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100 第15章 トドマの港町 15ー7 山での警邏任務

 マリーネこと大谷は、初めてこの鉱山村の共同食堂での夕食を馳走になる。

 そして、冒険者ギルドのリーダーたちに会うのだった。

 

 100話 第15章 トドマの港町

 

 15ー7 山での警邏任務

 

 ヨニアクルスの案内は全て終ったらしい。

 

 「取り敢えず、ヴィンセント君が見ておかないといけない物は全て、見れたはずだ。魚醤工房警邏のカレンドレ以外は顔通しも済んだ。鉱山の入口の警護は鉱山ギルドとの取り決めで、専任者が入っている。あっちは考えなくていい。私は港の事務所に戻るが、君は夕方の食事が大食堂であるので、そこに出てくれれば、今後の君の予定が決まる」

 「分かりました。食堂ですね」

 「今日は案内なので、男どもが、君の部屋まで連れて行ったが、本来はあそこは男性は入れない。時間の合図はあるはずだが、迎えが来ないから遅れないようにな」

 「はい」

 

 私の当番が何処からなのか、それは今日の夕方の食事後で決まるらしい。

 ヨニアクルスは、それは警邏のリーダー三人が決めるといって帰っていった。

 

 一度、貸し与えられた部屋に戻る。

 鍵を開けて、中に入る。窓は通路の方に付いているが、基本的な構造は長方形で左右は壁だ。窓の上の壁に、小さな丸い穴が三つあって、其処には細かい網が張られていた。ここは暑いから、たぶん空気が通るようにだろう。

 

 荷物を置いた部屋が居間でやや広い。箪笥のような物が壁際に一つ。

 奥が寝室。私には大きすぎるベッドが置かれている。その壁も一部は窓になっていてカーテンが掛っている。

 カーテンを開けてみると外の景色が見える。

 

 トイレは共同で外にある渡り廊下の先。女性専用がある。ここからはそう離れていない。

 井戸も渡り廊下の先だが、その渡り廊下は目の前である。

 お風呂も渡り廊下の先にある共同浴場だ。女性陣は無料らしい。

 アグ・シメノス人と同じ扱いか。

 

 風呂は共同浴場か……。他の人と会いたくはない。

 他の人が居ない時に、こっそり入ろう。

 

 居間の床には敷物がしてあった。

 大きなソファーにはこれまた大きなクッション。

 とりあえず、その敷物の上にぺったり座る。

 ローテーブルの上には二本の蝋燭を刺す燭台が二つ。左右の壁にも同じ燭台が二つずつ。天井には明かりがない。

 

 小さい方のリュックを置いて、他の荷物を整理する。

 鉈とスコップ。これは警邏の時に使うのか、まだわからないが、リュックに括り付けられるようにするべきか迷う。

 こんなに綺麗に出来ているリュックに下手に手を入れるのは、(はばか)られた。

 

 裁縫道具は持ってきている。破れたりしたら縫わないといけないからだが。

 本や服を入れた革袋は横に置いた。

 

 居間のテーブルの上には大きな陶器の水瓶があった。横には柄杓(ひしゃく)と小さな陶器製の水飲みコップ。

 水は取り替えてあった。私がここに来るときに開いてたし、誰かが水を替えたんだな。

 二杯程、柄杓で掬ってコップに入れて飲む。

 まあ、これは朝に取り換えればいい。あの村では何時もの事だった。

 夕食が何時に始まるのかは分からないが、何かの合図があるのだろうか。

 

 荷物の整理を続ける。さて。辞書とか細々としたものはすぐに使えるように、テーブルの上に革袋を置いた。

 

 小さいポーチ。これにだいぶ魔獣の素材を突っ込んでいたが、これは全部魔獣の牙とか魔石を入れている袋のほうに突っ込む。

 処分してない素材が増えてしまった。処分する必要がある。

 アクセサリとかも、出来れば雑貨屋で売り飛ばしたほうがいいだろう。

 売れるならば、だが。

 

 コインは、革袋に入れなおす。トークンは盗まれても困るが、普段使うものでもない。だいぶ迷ったが、小さい革袋に入れて、大きなリュックにしまった。

 

