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解けない魔法  作者: ともるん
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ワイズ工房一日目

「すみません、お世話になります」


 キースとクリスはワイズ工房に到着した。


「おう、待っておったよ」 ヘンリーとは似ても似つかない小柄なお爺さんが出てきた。


 馬を外に繋がせてもらって、二人は工房に併設されているワイズの居宅に招かれた。


「あっ、お茶は私が」クリスはワイズの代わりにお茶を入れた。


「すまんのう。普段は弟子がいるんじゃが、今は休みをとらせとる」


 キースとクリスが来るために気を使ってくれたのかもしれなかった。


 クリスはヘンリーの手紙とマギーからの魚の干物を渡した。


『爺さん元気でいろよ。またそのうち会いに行くからな』そうヘンリーの手紙には書いてあった。


「あの子は優しい子でなぁ……」ワイズは遠い昔を思い出したように話だした。


「昔、近くの河口でたくさんかにが獲れたんじゃが、初めは『美味しい美味しい』って食べておったのに、何日かたるに入れてたら蟹に情を移してしまってな……食べられなくなったことがあったんじゃ」


「……」


「そんな子が今や城に仕える魔導士をやっておるとは……」


 ワイズはマギーからの魚の干物にとても喜んだ。


「これはお酒がすすみそうじゃわい」


(さすがヘンリーのお爺さん)クリスはそう思った。



          *



「刀を作るには時間がかかるでな。もう用意はしておる。あとはお酒の儀式だけじゃ」


 ワイズのその言葉にキースもクリスも驚いた。


「えっ」


「鞘も作っておいた」


 ワイズが言うには、剣はすでに出来上がっていて、あとはお酒の儀式のみ、ということであった。


 彼が剣を作るときは、地水火風それぞれの儀式を行うので物凄く時間がかかるということだった。


(作ってるところも見たかったけど、しょうがないか)二人は思った。


「お酒の儀式って何ですか?」キースが聞いた。


「剣の神様が酒好きだったらしい」ワイズは剣が生まれたときの伝説を語ってくれた。


「……そうして、剣はさまざまな気をその刃に帯びる。だから、一切の汚れをはらうために生まれたばかりの剣にお酒を吹いて浄化するんじゃ」



 弟子たちはクリスたちが滞在中は休ませているとのことだったので、代わりに身の回りのことをすることになった。


 食材(たぶん弟子の人たちが用意してくれたもの)はたくさんあった。


 それらを使ってクリスが夕食を作った。


 クリスもマギーに仕込まれて家事のほとんどはマスターしていた。


「お風呂はどうしてるんですか?」クリスが聞いた。


 普段は弟子たちが用意した温めた湯で体を拭いているとのこと。 


 代わりにキースとクリスがお湯を用意した。


「すまんのう」


「いいえ、大丈夫ですよ」



          *



「明日は早いからもう寝るといい」


 その起床時間を聞いて、二人は目を丸くした。


(いつもなら、まだ寝てる時間……)



 キースとクリスは空いてる部屋に泊まらせてもらうことになった。


 部屋に入るなり、キースが言った。


「ヘンリー、かにに名前つけちゃったんじゃないかな。あるあるパターンだよ」


 キースは亡き祖父のことを思い出したようだった。


「うちの爺さんは、俺が咳をすると、川魚のイコの生血が効くって飲ませようとすんの。それが嫌で逃げ回ってたな。冷静に考えたら淡水魚の生って怖いだろ?」


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