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春風戦華  作者: 地球儀
33/35

其の参拾参:記憶

天井から注がれる蛍光灯の明かりは、階と階の間に挟まれていたときと同様に周囲を鮮明に照らし、床に濃厚な移動する影を落としている。先程までいた校舎から隣接するもう一方の校舎へと場所を移す為、茉穂は幼い少女を背に負って、二つの建物を繋ぐ廊下を駆けていた。

小学生にもなっていない子どもといえど、小柄な女子高生が二十キロ近い体重を持ち上げるには少し苦ではあったが、状況は一刻を争う。悠長に手を引っ張りながら七愛海の歩調に合わせるくらいなら、負ぶる方が速いと判断するのは当然の成り行きといえた。

「あそこ、誰かいる!」

進行方向から右斜め前方を指す短い指先を辿れば、窓の向こうに映る闇を背後に従えた校舎の隅に、動く人影が見えた。まだ距離があるので顔の造形はしかと判別できないが、二つある影の一方は、袖のない釣鐘型の外套を肩に掛け、動きに合わせてはためかせている。現代にはあまりいないだろう個性的な服装には心当たりがあった。実際会ったのは一昨日の一度きりだが、まず間違いない。

(良かった!二階にいる)

つまり彼と対峙している相手こそ茉穂、そして伶子の共闘者だ。

ダークネイビーのアルペン帽子を被った冥界の宰相が鞭を振るう仕種をするのを視界に収めながら、茉穂は曲がり角を右折した。

「ウサちゃん!」

「おじちゃん!リオン君!」

腹の底から声を張り上げて争いを中断させる。

茉穂達から見て正面を向いて攻撃の体勢をとっていたリオンは、有力な佐保姫候補である少女、そして人質として連れ去ったはずの幼女の出現に大きく瞠目した。一瞬遅れて、背を向けていた宇佐美も彼女達の呼びかけに反応し、すぐさま振り返った。

「近江。それに……七愛海っ?!」

「おじちゃん〜!」

茉穂の背中から降りた七愛海は叔父へと一直線に駆け出し、再び大粒の涙をボロボロと零しながら血に濡れたジーンズの脚に飛び付いた。

「七愛海……お前、どうやって……?」

緊張の糸が切れたのか、力いっぱい泣き叫ぶ姪を宇佐美は茫然と見下ろす。戦闘真っ只中のところに、救い出すと心に誓っていた子どもが忽然と姿を現したからか、脳が状況把握に足踏みしているらしい。触れられて伝わってくる温もりが本当に姪のものなのか。口に出さずとも実感のなさをありありと表情に描きながらも、幼女を宥めすかすときの癖らしく、小さな頭部を優しく撫で始めた。

(血が出てるけど……命に別状はなさそう)

副担任の容態にホッと息を落とすものの、彼の姪がこちらに戻ったのと引き替えとばかりに奪われた存在がある。手を取り合って喜ぶ暇などどこにもない。安心なら全ての片が付けば後からいくらでもできると、心に緊迫感を宿したままの厳しい顔つきで茉穂は宇佐美に詰め寄った。

「それよりウサちゃん!伶子がヤバイことになってんの!このままだと伶子が死んじゃう!」

切羽詰まった面差しで訴える教え子を仰いだ宇佐美の顔が、再度引き締まる。こめかみに滲んでいた汗が蛍光灯の光に反射しながら、顎に向かって滑り落ちるのが見えた。

「どういうことだ?」

「あのレオンって奴、冥界で伶子を殺すつもりみたいなの!」

その言葉に教師の顔は一気に気色ばんだ。



口の中に溜まった錆びた鉄の味がする唾液を吐き捨て、伶子は不敵な笑みを深める青年を冷淡な眼差しで睥睨する。耳と鼻に軽い負担を掛けていた、視力補助を努める小道具は殴られた勢いでどこかに転がってしまったが、それでも尖らせた眼光は揺るぐことなく、恐怖も焦躁も消し去って、直情的な憤りのみを滾らせていた。

鼻血で汚れた口周りを、鉤爪付きのグローブを嵌めた手の甲で拭いながら告げる。

「あんたが甚振りたいのは私だろうが。横から茶々入れられたくらいで周りを巻き込むんじゃねぇよ」

自分を満身創痍にさせた相手に怯む様子もなく、真っ直ぐに憎悪のみをぶつけてくる少女に、レオンは頬を緩ませた。

「漸く“素”に戻ったな。さっきから舌打ちしたり、苛立ちが滲み出てたけど、今一歩及ばずだからどうすりゃいいか悩んでたんだよ。何はともあれ、メッキの剥がれたお前とやっとご対面にかこつけたわけだし……案外役に立つじゃん、あの女」

