解読
夕食の時間、エズラは例のエリザベスの日誌の暗号について、カインやヘンリー、クリスにも話をした。
「その古代語の数字の暗号を解いてみたら……どうも住所みたいなんです」
「住所?」
その場にいた何人かがそう声を出した。
「えっ、あれ住所だったの?」
マギーの言葉にエズラは続けた。
「実際にある住所みたいなんだ。もしかしてエリザベスの実家かな?と思ったんだけど」
「な~んだ。私てっきり、この館に隠された宝物を示してるのかと……」
マギーの言葉にクリスが笑った。
エズラは言いにくそうに次の言葉をカインに伝えた。
「あの先生……。もし家族がいるなら、この住所にエリザベスの日誌を届けに行ってみたいんですけど。ダメでしょうか?」
「……その解読したメモを見せてくれないか」
カインにそう言われて、エズラは住所を書いた紙を渡した。
「この地名なら聞いたことがある。ここからそう遠くない。週末の休みでも行ってきたらいい」
「……ありがとうございます!」
エズラは今週末は用事(買い物の付き添い)があるので、来週以降の予定のない休みに行くことを告げた。
*
「うわぁ……すごい!」
クライドは目をキラキラ輝かせて、魔導士の館の屋根裏部屋で古い望遠鏡に見入っていた。
彼は週末の午後に、買い物に出かけたマギーたちと入れ違いで魔導士の館を訪れていた。
屋根裏部屋に上がる前に、食堂にいたカインに挨拶をして。
「50年以上前のものとは思えない……保存状態いいですね。はぁ……」
ヘンリーはその横で黙って見ていた。
「知ってます? これが作られてた当時はすごく優秀だったんです、この型。その後、国が統合して大量生産が始まってから質が落ちちゃったんですけどね」
エリザベスの望遠鏡は外国製で、かなり高価な物だった。
「……(まったく、イキイキしやがって。世話の焼ける)」ヘンリーは思った。
ひとしきり望遠鏡を眺めてウンチクを語ったあと、クライドはふと屋根裏部屋にある部屋が気になった。
「あの……こっちの部屋は何ですか? もしかしてこの部屋で天体観測を?」
「ああ……」
確かに、マギーの部屋には窓があり、この前はそこから夜空を観測した。
「……開けてみればいい」
ヘンリーのその言葉で何のためらいもなくクライドはマギーの部屋のドアを開けた。
「えっ……」
そして唖然とした。
鏡台と、その横に可愛らしい模様のカバーがかけられたベッドがある。
壁には女性ものの衣類がいくつもかかっていた。
そして、部屋の外に散らばっていたマギーの私物もクライドが来る前にヘンリーによって投げ込まれていたので雑然としていた。
「あの、ここ……?」
びっくりした顔でクライドはヘンリーの方を振り向いた。
ヘンリーは構わずマギーの部屋に入った。
ベッドの上には紙が置いてあり、それに気づいたヘンリーはそれを手に取った。
デカデカと大きな文字でこう書いてあった。
『ヘンリーへ。私のベッドで変なことしたら許さないから!!』
「……」
ヘンリーはその紙をクシャっと握った。
文面をクライドに見られたような気がしたヘンリーは言った。
「気にしないでくれ。彼女特有のジョークだから」
クライドは意味がわからない、という表情をした。
「あの……ここに女性が住んでるんですよね? もしかしてヘンリーの……?」
クライドがどう勘違いしてるのかわからなかったが、マギーが聞いたら怒り出しそうだなと思い、ヘンリーは笑った。
「ヘンリーのパートナーですか?」
「そんなこと聞いてどうする? 興味ないくせに」
「……」
「彼女は君と同じ側の人間。俺とは違う」
「……」
「なんでかな……マギーもジャンもそういう風には見れないのに……」
「……?」
ドカッとヘンリーはマギーのベッドに座った。
「お前も座れば?」
そう言われたものの、クライドは見知らぬ女性の部屋に勝手に入って居心地が悪かった。
とにかく申し訳ない気がした。
「いやヘンリー、ここは……」
しょうがないな、という顔で腰をあげたヘンリーは「俺の部屋に来る?」と誘った。
「あっ……はい」