 たぶん、ここで何か買う事は滅多にないだろう。

 

 大きいポーチは、いっそ開かないように縫い留めてしまおう。

 針と糸を出し、蓋の部分を慎重に縫い始める。もう魔石を入れっぱなしのお守りなのだ、これでいい。

 あまり派手に糸で縫わないようにして、目立たない様に縫いあげた。

 一見して開かないポーチなど、不審以外の何者でもない。人目を引きにくい様に、あくまでも控えめに。

 

 縫いながら少し考えた。

 ここの任務は街道の冒険者ギルドの人たちとは少し違うようだな。

 

 彼らは街の外で街道に出没する魔獣たちと戦っていた。森から降りてきて神出鬼没の彼奴等を斃すのは、やはり相当に大変だ。範囲も広い。

 ましてや、あの光るステンベレが八頭とか、災害級だな。

 

 だが、オセダールの雇った傭兵部隊はそれにも対抗する布陣を持っていた。

 研究と訓練の賜物だろう。

 

 それに対して、このトドマ支部は少し違うらしい。

 基本的にこの宿営地も含め、ギルドの設けた拠点は全て王国の護衛が出ている。人数に差はあれど。まあ鉱山から掘り出される物を処理するのに、色々他の生産ギルドもくっ付いていたほうが都合がいい。

 

 そして採集現場を警護、警邏するのが、我々の役目か。

 後、魚醤工房。あの臭いの状態では、あそこは大変だ。

 あの立地は、多分だが、湖のすぐ横に作れなかったのだろう。街が近すぎる。

 その上、北側は崖だ。そしてその崖の西側から北側に掛けて鉱山が点在する。あの位置しか無かったのだろうな。

 

 元の世界でもそうだ。豚などのかなり臭う畜産も昔は結構村レベルの集落の中にあったのだが、都市化が進むと()()()()()()()()()()()()()()()によって追い出されて行く。

 

 昔は村程度の所にあったニンニク加工場は最早、集落が近いというだけで猛烈な苦情が来て、追い出されてしまう。

 ヘタすると追い出されて、行く場所が無く小さな島に工場があったりするくらいだ。

 

 南風が結構吹く事を考えると、トドマより南側の湖岸を切り開いて工場を作るのも現実的ではないのだろう。風に乗ってあの匂いが全てトドマの港町にやってくるとか、住人はたまったものではない。

 

 そう考えると、この湖の北側の崖の上なのも仕方がないのだ。

 それ以上奥だと、魔獣の事や魚の運搬に問題が出そうだ。

 

 そして新人研修を兼ねた村の北側の魔獣狩りは、最重要という任務ではないのだな。

 その割に白金の二人がそれをやるというのが不思議だったが、手が空いていたのがあの二人で数名連れて実地研修という事だろうか。

 狩りの方は時々やって、数を減らしておこう程度の任務か?

 よく分からないな。何か取り決めでもあるのだろうか。

 

 ……

 

 そうこうしていると、乾いた鐘の音が二回鳴った。暫くすると、また二回。

 ドアを少し開けて顔を出すと、横に連なる部屋から玉ねぎ色の髪の毛の例の女性たちが、靴を履いてどんどん出てきた。やや髪の毛が長い気がする。見慣れたショートヘアではない。

 

 彼女たちはお喋りしながら、東にある細長い平屋の建物に向かっていく。

 平屋の建物の一番西に煙突が付いている。全く同じ建物が四つ並んでいる。

 どうやらあれが共同食堂らしい。

 

 彼女たちが先に食べるのは、勿論匂いの問題だろう。

 あの人たちの香りが主体で薄い味付けの料理は何が出たにせよ、私たちが食べるものではない。味覚そのものがたぶん違う。

 

 あの玉ねぎ色の髪の毛の女性たちは三〇人いないので、食事は一回で終わりだ。

 男性陣は人数が多いし建物は他にも有る。男性陣にはたぶん彼女たちの食事が終って、あそこからいなくなれば、提供されるだろう。

 

 暫く待つ必要がある。

 

 ……

 

 女性たちが戻ってきた。

 また鐘が鳴り始めた。乾いた音で三回。暫くおいてまた三回。これが男性陣への合図か。

 