くつくつと喉を鳴らしながら倒れた妙齢の女性を一瞥する男に、伶子は侮蔑を籠めながら吐き捨てるようにして言った。

「いい加減黙れよ。耳障りなんだよ」

双眸を眇めながら後ろ足で床を蹴り、一目散に敵へと飛び掛った。

打撲傷は胴体を中心に全身の至る箇所に与えられたはずなのに、それを感じさせない素早さ。当然顔面にも痛々しいまでの殴打された痕跡が残っているというのに、痛みに表情を歪めることなく、寧ろ冷ややかに敵だけを睨み据えている。

右腕を振るおうとしたのを動体視力が捉えたらしく、レオンはそちらへと警棒を突き出してくるが、対して伶子は伸ばしかけた腕の動きを止めた。

「?!」

敵の視点がそちらに逸れた瞬間、少女は左足でローキックを繰り出した。狙ったのは右膝下。弁慶の泣き所だ。

「っ!」

硬い骨の感触が、スニーカー越しに伝わってくる。住む世界が異なれど、痛覚が敏感に伝わりやすい箇所は人間とそう変わらないらしい。

痛みに怯んだその隙に、今度も人間の一般的な弱点とされる急所、頸動脈を狙った。

上半身を大きく捻り、一瞬にして鉤爪を薙ぎ払う。

「くっ!」

「……ちっ」

僅かな時間差ながら、レオンが限界まで頭を背けた方が早かった為に、傷を負わせられたのは薄皮のみだった。得物越しに伝わってこない手応えのなさに、伶子は小さく舌打ちする。

(あと少しだったのに……)

「ははっ!間一髪」

口角を吊り上げて余裕綽々と言わんばかりの態度をとるレオンに、より一層苛立ちが募る。

奇襲をかけられた“UNKNOWN”を手助けした“Ash”。そのメンバーの一人として姿を現したレオンを初めて目にしたときは、異国人と思わせる彫りの深い端整な顔立ちに目を瞠った。覚えはないが、もしかすればあの瞬間だけ頬を赤らめていたかもしれない。けれども、それはあくまでテレビや雑誌などで相手の人相だけを認識し、単純に容貌だけに見惚れたようなものだ。媒体を用いて目にしたときと異なり、場に居合わせれば当然相手の放つ雰囲気に中てられる。金糸めいた髪に頬を擽られる距離で、サディスティックな光を宿した金茶の瞳に姿を映され、思慮や誠実など一欠けらもない笑みを向けられた。

本能で感じたと言っていいかもしれない。単に危ない空気を醸し出すだけの無害な男ではないのだと。弱者を魅了し、捕らえ、圧倒し、やがて呑み込み、骨の髄までしゃぶり尽くす。口や素振りだけでなく、実行に移すほどの力を持っているのだと。

粟立つ肌を摩るより先に、胸の内に広がる悪寒を一刻も早く鎮めさせようとしていたのを、今でも鮮明に記憶している。

『この男に取り込まれてはならない』。自分を戒める情動が僅かでも反応を鈍らせていたら、“ブーツ”達のようにぞんざいな扱いをされていたかもしれない。得体の知れない薬を投与され、幻覚に惑って正気を失い、喚き、乱れ、弄ばれ、最後に絶望の爪跡を心に刻まれていたことだろう。

ほぼ直感的な防衛本能に突き動かされ“Ash”といるときは常に意識してレオンから距離を置いていたが、まさか彼に靡かなかった強靭な精神力を見初められ、今日まで執着されるなど、当時は考えもしなかった。

(ここでぶっ倒さなきゃ、私は一生こいつに縛られたままだ……!)

実際のところ、レオンに負わされた心の傷を忘れた振りして誤魔化しながら生きていくことに、仕方なしと妥協していた。屈していた、と表現する方が正しいかもしれない。

しかしウツギに暴力を振るう男の振る舞いを目の当たりにし、それが間違いだと漸く悟った。相手が誰であろうと、レオンの手に掛かって傷付く者を見るのはうんざりだ。

(もう二度と好き勝手に暴れられないようにしてやる)

スタートダッシュを切る姿勢を整えながら、伶子は静かにレオンの動向を観察した。



末弟の気配を辿り、人質として囲っていた幼女を軟禁していた一室に降り立ってみれば、案の定もぬけの殻だった。レオン本人はおろか、彼が連れ去っただろう同級生の少女、そして七愛海の世話役として遣わされていた女性の姿も見当たらない。

若干吊り上がり気味の眦をすぅと細め、半ば開かれた廊下へと続く扉を見遣る。いつもなら部屋の外に兵が控えているのだが、今はその気配さえ感じられない。おそらくレオンが城全体に人払いをかけたのだろう。実兄であるシオンは勿論のこと、冥界に住む者なら誰もがかの人物の実力を熟知している。

(ウツギも無事逃げてくれてたらいいんだけど)

