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110 第15章 トドマの港町 15ー17 山での警邏任務11

 隊長代理となったエボデンと、濃霧の立ち込める粘土採集場の森の奥で出会った魔獣。

 エボデンを心底震え上がらせた魔獣もまた、マリーネこと大谷には初めての出会いであり、彼にはこれがどれほど危険な魔獣なのか分っていなかった。

 

 110話 第15章 トドマの港町

 

 15ー17 山での警邏任務11

 翌日。

 

 この日も朝から霧が立ち込めていた。

 起きてやるのはストレッチ。まだ外も薄暗いので、軽くストレッチしたら、直ぐに蝋燭に火を灯す。

 そうしてから柔軟体操。ネグリジェは脱いで、つなぎ服に着替える。

 空手と護身術は、いつも通り。

 

 剣とダガーを付けたベルトを腰につけて、ロングなミドルソードも持ってそっと外に出る。

 そしていつものように剣の素振り。

 私にとってはロングなミドルソードのほうも、立ち居合抜刀を練習する。

 何時ものブロードソードと同じ型を、こっちでもやる。

 それも終えたら、右手に剣、左手にダガーでの練習だ。

 

 だいぶ練習して汗が出てきた。井戸まで行って顔を洗ってタオルで拭いて少し休憩。部屋の水甕(みずがめ)の水を取り替えておこう。

 

 朝霧はだいぶ薄くなり、周りは明るくなってきた。

 

 部屋に戻って、リュックを確かめる。革袋の水は交換。

 買ってきたばかりのサイズを詰めたマントは畳んでリュックに入れる。

 

 それとロープとタオル。水の入った革袋と小さいナイフ。

 魔石の入ったポーチを肩から右にかけておく。

 コインの入ったポーチからはトークンを取り出して大きいリュックの方の革袋に入れた。

 そしてこれも肩から左側に掛ける。

 

 最後は首に階級章。

 

 さて、少し早いが扉には鍵をかけて門に向かう。

 

 門番の人に挨拶をして、何時ものように両手ダガーの練習。

 

 あのオブニトールの攻撃を思い出す。

 速さで言えば黒服のあの男の速さには全く及ばないが、攻撃の本数が多い。

 それとあの時はたぶん油断して、一本しか斬れずに時間差のある二本目の攻撃をまともに喰らってしまった。

 転がって行く私に別の腕が絡みついたら、反撃できなかったかもしれない。

 

 そういう意味で、あれは失態だった。

 クバルのように、がんじがらめにされて、手足を引き千切られていたかもしれない。

 

 そういう事態を避けるには、絡み付いて来るであろう触手を斬るしかない。

 

 ダガーを両手に握ったまま、目を瞑った状態で相手の攻撃を頭に思い浮かべ、斬る動作を続ける。

 躱す。躱しながら斬る。払う。

 

 まだ霧の立ち込める宿営地の門の前で、私は黙々と素振りを続けた。

 全くのシャドウだが、あの速度を出せる練習相手はそうそういないだろう。

 

 そうやってダガーの練習を続けていると、鐘が鳴った。

 

 男衆が出てくる。

 

 ズルシン隊長とスラン隊長に続いて、エボデン隊長代理。

 そして他の隊員たち。

 

 「おはようございます」

 「おお。おはよう。今日もいつにもまして剣の訓練に熱が入っとるな。ヴィンセント殿は」

 どうやら、遠くから見ていたのだろう。

 スラン隊長は何時ものように、軽く頷いただけだった。

 

 そしてエボデン隊長代理は、ややぎこちなく挨拶を返してきた。

 「おはようございます」

 

 まあ、私のほうが階級上なので、やりづらそうだな。

 「エボデン隊長代理。今日は、よろしくお願いします」

 私がそう言ってお辞儀をすると、更にぎこちなく向こうもお辞儀だった。

 

 「おーい、エボデン隊長代理よ。昨日も言ったが緊張しすぎだ。もう少し肩の力を抜けよ」

 そう言ったのはズルシン隊長だった。

 

