未知
聖剣を作る旅出発の数日前、魔導士の館では無事を祈って壮行会が行われていた。
「いっぱい食べて。ジャン以外はお酒も飲んでいいから」
マギーはたくさん料理を並べた。
クリスは、カインはじめ、みんなから旅立ちに向けての言葉をかけられた。
「たぶん初めてだらけのことで大変だろうが、いい経験になるだろう。お世話になるヘンリーのお爺さんにはくれぐれもよろしくと伝えてくれ。後日、こちらからも改めてお礼の手紙と品を送る」カインにそう言われた。
「気をつけてね。どうせなら旅行だと思って楽しんできなさいよ。あと、これ……ヘンリーから聞いたの。お爺さんの好物らしいからお土産に持っていってあげて」マギーから魚の干物がたくさん入った袋を渡された。
「これうちの爺さんに渡してくれる?」と、ヘンリーから祖父宛ての手紙も預かった。
「マギーの言うように楽しんできなよ。俺もジャンたちと一緒に出る」エズラはエリザベスの例の住所に日誌を届けに行く予定だと言った。
「みなさん、ありがとうございます。気をつけて行ってきます。先生、色々とお金を使わせてしまってごめんなさい。マギーもお土産ありがとう。ヘンリーの手紙をお爺さんに渡すね。で、お爺さんの様子をまた伝えるね。エズラ、また帰ったらエリザベスのこと教えて」ジャンは旅に出る楽しさと、みんなと少しの間分かれる寂しさを感じて複雑な気持ちがした。
*
「僕、兵士を辞めることにしました」
あんなことがあって、ヘンリーはもう二度とクライドが自分には会いに来ないと思っていたので驚いた顔をした。
ヘンリーの横に座って一緒に休憩をとっていたエズラは何も言わずにその場を去った。
「そうか」
「あと、2週間ほどいますけど。会いに来ていいですか?」
「……」
「僕……プラトニックなら……」
「だーかーら! そういう問題じゃないんだよ!」
「……」
「俺は本気で誰も好きになりたくないんだ。わかる?」
「……それって……」
「……」
「怖いからですか?」
「……」
「……失うのが」
「……」
「いつかいなくなる。……生きてても別れがあるし、病気や死に別れ……そういうのが怖いんですよね?」
「……」
「ヘンリーは見た目と違って誰よりも優しすぎる。だから怖いんだ。好きになったものを失うのが」
「……そうだよ」
「……」
「俺は弱いんだよ」




