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101 第15章 トドマの港町 15ー8 山での警邏任務2

 朝の鍛錬をして、門に集合。

 伐採現場に赴くマリーネこと大谷。

 まず、初日は作業の見学。

 101話 第15章 トドマの港町

 

 15ー8 山での警邏任務2

 

 翌日。

 まだ日が明ける前に起きる。いつもの事だ。

 この大きなベッドはふかふかだった。

 取り敢えず、ネグリジェ姿のまま、ストレッチ。

 そして柔軟体操だ。

 何時もの服に着替えて、空手と護身術。

 

 水を飲んで、それから水のかなり入った(かめ)を持ち上げて、井戸まで行って、横にこぼし、水を入れなおす。周りはまだ寝ているだろうから、静かに。

 共同生活だと、こういう部分に気を遣う。

 

 甕をテーブルに置いたら、剣のベルトを付けて、渡り廊下を横切って、空いている場所にいく。

 まずは一礼。半歩踏みだして、この私にとってはロングなミドルソードを抜く練習だ。

 立ち居合抜刀を一〇〇本。そこから正眼に構えて打ち込む。これも一〇〇本。

 右八相から、正面下段に打ち込む練習。手を入れ替えて左八相も練習する。次は下段から上段へ払う練習も行う。

 そうしていると、周りは明るくなってきている。

 

 部屋に戻り、ベルトにブロードソードをつけて、ダガー二本も付ける。

 魔石の入ったポーチを袈裟懸け。コインを入れた小さいポーチも肩から掛ける。

 ミドルソードは大きな鉄剣の剣帯に結び付けた。これは置いていこう。

 水の革袋とロープ、タオルを入れて、小さい革袋にナイフもリュックにいれて背負う。

 最後に、銀の階級章。忘れてはいけない。首にかける。

 

 そして外に出ようとした所で、他の部屋からも女性たちが出てきた。

 例の玉ねぎ色の髪の毛の人たちが、ややゆったりとしたワンピースを着ている。

 ショートの人もいるが、セミロングの髪の毛の女性に混ざって、ロングの髪の毛の彼女たちを初めて見た。

 ここの『お仕事』に付いている彼女たちの髪の毛は、他の街で見た誰よりも長かった。

 

 そうか。……気が付いた。

 街の彼女たちはあえて、いつも短く切っているのだ。

 

 たぶん、いつでも王国の槍になれるように。そういう事だろう。

 そういう意味では、一件だらしない遊び人に見えて、彼女たちこそが常在戦場なのかもしれない。こっそり訓練だってやってるかもしれない。

 

 ここの女性たちは、すぐには槍にならない。髪の毛を落とす時間はある。という事を意味していた。つまり、第二陣とか第三陣かもしれない。或いは軍団兵が減ってしまった場合の補充要員かもしれないな。

 

 「おはようございます」

 私が頭を下げると、彼女たちも笑顔でおはようと言うと、どんどん娼館のほうに向かっていった。

 彼女たちが今日、『お勤め』の日か。まあ、こんな早くに来る人はいまい。

 向こうに行って、着替えたりなんだり有るのだろうな。

 

 私は、入口の門がある所まで歩いて行く。

 

 門の所にはまだ、誰も来ていない。なら、それはそれで。門番の人に挨拶。

 二人から挨拶と笑顔が返ってきた。

 

 私は一応門番の二人に断ってダガー二本を抜き、この二本のダガーで護身術と、カウンターの練習をする。空手の突きと手刀をダガーに置き換えた動き。

 そこに護身術の動きを入れていく。相手の剣の突きを躱してカウンターを決める練習だ。尤も、相手がいないので、相手の突きは全て脳内イメージによるシャドウだが。

 

 あの暗殺者の二刀流は縦横無尽だった。あれを思い出す。

 

 未だに脳裏に刻まれている、あの最後の二人の剣。

 手が伸びたあの男の二刀流も激しかったが、最後の黒服の剣捌きは速過ぎた。しかし、暗殺者の上位者たちがあの腕前なら、今後も激突する可能性がある彼らの剣に対抗できるようにしなければ。

 あの腕を斬った男がいつ仲間と共に報復に出るかは判らないのだ。

 

 あれを越える等とは、烏滸(おこ)がましくとても言えたものではないが、せめて互角にならなければならない。

 その為には、日々の鍛錬である。積み重ねていくしかない。

 

 そうしてダガーを振るっていると、乾いた鐘の音。四回。少し間があってまた四回。

 男衆の集合住宅から、冒険者ギルドのメンバーが出てきた。

 ズルシン隊長と他のメンバーだろうか、固まって歩いてくる。

 その後ろにカレンドレ隊長。あの逆立ったような髪の毛ですぐに分かる。

 その一団の後ろにスラン隊長だ。粘土採集の警護だったな。

 