この城の兵は災禍に襲われても最低限、自分の身を守る程度の力は持ち合わせている。医師や薬師、女中といった役職も例外ではなく、ただ一人、外界に存在する佐保姫を見出だす千里眼を持つ女性、彼女だけが特別だった。

浄天眼を持って生まれる者は稀で、今となってはウツギ一人しか存在しない。佐保姫候補を見つけた浄天眼の使い手は城を離れ隠居生活を送るのが習わしだったが、既婚者の彼女は夫を支える為に生涯ここに住まうと宣言していた。闘う術を持たない彼女がレオンの暴走に巻き込まれれば、無傷で済まないのは火を見るより明らか。彼女の夫に非難されるのは御免蒙りたい。

廊下を出るや、早速爪先に何かが当たる。大理石の床を弾くように転がったそれは、目と鼻の先にぽっかり空いた穴の中へと吸い込まれていった。覗き込めば、シオンが立つ廊下と同じようにして敷かれた赤いカーペットの上に、大理石の粉砕されたかけらが無造作に散らばめられていた。

(この力で殴られたら、桜原さんの体なんてあっという間に吹き飛ぶ……!)

伶子の四肢があらぬ方向へ折れ曲がる想像が脳裏を過ぎり、小さく息を呑む。

約三年、独房で囚人としての生活を余儀なくされていたというが、持て余していた暇を筋力増強に充てたとあって、細身の体からは想像もできない更なる力をレオンは得ていた。得物である警棒を振り回せば、まさに言葉通りの鬼に金棒。

(この有様からして、逃げる桜原さんをレオンが追っていたということか。茉穂の冥玉はまだ効力を失っていなかったし、二人がここに来てまだそれほど時間は経ってないと思うけど……正直、今のレオンにしてみれば桜原さんは、赤子の手を捻るくらい容易く殺せる獲物でしかない)

穴に飛び込んで下の階に降り立ち、無造作に破壊された形跡を辿る。

『伶子をまたあんな目に合わせるようなこと、絶対させないで』

想い人の切望が脳裏に蘇る。彼女との約束を違えたくない思いは勿論のこと、シオンにとって伶子は共有の思いを抱いた同士で……友人で、助けたいという気持ちはごく当たり前のものだった。



桜原伶子が生かされたまま冥界に拉致された。しかも最低限の人命処置さえ施されていないと思われ、このままでは命が危ういという。

茉穂の口から語られた経緯に、宇佐美の瞳孔が大きく開かれた。武器を収めて話に耳を傾けていた敵の青年からもまた、驚愕の気配が伝わってくる。

「ねぇ、伶子は途中までウサちゃんと一緒にいたんだよね?伶子がいなくなってどれくらい経つの?」

手首に巻いた時計で確認しようと左腕を持ち上げるが、ゲーム時では外していたことに気付く。下手に時間を気にすれば集中力が乱れ、闘いに支障をきたすというのが主な理由なのだが、まさかこのような状況下で必要になるなど想像もしていなかった。自然と眉間に皺が寄る。

苦虫を潰したような顔で宇佐美が舌打ちを落とすと、少し離れた場所に佇んでいたリオンが代わりに口を開いた。

「七愛海のように頻繁に仮死にしていたなら、だいたい一月半は保ちます。しかし何も処置を施していないとなると、例え単に立ち尽くしているだけであろうと、以って一時間。……おおよそですが、レオンが彼女を連れ去って四十分近く経ちます」

「待て。意識のある状態でも安静にしてて一時間なら、体力を消耗する事態ならもっと時間が短縮されるってことじゃねぇのか?!」

伶子をさらった男は狙った獲物を逃さない、まるでハイエナの如き執念深さと執拗さを持ち合わせた性格をしている。悪趣味な感性をしていることは、先日二人が再会したとき、逃げる伶子をわざと距離を置きながらじわじわと追い詰めていった行動で証明されている。逃げ惑う少女にとって蓄積される疲労は、最初こそ木綿のような軽さかもしれないが、次第に鉄アレイ、そしてベンチプレスへと化けていくに違いない。

「肉体的体力の消耗も勿論ですが、彼女の場合、精神的疲労の方が大きく影響するかもしれません」

冷静沈着な教え子がらしくもなく取り乱したときのことは覚えている。いや、脳裏に焼き付いていると表現した方が正しいかもしれない。リオンを過去に自分を陵辱した男と見間違え、恐怖、絶望、驚愕、困惑、焦燥、悲愴……様々な負の感情を綯い交ぜにした断末魔の如き叫びを迸り、慟哭した。今でも耳にこびり付き、離れられずにいる。

もしも三年前の悲劇を再び起こされれば――――

(……今度こそあいつ、壊れるかもしれねぇ)

