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春風戦華  作者: 地球儀
16/35

其の壱拾陸:告白

「佐保姫候補、全員集結ってか」

くつくつと喉を鳴らしながら口角を吊り上げて笑みを模り、けれども面白くないと言わんばかりの目つきでレオンは上半身を起こす。その目線はまず最初に宇佐美を捉え、次に茉穂を、最後に伶子へと移った。

足元から脹脛、腰、胸、首筋……そして頭部。

視線が絡んだ瞬間、伶子は顔を背けて目元を隠すように深く俯いた。じわりと、背中や腋に嫌な汗が伝っていく。それが冷たいのか温いのかも分からない。ただ、不快だった。

(き、もちわる……!)

喉の奥に広がる酸味を帯びた嘔吐感。

生理的な涙が目尻に浮かび、堪らず口元を手で覆おうとしたそのとき、背後から腕を回されて硬い何かに顔面を押し付けられた。湿った綿の感触を頬で察し、そこが宇佐美の胸元だと悟る。

「う、宇佐美先生?!」

動揺する少女を挟んで二人の男が無言でいがみ合い、双眸を鋭くさせながら互いの様子を観察する。

先の尖った鏃の如く、射て殺さんとばかりの眼差しで宇佐美はレオンを睨み、対するレオンは鼻の先であしらうような小馬鹿にした表情で見返しつつも、眉宇を顰め、口の端を今度はヘの字に曲げている。

しかし誰よりも立腹した面持ちをしているのは間違いなく、宇佐美の後方で仁王立ちして佇む少女だった。ただでさえ吊り上がり気味の柳眉をより険しくさせて、紅潮し強張った頬が怒りを露わにしている。その憤然の矛先は、金髪と金茶の瞳を持つ冥界の双子。今にも喉笛に牙を立てんとばかりに鋭い目で睨み付けている。

緊迫した空気の中、最初に動いたのは右手にブルウィップを持つブロンドの青年だった。

「あなたに逢うのは初めてでしたね、近江茉穂」

(……っ、そうです!どうして茉穂ちゃんがここに?!)

ドクン、と伶子の心臓が大きく脈打つ。

速度を増した鼓動の音が伝わったらしく、伶子の後頭部を掴む宇佐美の手が軽く髪を撫でた。

それが気遣いなのか単なる反射だったのかは分からないが、思わず縋るようにして宇佐美のシャツの裾を握り締めながら、伶子はリオンの声に耳を澄ませた。

「私は冥界で宰相を務めているリオン。是非あなたに――――」

「とっとと自分の世界に帰りなさいよ。あんた達の事情なんて、もう知ったこっちゃないわ」

オレンジの巻き髪をした少女は小鼻に皺を寄せて顰め面をつくり、声に棘を含ませて歯に衣着せぬ物言いで断言する。

「ハッ!用件言う前に断られてやんの」

鼻先で笑うレオンに双子の兄は「黙れ」と牽制し言葉を続ける。

「先代の佐保姫を失い、冥界は混沌と化しています。地上に災禍が蠢き、民は傷を負い、中には生を受けて間もない赤子が屠られてさえいる。王を起てる前に、まずは強き佐保姫の存在が必要なのです。ですから――――」

「だから!あたしは最初からお断りだっつってんのよ!」

叫喚さながらに声を張り上げて茉穂は口を大きく開いた。すると瞬く間に口腔内から白光が生まれ、それが真っ直ぐにリオンへと飛んだ。

「んなっ?!」

(え?)

宇佐美の驚愕した様子が硬い掌越しに伝わるが、視界を封じられた伶子にはそのような状況、把握できるはずもない。

話に耳を傾けず、敵意丸出しに攻撃を仕掛けてきた事実に舌打ちしながらリオンは横に跳んで光線をかわす。しかし肩に掛けていたストールが掠めてしまったらしく、破けた繊維の先から黒い煙が燻っていた。辛うじて燃え上がってはいない。

茉穂の攻撃の威力に感嘆したのか、レオンが高い音を出して口笛を吹く。

「あんた達の世界で起きてることなんだから、あんた達でケリつけなさいよ」

ギリッ、と歯軋りして少女が敵二人を威嚇する。

どういう経緯なのか、今までの会話からしてほぼ間違いなく“冥界”の存在を承知しているであろう親友に、伶子は戸惑いを隠せない。それは共闘者も同じらしく、高鳴った鼓動が衣服越しに耳元まで届いてくる。

困惑する伶子と宇佐美をよそに、言葉の応酬は続いた。

「ですから、私達の手に負えないから佐保姫に手助けを求めているのです!」

「自分の命かけて異世界救う義理がどこにあるってのよ!」

「……つーか、元はといえば災禍ってのはあんた達人界の連中が核なんだ。あんたも兄貴から聞いてんだろ?本音を言わせてもらえばこっちは被害者、加害を侵しているのはそっち。文句言う義理あるのはこっちだっての」