 食堂に行ってみよう。三〇人づつという事なので、三つの食堂に分かれていっぺんに食べられるのは九〇人か。鉱山の方の作業員もいるので、これでは狭いのだろう。

 入口は、三つとも人でごった返している。みんな、そんなに腹が減ってるのだろうか。

 

 中に入るには、少し落ち着くまで待とうと思っていると、ヨニアクルスが紹介して寄越したズルシンが見えた。しかし、こちらに気が付かずに入っていった。

 これは、いつになったら食事できるのやら。

 鉱山の方で、昼勤務の人が六〇人は居る。警護の冒険者ギルドのメンバーが八五人か。他のこの村の維持のための作業員を入れても一八〇人はいないだろう。

 

 なんとか二回目で入れそうだな。

 

 暫く、外で待つ事にした。

 あちこちに、あの渦巻の香が焚かれている。老人が相当頑張って作らないとすぐ足りなくなりそうな気がした。

 

 空は曇っていて、月も星も見えない。日は沈んで大分暗くなってきた。

 辺りには、薪で灯りにしてある。松明というのでは無く、薪に火を付けて籠のような物にそれが入っている。まあ、まだあのタールとか、あの辺から油を分離して灯りにしてはいないらしいな。

 きっと、そのうちに分離するようになるだろう。

 

 そんな事を考えながら、今日見た鍛冶屋の炉を思い出していた。

 

 質のいい木炭と広々とした作業場。足踏みの鞴。みんなそれぞれ、何かを作っていた。ここで真っ先に必要なのは、鉱山で使うツルハシとか、スコップだろう。

 あとは木材の伐採で使う斧や鋸とか、そういった物だろうな。

 あそこで、質のいい鋳鉄が手に入るなら、良い剣が出来るに違いない。

 

 ……。

 

 まあ、鍛冶屋ギルドに入らないと、使わせてもらえなさそうだ。

 なんとか、場所を借りられるといいのだが。

 

 食事。今日の食事はスープと固いパン。煮込んだ肉。あとは生野菜である。

 木製のトレイを持って、配膳室の前に並ぶ。

 肉の入ったお皿やスープの入った深い皿が置かれた。あとはやや大ぶりなナイフとスプーンにフォーク。

 そうか、ここの人たちの体格を考えれば、この大きさで普通なのだ。どれもこれも、私には大きすぎる。

 

 適当に空いているテーブルに座るのだが、椅子がこれまた私には合わない。

 テーブルにトレイを置いて、椅子に乗って正座する。やれやれ。毎回これになるのか。何か考えたほうがいいな。

 

 さて、味のほうはオセダールの宿と比べてはいけない。

 

 「いただきます」

 手を合わせる。

 

 あのスッファの北部街区の食堂で出た肉のグリルになにかのソース掛けよりは、遥かにまともで良い味がしていた。

 煮込んだ肉は、明らかに魚醤で上手に味付けされている。

 生野菜は、何かの植物の油とパンチの効いた魚醤を混ぜて和えてある。

 固いパンを千切って、スープに浸して食べる。

 

 調味料があるのは、やはり素晴らしい。

 スープも何か胡椒のような味と、臭みの少ない魚醤を使って味付けしてある。

 

 「ごちそうさまでした」

 手を合わせる。

 

 ここは食堂なので、自分で洗う必要はないが、大きな木のトレイに乗ったお皿を配膳室の所まで運んだ。奥の方で沢山の男女が皿を洗っている。

 あの人たちは、この大人数の食事を作って、全て片付けて洗わないと行けないのだ。

 それはそれで大変な労働だ。いつ食べるんだろうな。

 

 食堂を出ると、近くに共同浴場がある。

 その近くに二棟ほど平屋の六〇人ほど収容可能な休憩所がある。娯楽室とでも言えばいいのか。

 「カレンドレ様を、探して、いますが、どこに、いらっしゃいますでしょうか?」

 食堂近くの人に訊いてみると、その人は無言で、その建物を指さした。

 「ありがとうございます」

 お礼を言ってお辞儀して、向かう

 