 「ズルシン隊長様。おはようございます」

 深いお辞儀。

 「おはよう。早いな、ヴィンセント殿。それと、様は付けなくていい。君と儂は同じ階級だ」

 そう言って笑った。

 「それにしても、遅刻を嫌って早くに来て剣の練習か?」

 ズルシンは上から見下ろしながら、私がさっきまで練習していたのを指摘した。

 「朝の鍛錬は何時もの事ですから、何処でやっても同じです」

 「ほう。殊勝な心がけだな」

 大男は豪快に笑った。

 

 「隊長、全員揃っています」

 「よし、全員縦列。現場に行くぞ。儂に続け」

 「植樹の隊はカナルが隊長か」

 ズルシンが大声だった。

 「樵ギルドの連中を待っていてやれ。一緒にいけ」

 「了解しました」

 カナルと呼ばれた男が返事して数名が待機した。

 「儂らは先に現場に行って付近を警邏しながら待機だ。何時ものようにな」

 見ていると、スラン隊も待機のようだ。まだ出ないらしい。

 私は殿(しんがり)で、ついていく。

 伐採場内で、私がこのお守りをしている限りは、魔物たちはいきなり飛び出しては来ないはずだ。このお守りが効いている限りは。

 

 ……

 

 一列縦隊で伐採現場到着。

 

 着いてそうそう、ズルシンに呼ばれた。

 「ヴィンセント殿、こっちに来なさい」

 「今日は儂の横に居て、周りを見学するんだ」

 

 辺りを見回す。不思議な伐採の仕方だった。若い木々が植えてある横は切っていない列がある。一五本近く切ってない列を飛ばして、そのお隣から、伐採していてそこから一五本近く先、また若い木々が植えてある。

 

 そして所々、切ってない樹木がある。等間隔なのかと思えば、所々、イレギュラー的に残されている樹木があるのだ。

 

 「不思議な、伐採方法、ですね。しかも、不自然に、残された、樹木も、あります」

 ひと通り見てからそう言うと、ズルシンが上から私を覗き込んだ。

 「ほう。あの残してある樹は、お主は何だと思う?」

 「判断、できる、材料は、少ないですが、残して、いるのは、土砂が、流れない、ようにする。または、貴重な、樹木の、どちらか、です」

 まあ、見た感じで判断してそう言うと、ズルシンは言った。

 

 「噂では頭も廻るという事だったが、なるほどな。あの変な位置に残している樹木は、王国のあの女共が、ああいった香りのする樹木は絶対に切るなと厳命しとるんだ。理由は判らんがな。それと等間隔で残している樹木は、お主の言う通り、雨が強く降った時に土が流れてしまうのを防ぐ。ああやって残しておくと、それでも土が流れにくいと言うとったわ」

 「判りました」

 そうは言ったものの、あの残し方はよく分からない。でもかなりの歴史があるのだろうから、経験に裏打ちされている残し方なのに違いない。

 

 「とりあえず、あそこの伐採が終わったら、抜根作業をやって場所はかなり西に移動する。まだ何日かはここだ」

 「一気に広く伐採しちまうと、雨が降った時に植えた若い苗木ごと、流されてしまうんだ」

 「そんなに、雨が、降るんですか」

 「ああ、時々な」

 

 ……

 

 樵ギルドのメンバーが到着して、彼らはまずお皿をあちこちにおいて、あの渦巻に火をつけた。虫よけの香を焚いてから、作業開始のようだ。

 

 四人が木を切り始めた。一人が上を見ている。

 二人ずつ交代で斧を入れていく。斧を入れて切った場所に、その斧を差し込んで、何本も残し、反対側も斧で切り込みを入れた。男たちは差し込んであった斧を抜いて、しばらく見ているとゆっくりと、やや坂になっている下の方に木が倒れた。

 男たちが一斉に飛びついて、上の方の枝を落としている。

 

 ギルドのメンバーが、その倒れるのと反対方向に四名。彼らは見守っているだけだが。

 そこから一〇メートル少し越えた長さに切って二つにした。全長は二〇メートルくらいの高木である。

 八人の男たちが玉切する前の木を一本運び始めた。冒険者ギルドのメンバー六名が護衛に入る。

 

 私はそれを見送った。

 

 木は四か所で切られているので、程なくして他の三か所も木を運んでいった。

 暫く見ていると蒸し暑くて、汗だくになってきた。

 