 隊員たちを確かめて、陶芸ギルドの粘土採集担当の人たちが来るのを待つ間に、ズルシン隊長とスラン隊長は出発していった。

 

 暫く待つと、リヤカーの一団が来たので出発する。

 粘土採集場に向かう途中も霧は晴れなかった。

 

 石畳で舗装された道を全員でゆっくりと登っていく。

 濃霧で視界が悪く、何が飛び出してくるか分からないからだ。

 

 そこいら中が濡れているので、滑りやすく足元に注意して歩くのが大変だった。

 

 粘土採集場近辺には、まだ霧がだいぶ残っていて見通しは悪かった。

 

 現場に到着。

 

 暫く作業の準備などを眺めていたが、霧の漂う現場で陶芸ギルドの人たちは採集を始めた。

 私はエボデン隊長と粘土採集場の横の森に入る。あの時に出会った赤い目の魔獣がいるのか、いないのか、確かめておかないとならないからだ。

 

 山中の森には濃い霧が漂い、視界は全く効かない。

 

 「エボデン隊長、すみませんが、私が、先行します。後ろに、いてください」

 彼を見上げてそう言うと、エボデンは頷いた。

 

 こんな状態で、あの樹木のオブニトールと鉢合わせしたら、確かに犠牲者は沢山出るだろう。スラン隊長は過去に七人が犠牲になったと言っていた。

 出会い頭だと言っていたから、そこにいた多くの隊員が()られたという事だ。

 擬態して待ち伏せていたというので、樹木なのか魔物なのか気配が分からなければどうにもならないだろう。

 

 そんな事を思いながら、ゆっくりと奥に進む。

 動物の気配が全くしない。

 「動物が、いませんね」

 私が振り返り、仰ぎ見ると、彼も渋い顔をしながら頷いた。

 「動物がいないのは、()()がいるという事だろうね」

 彼はぼそりと呟いた。

 

 私も頷いて、さらに慎重に前に進む。

 

 ……

 

 暫くすると背中に僅かに疼く感じがする。

 森の中を更に奥にいくと、背中のぞくぞくする感じが大きくなってきた。

 「エボデン隊長。何か、います」

 私がそう言ってしゃがむと、彼も軽く頷いてしゃがんだ。

 私は左掌を地面につける。どっちに居るのだろう。

 

 霧が次第に薄くなって行く。

 

 霧の中、様子をうかがう魔獣がいた。それは一つ目の大きな馬のような鹿のような獣だった。

 体長は四メートルを越えているか。毛並みは紫。

 足が長く、体高は背中部分でも二メートル越えている。やや長めの首があり、頭の上の角のてっぺんまでなら四メートルは余裕で越えているだろう。

 

 顔には大きな一つながりがりの赤い複眼の目。迫り出した形のその目は大きな菱形で左右に大きく広がっている。やや幅の広い馬面の長い顔の鼻の上に付いている。

 目が一つしかない様に見えるが、あの複眼は左右が見えていない訳では無い。

 あの複眼は恐らくかなりの数があり、左右に行くに従って恐らくは左右の端を見るように機能しているはずだ。

 

 よく見ると、中央も縦で左右二つに別れ、さらに左右に広がる複眼も中央とそれぞれの端とは別になっている。という事は一つに見えて、六分割されている複眼だ。

 真後ろまでは見えないとは思うのだが、左右の視野角は相当広いのは間違いない。

 恐るべきなのは、その膨大な視覚情報を処理している脳であろう。

 

 そして、躰は馬なのに二本のカリブーのような角が頭にある。赤くて大きい。

 角は根元の色は紫色から茶色になっていて、そこから上部が赤い色に変わっている。

 耳は左右にやや縦長のものが付いていた。

 

 魔獣は薄く霧が漂う中、身動ぎひとつしていない。

 

 そして、魔獣はこちらには来ない。

 じっとこちらを見ているだけだ。

 

 魔獣を見たエボデンは震え上がっていた。

 「そんな……。アジェン……デルカ……」

 エボデンは絶句した。

 