 そこに行ってみると、一棟はまるまるギルドのメンバーが貸し切り状態で使っている。日々の打ち合わせと報告会らしい。

 全員は入り切れないのではないかと思ったが、座れないというだけである。立っているメンバーもだいぶいるようだ。

 

 私は、カレンドレという人を探した。

 髪の毛が逆立ってるのかという様な髪型の人物がそうであるらしい。

 焦げ茶色の逆立ったような髪の毛の長身の男は薄い茶色の眼だった。

 肩幅もがっちりした筋肉質そうな腕が見える。全身鍛えている事が伺えた。

 

 まずはかるくお辞儀。右手を胸に当てて、男を見上げた。

 「支部長様から、ここに、行くようにと、言われまして、配属に、なりました。マリーネ・ヴィンセントと言います。よろしくお願いいたします」

 深いお辞儀をした。

 「ああ、支部長から話は聞いているよ。私が警邏(けいら)隊隊長のカレンドレだ。よろしく」

 男は笑顔だったが、なんとなく眼の中が笑っていない。

 

 「君は銀三階級になったそうだが、ここで同じ階級なのは警邏隊隊長になってる私とズルシン隊長とスラン隊長だけだ」

 「私が受けた指示は、まず君を三つの現場を一日ずつ、何度か経験させろという事と君の容姿の事もあるので、君に独立した隊長職をまだ与えるなという事だった。君のその背丈で周りの荒くれどもを統率というのは、流石に無茶だろうと支部長から言われている。なにか質問は?」

 「いえ、私が、輪番で、全ての、現場を、見て回る、のは、予め、支部長様から、伺って、います。何処から、見て、回るか、ご指示、下さい。現場での、事は、現場で、お願いします」

 それだけ言うと、男はふっと笑った。

 

 「正直、君の事は色んな噂になっていた。ギングリッチ教官が全力で打ち込みに行って、その模造剣を折られたなんて、初めての事だからな。それであの白金の二人の隠し子じゃないかとすら言われていた。まあ教官は太鼓判だったが、それは警邏でおいおい見せて貰うとしよう」

 

 そこにズルシン隊長がやってきた。

 「カレンドレよ。このくじを一つ引けよ。その少女を明日、誰が連れて行くか、これで決める。おーい、スラン、お前も引けよ」

 「くじで決めるのか?」

 カレンドレが疑わしそうな顔だった。

 

 「一本はあたりが入ってる。文句言いっこなしだ」

 ズルシンは笑っていた。

 ズルシンが握っていたくじをカレンドレとスランが一本ずつ引いた。残った一本がズルシンだ。

 

 ズルシンは自分の一本を見て、不敵な顔をした。くじの先が赤く塗ってあった。

 「当たりは儂だな」

 二人が表情を歪めた。

 「では、ヴィンセント殿、明日は儂の部隊だ、伐採の方を警備だ。朝の鐘が鳴ったら、門に集合。遅刻は罰金だ。注意してくれよ」

 「分かりました」

 私はお辞儀で答えた。

 

 するとスランが言った。

 「その次はどっちにするんだ」

 「硬貨で決めよう。表か裏か」

 カレンドレがそう言ってデレリンギコインを一枚、指の間に挟んだ。

 「よし、表だ」

 スランがそう言うと、カレンドレが空中にコインを放り投げた。

 くるくる回転して、カレンドレが掌に載せる。

 「表だ。決まったな」

 スランが言った。

 「ヴィンセント殿。ズルシンの次は私だ。覚えておいてくれよ」

 「分かりました」

 お辞儀で答える。

 

 ……

 

 今週の当番は、魚醤工房の警邏が、カレンドレと他一五名。他に本来予備に二名。で計一八名。なのだが、今週は予備の人員は〇。

 四名ずつ四か所の工房近辺の警邏である。これだと交代部隊が全くいない。

 夜廻りの人員はあの魚醤工場に、泊まり込みらしい。

 あっちにも四名ずつ四箇所で一六名。あっちの人は夜勤専門で五日間。

 夜勤を含む合計が三四名。

 警邏が休みの日は工場も休みなのか。

 

