9の2 あれから 1年目初夏 2
三人でカザシュタントをからかっていると、下階の笑い声がここまで、聞こえてきた。お客様が揃ってきたのだろう。
「そろそろ、みなさま、お揃いでございます」
メイドの声に、4人が立ち上がる。
ダニエルとフレデリックが二人の足下を気遣いながら、前を歩く。新郎新婦は、腕を組みその後ろを歩く。新郎新婦は、階段の最上段に立つと、会場に頭を下げる。会場から大歓声が鳴る。ダニエルとフレデリックが、階段を先導していく。
階段を降りてくる二人は、先程の結婚式より、リラックスした笑顔だ。
ヴィオリアは、ワインレッドで細い肩紐のドレスで、胸元から腕にかけて、グレーのリボンドレープで装飾され、いやらしさは見えない。腰からふんわりと膨らみ、右ももあたりから左の膝下にかけて斜めにワインレッドのドレープが装飾され、そのドレープが重なるように薄いグレーのドレープが裾へと広がる。
カザシュタントは、クラバットとポケットチーフをワインレッドにし、ズボンを白に変え、先程の薄いグレーのタキシードを着ている。
新郎新婦が降り立つと、辺境伯がみなに改めて紹介し、新郎新婦が頭を下げる。新郎も挨拶をすると、大歓声に包まれた。
カザシュタントがヴィオリアの手をとって、ホールの中央へ進む。ダンス音楽が始まる。カザシュタントは、4ヶ月前と見違えるほどの優雅さだ。さすが!バレー伯爵夫人の指導だ。フレデリックがいないときも、カザシュタントとダニエルは、伯爵邸へ通い、ダンスレッスンに勤しんだ。
長身でスタイルがよく、姿勢のいい二人のダンスはまわりから、感嘆のため息が出るほど、美しい。
「カスト、ダンスがすごく上手になったのねっ」
「バレー伯爵夫人のお陰だよ。今日もお祝いに来てくださってる。後で挨拶できるといいけど」
「困るわ。こんなに素敵なダンスだと、貴方のことを他のご婦人が放っておかないわね」
「ハハハ、今日は我慢してくれ。俺たちは主催者なんだから。ヴィーこそ、他の男と踊っても、心は俺に置いていけよ」
ダンスの終了とともに、カーテシーと騎士の礼をお客様にする。カーテシーから起き上がったとき、ヴィオリアの頬に、口づけが落とされた。ヴィオリアは、飛びあがった。お客様からは、冷やかしの嵐だ。口づけをした当の本人は、お客様へ、もう一度礼をして、ヴィオリアの腰を抱いて下がる。その腰抱きのエスコートにも、ヴィオリアはドギマギしてしまう。
ダニエルとフレデリックの元へ戻ると、ヴィオリアは我に返り、フレデリックへと怒りをぶつける。
「こんなことカストにできるわけないわっ。フランさんが唆したの?」
「へぇ、愛称、変えたんだ。いいねっ!でも、唆したなんて、おあいにくさま。僕は、何も言ってないよ」
ヴィオリアがダニエルを睨むと、ダニエルは、両手の平をヴィオリアに向けて振り、やってないとアピールする。
「ヴィー、結婚式の仕返しだ。ハハハ」
とカザシュタントが笑った。実は伯爵夫人は、ダンスだけでなく、優雅なエスコートについてもレッスンしていたのだ。カザシュタントにそのようなテクニックがあると思っていなかったヴィオリアは、照れまくっていた。
今日の宴は、招待制ではない。カザシュタントの部下や同僚に配りきれないので、入口で、身分チェックはするが、ドレスコードさえ守れば、誰でもお祝いに来れる。本人も騎士団だった辺境伯は、その辺も理解して、この宴を、主催している。
ホールのまわりだけでなく、中庭にも、料理や飲み物やテーブルや椅子が並び、いつまでも来客が絶えなかった。
新郎新婦は、会場奥目の楽団の前におり、お祝いの言葉にお礼をいい、主要な来賓と、ダンスをしていく。時々、カザシュタントに酒を勧めに来る騎士団員には、ダニエルとフレデリックが、優しく?対応し、Uターンさせる。
こうして、宴もたけなわの中、新郎新婦が退場する。二人の側近が階段を先導し、階段の最上段で、再び、振り返り、頭を下げる。みんなが、拍手を贈る。そして、奥へと消えていく。
新郎新婦がいなくなったとはいえ、宴はまだまだ続くのだ。特に騎士団の団員たちは、楽しい夜はこれからだと思っている。今日の酒はうまいっ!
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若夫婦のための夫婦の寝室は、3階の奥に用意されており、ヴィオリアはそこで湯浴みをする。
3階の階段のすぐ隣に、若主人のための書斎がある。その続きの部屋は、仮眠室となっており、普通ベッドと普通のソファーセット、浴室が奥にある。つまり、仮眠室という名の普通に大きい部屋なのだ。そこで、湯浴みをすませ、メイドたちが、用意した寝間着に薄いローブを着ると、書斎へ戻る。書斎では、ソファーで、ダニエルとフレデリックがお茶をしていた。
「よろしく頼む」
「「はっ」」
若夫婦の部屋の前まで、二人が先導した。部屋の前まで着くと、
「今日は1日、ご苦労だったな」
「本当ですよ」
「ハハハ、では、宴に戻ってくれ。もう酒も飲んでいいぞ。明日は完全休暇だ」
「了解しました。ご武運を」
「ぶはっ!ダニーなんだよそれっ!ハハハ。
カザンさん、ではまた後日」
カザシュタントが夫婦の寝室に入るのを見届けると、二人は宴会場へと戻っていった。こちらの宴は、朝まで続く。
そこから先は新婚夫婦二人のお話なので、ここまでで。
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今年の新人研修は、カザシュタントの魅力か、はたまた、ヴィオリアの人気か、どちらなのかはわからないが、新人だけで100名を越え、騎士団の20歳から23歳の中堅層も20名ほどやってきた。
更には、魔法師団の長期派遣という国家案件の試験的利用も任され、この夏のマーペリア領地は大変な賑わいだ。寄宿舎に入りきれなかった中堅層の兵士と一部の魔法士には、宿を3つ貸し切って対応した。
あと、一月もすれば、毎年恒例の魔獣討伐訓練があり、それで王都へ帰る決断をする新人と魔法士が50名ほどいるだろうから、宿の貸し切りも一月ほどなら問題ない。宿側からすれば、一月は満室なのだから、ありがたいことこの上ない。
こうして、三月経ち、新人や中堅層の兵士たちが、正式にマーペリア辺境伯軍所属になった。
その次の週には、マーペリア辺境伯軍の新軍団長カザシュタントのお披露目と、カザシュタントとヴィオリアの結婚のお披露目が町を挙げて行われた。
それはもう、町を挙げてのドンチャン騒ぎ。軍団長交代など、20年か30年に一度しかないことなので、これもよしとしておこう。
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