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012 第3章 初めての制作 3ー3 鉄を作るには準備がいる

まずは鞴を作ります。

マリーネこと大谷は大工のような作業から開始です。

 12話 第3章 初めての制作

 

 3ー3 鉄を作るには準備がいる

 

 しかし、軽々と材料を運んだり、水満載の桶を軽く運べるところを見ると、私の優遇は体の頑丈さと、かなりの体力なんだろうか?

 まさか、まさか、これが私に与えられた優遇なのか?


 しかし、それならそれで私の人力鞴が通常の人力では不可能な事を可能にするかも知れない。


 取り敢えず大工の家に行く。仕事場らしき所に(のこぎり)、何やら中途半端な場所にあちこち印のついた定規らしき板。そして(かんな)

 この定規は全てに目盛りが振ってあるのではなく、使う場所だけ、印がついているのだろう。

 たぶん作るものが決まっているから、他には印がいらない、という合理的な理由によるものだと推測した。

 さてこの鉋。まともなのか? 板を削って確かめる。

 案の定というべきだろう。いいとは言い難い。はっきりいえば、あまり良くない。これでまともに鉋がけ出来ていたのだろうか?

 一度ばらして、研がないと駄目だ。ため息が漏れた。


 しかし……。

 こういう工具が作れているという事は鍛冶によって製鉄出来ているという事だろう。


 ただし。ここで作ったかどうかは全く別の話だろうが。

 …… 悲観していても先に進まない。やるべき事をやろう。

 

 ……


 とにかく鉋の刃を研ぐ。

 もう一度取り付けて微妙に刃の出る具合を調整、きれいに板が削れるようになるまでに一日を要した。

 

 板を削って滑らかにして大きめに同じ長さで二枚、幅の違う同じ長さの板を二枚、合わせて四枚切り出し。

 箱は長方形にして箱の前部分の板と鞴の押す部分の板はすこし小さく切るのだが、定規が役に立たないので、まずは作ってからの調整か。


 箱にするのに釘が無い。

 おいおい。まさか釘から始めないと行けないのか? と思ったが、ダボはある。

 (きり)でダボの大きさで正確に穴を彫るにはかなり苦労した。

 ダボを一つ打ち込んで位置を決めて他の位置を合わせる。精密さが要求される。

 中で空気を押し出す板は気密性がないといけない。


 ふと、横の家が(なめ)し革を作っている猟師らしき家だったと思い出した。

 そこに行って毛の短い革を探そう。

 別段、毛皮の上着が欲しいわけでも、作りたい訳でもない。

 沢山ある中からようやく毛が短い、そこそこ大きさの取れる革を見つけた。


 何の動物なのかは考えない。

 そこからナイフで切り出す。おお。研いだナイフはかなり切れる。これは切れ過ぎだろう。

 もしかして、これは優遇のおかげなんだろうか。


 そんな考えが一瞬頭をよぎったが、鞴の方完成させねば。

 

 ……

 

 鞴の中で押す板は少し小さめにしたが革を巻いてみると、入らない。

 革の厚さの分を、少しずつ鉋で削っていき調整する。

 時間はかかるがしょうがない。


 やっとギリギリ、キツキツの状態で中に入った。板の隙間は外から松脂のようなものを塗った。

 前の板には小さな穴を開けた。

 

 この穴の所に細長い吹き出し口をつける必要があり、ここは難しい。

 まずそこそこの太さでかつ長さの棒に錐で穴を貫通させる。

 両方から開けていって貫通させて中の穴を少しだけ大きくする。

 

 次、片方は断面部分にダボを3本打ち込み、これを取り付けられるように噴き出し口の周りにダボ穴を掘る。

 それなり高い精度が求められる。


 慎重に穴を彫ってダボを付けた丸い棒を叩いて打ち込み。

 ぴったりと隙間のない所まで打ち込んで完成だ。


 そしてもう一つやる事がある。このままでは両手じゃないと使えない。脚を付けてやる。

 作業する高さに合わせて、鞴は下向きとなった。

炉の吹き込み口の高さに合わせないといけないからで、上から下に押し込む手動ポンプのような造りだ。



 まずは試験だな。

 棒を押して行く時引っかかりはないか、空気が漏れてないか。

 出口を見ると勢いよく風が出る。漏れも無いようだ。

 しかし、中の板が「がたがた」とずれないように、押し込む棒の中心部分の左右に添え木の様な物を付け足して、棒の周りの上下も添え木する。

 さて、これで鞴は完成だ。


 完成までに五日かかった。

 元の世界では木工なんて棚くらいしか作った事が無い。

 元は不器用な自分がこんな物をきれいに作れるのは驚きでしかなかった。

 器用さといい、位置の正確な見定めといい、全くの別人だ。


 しかし、鞴は本来は蛇腹を足で踏む形で作って使うのだが……。そうすれば両手が開くからだが。或いは水車。

 日本では鞴専門の人が天秤鞴(てんびんふいご)とかいうやつで空気を送っていたとも聞いた。まあそれは人数がいれば可能な話。



 まず、準備として革エプロン。ここの鍛冶屋のは大きすぎる。胸の前に垂らして、お腹のあたりで二回ほど折りたたみ、革の紐は後ろを通して、前で結ぶ。

 次に革の手袋。ここのはぶかぶかだが、ないよりはまし。火傷(やけど)してしまうから絶対にいる。


 次、食料だ。塩の皿の横に燻製肉を切ってかなりの量を積んだ。

 作業にはかなり時間が掛かる事が予想される。他の人に料理を運んで貰えないから、先に此処に持ってきておく。炉の熱で多少は傷むかもしれないが。


 さて、スコップで大きい桶に燃料である炭を入れて中に運ぶ。八杯ほど運んだ。

 桶はかなり大きいので、これでもかなりの量なのだが、これで足りるかどうか。

 あと二杯分くらいは運んでおくか。

 それと、赤鉄鉱石。どれくらいあればいいのか分からないので、桶に六杯を運んだ。

 不純物が多いから、たぶん良くて二割か一割くらいしか残らないと思ったほうが良い。もう二杯を運んだ。

 

 ……

 ……

 

 

 つづく

 

 鞴を自作完了。

 いよいよ、鉄鉱石を叩いていきます。


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