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001 序章 おっさんの冒険 序─1 東京にて

なんの因果か、勝手に召喚されて、勝手に別の躰にされて、何もわからず異世界に降り立ち、勝手に曲者扱いで牢屋に叩き込まれて、拷問を受けて獄中死した50もかなり過ぎたおっさん技術者。

もう1度今度はなぜだか、少女の姿をもらって転移するもどんなチートをもらったのかすらわからない。

悪戦苦闘しながら徐々に自分の貰った能力に目覚めていく。

おっさんが魂のたくましい少女?の冒険物語。

 1話 序章 おっさんの冒険 


 序ー1 東京にて


 プロローグ 東京。

 私は大谷龍造。コンピュータ技術者だ。

 ソフト作成だけでなく、オシロスコープ、ロジックアナライザ、ハンダゴテ片手にハードも少し面倒を見る、制御系の技術者としてずっと過ごして来た。

 

 そしてもう五五歳。未だ現役であるが、そろそろ体力の限界を感じるようになってきた。

 独身の私の楽しみは夜にMMORPGで、ファンタジー世界を冒険する事だった。異世界の冒険は仕事のストレスを忘れさせてくれる。

 逞しい体でもない私が異世界の中では、剣を握って魔獣と戦う。これは現実を忘れさせてくれる事もあって、長い間続いている趣味の一つだ。


 ここ暫くは仕事漬けだったのだが、久しぶりに休みが取れた。

 母の三回忌をやり、忙しく仕事をしてすごし、結局年末年始は誰にも会わずに過ごした。

 年明けて仕事をしていた時に古い友人から電話があった。

 東京でのゲームソフトの仕事を畳んで、実家の湯沢に戻った、長い長い付き合いの友人からだった。

 一度湯沢にこないかという誘いに乗って、久しぶりに取れた休みで湯沢に行く事になった。


 二五年来の付き合いである友人は、親が倒れて、実家の民宿を継ぎながら親の面倒を見ているという。

 私はすでに両親はなく、兄弟も先に送ったので実家は荒れ放題だが、友人はちゃんと親の面倒を見てるという。

 友人の民宿は湯沢のスキー場の近くだというので、私は週末に走っている夜間高速バスのスキー切符を予約して買った。

 高速バスで湯沢に行く事にしたのだ。


 バス乗り場は閑散(かんさん)としていて、私以外に乗り込もうとしていたのは、六人の若い男女だった。

 二人は明らかに二〇代半ばから後半といった社会人なカップルで、他の四名は大学生風だった。

 三人が男性で一人は女性。何かのサークルなんだろうな。

 五〇代半ばにもなるおっさんの私は、彼らとは離れて、一番前の運転席後ろに座った。

 彼らは四人がバスの一番後ろに座り、二人のカップルは一列あけて前に座っている。


 出発して、バスは夜の高速に乗った。

 高速道路はやけに空いていた。


 ゲームソフト作ってたあいつが親のあと継いで民宿とはなぁ。

 ゲーム作りで身を立てるとか言って随分たくさん作っていたよな。彼の作った作品群はネットでは評価が高かった。

 アンチももちろん湧いていたが、好意的な評価がもっぱらだった。

 「自分が作った作品で自分が(たぎ)らないと! 自分が熱くならないと売れないんですよ」

 都内の飲み屋で一緒に飲むといつも口癖のように言っていた。

 何時も呑むと彼の会話には様々な雑学の話に(あふ)れていた。

 雑学王だと言ったら、雑学の大家(たいか)という事にしてくれ。とよく言われた。

 自分の興味が向く部分だけ、手当たり次第なだけでは雑学王じゃ無いそうだ。

 そして何故か呑みの最後はラーメンではなく、立ち食いの蕎麦(そば)で〆る、変わったやつだった。

 「若いファンの人たちは彼がおっさんだとはきっと知らないだろうな」

 私は独りごとを(つぶや)いた。


 彼は途中までは同人で、そこからコミケでスカウトされてソフトハウスに所属していたのだ。

 彼の所属していたソフトハウスはそれでだいぶ儲けたはずだ。

 そんな彼がいきなり全部畳んでしまうとは、想像もしなかったな……。

 ソフトハウスの方では病気で引退という風にしたらしい。

 公式のHPもツイッターの方にも、シナリオの先生が重い病気になられ、引退されました。とか発表されていてマジか!? と思った。

 忙しい事もあって、最近疎遠で事情を全く知らなかったぞ、と慌てて彼に電話したんだよな……。


 電話で知ったのは、重い病気になったのは彼の親だったのだが。

 そんな彼は、今後SNSには一切顔を出さない、別垢も裏垢も使わない。ライン垢もツイ垢もその場で全て削除。

 二度とこの世界には戻らないし、発言しないという事で、ようやく引退を認めてもらったと、電話で話してくれた。


 炎上したわけでも無いのに大変な事だ。

 彼は公式に知られてるメル垢もすべて削除したので、メル垢も当面取らないという事だった。

 まあ雑音を一切絶つには、これくらいやらないといけないのか。

 親の介護と親がやっていた宿を継ぐために、自分の生活、築き上げてきたもの全てを捨てるってなかなか出来る事じゃない。


 古い友人のそんな決意がうらやましくも思えた。

 親や兄弟の介護をしようにも、みんな先に逝ってしまった。

 母の入院には週末に必ず見舞いにいき、時間の許す限りそこに付き添い看病したが、とうとう退院する事なく逝った。

 家に返してやりたかったが、出来る事は何も残されていなかった……。

 遺体はそのまま葬祭会場に運ばれたので、家に帰りたいという母の願いを叶えてやる事も出来ない親不孝者だった……。

 

 母が泣きながら、お願いだから家に連れてって。死んでもいいから連れてって。家の畳で死にたいと言うのを、唇が千切れそうになるまで噛み締めた。

 それがもう三年も前の事か。そして、私には家族はもう、誰も残っていない……。


 そんな事を考えていると、高速道路を逆走してくるやつがいた。

 ばかな。ライトをつけていない!

 

 気がついたときはもうバスにぶつかる直前だった。

 その時に不思議な白い光があたりを包もうとしていたが、対向車は激しく激突し、フロントガラスが粉々に割れた。

 自分の周りは真っ暗になった……。

 

 ……

 

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