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【完結】婚約破棄されそうな令嬢は知らないことだらけ  作者: 宇水涼麻
第三章 隣国王子の恋愛事情 恋の事情編
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19/71

3の1 恋の起

本日より、ゼファー編スタートします。

 私はゼファーライト・タニャード。タニャード王国の第2王子だ。


 タニャード王国は、ガーリウム王国の南西で接している国で広さは同じくらいだが、多少ガーリウム王国より暖かい。ガーリウム王国とは陸路も海路も繋がりがあり、仲が良い。


 ちなみにどちらの国も一夫一妻制である。


 将来は兄が国王となるので、私は臣下として兄を支えられるように、隣国であるガーリウム王国へ勉強に来ている。

 宰相であるシャーワント殿の補佐官としての毎日はとても充実している。同じく王国であり隣国であり気候も大きく変わるわけではないが、政策として参考になることがたくさんあり、我が国とは違う部分が大変面白い。

 補佐官をするにあたって、家名をつけると身分がわかってしまい仕事に支障が出ることも考えられるので、ゼファーという名前で仕えることになった。家名を持たない平民文官は多くいるし、高官の方々は私の身分をわかっているので、それで問題はなかった。


 まさか、アリーシャ嬢に平民だと思われていたとは。まあ、これは後で。



〰️ 〰️ 〰️


 そんな日々が続いていたある日、アナファルト第1王子とアナファルト第1王子の婚約者であるアリーシャ・レンバーグ公爵令嬢に、タニャード語を教えてほしいという話がきた。

 私がタニャード王国の者であることは極秘であるが、宰相補佐官として、語学が堪能であるという触れ込みらしい。まあ、母国語以外に5ヵ国語はできるけど。


 その時のお二人は私より3つ下の16歳であった。週に2回ほど授業を行ったが、半年経つ頃には、アナファルト王子もさすがで、話すのは何の問題もなかった。しかし、アリーシャ嬢は読み書きもできるようになり、『王妃となれば、お礼のお手紙なども書くことになりますから』と将来を見据えたお姿で、大変立派であった。『いやあ、国王も隣国への手紙は書くだろう』と思ったがわざわざ言うことはない。


 タニャード語の授業は終了したが、アナファルト王子とアリーシャ嬢の顔見知りになったことで、城内で会えば、お二人とも言葉をかわすようになった。


 その頃から、私はアリーシャ嬢の、さりげなくメイドたちへ気を配っていたり、平民文官へも分け隔てなく対応したり、高官へも疑問点はキチンと聞く態度であったり、とにかくすべてに好感が持てた。

 時折私に笑顔で話しかけてくれたときには、飛び跳ねたくなるなるほど嬉しかったし、政務について相談してくれることも頼られている気がして嬉しくなった。



〰️ 〰️ 〰️


 それから半年ほどして、お二人が上級学年(3年生)になって数ヶ月した頃か、アナファルト王子から声がかかった。

「明日の午後、アリーシャとのお茶会に付き合ってほしい」

ということだった。

 王城での仕事は休みであるので私は一向に構わないが、このお茶会は、婚約者としての月に1度のお約束なのではないかとふと疑問に思った。が、『ああ、最近王子がどこぞの令嬢に夢中だと噂があったな』と思い出した。

 きっと二人では会いにくいのだろうと思い、王子には、冷静な顔で了承を伝え、心の中では、叫びたくなるほど、喜んだ。


 次の日、王子との約束のタイミングで席へ向かうとアリーシャ嬢が1人で座っていたことには少々驚いた。

 メイドに目線を送ると奥を手で示す。そちらをよくるとアナファルト王子が私の知らない令嬢と笑ってお茶をしていた。『あれが夢中になっている令嬢か』と心の中で確認し、アリーシャ嬢へ意識を向け、歩き出した。