 「私は、少し、警邏を、しますね」

 ズルシン隊長にそう言って、木々の中へ。森の中も湿度が高く、あまり涼しくはない。

 すこし周りを見回す。下生えは刈り取られているので、雑草が少しあるだけ。

 

 本来、こういう所で気を付けるべきは、蛇と毒を持つ昆虫、(あぶ)やブヨ、あとは吸血性の(ひる)や蚊、或いは蜂だ。

 それと、下生えが刈り取られているからといって、安心するのは早い。

 こういう場所で、ヘタに刺激して飛び出して来た蛇にガブリと咬まれる。というのは山歩きでよくあるケースだ。

 

 湿気た木々の表面を這っている虫たちは小さい。形容しがたい虫も結構いるが、大概は小さい甲虫や蟻の仲間だろう。

 

 木々は、ほぼ等間隔に植えてある。それで奥の方もそこそこ見えるのだ。

 

 木を切っていたグループは、少し下の開けた場所で休んでいる。その周りに冒険者ギルドのメンバーが樹木の脇に座っていた。

 

 背中はまだ反応なし。私が居て匂いは出ているから、遠くで私を見ている魔物が出てもおかしくないのだが。

 

 森の奥は、不気味なまでに静まり返っていた。

 

 不自然な気がした。とはいえ、出ないなら出ないで、そのほうがいい。

 このお守りを無視して向かってくるなら、()らねばならない。私も出来れば無用な殺生はしたくないのだ。

 

 見ていると、さっき運んでいった男たちが、護衛と共に戻ってきた。

 すると、先ほどまで座っていた人たち五人が、立ち上がって、切った残りの半分を持ち上げていく。そこに先程まで運んでいた三人が加わった。そして八人で運び始めた。

 ロープを掛けてあるとはいえ、相当な重さに違いない。彼らもかなりの力持ちなのだろう。

 

 護衛のメンバーは、そのまま休む事なく、下へ向かって行く。

 今やってきた男たちは少し休むと、今度は彼らが木を伐り始めた。

 交代という事か。

 

 そんな作業を見ていると一人のメンバーが小さな鐘を手に持って鳴らし始めた。

 乾いた鐘の音が辺りに鳴り響く。

 

 運んでいったメンバーたちが戻って来ると、そこで休憩。

 どうやらお昼の休憩らしい。

 

 四人が革の袋を背負ってやってきた。

 彼らの背中の袋に入っていたのは、燻製肉。

 一か所に二三人の作業員と護衛メンバーがいる、その人たちへの食料であった。

 護衛メンバーは、交代で食事。

 

 私も、食べるように言われてズルシン隊長の横に座った。

 「いつも、こんな、感じ、ですか?」

 「ああ。今日は天気もいいし、雨も無い。ここ数日は魔物共が騒いでいない。穏やかだな」

 そう言いながら、彼は燻製肉を大きく切って頬張った。

 「マリーネ殿も、しっかり食べろよ」

 

 そうか、食事は全て配給なのか。まあ、夕食も食堂で食べた時に料金は払わなかった。

 護衛の我々の食事は樵ギルドや鉱山ギルドから無料で支給されているのか。

 或いは、冒険者ギルドの方から一括で支払ってあるのかもしれないな。

 

 燻製肉の味は、もう食べる前からなんとなく予想はついていた。

 魚醤の味付けでかなり濃い。塩分も多め。まあ、肉体労働の彼らに合わせた味付けであろう。それが不味いのか、といえばそうではない。好みの味付けになっている。ただ塩分多め、というだけだ。

 リュックから水の入った革袋を出して、少し飲む。

 

 休憩が終わると、再び作業開始。男衆は大きな木に集まっていた。

 

 午後もそんな感じで作業が進む。

 

 ……

  

 魔獣の気配はないが、森のほうに目を走らせているとズルシン隊長が言った。

 「ヴィンセント殿、このあたりの地形、特に坂を見ておくんだ」

 「はい」

 「雨が降った時に、見回りが必要になる。危険そうな場所を確認しておくのも仕事だ」

 そういって、ズルシンは私を見た。

 「君の場合は他の者たちと身長が違う。掴まれる場所なども違ってくる。故に、他の連中の助言が、君の場合あまり参考にならない。そこは注意しておいてくれ。儂から言えるのはそれくらいだ」

 「ありがとうございます」

 

 あの杭は何だろうか。木々の間に所々、大きな杭が横に並んで二本か三本打ち込まれている。

 「ズルシン隊長。あの、杭は、何でしょうか。木々の、間に、ある、杭です」

 