 あれは、どうやら怖い魔獣であるらしい。

 

 ……

 

 エボデンはいつの間にか、まるで金縛りにでもあったかのように固まっていた。

 

 ……

 

 「ヴィンセント、殿。あれは…あれは…あの角が、得体の…知れない力を持って、いるのです」

 振り絞るような声で彼はやっと喋った。

 あの赤い角から、なにか目に見えない特別な力がでて、立ち向かうものは吹き飛ばされるという。

 アジェンデルカというらしいが、あの魔獣がどのくらいの力量なのかは剣を交えないと判らない。

 

 「あの目が……、色が……、変わると……、誰も助からない……」

 「黄色に……、変わったら、……誰も、誰も助からない……」

 「動けなくなるんだ。そして、あれのなすがままになる……」

 

 あの村の外で出会った、お(ばば)の云う地獄のズベレフは三つ目だった。

 そして額の目に見つめられ、自分の体が自分の思い通りには動かなかった。自分のダガーで危うく自分を刺す所だったのだ……。

 ()()と同様の能力を持っているという事だろう。

 

 魔獣は暫くこちらを見つめていたが、目が黄色になる事はなかった。

 

 ((……()ね))

 唐突に私の頭の中に声が聞こえた。

 魔獣が喋る訳がないのだが。

 

 ((どういう事))

 

 私が立ち上がると、またしても頭の中で声が響いた。

 

 ((さっさと、ここから、去ね……))

 

 粘土採集場の森の奥で出てきたソレは暫く私を見つめていた。

 目の色がまだらに変化していた。それからまるで虹のように七色に変化して、流れるように色が変わっていたのだった。

 

 暫く睨み合いになったが、魔獣は急に森の奥に振り返るや、またしても私の頭の中に話しかけて来た。

 ((警告、した。さっさと、去ね))

 

 魔獣はゆっくりと歩き、森の奥に消えた。

 

 ……

 

 ……

 

 魔獣が去ったあとのエボデンの顔は真っ青だった。

 「顔色、悪いですよ」

 私がそう言うと、エボデンは慌てて平静を装おうとしたが、手が震えていた。

 今まで、魔獣の様な物たちが喋る事は無かった。いや、会話が出来る事を私は想定すらしていなかった。

 

 だが、村に来たあの高貴な貴族の男性はともかく、魔族であろうか、あの樹木のお(ばば)もまた、直接私の頭に語りかけて来たのだ。

 他の生き物が()()が出来ないと決めつける理由はナイ。

 

 そう、ここは異世界。元の世界とは違う。

 こんな生物がいるのだ。そういう意味では何だって有り得る。

 

 未だに真っ青な顔のまま、エボデンはようやく立ち上がった。

 「エボデン隊長。あの魔獣は、この辺りに、普通に、いる、魔獣では、なさそうです。どういう、魔獣、なのですか」

 私はエボデンの横に行くと、採集場へ帰り始めた彼に訊いてみた。

 

 「ヴィンセント殿。私も実物を見たのは初めてなので、どうか許してほしい」

 「あの魔獣に出会うという事は、死ぬか何かの啓示を受けるか、どちらかだと言われている。少なくとも、出会って生きて戻った者がいるから、姿の特徴が伝えられているのだが」

 「神でもないあの魔獣が出す啓示がどういう物なのかは判らない。私は今回の遭遇では、ただ姿を見ただけだった」

 

 「判りました。見て、生きて、戻れた事で、良しと、しましょう」

 そう言うと彼も頷いた。

 「他に、気配は、今の所、何もありません」

 そう言って、二人で採集作業場に戻る。

 

 「ヨラン副長、こっちは大丈夫だ。なにかあったか?」

 「いえ、こちらはいつも通りです。ですが、エボデン隊長代理。顔色がよくありませんが」

 私はエボデンを見上げる。彼の顔色はまだ悪いままだった。

 

