1の4 続 強かな令嬢たち
性的なことを想像させる表現が多々あります。
気になる方は回避してください。
読まなくても、次回のお話には、問題ありません。
1日繰り上げ投稿です(*ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾⁾
「こちらのお話が終わったと思わないでくださいませ」
イメルダリアがイリサスの言葉を遮る。
「人の話をき……」
負けじとイリサスはイメルダリアに言い募るが
「イリサス様、ブリアント男爵家様の防犯について、ご指導してさしあげませ」
イメルダリアはイリサスの言葉を無視して、続けているが、話の方向がイリサスには理解できていない。
「ブリアント男爵様のお屋敷には、2階のバルコニーから 縄ばしごが垂らされておりますのよ。イリサス様なら、ご存知でございましょう?防犯的に問題ありませんのかしら」
イリサスは口をパクパクしているが、何も浮かんでこないようだ。
「まさか、その縄ばしごってイリサス様専用なのかしら?」
イメルダリアは、上目遣いで天井を見て可愛らしいく考えてる素振りをする。それから、まっすぐにイリサスの目を見て、薄く笑い最後通告のように言った。
「そういえば、深夜、ブリアント男爵家様の屋敷のバルコニーに 縄ばしごを使って登られ、そのお部屋に入られたそうですわね、イリサス様。ふふふ。
朝方に出られたようですが、何をなさっておりましたの?まさか、泥棒ではありませんわよね?」
イリサスは真っ赤な顔で怒った。
「わ、私が泥棒などするわけがないだろう!」
泥棒は、否定したが、忍び込んだことは否定しないイリサスは、冷静とはほど遠い。
「まあ、では、深夜、令嬢宅で、何をなさっておりましたの?
朝方のバルコニーから手をふるメノール様のお姿は、わたくしの口からはとても表現できないような大変淫らなお姿だったそうですわね。
それも、朝方にイリサス様が出てこられたことは、一度や二度ではないと」
ウズライザーとエンゾラールが目を見開いてイリサスを見る。
「そもそも、女性の寝所が何度もそのような状態であるにも関わらず、メイドどころかお父上であるご当主様も何も言わないことに、疑問を持ちませんの?」
『そのような状態』と言っているだけで『どのような状態なのか』はくわしく言わない。
『淫らなお姿』もくわしくは言わない。
聞き手の想像にまかせているから、会場のみんなの想像はどこまでも膨らんでいる。
あまりの想像力に、倒れた女子生徒と会場から出る男子生徒がいたようだ。
「イリサス様がそちらに通い始めたのは、婚姻前どころか、成人前ではありませんか。
もし、そんなことが、我が家であったなら、メイドは気を失い、お母様は泣き叫び、執事は自決し、お父様は怒り狂うでしょうね」
イメルダリアは両手で自分を抱き、それを想像したように怖がってみせる。
その言葉には、暗に『メノール嬢は家族でそういうことに慣れているのだ』ということが含まれている。
イリサスは床の一点を凝視し心ここに有らずだ。
扇の奥で、くっくっと笑ってヴィオリアが口を開く。
「ウズライザー様、そんなお顔でイリサス様を見てはいけませんわ。ウズライザー様にも心当たりがおありになるでしょう?」
ウズライザーは、ヴィオリアをぎっと睨むが何も言わない。藪をつつくことになりかねないと思っているのだ。
「ウズライザー様は、とある日、学園のメイドに校舎裏手にある倉庫の掃除を言い渡したそうですわね?なんでも倉庫に絨毯を敷かせたとか。
その倉庫にメノール嬢とお二人で入っていかれましたわね。1時間程で、顔を赤らめ制服を少し乱したお二人が、そこから出ていらしたのは、2階の教室からは丸見えでしてよ。
最初に気がついた子息様なんて、目を真ん丸にされていましたし、ご令嬢様たちはわたくしをチラチラご覧になるし……。
本当に地獄の時間でしたわ」
ウズライザーは藪をつつかなかったのに、やはり、蛇は出てきた。
「その日のうちに、変に汚れた絨毯を交換させるということをなさっているとか。