後頭部の後ろで左右の手を組みながらレオンがのんびり言ってのける。

茉穂の険しかった表情が更に厳しさを増し、赤いルージュを塗った薄い唇から歯が剥き出す。

「シオン!いるんでしょ?!いい加減出てきなさいよ!」

その瞬間、リオンの立つ位置から二、三歩前方の空間が陽炎のように揺らめき、そこから一人の男が出現した。

見覚えある容姿に、宇佐美は愕然と目を瞠った。伶子の頭を押し付けていた腕がぶらりと力なく落ちる。

くるりと上半身を捩った伶子もまた、プラスチックレンズの奥の目を大きく剥いた。

「お前……」

「何で不死原君が……?!」

絶句する副担任と同級生、そして愁眉を開こうとしない茉穂に対し、申し訳なさそうに表情を曇らせながら姿を見せたのは、石動学園二年八組の転校生であり、冥界を次期統率する者として期待を寄せられている皇太子、不死原紫苑――――シオンだった。

「リオン、レオン。今日のところはもういいだろ。退け」

「しかし兄上!」

「お前が宇佐美先生と契約してた期限まで、あと二日ある」

納得がいかないと首を横に振りつつも、冥界の宰相たる男は伶子達に背を向けて挨拶もなく姿を消した。

「兄貴、さすがに俺は冥界に戻れねぇし、適当にどっかで時間潰すわ」

腕を天に伸ばし体を撓らせたレオンは伶子に目線を投げかける。未だ顔色が優れない少女に軽薄な笑みを見せつけながら「じゃあな、“キー”」と手を振り、煙のようにいなくなった。

しかし二人の男が戦場から脱却してもなお、緊迫した空気は残されたままだ。

「……茉穂、君がここにいるってことは、また闘いに身を置く気なのか?」

「あんた達のやり方に本気で嫌気が差したから、全部ぶち壊す覚悟でここにいるのよ。漸く腹括ったの。絶対に誰も犠牲になんてさせない」

当人しか窺い知れない、秘めた決意を固めた男女の視線がぶつかり合う。

「……俺も、自分の決断を諦める気はないよ」

最後に残っていた冥界の住人もまた、二人の弟の後を追うようにしてこの場から消え去った。

「不死原君?!」

「おい、不死原!」

――――ブォン!

動揺する伶子と宇佐美を嘲笑うように、戦闘終了の合図が脳を震わせる。

蛍光灯が一瞬にして消灯するという事態が起きても、この中では第三者と疑わしき少女に動揺の色は見られない。

宇佐美から身を離した伶子は覚束ない足取りで茉穂の前に立つ。宇佐美もまた、厳しい視線を向けて彼女を眺めた。

「茉穂ちゃん、どうしてここに……?」

宇佐美を、そして伶子を見つめ返す茉穂の黒い瞳は次第に潤み出し、それはやがて目頭や眦から零れ、幾筋もの軌跡を頬に描いた。

「ごめんなさいっ。ごめ……っ、ホントに、ごめん……! 」

月明かりが照らすリノリウムの床に膝を落として、両手で顔を覆った少女は咽び泣く。細い肩を震わせ謝罪を繰り返すその姿は、自信ありげと胸を張り、姐御肌で、たまに自堕落な一面も見せる普段の姿とは随分と掛け離れていた。

一生徒として教壇から見下ろしている宇佐美は勿論のこと、親友として一年関係を続けている伶子とて、茉穂の涙は初めて目にする。

ただただ謝罪の言を紡ぐ彼女に、二人は困惑するしかできなかった。



「兄上!一体何考えてるんですか?!あの男を牢から出すなんて!」

こめかみに青筋を立て、金茶の瞳を怒りに染めたリオンは、今にも胸倉を掴み上げんばかりの勢いで目の前の兄に詰め寄っていた。

対するシオンは弟の憤りに煽られて気を高ぶらせる風でもなく、だからといって狼狽する様子も見せないまま佇んでいる。その無表情は波紋のない水面の如く、何を考えているのか全く腹が読めない。

言い訳一つしない兄に苛立ちを隠せないのか、リオンは大きく舌打ちした。

「あの男の力と残虐さをご存知でしょう。おまけに人を食ったような傍若無人な態度。……ああ!考えるだけではらわたが煮え繰り返る!」

苛立ちが最高潮に達したときに起こす、親指の爪を噛む癖。宰相の職に就いたときから更に神経質に磨きがかかっていたが、癇癪玉を弾けさせる度にしていた幼少時の仕草をやってしまう辺り、本当に頭に血が昇っているのだろう。

