいよ。買取金額の硬貨に小銭を混ぜますよ」

 「ありがとうございます」

 

 この王国には、どうやら銀行がない。預けておけないのが痛い。

 

 「さっき言ってた武器は、ナルグルニエパンドットというちょっと長い名前の武器屋があります。そこは評判もいい武器屋です。きっとお嬢さんの期待に答えられるでしょう」

 「遠いですか」

 「いや、それほどでも。南の方に行って市場があるので、その脇で聞けばすぐ分かりますよ」

 

 「時間が、ありますか。ジウリーロさん」

 「お嬢さん、どうしました?」

 ジウリーロは私を覗き込んだ。

 

 「案内料を、払いますから、私を、連れて行って、欲しいの。こんな、姿なので、武器屋でも、信用、無いでしょ。貴方の、口利きで、武器が、選べたら、とっても、助かります。それと、ここにも、冒険者ギルドが、ありますよね? そこにも、挨拶して、おきたいの。探さなくちゃ、いけないから、案内して、もらえたら、時間の、短縮が、出来て、助かります」

 

 ジウリーロは笑い始めた。

 「ここで、私を使って彼方此方に顔繋ぎしたいと」

 ジウリーロは私を覗き込んだ。

 「お嬢さん。本気ですか」

 「ええ。小鳥遊(たかなし)様が、このお店を、使うくらいには、貴方を、信用してる。だったら、私も、貴方を、信用して、案内と、顔繋ぎを、お願いしたいの。受けて、貰えたら、助かるわ。案内料は、いくらが、適当ですか?」

 

 またジウリーロは笑った。

 「いいでしょう。お嬢さんは私に手持ちの魔石と牙を専売で卸すという。それが対価でいい」

 「そうは、行かないわ。貴方は、私を、案内する、間は、お店を、閉めないと、いけないから」

 「お嬢さんは律儀ですな」

 私は持ってきた全ての魔石と牙、その他、耳だの爪だのアクセサリーの一部が入った革袋を、ジウリーロに渡した。

 

 彼はそれを受け取って、ざっと中を眺めた。ジウリーロの目が輝いているのが、はっきりと分った。

 

 「ちょっと待って居てくださいよ。表に馬車を出します」

 そう言って、ジウリーロは店の奥に消えた。

 

 暫くすると、彼は別の通用口から馬車を出したらしい。

 あのアルパカ顔の馬もどきと小さな箱車に御者台の付いた馬車があった。

 私が外に出ると、彼は手早く戸締りをした。

 

 ジウリーロの馬車は御者台の後ろに壁も無く座席が二つ。その後ろは荷台だが屋根が付いている。

 左右と、後ろに扉が付いたバンのような作り。

 実用的だ。

 「随分と、実用的な、作り、なんですね」

 そう言うとジウリーロは微笑した。

 「特注でしてね。荷物もお客も運べる」

 「仕入れたり、お得意様を、運んだり、ですか」

 「そういう事」

 私はリュックを下ろして後ろに積み込むと、ジウリーロが私を抱き上げて御者台に載せた。

 

 ……

 

 

 つづく

 

 金額は無視してとにかく、売りさばくのを頼んだマリーネこと大谷。

 ジウリーロを説得し、なんとか街のガイドもやってもらう事になった。

 

 次回 ポロクワの鍛冶屋

 ジウリーロお勧めの鍛冶屋に行く事になったマリーネこと大谷。

 多少高くてもよい剣を、出来れば名刀を買いたいと考えていた。

 

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