 ズルシンの集団は樵ギルドの伐採場所の警護。

 伐採現場に四名で四か所、運ぶ方も六名で四か所、予備に二名で計四二名

 しかし、今週は予備人員は一名で全体は四一名。


 あとは植樹と下生えの刈り取り等を行う樵ギルドのメンバーの護衛が四人で三組ある。一二人。予備二名で計一四人

 しかしここも予備は一名で一三人

 

 スランの集団は陶芸工房ギルドの粘土採集場所の警護。粘土採集場所に六人。付近の警邏に四名の合わせて一〇名。

 運ぶ時の警護に四名で二か所、予備二名で、計二〇名。

 ただし今週は予備一名で一九名である。

 

 本来は計一一〇人であるが、予備人員が本来八名いなければならない所、現在は欠員が出ていて、予備人員は三名しかいない為に週ごとに予備人員を調整である。

 

 実は、この予備に私が入るらしい。あの白金の二名が来ても全然足りていない。

 なるほど。ヨニアクルスが余裕が無いと言っていた理由が判る。

 怪我人が出たら、たちまち定員割れしてしまう。

 

 一週間ごとに、メンバー各人がくじ引きで任務位置を交代するが、雨になると採集現場はお休みになる。

 その場合は雨の中、採集現場の見回りを三人で行う任務がある。これは現場の地盤が緩んでいないかなどを確認する。これもくじ引きで決められる。

 魚醤工房の警邏は休みにならない。雨天でも警邏は必要と。

 

 現場のリーダー三人は持ち場の位置は何週かは固定らしい。

 たぶん、七週だ。あの四二日毎とかに違いない。

 

 部下たちはくじ引きで、どこになるか一週毎に決まる取り決めだが、各パーティーリーダーが二一人。

 これは階級章が上の者が選抜されて、別口でくじ引き。銀二階級の人員が当てられる。

 このパーティーリーダーの予備人員は何とたった一名。つまり銀二階級の人は二二人しかいない。

 

 平等にするためにローテーション。ではなく、どこになっても文句なしという事でくじ引きなのか。これは運の悪い人が出て、連続で厳しい任務とか、出そうだな。

 

 これは休みの日の夕方の食事後は大騒ぎだな。という事は休みの日は夕食に遅れないようにしないといけない。

 

 打ち合わせと報告は終ったらしく、みんな出ていった。

 替わりに、鉱山労働者たちが入ってきて、奥のカウンターで麦酒を頼んでいる。

 なるほど。そういう場所なのだな。

 

 数名の男たちは、壁際の箱から何やらボードと駒の入った箱を持ってきた。

 その駒を並べている。白い駒と、茶色の木の色合いそのままの駒。

 私には分からないが、たぶん駒の多いチェスのようなゲームだ。

 とにかく駒の数が多い。

 駒は全て元の世界のチェスのような立体で綺麗に彫り上げられた手彫りの像で、何かを(かたど)っているのだろう。

 

 男たちは慣れた手つきで、どんどん駒を動かしていく。

 次第に周りに人が集まってきた。

 みな、手に麦酒のジョッキを持って二人の競技を観戦している。

 

 ……

 

 暫く見学したがルールはさっぱり分からなかった。

 

 私も部屋に戻る。

 

 ネグリジェに着替えてベッドに転がり、少し考える。

 

 色々、見せて貰った。鍛冶ギルドに入るには、まずここの警邏で実績を積んでからだろうな。いきなりここを辞めて、移れるのかどうかすら分からない。

 

 翌日になれば、実際に警邏が始まる。

 

 ズボンを履くべきか迷うが、まあそのままいつも通りのスタイルで行ってみよう。

 

 明日は何が起きるのやら。

 

 

 つづく

 

 ここの共同食堂での食事は、マリーネこと大谷の好みにあっていたようだ。

 贅沢は言わない大谷である。この世界に来てからの粗末な食事を想えば、共同食堂で出される夕食は十分まともだった。


 そして、リーダーたちはくじ引きでマリーネの初日の担当部署を決めてしまった。

 

 いよいよトドマ支部での「お仕事」が始まる。

 

 次回 山での警邏任務2

 伐採現場に赴くマリーネこと大谷。

 まず、初日は作業の見学。

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