何度も何度も言い渡されて、メイドたちが大変困っておりましたわ。お話を楽しんだだけの乱れ方でない状態に、不快感もあったと聞いておりますわ。
学園の施設を個人的に使うときは学園長への申請が必要ですし、その件について、学園長から苦言も受けていたはずです。
学園のメイドたちが掃除を任されているのは生徒[皆]が使う場所ですわよ。個人で楽しむためでしたら、あなた様のお屋敷からメイドをお呼びなさいませ。絨毯の代金もしかりですわよ」
ウズライザーの口はへの字すぎて、あごにコブができている。
「それにしても、もしお誘いを受けたのがわたくしでしたら、お誘いをされた時点できっと倒れておりますわ。
だって、婚姻をしてない殿方とそんな狭い密室で二人きりで1時間以上だなんて、ありえませんでしょう?」
ヴィオリアは、同意を求めるようにイメルダリアとエマローズを見る。二人はもちろん、後ろにいる何人もの女子生徒が、うんうんと頷いている。
これも、暗に『メノール嬢は殿方と二人の密室に慣れているのね』と言っているが、ウズライザーに伝わっているかは、わからない。
ただ、ウズライザーは正面を見ていられず、への字口のまま壁の方を向いている。
「エンゾラール様、こんなにも同じ穴の狢がおりますと笑ってしまいますわねぇ」
エマローズが、目を細めて口角を上げ、エンゾラールを見る。
エンゾラールが肩をビクッとさせた。
「エンゾラール様は、市井にあるココロールというお店をよーくご存知ですわよね?
大変、常連様であられるとか。
それも毎回、メノール様とご一緒に。
手を繋いでココロールに入ってきたところを見られてましてよ」
ココロールは男女がそういうことをするお店であることは有名である。
『入ってきた』という言葉に違和感を覚えたエンゾラールは、
「も、もしかして、み、見張っていたの?」
と、恐る恐る聞いてみた。
「ココロール様は、魔法研究所の常連様ですわよ。魔法薬の避妊薬を大量購入してくれますの。
商品納入の際に研究員が見ていたのですわ。
研究所は、市井にお世話になっていると、先ほど説明しましたでしょう」
とある友人から、エンゾラールがココロールを利用しているという話を聞いたので、研究員に、わざと週末の目撃情報の時間に行ってもらったのだ。
「まさかとは思いますが、それも研究費ではありませんわよね?」
エンゾラールは下を向いたままブツブツと何かを言っている、挙動不審だ。
「それにしても、ココロールは使い方が特殊だとか。
エンゾラール様はよく使い方をご存知でしたわね?」
エンゾラールは、今更だが、自分がそういう場所に詳しいと思われない方がよいと思ったのか、言い訳した。
「そ、それは、メノールから教わって…」
言い訳こそが、エマローズの思うツボだった。
「まあ!わたくしはそのようなところを利用したことはございませんから、エンゾラール様にお教えすることはできませんわ。
ご存知の方とご一緒できて、よろしかったですわね」
エマローズの言いたいこともしかりである。
イリサスもウズライザーもエンゾラールも一線を越えることができたのは、自分だけだと思っていたのだ。すでに何を信じていいのかわからなくなり、頭と心はパニックになっている。
そんな三人を舞台下から睨み付け、
イメルダリアがまとめる。
「みなさまの不誠実と不貞について、ご理解いただけましたわね?では」
「「「そういうわけですので、こちらから婚約破棄いたしますわ!」」」
三人の女優の声が揃った。
イリサスはその場に膝から崩れ頭を抱え、
ウズライザーは口をパクパクしたまま呆けており、
エンゾラールはペタっと座りこんで、まだブツブツつぶやいていた。
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筆者は語彙力少なめなので、言葉のご指摘なども受け付けております。
次回の23日19時、投稿予定です。
次回の主役は、やっと、アリーシャです。