 「ほう。何だと思う。予想を言ってみてくれ」

 「土留め、にしては、横板が、ありません。それに、数が、少ない、ですね。あれで、土砂を、止めるのは、難しそう、ですが」

 そう言うと、ズルシン隊長は、微笑した。

 

 「あれは、行けば判るが、大きい杭には数字が彫ってある。土砂崩れしている場所を見つけた時に、その場所から近い杭の数字を報告すればいい。事務所には大きな地図があってな。数字が振ってある。その報告だけで場所がわかる」

 「なるほど。よく判りました」

 

 「それと、大雨で川のようになってしまって、土がえぐれてしまった場所なども、近くの杭の数字を報告するんだ。事務所で其処を記録して後で治す。そういう見回りも儂等の役目だ」

 ズルシンは周りを眺めながら、そう言った。

 「それも、現場、判断の、任務、ですね。判りました」

 

 どの程度の雨が、いつ頃降るのかは全くわからないのだが、雨は結構降るらしい。

 まあ木の年輪を見ると、間が詰まっていない。かなり年輪が少ないのだ。かろうじて年輪があるので、気温の変化が僅かながらあるという事だろうけれど、高温多湿で雨ざーざー、といった感じの季節というか、期間がそれなりにあるのだろうな。

 

 その日は何事もなく、夕方となって現場から下の宿営地に戻った。

 門まで降りていくと、鐘の音がなっている。

 人が多い。

 

 夕食の時間だが、どうやら今日は鉱山の人たちの三日に一度の休みの日だったらしい。

 酷く混んでいるので娯楽室で待つ事にする。

 暫くすると食べ終えた人たちが、どんどんこっちに入ってくる。彼らはボードを取り出して、白い丸い駒と黒い丸い駒を、あちこちに置いた。それからサイコロだろう、六面体で出来ていて、各面に記号がある。あれが数字だっけ……。あれを振って、動かすのだろう……。

 

 どう見てもバックギャモン(※末尾に雑学有り)だが、駒の数が多いのかもしれない。

 私はバックギャモンも詳しくはない。ルールは友人に教えられたが、齧った程度の腕前でしかない。

 

 見ていたが、ルールは分からない。ゲームはどんどん進んでいくようだが。

 彼らは麦酒を飲みながら、ダイスを転がし、その目によっては見物人からも歓声が上がる。

 

 私は遠目に眺めるだけにした。

 

 ……。

 

 どうやら空いてきたらしいので、食堂に行く。

 

 この日は、硬いパンと味の極めて濃いスープに、味の濃い魚の煮付けと魚肉団子。あとは黄色の葉っぱが入ったサラダ。

 

 考えて見れば、気圧が高いので必然的に若干だが加圧された状態の煮込みになる。

 煮込んだ料理がしっかり味が染み通っていい味なのは、そういう事だろうな。

 

 硬いパンを千切って、濃い味のするスープに浸して食べる。

 魚肉団子は固くもなっておらず、口の中で噛みしめると、魚の旨味が魚醤とともに感じられた。

 この魚の煮付けの味も、十分にいい味がしていてこの食堂の食事には満足した。

 腕のいい料理人が雇われているのだろう。

 

 部屋に戻ると、部屋の前に箱がおいてあって、かなりの蝋燭が入っていた。

 どうやら、蝋燭が配給されたらしい。鍵を開けて部屋に入って蝋燭に火を灯す。

 

 お風呂に入るべきかは、迷うが服を着替えるだけにした。

 とりあえず、ネグリジェに着替える。

 

 夜のうちにいつもの服とシャツを洗う。井戸の横でしっかり洗って、部屋の中にロープを渡してそこに干した。

 何処かに干し場があるのかもしれないが。

 

 さて、どの服を明日来ていくべきなのか、迷ったがつなぎ服にしよう。

 きれいな服を着ていって汚すよりはマシだ。

 

 この日の夜の時間は植物図鑑らしい本を読み、判らない単語を辞書で調べるのに当てた。

 蒸し暑い夜だった。

 外はかなり曇ってしまって、今日も星空は見えなかった。

 

 ……

 

 

 つづく

 

 

 ───────────────────────────

 大谷龍造の雑学ノート 豆知識 ─ バックギャモン ─

 

 バックギャモンは世界四大ゲームの一つといわれている。

 チェス、トランプ、ドミノ、バックギャモンである。

 

 バックギャモンの歴史は古く、亜種も多い。

 

 そもそも、古代エジプトの遺跡から一〇升三列の盤が多く発見され、これがバックギャモンの元祖ではないかと考えられた。

 古代エジプト人にとって三〇升のゲームを意味する「セネト」と呼ばれるゲームで、その正確なルールは分かっていない。これの亜種、又は変種も多く存在していたらしい。

 