「リオン、教えてほしい。あいつは桜原さんに何をしたんだ?」

爪の先を歪に変形させる作業から意識を削がれたらしく、ブロンドの髪を揺らしながらリオンは顔を上げる。その表情は見るからに信じられないと言わんばかりの、呆気に取られた面持ちだった。

「……兄上、まさかあなた、何も知らずにあの男を牢から出したんですか?」

「覚悟を決めたんだ。リオン、悪いけど茉穂を佐保姫にはさせない。だからその為の手段なら、どんな姑息であくどい手でも使う」

腹を決めた、真剣で揺るぎない眼差しを向けられリオンはたじろいだものの、すぐさま憤怒と戸惑いが綯い交ぜとなった表情を取り繕った。しかしその色を浮かべる刹那の間、ほんの一瞬ではあったが、まるで路頭に一人置き去りにされた子どものような寂寥感を滲ませた。

「……本気、なのですね」

長い付き合いだからこそ分かる。普段はどこか爪の甘さを残しているが、一度覚悟を決めたら例え得より損が大きかろうと、とにかく自分が正しいと思った方向に突き進む。愚直ではあるが、信念を曲げようとはしない粘り強さ。民も、シオンのそんな一面に惹かれている。

……だからこそ、一度辛酸を味わう真実を当て付けるべきかもしれない。

「分かりました。話しましょう。三年前、あの男が何を仕出かしたのかを」



今から寄り道して帰らないかという先輩の問いにチアガールの殆どが挙手して合意したが、伶子は小首を傾げて微苦笑を浮かべるに留まった。それを一人の先輩が目敏く見つけ、頚動脈に腕を回して絞めるという悪ふざけを仕掛けてきた。

「ちょっと桜原~。最近付き合い悪いよ~?」

「えっと、用事が度重なってまして……」

ギブギブ、と苦しがる振りをしながらも、カッターシャツのボタンを留める手は動かしたままだ。

そんな一刻も早く帰りたがる様子に、他の部員達も食指が動かされたらしい。

「桜原先輩、そんなに急いでどこ行く気ですかぁ?」

「あ!さては彼氏か?!」

「違います」

色めき立つ部員にピシャリと否定の言葉を投げかけるものの、女子というのは本当に恋愛にまつわる話が好きらしい。室内にいる全員の目が伶子に向けられる。中には手を動かすのをやめて半裸なのも構わず食いついてくる者までいた。

「誰?誰?!誰?!」

「この学校の人?」

「まさか年下?!」

「白状しちゃえ」

首に絡まる腕が徐々に力を込め始め、徐々に締め付けが強くなる。

(埒が明きませんね)

見咎められないようこっそり溜息を吐いて、まずは背後の先輩から解放されるべく、彼女の脇腹を指先でそっと撫でた。

「ひゃんっ!」

こそばゆさに思わずしゃがみ込んだ彼女に口早に謝罪し、鞄を手にして一目散に扉のノブに手を掛けた。

「それでは、お先に失礼します」

「あ、コラー!」

扉を潜り抜けた後の閉じるまでの数秒間に物凄いブーイングの嵐が聞こえてきたものの、幸い明日、明後日と部活動は休み。クラスメイトを除き、次に部員と顔を合わすのは月曜日だ。それまでの間に“桜原伶子に彼氏”説は沈静化しているだろう……と思いたい。

更衣室を後にした伶子が向かった先は四階、数学準備室だった。そこには一足早くチアリーディング部から解放された顧問代理の宇佐美、そして茉穂がいるはずだ。

スライドドアの前に立ち、軽く指を丸めた手を持ち上げて深呼吸をする。小さな音ながらも鼓動が速いのは、やはり困惑より緊張の方が上回っているからだろうか。

これから、無関係だと疑ってさえなかった親友の口から、真相を聞かされる。

「……桜原です」

四度のノックの後に名乗り、それから一瞬の間をおいて部屋の主から入室許可が下ろされた。

失礼します、と中に入って二人の男女を確認する。

煙草を咥えた宇佐美はスラリと長い足を組んで、仰け反るようにして一人掛けのソファに座っていた。テーブルの上には灰と吸殻が山盛りになった皿とシガレットケース、それにピンクのパッケージをしたピアニッシモワン・ペシェの箱が置かれている。

そして伶子の立ち位置から背を向けるように、二人掛けのソファには茉穂が座っていた。西日を正面から浴びる場所ではあるが、二人のどちらが引いたか知らないが、カーテンが遮光の役目を果たしていた。

おかげで部屋に入ったばかりの伶子も眩い思いをせずに済んだ。

「座れ」

顎で茉穂の隣を促され、そこに腰を下ろした伶子はおずおずと親友の顔を覗き込む。

今朝、遅刻ギリギリではあったものの茉穂は二年八組の教室に現れた。螺旋を描くように縦に巻いたオレンジの髪。厚く塗られたファンデーション。濃いめのアイシャドウ。重ね塗りした黒のマスカラ。真紅のルージュ。

