クライドの話
郊外演習の休憩時間、クライドはわざとヘンリーの横に座った。
「あの、横いいですか?」
ヘンリーは笑った。
「もう座ってんじゃん」
「……」
「なに、もしかしてもう辞めるとか?」
「……違います」
「じゃあ何?」
「……話を……したくて」
そのときエズラがヘンリーを見かけて近づいたが、横に恐ろしく綺麗な子が座っているのを見て遠慮した。
(うわっ、あんな子いたっけ。場違いな感じの子だなぁ)
いつもはみんな帽子を被っているので気づかなかったのかな?とエズラは思った。
とりあえず良い雰囲気だったのでエズラはヘンリーに見つからないように別の場所で休憩をとりに行った。
「何の話だよ? 神学か?」
「……それでもいいです。ヘンリーの考えを知りたくて」
「まったく。……俺、休憩してんだぜ」
「あっ……すみません」
「まぁ、いいけどよ」
「いっとくけど、魔導士って連中は君ら聖職者目指してる人間とは違う価値観持ってるやつ多いから」
「えっ……」
「君らの神様は人間至上主義だけど、俺らは人間なんてちっぽけなもんだと思ってる」
「……」
「人間の生き死になんて神様は何とも思っちゃいないぜ、きっと」
「……そうなんですか」
「あくせく頑張って生きても、灰となって消える……ただそれだけのこと」
「なんか……刹那的ですね」
「だから創り出したんだろ、神様って都合のいいものを」
「……」
「少しでも意味のあるものにしたくて」
「でも……僕は意思を感じるんです」
「……」
「夜、満点の星空を見てても思うんですけど、何かこう……この世界には意思が働いてて、それによって動いてるって」
「お前もしかして占いとか天文にも興味あるの?」
「えっ……?」
「いや、なんでもない」
「あっ、天文にはもともと興味があって、神学校時代はよく星を見てました」
「……」
「級友たちと自作の望遠鏡なんかを作ってました」
「……」
「鏡面磨いたりするの大変でした。でも、鏡面磨きの神って呼ばれてる子がいて」
クライドは思い出し笑いをした。
「白道儀って知ってます? 星を追う装置なんですけど。ゼンマイ式のは高くて買えなくて、貧乏学生でしたから。それで手動式のを使ってたんです。もはやただの板なんですけどね。ゼンマイ式のは大きくて重たくて運べないけど、手動のは軽くて持ち運びもできて。でも、すごく扱いが難しいんです」
「……」
「でも、白道儀を扱うのがめちゃくちゃ上手い子がいて、神の手って呼ばれてました」
「……(やおよろず感ハンパねーな)」
「その子、僕が手動は難しいって言ったら、動かすときの目安にしたらいいってメモリを書いてくれたんですね。でも実際に真っ暗い中ではそのメモリが見えないってことに気づいて……なんか可笑しかったです。そういうことばっかりやってました」
クライドが楽しそうにしゃべる内容を聞いて、ヘンリーはため息をついた。
(こいつ、なんで自分の居場所がここじゃないって気づかないんだろう)そう思った。