 これが紀元前三〇〇〇年頃の話である。

 しかし起源はさらに古く、古代メソポタミア文明に遡るともいわれており、どの程度昔からあったのかは定かではない。

 恐らく世界四大ゲームの中で最も古いゲームであろう。

 

 これは現代のバックギャモンとはゲーム盤はかなり異なる。

 

 古代のエジプトやギリシャ、ローマ、そして古代エーゲ海文明でよく遊ばれていた事は分かっている。

 

 古代ギリシャでは「グラムナイ」というゲームだったらしい事も分かっている。盛んに行われたゲームらしい。

 古代ローマでは、「ルドゥス・ドゥオデキム・スクリプトルム(意味は『一二本の線のゲーム』である)」と呼ばれていた。

 このゲームは古代エジプトの一二升三列のゲーム盤を使う「セネト」の一種が元になっており、三つの六面体ダイスを使ったらしい事は分かっているが、ルールの詳細は不明である。

 これは後に、中央の一列を省いて一二升二列のゲーム盤に変わったという。

 これによりバックギャモンの現在の原型が出来たと考えられている。

 

 

 バックギャモンはダイスを使いつつも、単なる双六ではない。極めて戦略性の高いゲームであり、如何に先を計算して読んで駒を進めるかが、キモである。しかしダイスゆえの不確実性がある。

 

 それ故に、こうした知的ゲームを古代のエジプト人やギリシャ人、ローマ人が好んで遊んだであろう事は想像に難くない。

 

 現代のルールになったのはずっと後の事である。一七世紀初頭の頃にルールがあれこれ変更された上で統一されてヨーロッパに広まったといわれている。

 それよりは前の欧州ではタブラと呼ばれ、それが後にバックギャモンの名称の一つであるトリック・トラックという名称で遊ばれるようになる。凡そ、西暦一〇〇〇年前後の頃の事である。

 このタブラは古代ローマ帝国のバックギャモンがそのように呼ばれており、ローマ帝国の拡大に伴い欧州各地と英国にもたらされた物である。

 ボード上に単独で止まった駒を攻撃できるルールがあった。

 

 変種ルールも多く存在する。三人、四人で行う物や各国で独特のローカル・ルールを実装した物がその殆どであった。

 このゲームは中世においてヨーロッパの各地域において盛んにプレイされ、酒場で大流行した。

 しかし、一五世紀になるとチェスが登場し徐々に勢いを失うが、この手のボードゲームの殆どが賭け事の対象であるように、その加熱する賭け事を禁止する権力者により衰退させられていく。

 一六世紀末になるとイングランドでは公共の場でプレイする事が禁じられた。

 その後、一八世紀も後半になると一部の国を除き、殆ど遊ばれなくなり、ボードゲームの主流はチェスになって行く。

 

 バックギャモンは第一次世界大戦の前にまた復活する。

 しかし、二〇世紀の中頃には再び衰退。

 しかし中東諸国では欧州で一般的な名称であったトリック・トラックが遊ばれるようになった。

 ゲームそのものはバックギャモンである。

 

 現在のルールでプレイされるようになったのは一九六〇年代に入って米国での事である。ここでルールも現代のバックギャモンとなり、改めて世界に普及した。

 日本に入ってきたのは一九八〇年代初頭のボードゲームブームの時である。

 多くの海外製ボードゲームの一種として輸入され、徐々に人気を博し今や世界中の中でも強い強豪国となった。

 

 現代のバックギャモンはボードには二四升に三角形が描かれていて、六個ずつの部分が一塊となって四分割されている。駒は白黒、共に一五個。

 使うダイスは二個。基本的にはこの駒一五個を全てゴールさせる事である。

 ゲーム所要時間は五分程度から三〇分程度と短い。

 公式戦は紳士のゲームという事になっているために、特にマナーが求められる。

 

 一見すると駒が多いだけの双六であるように見えるが、特別ルールが数個あり、ルールはシンプルながら意外と奥が深い。高い集中力と計算、推理力が求められるゲームである。

 

 湯沢の友人の雑学より。

 ───────────────────────────

 

 初日は何事もなく、1日が過ぎて行ったが、伐採場は不気味なまでに静まり返っていた。

 何かの不自然さを感じ取るマリーネこと大谷。

 ここの宿営地の食事は、工夫がされているようで満足している大谷であった。

 

 次回 山での警邏任務3

 2日目は粘土採集現場へと向かうマリーネこと大谷。

 そこでスラン隊長に剣の素振りを見せるマリーネこと大谷であった。

 

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