5の4 作戦15 己を高める
学期末テストがあったり、放課後の生徒会室でみんなと仕事したりおしゃべりしたり。つまり、普通に生活し、普通に夏休みになった。
父上は、ディークが執事見習いになることを、了承した。しかし、給料は受けとることなど、条件は変わったらしい。それはそうだろう、公爵家が執事見習いを無給で雇ったなんて、醜聞でしかない。あとは、執事長に任せるということだ。
僕からのお願いで、僕に『様』を付けることだけは禁止した。
僕にはもう、カールトンという専属執事がいる。彼もまだ見習いで、僕が学園にいる間は執事長に、鍛えられてるそうだ。
執事長の判断で、ディークは、僕が政務局へ行っている間は、専属執事の役目はないので、鍛練場に通うことになった。学園の武術では成績のいいディークだ、鍛練場ではどのくらいの実力になるんだろう?
週の後半は、僕の家庭教師が来てる時間は一緒に、勉強するそうだ。今、来ている家庭教師は、語学の先生と経済学の先生だ。カールトンも、いつも一緒だから、三人で受けることになる。
これには、ディークは『使用人に金をかけるのか?』って恐縮していた。『必要なことだから学ばせるのです。これに限ったことではなく、今後必要となれば何でも学ばせますよ』という執事長の一言で納得したらしい。
あとは、その日その日で、執事長から指示があるということで、決まった。
夏休み初日、政務局へ行く予定だ。
朝食の席に着いた。父上と母上はもう食事を始めていた。姉上は、この夏休みは、王宮に泊まり込みだそうだ。
カールトンは後ろに立っているが、ディークがいない。
「ディークは?」
「応接室で、ヨアン様がお読みになった新聞を読んでおります。
朝食の際はそのようにと、執事長から申し付けられております。
ヨアン様がさすがに食べにくいだろうということで」
「そっか。そうかもね。わかった。
あ、でも、ディークもカールも朝ごはん食べたの?」
「はい。いつもヨアン様より先にいただいております」
「よかった。じゃあ、いただくね」
僕は、起きたら、自分で身支度をして、父上が読み終わった新聞を2紙ほど部屋で読む。その後に朝食だ。ディークはそれを読んでいるらしい。
父上は、毎日5紙読んでいて、その中で、僕が読むものは執事長が選んでいる。これは、学園に入学してから、週末などの自宅にいるときの約束事になっている。ゆっくり読んでいると、朝食の席に父上も母上もいないこともある。
最近は、新聞が面白くなってきて、朝食の時間に父上と討論になるときもある。それは、なかなか面白いのだ。
朝食を終えた時、丁度ディークが来た。
「ディーク、鍛練場へ行くんでしょ?通り道だから、一緒にいこう!」
「え、いや…」
「ご一緒させていただきなさい」
「はい。支度してまいります」
その間に、執事長に尋ねる。
「行くときは、いつも一緒でいいでしょ?馬車の中では、友達に戻ってもいいよね?」
「坊ちゃまがよろしければそれでよいかと」
「うん!それでよろしくね」
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馬車で王城に向かう。
「ディーク、仕事はどう?」
「ハハハ、まだ、1日目じゃないか、わからないよ。
でも、朝一で、新聞を読むのは、ツラかったな。眠いのに、知らないことだらけで難しかった。これを初級学年からやってるのか?」
「そうだねぇ。慣れてしまえば、普通だよ。ディークは、頭がいいんだから、すぐに慣れるさっ」
鍛練場の前に着いた。
「帰りの時間はわからないから、迎えにこれないけど、大丈夫?」
「大丈夫だ。場所はわかってる」
「初日なんだから、無理しないでよ。じゃあ、頑張ってね」
「ああ!君も頑張れよ」
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政務局の第一執務室(一般文官の働く執務室)へ着くと、すでに座る場所が決まっていた。仕事体験に来ている最上級学年の方も2人一緒だった。
仕事体験とは、最上級学年の生徒が次年文官になるときに、どの文官を目指すのかを決めやすくするために、長期休暇の間、利用することのできる制度だ。僕も来年は利用する予定だ。
閑話休題
文官が書類がいくつも入った箱を持ってきた。
「これは、すでに処理済みの書類です。各自好きなものをとり、読んでみてください。読み終わったら、箱に戻し、次の書類を読んでください。
お昼まで、その時間とします」
そう言って、その場を離れた。書類は本当にたくさんあるので、取り合いになることはない。始めは一纏まりずつ持って席に着いたが、誰とはなしに、いくつか持って席に着くようになった。それでも、取り合いにならないくらいある。
中身は、予算請求だとか、開発原案だとか、新法案だとか、いろいろで、却下されたものも、許可はされたものある。
なかなか面白かった。
昼休み、三人で王城の食堂へ行った。体験の生徒の分は、各部局で払ってくれるらしい。渡された身分証を見せて、決められた昼食をもらう。
食事をしながら、自己紹介をした。そして、午前中の話をする。二人は、あまり面白くなかったそうだ。
だが、午後からも同じことをした。そろそろ終わりかと思う頃、報告用紙を一枚配られた。
「上部に自分の名前を書いてください。その下に、今日思ったこと、感じたこと、何でもいいので、書いてください。
書き終わったら、各自帰宅して、結構ですよ」
「わかりました」
僕たちは、それぞれ書き始め、終わった順から帰った。僕は一番最後だった。
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家に戻り、ラフなシャツとズボンに着替える。その間にカールがお茶を淹れてくれた。
「ディークは、帰ってきてる?」
「はい、ヨアン様より1刻ほど早く戻ってまいりました」
「そっか、よかった。今、どうしてるの?」
「部屋で休ませております。今日は、もうこちらには来ないかと」
「え?どうしたの?」
「初日から、1日中鍛練でしたので、今日は立つことは、無理かと存じます。お屋敷までよく帰ってきた、という状態でした」
僕は思わず立ち上がった。
「え?怪我?大丈夫なの?」
「単なる疲労です。もしかしたら、明日は立てないかもしれませんね。ですが、寝れば治ります。
執事長も『よい気構えだ』と誉めていらっしゃいました。
ですから、大丈夫ですよ」
「そっか、ディーク、頑張ってるんだね。僕もがんばろう!」
友人が頑張っていると、やる気になるよね!
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次話明日9時、投稿です。




