5の2 作戦13 敵の馬を射る
三人のご令嬢が退室したことを確認して、僕はユラベル侯爵様に挨拶に行った。
「こんにちは。ユラベル侯爵様」
「おお!ヨアンシェル君!今日は堂々としていたね。シェンと同い年とは思えないよ。わっはっは」
ユラベル侯爵様は、なかなか豪快な方だ。建設大臣として、主に王城の管理や、王都の城壁管理、王都からの道路の施工などを行っている。ロンの父上なので、何度か交流はある。
「お褒めいただき、ありがとうございます。でも、シェノーロンド君も報告書の作成者です。とても助けてもらいました」
「そうかそうか。勉強は得意みたいだからな、また使ってやってくれ」
「はいっ!ところで、ご相談したいことがあるのですが、陛下とのお話の後、お時間をいただけませんか?」
「ん?構わんよ。今日は執務室におる。建設局の執務室はわかるかね?」
「父に聞くので大丈夫だと思います」
「そうかそうか、では、後でな」
「はいっ!」
このような感じで、同様にシャーワント公爵様にも約束を取り付けた。
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さて、父上と陛下の執務室に向かう。この3者会議って、どんな懲罰だよっと思いつつ、父上についていく。
父上の執務室とは明らかに違う、重厚なドアの前には、二人の騎士がいた。
「レンバーグ大臣殿、国王陛下から指示は受けております。中へどうぞ」
右側の騎士が、ドアを開けてくれた。絶対重いだろうというドアを平然と開けるとはさすがだ。
中へ進み、騎士がドアを閉める。陛下は、ソファーに座っていた。
「私どものためにお時間をいただき……」
「あー、よいよい!堅苦しい挨拶は、今はよせ。いいから、座れ」
父上についていき、父上の隣に座った。
「ヤンアート、ヨアンシェル、婚約者の家族ということで、話をしよう。無礼講じゃ」
ヤンアートは、父上の名前だ。
「わかりました」
父上が了承する。
「ヨアンよ。あの報告書は、本当か?いや、本当なのだな。あの報告書は本当によくできておった。
アナファルトはさておき、三人の男どもは……酷すぎるだろ?なあ、ヤンアート」
「そうですね。今までは、学園の中での戯れが報告されてましたが、それだけではなかったようですな」
「うむ。ヨアン、アナファルトはどうなのだ?
あ、あぁ~、叔父上のパーティーの件を忘れておった。あとで叔父上にはお詫びの手紙をせねば、な。
それにしても、このパーティーを選ぶとは、バカものがっ」
後ろの小声の言葉に、父上が反応した。それを、陛下が察する。
「いや、違うな!どんなパーティーであれ、アリーシャ以外を連れて行くなど、ありえん!
ヤンアート、すまぬな」
国王陛下って謝ってはいけないらしい。その立場も大変だ。なのに、『すまぬな』って言っている。ある意味一大事。
「いえ」
「で、ヨアン、他にあるか?」
「いえ、姉上からは、贈り物やお茶会での不満は聞いておりません」
「そうか、あの三人より『とどまっている』と思いたいところだが、まだ、なんともわからんな。
こちらでも、気に止めておく」
「お願いいたします」
父上が冷静に答える。
「アリーシャは、本当によくできた娘だな、ヤンアート。王妃も大層気に入っておってな。嫁姑問題もなさそうだ」
「それでしたら、是非とも、アナファルト殿下の手綱をしっかり締めていただきたいですな。
アリーシャを不幸にしてまで、王家との婚姻を望んでおりませんから」
「まあ、そう言うな。ワシも忙しいゆえ、ワシの補佐官に厳しくするよう申し付けてある。本来は側近がすることだが、それがあれだからのぉ」
側近は、イリサスさん、ウズライザーさん、エンゾラールさんのことだろう。
「殿下とアリーシャがどのようなことになっても、王家への忠誠は変わりませんのでご安心を」
「ふぅ、アナファルトが改心したとしても、アリーシャとのことは、難しいということか。ギルファルトの婚約者選びを急ごうかの。
まあ、もう少し、様子を見てやってくれ」
ギルファルト第2王子のことだ。
「わかりました」
「二人とも、ご苦労だったの。今後も対応を頼んだぞ」
「「はっ」」
僕たちは、退室した。
姉上のために、陛下を相手にギリギリの交渉をする父上を尊敬した。
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父上に教わり、建設局の大臣執務室へ行く。ノックをするとすぐに通された。
「ヨアンシェル君、こちらで話そう。
君、お茶を2つ頼むよ」
ユラベル侯爵様が僕にソファーを勧め、文官にお茶を頼む。
「陛下との話はどうだった?」
さすが大臣、情報取得に余念がない。
「大変緊張しました。私はあの報告書について頷くだけで、陛下と父が話をしていました」
「そうか、アナファルト殿下もいい噂は聞かないからね」
文官がお茶を持ってきて下がった。
「今回のことでは、ヨアンシェル君もずいぶん骨を折ってくれたようで、申し訳なかったな。
「いえ、姉のこともあるので、当たり前ですよ。それに、イメルダリア嬢を自由にしたかったですし」
「ん?それは、どういう意味かな?」
僕は速攻直球に行くことにした。
「私は、イメルダリア嬢に好意を抱いております。イメルダリア嬢の婚約白紙が成立したのでしたら、是非とも、私と婚約をしてもらいたいです」
ユラベル侯爵様が少し前のめりになった気がする。
ものすごい間だ。僕は品定めされている。大臣から目を逸らしてはいけない。
「ふぅ、そうか。イメルダリアからよく君の名前が出るから、親しくしているとは思っていたんだが」
ユラベル侯爵様がソファーに深く座った。
「まあ、君の身分は申し分ないし、シェンからも君がいいやつだとは聞いている。
だが、こと男女のこととなると話は別だ。
私は、ある程度の爵位があれば、娘の希望するところなら反対をしないつもりだ」
「はいっっ!」
「ワハハハ、おいおい、勘違いするなよ。つまり、どんなにいいやつであっても、男としてイメルダリアに認められないやつにはやらんということだ」
「もちろんですっ!今日は婚約・結婚を前提に口説くことをお許しいただきたいだけです」
「結婚までか?」
「はいっ!私は、婚約で終わるつもりはありません。結婚、そしてその後も、イメルダリア嬢と共にいたいですっ!」
「確かにな、婚約で終わったばかりであったわ。ハハハ。
わかった、イメルダリアが認めたならば、婚約・結婚まで認めよう」
「ありがとうございますっ!」
僕は立ち上がり深々と礼をした。
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