無意識に握り締めていた拳に一層力が篭る。

「このままちんたらしてたら伶子が危ないことは分かってんのよ!だからとっととあたし達を冥界に連れてって!」

柳眉を吊り上げて怒涛の剣幕でリオンに詰め寄った茉穂は、彼が首に巻いていたストールを強く引っ張り、顔を自分の方へと近付けさせる。

「あたしがこの距離で光線ぶっ放せば、あんたはただじゃ済まない」

人質とされていた宇佐美の姪は戻ってきた。しかし、だからといって幼い子どもを人質に、災禍との闘いを強要した恨みが帳消しになるわけではない。傍らにいる教え子の言う通り、こちらの世界で死した者が冥界を荒らしていることに多少なりとも同情が芽生えても、人身御供をしてまで救ってやろうという気にはなれない。

それでも冥界に住まう民を災禍から守る為に佐保姫を求める気持ちは、分からないでもないのだ。それは教え子二人も同じだろうが……目の前にいる冥界の使者に語ることはないだろう。

「例え佐保姫としてじゃなくても、これ以上伶子を甚振るような真似するならただじゃおかない。あの子を佐保姫にするなら、あたしが災禍となって真っ先にあんた達を殺してやる」

懇願ではなく脅迫。これまで茉穂が凛々しい面差しを険しくし、激昂する場面を何度か目にしてきたが、今ほど息苦しさを醸し出す気迫はなかった。鋭く研いだ刃物のような視線。しかしその瞳の奥には、一瞬にして喉笛に牙を立てんとばかりにいきり立つ炎をちらつかせている。「NO」と答えれば即座に眼前の男の命を屠る気だ。

茉穂を佐保姫にと強く願っているリオンだからこそ、彼女の脅しが決して嘘ではなく、本心から親友を救い出したいと望んでいることを察しただろう。宇佐美の横で黙って状況を窺っている七愛海も、事態を把握していないだろうに、張り詰めた空気だけは読めたらしい。叔父の上着の裾を握り締める指の力が強まった。

静かに見据え返してくる敵に痺れを切らし、再び茉穂が紅を刷いた唇を開こうとしたそのとき、金の睫毛を縁取ったリオンの瞼を静かに伏せられた。

「……分かりました。冥界に行きましょう」

蚊の鳴くような、囁きと大差ない声量に反して、開かれた瞳には狡猾な色が携わっていた。

「但し条件があります。それを呑んで頂けなければ、私はどんな目に合わされようと絶対に転移しません」



金属がぶつかり合う甲高い音を捉え、シオンはその方角へと駆けた。覚えのある二つの気配。一つは何百年という慣れ親しんだ末弟のもの。そしてもう一方は――――

(よかった!桜原さんはまだ無事だ!)

安堵して胸を撫で下ろしたのも束の間。

「ああぁあぁぁあああ!」

耳を劈く絶叫。男か女か判別つかないまでの轟きに総毛立つ。

通路の先に見える、散らばった扉や壁といったものの破片。その先が音の出所だ。

「レオン!桜原さん?!」

駆け込んだ瞬間に視界が赤く染まる。頬から瞼にかけて降りかかってきた濡れた感触に驚愕の声を上げ、掌で拭い見遣れば、真新しい血がべっとりと付着していた。

「ってぇ〜!」

痛みを強く訴える悲鳴。顔を仰いでみれば、苦悶の表情をした弟が立ちはだかる少女を鋭い眼差しで睨んでいた。唇こそ口角を吊り上げて薄笑いを模ってはいるが、常に少女を眺める際に宿していた喜悦の色が弱まり、代わりに憎悪が芽生えつつあるように見える。

それでも明らかに深手なのは少女の方だ。シオンの立ち位置からはその後ろ姿しか分からないが、赤く染まったシャツにキュロットパンツの裾から伸びる脚やうなじは殴打による打撲で青く変色している。痛々しいその痕跡に思わず顔を顰めるが、手に嵌められたグローブの先に取り付けられた鉤爪、銀の身を纏うようにして血塗られた鮮血を目にしたそのとき、何故かぞわりと身の毛がよだった。

(桜原さん……?!)

痛みに身を縮まらせる様子もなく、まるで痛覚を切り捨てたかの如く毅然と佇む後姿。その立ち振る舞いがどこか異常に映る。

「不死原君」

振り返ることも、第三者の気配に敏感に反応した様子も見せなかった伶子に反射的に背筋を伸ばす。そしてより一層、彼女の身に間違いなく何らかの心境の変化が遭ったことを察し、怪訝に思う気持ちを強くした。

「ウツギさんをお願い」

凍てついた無機物を首筋に当てられたように感じてしまうまでの、硬くて淡々とした声色。

身動き一つせず気絶している女性を抱えて、改めて戦慄する二人の男女を見遣る。

(一体何があったんだ……?)

息を呑むシオンの視界の先に、警棒を振り上げ飛び掛かろうとするレオンの姿があった。

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