 「大丈夫だ。少し調子がよくないだけだ」

 エボデン隊長は左手で口を覆うと俯いてから目を瞑って、少し大きく開いた掌をくしゃくしゃ動かして、顔全体を手で撫でまわした。それから手を下ろして表情を引き締めた。

 

 さっきよりは、顔色はよくなっていた。

 

 ヨラン副長と呼ばれた男はこれまた長身で、二メートルは少し超えているだろう。

 長く伸びた尖った耳が顔に精悍さを加えていて、整った顔立ち。

 彫りの深い顔でやや日に焼けたような肌。鼻筋がスッキリと通っていて、やや長い。

 髪の毛は金髪のようにも見え、目は薄い紫。

 何方(どちら)かといえば、元の世界なら耳はともかく、北欧の人々の肌がすこし日焼けしたらこんな感じかもしれないと思わせる顔立ちだった。

 

 こういう顔立ちは、ここの作業員の人たちとは大きく異なる。

 作業員の人々はやや鼻が低い。中には丸い鼻の人もいる。耳も尖ってこそいるが、それほど長くないのだ。つまり、種族が違うのだろう。

 

 暫くすると、軽やかな鐘の音が鳴り響いた。

 昼食の時間だ。

 隊長たちと小屋に急ぐ。

 

 小屋の中にはもう、粘土採集していた作業員たちが戻ってきていて、彼らはお茶のような物を飲んでいた。

 

 そう言えば、魚醤工場近辺の警邏では昼食休憩はなかった。

 これはあくまでも、他のギルドの作業員たちの為のものなのだ。

 

 ここにしろ伐採場にしろ、他の作業員たちと一緒だから食事がとれるのだな。

 お昼は何時ものように、燻製肉を火で炙ったものが、木皿の上に載せて出された。

 

 「いただきます」

 手を合わせる。

 

 全く同じ何時もの味だと思って食べてみると、味が違っていた。

 どんな香辛料なのか、この異世界の事だから想像もつかないのだが、明らかにちょっとピリッとした味を付けている。

 毎日毎日同じだと、流石に旨味が有っても飽きるだろうから、こういう味が加えてあるのだろうか。

 

 旨味の中にある、ちょっとピリッとする味を堪能した。

 

 手を合わせる。

 「ごちそうさまでした」

 

 革袋の水を飲んで、少し休憩である。

 

 昼食の後、午前中とは反対側の森に行ってみる。

 エボデン隊長はヨラン副長と場所を交代。隊長は、採集作業の人々の安全のために、付近の監視。私はヨラン副長と西側の森を歩く。

 

 西側の森は深い霧の中、不気味なまでに静まり返っていた。

 

 しかし、魔獣の気配はさっぱりなかった。

 

 この日は、夕方まで何もなく終わった。

 

 宿営地に戻り、夕食である。

 

 夕食は魚の塩干しに魚醤のタレを掛けて焼いたものと、燻製肉の薄切り、黄色い葉っぱのサラダらしきもの。麦っぽい穀物の入ったスープ。これはお粥だろうか?

 

 「いただきます」

 手を合わせる。

 

 いつもの硬いパンではなく、お粥っぽいスープは、主食らしい。

 男衆はお代わりを頼んでいた。

 麦っぽい穀物のお粥らしきものは、塩味のみかと思ったら香りはほとんどしないが魚醤で味付けがしてある。

 

 魚のほうは、頭がないのでどんな魚なのかは、よく判らない。鱗も取ってあるようで、魚の肌は滑らかだった。背骨はやや硬い。

 それを腹から開いて塩を揉み込んで、干したものを魚醤を塗ってから焼いてある。

 干物にタレを付けて焼いた訳だ。十分に旨味が出ている。

 

 相変わらず、塩分はやや多めだが。

 そう、塩分は多めだが。

 

 しかし、いい味なのは変わらない。

 

 手を合わせる。

 「ごちそうさまでした」

 

 ここの料理人はやはり腕がいいのだ。

 大抵の場合、昔の西洋の物語で出てくる調理場など、修羅場で恐ろしく(かまびす)しく、混沌とした状態で作られるというのが相場なのだが、この料理を出す調理場はきっとそういう事も無いのだろうな。

