鈍感
「行ってらっしゃい♪ 気をつけてね」
キースとクリスを見送ったあと、マギーはカインの方を向いて言った。
「いいんですか? 二人っきりで」
「えっ」
「もう、先生ってば。そういうの鈍感なんだから」
「……」
「年ごろの男女ですよ?」
「……」
*
クリスたちはカインの馬一頭を借りて出発した。
「二人分の荷物もあって重くなるから、鞍の代わりにこれを使う」
そう言ってキースは分厚い布地を馬の背にかけた。
前に馬に二人乗りしたときは、鞍にクリスを乗せ、後ろにいるキースが手綱を握った。
「なんで前なの?」と聞くクリスに、
「子どもは前」とキースは答えた。
「……(子どもって)」
納得してないクリスを見てキースは笑った。
「スカートだから横向きで乗りにくいかもしれないけど、前の方がまだ安定するから」
荷物は着替えや水と食料などで、馬の後ろの方に分散して乗せた。
水と食料は宿や町で補給しながら行くことになる。
キースは護身用の、あまり長くない剣をコートの下に隠していた。
「ワイズさんの工房の許可が出て良かったね」馬に揺られて言ったクリスの言葉に、キースはうなずいた。
ヘンリーの祖父はワイズと言う名前だった。
まずはじめにワイズの工房を見学し、剣を作ってもらう予定になっている。
本当はカインから相談を受けたあと、ダンはいくつかの剣工房を訪ねていた。
そしてどこで聖剣を作ってもらうか考えていたのだが、ヘンリーのお爺さんが現役のマイスターだと知って何か縁のようなものを感じた。
カインとヘンリーとであらかじめワイズと手紙のやり取りをして許可をもらうこともできた。
ワイズは工房に併設された家に一人暮らしだったが、身の回りの大抵のことは通いの何人かの弟子たちが行ってくれているらしかった。
工房近くにはお婆さんの死後、わざわざ引っ越してきたヘンリーの伯父家族たちも住んでいるとのこと。
彼の工房までは二日ほどあれば到着できる距離にあった。
今夜はどこかで宿に泊まらなければならなかった。
「宿はどうする? 二部屋とるか」
そう言ったキースに対しクリスは、
「えー、もったいないよ。一部屋でいいよ」と言った。
「……(ドキン)」
「キースは……大丈夫でしょ?」
キラキラした純粋な目でクリスにそう言われると、脳内変換で(変なことしないよね?)に聞こえた。
「……ハイ」
(これは……ひょっとしてヘビの生殺し状態……?)
そう思ったキースだった。