一見、普段と同じく華やかな美を繕った面映え。しかし凝視すれば目が充血し、下瞼が腫れぼったくなっているのが分かる。きっと家を出るぎりぎりの時間まで、氷水で目元を冷やしていたのだろう。

『……明日の放課後、ちゃんと、知ってること全部、話すから』

蚊の鳴くようなか細い声で、昨晩彼女はそう口にした。

あれから家に帰った後もひたすら枕を濡らし、眠れぬ夜を過ごしたに違いない。

そして今が、その放課後だ。

「……さて、どこから話せばいいかな」

時間を置いた為か、落ち着きを取り戻した声が薄い唇から小さく零れ落ちる。

伶子が目の前に座る共闘者に視線を送れば、彼もまた伶子を見つめていた。主導権を委ねるという意味合いで一度瞼を閉じ、アイコンタクトを送ってみる。一秒の間をおいて視界を開けば頷きが一つ返ってきた。どうやら通じたらしい。

指の間に挟んでいた紙筒を灰の山に押し潰して、宇佐美は上半身を乗り出した。

「まず聞きたいのは……近江、お前何者だ?金髪二人に兄と呼ばれていた不死原が冥界のモンだっていうのは、あんな姿の消し方されりゃ確実だ。けどお前は?リオンに噛み付いてたから俺達と同じく、あいつ等の敵だっていうのは想像つくが……口から光線ぶっ放すなんて、普通の人間じゃ無理だろ」

(え?!茉穂ちゃん、そんなことできたんですか!)

驚愕に目を瞠る伶子の視線が痛いのか、首を思い切り横に逸らしながら「あー、そういや伶子は見てなかったんだっけ」と呟いている。

その一言で宇佐美の胸に身を寄せていた事実を思い出したらしく、伶子の耳は赤く染まった。

「え~と、何者かって質問だけど、正真正銘の人間だよ。但し、災禍との戦闘ゲームが始まったら伶子やウサちゃんと同じく、冥玉を使うことのできる佐保姫候補の、ね」

「昨日あの短い金髪野郎も言ってたな。その佐保姫候補って何なんだ?あいつ俺のことも含めて言ってただろ。俺が“姫”って柄か?」

宇佐美は鼻で嘲笑うが、脳裏を過ぎる男の姿に伶子の背筋は強張る。

出会った当時に比べたら髪が極端に短くなり、タンクトップから覗かせた筋肉は細身の骨格ながらもしっかり付いていたように思う。しかし寸分も変わっていなかった、肉食獣を連想させるあの獰猛な眼差し。隙を見せれば忽ち、身は勿論のこと、今度こそ心まで完膚無きにへし折られるかもしれない……。

硬直した四肢が震えそうになるが、そこは両手を強く握り締めて堪えた。

(私の動揺で会話を途切れさせるわけにはいきませんし)

胸中でそっと息を吐き出して、引き続き耳を傾ける。

「佐保姫っていうのは、冥界で災禍を倒す役目を一生負わされる人のこと。大抵女の人がなるらしいんだけど、稀に男の佐保姫もいたみたい。そもそも冥界って、ギリシャ神話じゃ死者の国って言われてんじゃん?あながちそれも真っ赤な嘘じゃないみたいで、こっちで死んだ人がそのまま冥界に行くわけじゃないらしいんだけど、死んだ人が最後に抱く負の感情……それがあっちで具現化したのが災禍らしいの」

『元はといえば災禍ってのはあんた達人界の連中が核なんだ』

昨晩のレオンの言葉が蘇る。

「だからレオンはあんなことを……」

ポツリと呟く伶子の横で親友は頭振る。

「でも、やっぱあたしは納得できない。こっちで死者となった人の残滓が化け物になって、それが冥界の民を苦しめてるっていっても、向こうは向こうで対抗できる手段と力がある。簡単に殺し切れないから、時間も手間も省きたいから、だから佐保姫という救世主が欲しいんだって」

ばっかみたい、と不快感を露わにして茉穂は吐き捨てるように言った。

「近江、お前にそういった詳細を話したのは不死原だよな?あいつとはどれくらいの付き合いがあったんだ?」

起伏の激しさを読ませない静謐さを繕いながらも、その実根本から穿り出そうという鋭い光を覗かせて、宇佐美が茉穂の黒目を直視する。

伶子が固唾を呑む中、派手な髪色をした美少女は長い睫を伏せて頬に影を落とし、一度下唇を噛み締めた後に、その小さな口を開いた。

「……ずっと、ウサちゃんに罪悪感を抱いてた。今は伶子にも同じ気持ちを持ってる。……ホントあたし、馬鹿だよ」

声量の落ちた低い音に後悔、悔恨、悲愴、懺悔……それらを滲ませて、茉穂はポツリポツリと語り始めた。

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