 

 今日も料理を堪能した。

 

 トレイを持って配膳する人のいる場所に置いておいた。

 

 さて、娯楽棟の方に行き今日の報告会に参加する。

 

 赤い目の獣は、どこにも出なかったようだが。

 エボデン隊長代理がアジェンデルカが出現した事を告げると、そこに居た一同、響動(どよめ)いた。

 皆、何かを口々に喋っている。早すぎて私には聞き取れない。

 よほどの事なのだろう。

 

 戸惑っている私を見て、スラン隊長が口を開いた。

 「この山の新しい(ぬし)は、どうやらアジェンデルカになったようだな。君はエボデン隊長代理と共に()()を目撃したという事になる」

 「なぜ、二人に御神託も何もなかったのかが気になるが」

 

 「あの魔獣は、何かの、神の使い、ですか?」

 私は訊いてみた。

 

 「ああ、山にも神様がいる。その直接の使いという事だな」

 「普通は、山神が我々に何かを伝える必要がある時以外は、姿を現さないのだ。不用意に近づけば死ぬ事になる」

 そうか、エボデンは震えていた。何か向こう側の事情がない限りは、我々の前に出てこないし、用事もないのに見かけてしまえば、命を落とすという事だな。

 

 「以前の、(ぬし)は、違う魔獣、だった、のですね?」

 「まあ、やたらと凶暴なモノがいたのだ」

 そう言ってズルシン隊長が会話に加わった。

 

 「山神の使いは、普通は山に災害が起こりそうな時に、知らせてくれるのだ。あるいは、山の方で何かが起こる時に、我々に山に入らないように警告する。山神の意思で我々にソレを伝えてくるので、御神託という事になる」

 

 「ただの挨拶で出会うなど、儂はこれまで聞いた事もない」

 そう言ってズルシン隊長は私を見下ろしていた。

 スラン隊長も腕を組んだまま、なにか考え事をしているようだった。

 

 その日の報告会はこれでお終い。

 明日はお葬式があるので、体は洗っておこう。

 

 一度部屋に戻ってから、周りを確かめてお風呂に入る。

 

 身体と頭、あとは腕と脚をよく洗う。

 湯船に入って、立ったまま、湯船の縁に腕を置いて顎を乗せ、少し考える。

 

 魔石のお守りを持っていたから、あの白い獣が来て、あの複眼の獣も来たのだ。

 たぶんどっちも、魔石のポーチが無ければ、来なかったはずだ。

 そして、あのアジェンデルカとかいう魔獣は、態々私の頭の中に思考を送ってきたのだ。さっさとここから去れ。と。

 

 ズベレフの魔石は、私にとってはお守りだが、この山では色々と不都合らしい。

 つまり山の力関係に、歪をもたらしたのだ。

 その事が分かっただけでも、あの警告は意味があったのだろう。

 

 私はこれからの警護任務では、魔石のポーチなしでやるしかない。

 私の匂いで、魔物がどれほど出ようとも、だ。

 

 目を閉じると、少し溜息が漏れた。


 お風呂を出て部屋に戻り、つなぎ服と下着を持って井戸端に行き、丁寧に洗う。

 空は曇っていて、月明かりもない。

 

 そして相変わらず、蝋燭の灯りは頼り無げだった。

 

 

 つづく

 

 魔獣は、マリーネこと大谷の頭の中にのみ、警告を残して去って行った。

 山神の使いだと言う魔獣が現れた事で、山の警邏隊に動揺が走った。

 そして明日は、葬儀である。

 マリーネこと大谷はお風呂に入って十分に洗い、明日の葬儀に備えることにしたのだった。

 

 次回 宿営地での葬儀

 マリーネこと大谷は黒い服を持っていない。

 そこで、自作した服の中から選びだしたのは、濃紺のケープを纏った白いブラウスと濃紺のスカートであった。

 葬儀が行われ、昼食のあと支部長はギングリッチ教官を隊長に任命する


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