 私が近づくことに気がついたアリーシャ嬢は立とうとしたが、私は手でそれを止め、そのままアリーシャ嬢の向い側の席に着いた。メイドたちが給仕をしてくれ離れていく。

 離れたところに護衛やメイドはいるが、アリーシャ嬢との二人きりの空間であることに喜びが隠せない。笑顔のままの私は、アリーシャ嬢から見たら気持ち悪くはないだろうか?でも、どうしても口角が上がってしまう。

 お茶を飲む姿が美しい。鈴の音のように話す声が可愛らしい。笑う姿は女神のようだ。話題も豊富であるし、話さない時間も全く苦にならない。


 だが、幸せな時間はあっという間に過ぎてしまい、アナファルト王子とアリーシャ嬢が約束をしていたという時間になってしまった。心残りではあるが、終わらせるしかない。

 本来なら、城の出口まで送ることがマナーだが、私はあくまで代理なので、エスコートするわけにも、メイドや護衛でない一般文官にこの状況を見せるわけにもいかないので、その場で見送った。


 アナファルト王子はというと、アリーシャ嬢と会っているべき時間にかの令嬢(メノール嬢という名前は後で知ることになるが)と会い、国王陛下や王妃を誤魔化しているらしい。私はそのための代理だ。今日のことで味をしめた王子は、次回も頼むと言ってきた。ああ!2ヶ月後が楽しみだ。


〰️ 〰️ 〰️


 次の月、王子が私のところにやって来た。

「アリーシャとのお茶会に行かないので、アリーシャへ何か送らなければならない。何がいいか?」

 と聞いてきた。


 婚約者の逢瀬のお茶会は、毎月交互にお互いの住まいへ伺う。王子がレンバーグ公爵邸へ伺う番なのだろう。なぜ行かないのだとは思ったが、すぐに思い当たったので、言わない。


「私がやっておきますよ。殿下のお名前で送ればよろしいですね」

と言って引き受けた。


 初めての断りのようだから、軽めのものがいいだろう。やはり、花束かな。そうして、アリーシャ嬢のことを考えながら花を決めていくことはとても幸せだった。

 メッセージは、花屋に頼んだ。


 それからは、2ヶ月置きに例のお茶会断りの贈り物も私の担当になった。

 アリーシャ嬢への贈り物のため、メイドに美味しいお菓子店のことを聞いたり、流行りだという紅茶を試しに取り寄せてみたり、季節を感じる花を勉強してみたり、アリーシャ嬢が喜んでくれるようなものを探して手配した。

 アリーシャ嬢を考えて贈り物を探すことは、とても楽しかった。だが、メッセージカードは必ず店に頼むことにしておいた。


 それから、お誕生日や年越しや恋人たちの日など、贈り物をするべきときには私が王子の名前で送ることになった。

 逢瀬の時の贈り物と違い、店にメッセージを頼むわけにはいかない。だが、王子の筆跡など知るわけがない。知っていても真似をできる自信はないが。諦めて、私が書くことにした。まあ、王子でないことは気がついても、私とは気がつかないだろうし、側近や護衛の誰かだと思うだろう。


 お誕生日には、丁度、アリーシャ嬢が南の島国の言葉を勉強していることを知っていたので、その国の本にすることにした。この贈り物は喜んでもらえる自信がある。彼女は読書家で、特に物語が好きなのは、調査済みだ。

 これはあくまでも、アナファルト王子を補佐するための調査の一環だ。私の気持ちが重いわけではない。……と、思う。


 他の贈り物もアリーシャ嬢が喜んでくれそうなものを一生懸命選び、それを選んだ理由をしたためたメッセージカードをつけた。


本人目線、なかなか難しいです。

ご意見ご感想いただけますと嬉しいです。

次話明日9時、投稿です。

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― 新着の感想 ―
隣国の王子とはいえ現状別の国に仕えているんだから、王太子が王命に逆らう様な事始めたらきちんと上司に報告しないと… 好きな娘との棚ぼた逢瀬に浮かれて黙って工作引き受けてる時点でこのヒーローも王太子と大差…
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