恋愛観
カインの館の食堂で、弟子三人とマギーとでいつものように談笑していたときのことだ。
話はなぜかヘンリーの恋愛談になり、いつしか「割り切った大人の関係」の話に発展していった。
ヘンリーが「快楽……」という言葉を発したとたん、思わずエズラが叫んだ。
「わ~!!」
そして、その場にいたクリスの耳をふさいだ。
「こんな話聞かせるなよ!」
エズラの慌てようにマギーは面白がって、
「なによ、本当はエズラだって遊んでみたいんでしょ?」と言った。
「ばか! 話を俺に振るな!」
被弾を避けるのに必死だった。
(もう……なんで男って清純派の前では硬派のフリするんだろ)マギーは苦々しく思った。
*
クリスとヘンリーが食堂からいなくなってから、マギーはエズラに言った。
「ヘンリーって遊び人なのに、私やジャンには全然無害よね」
エズラはフッと笑った。
「あいつはそういうとこ、わきまえてるからな。住み分けわかってる」
「住み分け?」
「ヘンリーとジャンは恋愛観でいうと、全然違う世界観に住んでるからさ」
それを聞いてマギーもなんとなくわかった。
「まぁね」
「ヘンリーは一夜限りもありだけど、ジャンは……遊びなんて無理だし傷つくと思うよ。ヘンリーはジャンみたいな子を遊び相手に選ばないよ」
「恋愛するには重たいってこと?」
「言い方悪いな~ウブって言えよ。ヘンリーもそれなりに優しいからさ、傷つくものに手は出さない」
「ふ~ん」
「けどヘンリー……あいつ本命っているのかな?ってときどき思う。まだ本気の相手に出会ってないだけなのかも」
「ヘンリーの本気ってなんかヤダ。考えたくない」
「ひっでーなマギー」
「私にとってはヘンリーは恋愛対象外ってことよね」
「……(お互い様だろうけど)」
*
「ちょっと、ちょっと大変!」
マギーが古代語の授業から帰ってきて突然叫んだ。
彼女が王宮内にいる知り合いから聞いてきたという話に、魔導士の館の住人たちは驚いた。
「城魔導士の弟子の中に女性がいる、って噂が広まってるの! 今夜、抜き打ちでこの館に王宮の役人が確認に来るそうよ!」
カインはアクセルが動きだしたのではないかと思った。
(城からクリスを遠ざけるつもりか)
クリスはヘンリーのことが好きなあの青年が流した噂ではないかと思っていた。
「私にいい考えがあるわ」とマギーが言ったので、館の住人たちは吉凶混じる不安な気持ちを抱いた。




